ジャパニーズウイスキーの新星!「厚岸蒸溜所」見学ツアーで、話題のニューボーンを試飲

2019.07.01 更新

世界中に多くの愛好家を持つスコットランド・アイラ島産のウイスキー「アイラモルト」。そんなアイラモルトのようなウイスキーを日本でも生み出そうと、2016年より稼働を開始したのが北海道東部の厚岸(あっけし)町にある「厚岸蒸溜所」です。稼動からわずか3年にもかかわらず、本格的な発売に先駆けて出荷された原酒「NEW BORN(ニューボーン)」は、ウイスキーファンたちの間ですでに評判を呼んでいます。そんな「厚岸蒸溜所」を見学できて、「ニューボーン」を厚岸の名物である牡蠣とともに味わえるツアーがあると聞き、参加してきました。

▲ジャパニーズウイスキーの歴史に新たな1ページを刻もうとしている「厚岸蒸溜所」(写真提供:堅展実業 厚岸蒸溜所)

アイラ島のようなウイスキー造りを目指して。蒸溜所が建てられた理由は?

ウイスキー造りに必要なのは冷涼で湿潤な気候、そして年間を通して一定の寒暖差があること。また、スモーキーで潮の香りを感じるアイラモルトのような個性的な風味を付けるためには、ピートと呼ばれる泥炭が手に入り、海の近くであることが理想でした。
▲ウイスキー造りの理想的な環境であることから、淡路島ほどの広さに9つもの蒸溜所があるアイラ島

その条件を満たしたのが、北海道の厚岸町です。広大な湿地に囲まれ、その湿地からピートが豊富に採れ、海からも近く、気温が夏は25度近くまで上がり、冬はマイナス10度台まで下がるほどの寒暖差がある。海霧の多いアイラ島にも似た風土である厚岸町は、まさにウイスキー造りに理想の土地でした。
▲ウイスキー造りに必要な、海と湿原に囲まれた壮大なロケーションである厚岸町(写真提供:堅展実業 厚岸蒸溜所)

2013年には国内2ヵ所の蒸溜所から原酒を買い取り、試験熟成を実施。その結果から、厚岸ならではのフレーバーを持ったウイスキーになることを確信。余市蒸溜所に次ぐ北海道2番目の蒸溜所として2015年に「厚岸蒸溜所」の建設がはじまり、翌年11月から蒸溜がスタートしました。
▲厚岸蒸溜所のメイン施設。ここで造られた原酒を木樽に詰め、熟成庫で寝かせます(写真提供:堅展実業 厚岸蒸溜所)

蒸溜された原酒は3年以上の熟成期間を経てブレンドされて、はじめてウイスキーと呼べるものであり、2019年5月時点ではまだ本格的な出荷はされていません。しかし、原酒の熟成過程を知りたいという要望に応え、原酒「ニューボーン」を2018年2月に限定発売。以降も、熟成期間や条件を変えた第2弾を同年8月に、第3弾を2019年3月に限定発売しています。
▲2019年3月までに発売された「ニューボーン」3種。予想を上回る反響と評判が、すでにウイスキーファンの間に広がっています

新たなジャパニーズウイスキーへの期待と注目は大きく、「ニューボーン」シリーズはまたたく間に限定数を完売。口にすることはすでに難しくなってしまいました。しかし、味わうチャンスのひとつとして、「ニューボーン」を試飲できる蒸溜所の見学ツアーがあるのです!

蒸溜所を見学できるのは厚岸味覚ターミナル「コンキリエ」主催のツアーだけ

「厚岸蒸溜所」の見学ツアーを催行しているのは、「道の駅 厚岸グルメパーク」敷地内にある「厚岸味覚ターミナル コンキリエ」。一般客が「厚岸蒸溜所」を見学できるのは、このツアーだけです。
▲「厚岸味覚ターミナル コンキリエ」。JR厚岸駅から徒歩10分、釧路市内から車で90分程の場所にあり、厚岸町の名産である牡蠣を心ゆくまで味わうことのできる施設です

ツアーはガイドも同行し、通常立ち入ることのできない蒸溜所の施設を見学。さらに豊富な牡蠣のメニューを取り揃えたオイスターバルでニューボーンの試飲を行います。試飲をしなくてもツアーに参加できますが、魅力は半減。厚岸駅からも近いので、鉄道旅で訪れることをおすすめします。
ツアーの集合場所は「コンキリエ」1階のホール。開始10分前までに総合観光案内所で受付を済ませましょう。時間になるとガイドをしてくれる「コンキリエ」のスタッフの鐘ヶ江(かねがえ)賢治さんが迎えに来てくれました。ここからツアーの開始です。

早速、蒸溜所に向かうのかと思いましたが、まずは2階の会議室で蒸溜所の概要について解説を受けます。
▲アイラモルトやアイラ島の風土、厚岸町に蒸溜所が建てられた経緯などについて教えてもらいました

「どの土地がアイラモルトのようなウイスキー造りに向いているのか?日本中を調べ、厚岸町という結論にたどり着きました」と鐘ヶ江さん。解説を聞いただけでも、新たなウイスキー造りにかける情熱が伝わってきます。約15分の座学が終わると、いよいよ蒸溜所へ出発です。
▲「コンキリエ」から専用のバンで送迎してもらいます

「厚岸蒸溜所」までは車で約10分。海に近い「コンキリエ」から、やや内陸に入った場所にあります。蒸溜所の敷地内は通常立ち入り禁止で、撮影禁止のところもあるので、鐘ヶ江さんの指示に従い行動しましょう。
▲「厚岸蒸溜所」の事務所から見学スタートです
▲敷地内は厳しい管理がされており、移動できるのは引かれた白線の内側のみです

はじめに見せてもらったのが、蒸溜所を建設する前に試験熟成を行った熟成庫。「ここでの試験結果が良好だったことから、計画が大きく進みはじめました」と鐘ヶ江さん。
▲厚岸町でのウイスイキー造りの第1歩がここからはじまりました

続いて、見学のメインである蒸溜施設へ。残念ながら建物の中に入ることはできませんが、外側に設けられた2階のデッキから内部を見学して、鐘ヶ江さんから解説を受けます。
▲中ではスコットランドの伝統的な製法と同じ方法でウイスキーの原酒が蒸溜されています
▲内部ではまさに原酒を蒸溜中。鐘ヶ江さんの解説にも熱心に耳を傾けます

鐘ヶ江さんによると、原酒を造る工程は「原料となる二条大麦の麦芽を糖化(マッシング)させ、発酵させてウォッシュ(もろみ)にし、それを2回蒸溜させることでアルコール分を高めます」とのこと。

内部には、その工程に用いる巨大な製造設備がいくつかあります。特に目を引いたのは、蒸溜所のシンボルともいえる2基の銅製ポット・スチル。伝統的な単式蒸溜を行うための設備であり、アルコール分とともに香りなどの成分も精製できることから、個性の強い原酒を造ることが出来ます。
▲ポット・スチルなどの設備はスコットランドのフォーサイス社製のもの。同社の職人が来日して設置したそうです(写真提供:堅展実業 厚岸蒸溜所)

鐘ヶ江さんが、蒸溜所のこれからについて話してくれました。「厚岸蒸溜所の目標はオール厚岸産。町内で栽培された大麦を使い、この土地の泥炭(ピート)層を通った水を仕込み水に用い、この施設で蒸溜された原酒を、町内で伐採されたミズナラの木でできた樽に入れ、海風に当てて熟成させることなんです」

日本産というだけではなく、厚岸町ならではのウイスキーを目指しているとのこと。「原料の大麦麦芽もこれまで町外産を使っていましたが、町内で栽培されたものも使用して製造する予定です」と力強く語ってくれました。
▲原酒の原料となる大麦麦芽を手にして語る鐘ヶ江さん。蒸溜所やウイスキー造りについて色々なことを教えてくれました

蒸溜施設を見学した後は、敷地内に2つある熟成庫のうちのひとつを見せてもらいました。
▲中を見せてもらった第1熟成庫

中に入ると、沢山の樽が熟成庫の天井高くまで並んでいました。熟成樽は、バーボン、シェリー酒、ワインなど他の酒類に使っていたものを再利用することで、ウイスキーに風味を与えているそう。
▲樽の中では3~10年、もしくはそれ以上の年月をかけて原酒が静かに熟成しています

ちなみに、敷地内にある2つの熟成庫の他に、より海に近い場所に第3熟成庫もあるそう。そちらでは、海風が運ぶ太平洋の大気成分の影響によって、原酒の持つ個性がさらに伸びることが期待できるそうです。
▲左下の、厚岸湾を見下ろす小高い場所にあるのが第3熟成庫。あらゆる条件下で熟成を試し、理想のウイスキーを追求しています(写真提供:堅展実業 厚岸蒸溜所)

最後に施設の目の前に広がる湿地帯へ。ここの土に多く含まれるピート(=泥炭)の存在も、この地に蒸溜所が建てられた重要な要素。「現在、原料の大麦麦芽を乾燥させる工程は蒸溜所外で行っていますが、将来的にはここのピートを炊いて、アイラモルトと同じく独特のスモーキーフレーバーをまとわせた乾燥麦芽を作る予定です」と鐘ヶ江さんが教えてくれました。
▲北海道東部の海沿いにはただ草が生い茂るだけの湿地帯が広がっています

畑や放牧には向かない土地のように思えますが、このように新しい価値が生み出されることに驚きました。

施設を前に記念撮影をして、見学は終了です。数々の説明を受ければ受けるほど、この土地がウイスキー造りに適していることに感心させられる時間でした。
▲先ほど2階デッキから見学した蒸溜施設の前で記念撮影。手にしている看板は熟成樽に使われているものと同じミズナラの木で作ったもの

希少な原酒「ニューボーン」と厚岸名産牡蠣とのマリアージュを堪能

この後は「コンキリエ」に戻り、お待ちかねの「ニューボーン」の試飲です!試飲の会場は「コンキリエ」2階にあるオイスターバル「ピトレスク」。カジュアルな雰囲気で、地元・厚岸産の牡蠣を使ったメニューやお酒が楽しめます。
▲「ピトレスク」は窓から厚岸の町を一望できる最高のロケーション。窓際の特等席でフレッシュな牡蠣を味わえます

筆者が参加したツアーで試飲ができたのは「ニューボーン」の「FOUNDATION 1(第1弾)」と「FOUNDATION 3(第3弾)」の2種類。第1弾はバーボン樽で5~14ヵ月熟成、第3弾はミズナラ樽で8~23ヵ月熟成させています。どちらも風味付けにピートを使用しないノンピートタイプです。
▲まずはこの2種(各15ml)を飲み比べ。左が「FOUNDATION 1」、右が「FOUNDATION 3」

ストレートで飲んでみると、第1弾はすっきりとした味わいを、第3弾はまろやさを感じることができました。アルコール度数は第1弾が60度、第3弾が55度と、どちらも高めですが、ウイスキー好きならすーっと飲めてしまえそうな口当たりの良さです。
▲ツアー参加特典としてもらえる、1,000円分(税込)の食事券と、原酒の熟成に使う樽に使われているミズナラの木のキーホルダー

ツアー特典である1,000円分(税込)の食事券もここで利用できるので、せっかくならば料理もお得に楽しみましょう。オイスターバーに来たからには、ウイスキーと一緒に牡蠣を味わいたい!ということで、「FOUNDATION 2(第2弾)と生牡蠣3点のセット」(税込1,900円)を注文しました。
▲厚岸町で獲れる3種の生牡蠣と、「ニューボーン」の第2弾を楽しめるお得なセットです

「FOUNDATION 2(第2弾)」は先に試飲した2種とは違い、ピートをふんだんに使って個性ある風味を付けたピーテッドタイプ。アルコール度数は58度で、スモーキーで力強い味わいを感じることができました。

ここでおすすめの食べ方としてメニューに書かれていたのが、なんと牡蠣に「ニューボーン」を数滴たらして食べる方法。潮風を浴びながら熟成した「ニューボーン」と、海の恵みが凝縮された牡蠣との相性はバツグン!ただでさえ旨みの強い新鮮な牡蠣が、ウイスキーと一緒になることでより味わい深くなり、口いっぱいに広がります。これぞマリアージュ(結婚)といえる幸せを感じました。
▲同じく牡蠣が名産のアイラ島でもでこの食べ方をするとか

他にも「オイスターピッツア」(税込1,300円)や「エゾ鹿のロースト」(税込600円)など、「ニューボーン」と合わせて味わいたいメニューがたくさんありました。
▲北海道産チーズとオリジナルトマトソースに厚岸産の牡蠣がトッピングされたオイスターピッツア

希少な「ニューボーン」と牡蠣料理を贅沢に味わうことができ、最後はほろ酔い気分で大満足でした。
ツアーはここで終了でしたが、帰り際に「コンキリエ」の総合展示販売コーナーをのぞいてみると、「ニューボーン」は第3弾(1人1本限り、税込6,264円)のみがわずかに残るばかりでした。参加したツアーで、3種全てを味わえたなんてとても貴重ですね。
▲第3弾が発売されたのは2019年3月上旬ですが、4月末の時点で販売コーナーには数本残っているだけでした

販売コーナーには、熟成樽を作ったときに出たミズナラの木の端材で作ったコースター(税込1,890円)やマドラー(税込900円)などもあり、ツアーの記念にピッタリ!これから発売される厚岸産ウイスキーを味わう時にもぜひ使ってみたいものですね。
▲職人の手によって仕上げられています。木の力を感じさせる木目と艶が印象的

今後、厚岸蒸溜所からは2019年8月にブレンデッドタイプの「ニューボーン」第4弾が、そして2020年に3年熟成の原酒をブレンドしたシングルモルト、つまり本格的なウイスキーがついに出荷される予定とのこと。ツアーに参加してみて、厚岸発のジャパニーズウイスキーが今後どう発展していくのか、とても楽しみになりました。
▲ここから本格的なウイスキーが世に出されるまでもうすぐです(写真提供:堅展実業 厚岸蒸溜所)

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長尾悦郎

長尾悦郎

北海道十勝地方でカメラマン、ライター、新聞記者として活動中。撮影ジャンルは広告、風景、人物など幅広く。地元観光協会勤務やご当地キャラマネージャーなどの経験を生かし、地元をもっと盛り上げていきたいと思っています。(編集/株式会社くらしさ)

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