「小坂鉄道レールパーク」は運転体験だけじゃない!あの寝台特急に宿泊もできちゃうテーマパークだった

2019.07.28 更新

秋田県の北東部にかつてあったローカル線「小坂鉄道」。その跡地を利用した複合施設「小坂鉄道レールパーク」は、全国でも珍しい乗車体験や貴重な車両の見学ができる鉄道のテーマパークです。しかも、あの寝台列車にも宿泊できちゃうんです! 期待に胸を膨らませ、“北の鉄道の聖地”ともいえる小坂鉄道レールパークにお邪魔してきました。

▲乗車体験などもあり、家族で楽しめる(写真提供:小坂鉄道レールパーク)

入口から時を超えた情緒がたっぷり

小坂鉄道は、1909(明治42)年から2009(平成21)年まで100年間営業していた私鉄。大館駅から小坂駅までの22.3kmを結び、人々の足として利用されました。鉄道の開業時、小坂町は日本有数の鉱山の町として栄えており、小坂鉱山から出た鉱石や製錬によってできた濃硫酸を運ぶ手段としても使われていました。そんな小坂鉄道の跡地に、小坂鉄道レールパークはあります。
▲駅舎を活用したレールパークの入口

パークの入口となっている小坂駅舎は、国の有形文化財に登録されており、1909(明治42)年の開業当時のままに残されています。どんな人々が行き交い生活をしていたのだろうか、なんて想像を膨らませ、中に入るだけで郷愁すら感じてしまいます。
▲待合室の開業当初を思わせる木の長椅子
▲待合室の古い木の椅子
▲時刻表を記した黒板も

さっそくパーク内へ入っていきます。入口となっている改札口ではスタッフが入場券にはさみを入れます。そう、入場券は昔懐かしい硬券なのです。ここは自動改札機やSuica、ICOCAといったICカードがなかった時代の鉄道なんですよね。そんなことを改めて感じてしまいました。
▲入場券にはさみを入れる(入場料は大人500円、小・中学生250円 ※ともに税込)

機関車にラッセル車。大迫力の展示に興奮!

小坂鉄道レールパークは目的別に大きく3つの施設に分けることができます。1つ目は、ディーゼル機関車などの資料を展示している「機関車庫」。2つ目は、レールバイクやディーゼル機関車の運転などができる「乗車体験エリア」。そして3つ目は、実際に宿泊ができる「ブルートレインあけぼの」です。
▲パーク内の様子。約3万5千平方メートルの敷地面積がある

順番に施設を回ろうと、まずは「機関車庫」へ向かいます。小坂駅のホームを下りて線路を横切ろうとしたところ、案内してくださっているスタッフの栁沢克三さんが線路上を歩き始めました。
▲線路の上も歩くことができます

なんとここでは立ち入り禁止の案内がない限り、ホーム周辺の線路上を移動してもいいとのこと。廃線になっているとはいえ、実際に使われていた線路なので、まるで現役の線路の上を歩いているような気分になれます。以前、SNSにこのパーク内の線路上で寝ている写真が投稿され、ネット上で勘違いされたこともあったとか。
▲枕木をこんなに間近に見ることも。ここではレールの間に寝転んでみるのもOK!

寄り道をしながら機関車庫に到着しました。1960(昭和30)年代から使われていたという車庫を当時の趣のまま修復。広さ約1,100平方メートルにおよぶ車庫内には、ラッセル車やディーゼル機関車を展示。運転室の中に入れる車両もあります。
▲機関車庫内では、4台の貴重な車両や鉄道資料も見学できる

こちらのディーゼル機関車は「DD130形」。この機関車を目当てに日本各地から訪れる鉄道ファンも少なくありません。小坂鉄道が廃線になる直前まで現役の機関車として使われていました。乗車体験エリアで同型の機関車を使った運転体験もできるので、詳しいレポートはのちほど。

次はラッセル車です。ラッセル車とは冬に使われる除雪用の車両のこと。昭和初期から30年代初頭にかけて製造されたこちらのモデルは、オリジナルの黒色から塗り替えられたエメラルドグリーンの塗色が特徴。まだ現役で動く車両です。
▲動いている姿も見てみたい「キ115ラッセル車」

そして車庫内で一際目立っているのは、2014(平成26)年に単一型乾電池99本だけで小坂鉄道の約8.5kmを走った「エボルタ電池電車」。段ボールで作られたという貴重な車両を常設展示しています。車両の重さは乾電池も含めて約400kgで、運行の際、子どもを乗せて走ったとか。
▲エボルタ電池電車。車内にはまだ乾電池99個が設置されていました

そのほか、機関車庫では車両の展示だけでなく、ディーゼル機関車の大型エンジンや腕木式信号、手回し式電話機、古い切符などのさまざまなアイテムを展示しています。
▲ディーゼル機関車の大型エンジン。その大きさにとにかく圧倒されます!
▲鉄道にまつわるアイテムの展示もさまざま。どういう道具なのか想像をしながら見るのも楽しいかも

普段は見ることのできない整備風景や見慣れないレトロな車両の数々は、鉄道ファンでなくても楽しめるのではないでしょうか。鉄道が走っていた時代や走っている様子を想像するだけでもワクワクします。個人的には、エボルタ電池電車の車体がダンボールで作られていたことを確認できて感動しました。
▲エボルタ電池電車の車内

ディーゼル機関車運転体験は、まさに一生の思い出

次は乗車体験です。小坂鉄道レールパークの最大の売りは、何と言ってもディーゼル機関車の運転ができること。「運転士への道」と「お試しコース」では、先ほど車庫で見た高さ3.8m、幅2.8m、長さ13.6mという大きさのDD130形を本当に運転することができるんです!

体験可能日は5~11月の金・土・日曜および祝日のみ。実施不可日もあるので、事前にホームページなどでチェックしてください。料金は所要10~15分ほどの「お試しコース」が税込5,000円(「運転士への道」は初回30,000円、2回目以降座学免除で25,000円 ※ともに税込)。では不安ですがチャレンジしてみます。
▲エンジンが前後に2基搭載され、運転席も左右に2つある

運転室に直接入れるわけではなく、車体の先端から高さ1.5mほどの足場まで登り、そこから車両中央にある運転室まで移動します。乗り込むだけでも一苦労です。
▲栁沢さんに続いて乗り込む。ワクワクと不安が止まらない!

運転室は4、5人が入れるぐらいの広さ。左右対象のつくりとなっていて、運転席が前と後ろに1つずつあります。つまり、車両の向きを変えずに前進と後進ができるような仕組みです。いろいろな計器やレバーがありますが、素人が理解するにはなかなか苦労がいりますね。
▲右にも同じ運転席がある

栁沢さんから計器やレバーの操作説明を丁寧にしていただき、まずは運転の手本を見せてもらいます。

▲「普段は見せることはない」と言いつつ手本を見せてくれる栁沢さん

力強く汽笛が鳴ったら、プシューと自動空気ブレーキを緩めます。すると少しずつ機関車が動き始めました。どんどんスピードが速くなっていきます!

ただただ興奮。人間より数倍も大きな鉄の物体を手動操作一つで動かせるなんて、まるで魔法のようです。見ているだけでも十分楽しめましたが、今度は自分で動かしてみます。
▲栁沢さんがついてくれているとはいえ、かなり緊張しながら運転

まずは汽笛を鳴らします。汽笛は足元にあるペダルで操作するんですね。次に左ハンドルのマスター・コントローラーを操作して、1ノッチと2ノッチと呼ばれる単位で速度を調整していきます。栁沢さんに言われるがまま1ノッチずらし、さらに右ハンドルの自動空気ブレーキを動かします。

すると車体が前進!動き始めた瞬間、「動いている!」という興奮はすぐに収束し、「え?これちゃんと止めることできるの?」という不安な気持ちになっていきます。それでも無我夢中に運転。栁沢さんに言われるがまま操作をゆっくり行うと、車体は無事に停車しました。走行距離は500m。時間にしてわずか30秒程度ではありましたが、貴重な時間となりました。
▲運転席からの眺め

ちなみに、実際の運行では車両を止める停止位置目標というものが決められています。線路沿いにある、赤と白のポールの白い方の前に停めるのが目標。筆者はうまく停められませんでしたが、栁沢さんは完璧でした。
▲栁沢さんによる完璧な停車位置

次に案内された乗車体験は、観光トロッコです。モーターカーで作業用トロッコを牽引してパーク内を往復するという乗り物(営業時間は10:00~16:00/体験料金は大人300円、子ども150円/運休日時は火・水曜と「運転士への道」実施日の午後)。
▲往復1km余りの走行を楽しむことができます(写真提供:小坂鉄道レールパーク)

乗客の乗り込みが完了したら、モーターカーに乗っている運転手へ手旗で合図します。とてもアナログ、でも電気操作より確実かも。昭和チックな方法に心が和んでしまいます。
▲緑の旗を上げればスタートという合図

開放感のあるトロッコなので、運行中は風を感じながら車窓の景色を楽しむことができます。パークから離れたところまで移動するため、森の中を走っているような気分も味わえますよ。
▲帰りはUターンせずそのままバッグして戻る

そして最後の体験はレールバイクです。自転車のようなペダルを備えたカートに乗って、実際にこぎながら線路上を走行します。
▲レールバイク(営業時間は10:00~16:00、体験料は大人500円、子ども250円。運休日は火・水曜)

こちらでは、普段とは違う目線で線路沿いの景色を眺めることができます。最初こそ少しこぐ力が必要かもしれませんが、一般的な自転車よりスピードが乗りやすく、割とスイスイ進みます。自分の力でカートを走らせる体験は、子どもはもちろん大人でも十分に楽しむことができます。
▲4人乗りだから家族一緒に乗車することもできる(写真提供:小坂鉄道レールパーク)

なお、隣接する大館市でも小坂鉄道の廃線を使ったレールバイク体験が行われています。こちらの体験コースでは、秘境のような山奥や田畑が広がるのどかな風景の中を進みます。走行距離はなんと3.6kmで、所要時間は30分程度。夏は生い茂る緑、秋になれば紅葉。季節による大自然も楽しめるコースとなっています。
▲こんなスリル満点な橋も進みます(写真提供:大館・小坂鉄道レールバイク)

寝台特急「あけぼの」の寝台で過ごす貴重な宿泊体験

小坂鉄道レールパーク最大のお楽しみで、これを目当てに日本各地から訪れる人も多いという注目の施設、それが簡易宿泊施設「ブルートレインあけぼの」(以下、あけぼの)です。1970(昭和45)年から2014(平成26)年まで上野~秋田・青森を結んだJR寝台特急。その列車がホテルになっているんです。
▲青いカラーが特徴のあけぼの

実際に使われていた車両に宿泊できる施設は全国でも珍しく、当時とほぼ同じ環境で泊まることができます。あけぼのに乗車したことのある方であれば、いざ中に入ると「これから本当に出発してしまうのではないか」と錯覚を覚えてしまうのでは?
▲廊下を歩くだけでワクワクが止まらない

実際に宿泊できる部屋は2種類。A寝台個室の料金は税込5,940円(パークの入園料込)、ベッドが上下に2床配置されており、2人まで宿泊できます。
▲2段ベッドにすることで2人部屋にもなる

B寝台個室の料金は税込3,780円(同)。ベッドが1床のみのスペースで、上段と下段に交互に部屋が配置されています。
▲B寝台個室の上段部分。車窓から外を眺めながら就寝することもできる

上段下段どちらも車窓から外の景色や眺められ、ちょっとした非日常を味わえます。実際にあけぼのに乗車した経験のある人であれば、当時のことを思い出さずにはいられないのでは。もちろん、乗車経験がない人でも、またとない空間を楽しむことができるはずです。
▲車窓の様子

あけぼのは通常、車両展示場に待機していますが、宿泊客がいる日の16:30になると小坂駅のホームまで移動します。その移動区間は宿泊客なら乗車可能。少しの距離ですが、走るあけぼのを体験できますよ。
▲夜は駅舎と電車の明かりだけになる(写真提供:小坂鉄道レールパーク)

宿泊者向けの出入口があるため、夜間外出は可能。夕食は出ないため、町中へ食べに行くのも選択肢の一つ。なお、車両内には給水設備やトイレがないため、トイレやシャワーなどは駅舎にあるものを使います。夜の駅舎は独特の雰囲気があり、ホームのベンチに腰掛けているだけでもちょっとしたノスタルジーを感じることができました。
▲小坂駅のホームに停車するあけぼの。夜が更けていく(写真提供:小坂鉄道レールパーク)

鉄道ファン必見のお土産や小坂グルメも堪能

駅舎の一角では、同パークのオリジナルグッズが販売されています。小坂鉄道クリアファイルやDVDなど、鉄道ファンの心をくすぐる商品が5種類以上ほど並びます。お土産を選ぶのに迷ってしまいますが、なかでも一番人気は「キーホルダー型硬券チケットケース」。入場の際に使った硬券をそのままキーホルダーにして持ち帰られるという、思い出を形にしたようなオリジナルグッズです。
▲「キーホルダー型硬券チケットケース」(各400円・税込)
▲「小坂鉄道クリアファイル」もおすすめ(各200円・税込)

鉄道を通じて歴史を学べるだけでなく、楽しい遊びや体験もできる小坂鉄道レールパーク。まさに、子どもから大人まで楽しめる鉄道遺産のテーマパークでした。大人が昔を懐かしめるとともに、これからの世代の子どもたちに伝えていくこともできる、貴重な場所だと感じました。
▲DD130形があけぼのをけん引する光景を見られるのもここだけ
くどうたける

くどうたける

東京でウェブライターを経験し、2012年に青森へ移住。地域新聞や地域の情報を発信するお仕事をいただきながら、田舎でせっせと暮らしてます。(編集/株式会社くらしさ)

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
PAGE TOP