河口湖畔の「久保田一竹美術館」がオシャレすぎ!和と洋を融合させたアートの世界に行こう
山梨県には、数々の美術館が点在しています。中でも河口湖周辺は、観光客やアート好きの心をくすぐる美術館・博物館の宝庫です。その中でもおすすめなのが「久保田一竹(くぼたいっちく)美術館」。着物の美術館でありながら、和と洋を融合させたクールでモダンな景観が写真映えすると注目を集めています。2009年に発行された『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』でも3つ星に輝いた、この美術館の魅力をたっぷりとお届けします。

幻と呼ばれる染色の技法「辻が花」を甦らせた久保田一竹の美術館
こちらは染色工芸家・久保田一竹の作品を集めた美術館。着物の美術館でありながら、異国情緒を感じさせる建物とあって、河口湖周辺に数ある美術館・博物館の中でも異彩を放っています。

まずは久保田一竹という人物についてご紹介しましょう。1917(大正6)年に東京で生まれ、14歳で友禅職人の道へ進んだ一竹は、20歳の時、室町時代に栄えた染色の技法「辻が花」に出合いました。当時は廃れてしまっていた、その技法の魅力にとりつかれた一竹は生涯に渡り「辻が花」の技法を研究するように。その結果、60歳の時に「一竹辻が花」という技法を完成させ、日本のみならず海外でも、一竹の作品は高い評価を受けるようになりました。

その「一竹辻が花」の作品を展示しているのが、こちらの「久保田一竹美術館」です。一竹自らが構想を立て、10年の歳月をかけて1994(平成6)年に本館が完成。1997(平成9)年には新館がオープンしました。
実は筆者も何回か訪れたことのあるお気に入りの場所です。作品はもちろん、建物の美しさと迫力にも圧倒されてしまう「久保田一竹美術館」。その見どころを早速、紹介していきましょう。
独自のジャポニズム文化を感じる佇まい

一竹は作品のインスピレーションを受けるため、世界各国、特に東南アジアを頻繁に訪れては、古道具やアンティークな雑貨を買い付け収集していたそうです。この正門もコレクションのひとつ。インドの古城に使われていた数種類の扉を組み合わせて造られた木製の門で、周りを囲むように鉄製のオブシェがあしらわれています。その佇まいは、おしゃれでカッコいいという言葉では括りきれないほど独特。

正門をくぐり抜けると和の庭園が広がり、静かな雰囲気に包まれています。この庭園を散策するのも、同美術館を訪れる楽しみのひとつ。庭も一竹の構想の中では重要な要素だったそうです。大滝は人工的に作られた滝ですが、その清らかな水の音に、何とも言えない癒しを感じます。

庭園は、日本最古の禅寺「建仁寺」など数々の名勝を手掛けた京都の造園家・北山安夫氏によって、一竹の構想を具現化する形で造られたのだそう。
計算し尽くされているのに無造作に見える姿が美しく、庭も芸術作品のよう。辺り一帯に静寂が流れています。

小道を登りきったところで、新館が見えてきました。正面入り口でもある新館は、琉球石灰岩(サンゴ等の堆積岩)を積み重ねた白亜の佇まい。8本の円柱に支えられた回廊が、スペインのガウディの建築を彷彿とさせます。周囲の木々の緑に映える琉球石灰岩の白の美しさといったら!

洗練された真っ白な館の中に、どんな美しい世界が待っているのだろうと気持ちも高まります。

貴重な久保田一竹の作品をじっくりと堪能する

新館を抜け、石畳みの階段を上がっていくと本館が見えてきました。新館の雰囲気とはまた違った和の装いで、屋根は富士山をイメージして造られています。


館内は大きな1つの空間になっていて、美術館で所有している104点の着物作品の中から、年3・4回テーマを決めて入れ替えた30点あまりを展示しています。訪れた2019年5月には「四季鳴山:富士山」というテーマに合わせて、能舞台を思わせるステージ上に3点、それを囲むように25点の作品が展示されていました。

生地の一部を糸などで縛り全体を染めていく一般的な絞り染めとは違い、「一竹辻が花」の手法はとても複雑。いくつもの模様を想定して生地を縛り、色によっては何度も重ね染めをし、その後から刺繍や描き絵、ぼかしを入れていきます。
近づいて見ると、繊細で細かい描写や刺繍がところどころに施されていて、気の遠くなる作業であることが感じ取れます。その制作風景や手法について紹介した映像がステージ裏で上映されているので、じっくり鑑賞してみてはいかがですか。

ちなみに本館内は撮影禁止。今回特別に撮影させてもらっているので、間近で観たい方はぜひ現地に足を運んでみてくださいね。

樹齢1000年を超える青森県産の「ひば」の木16本を大黒柱に使い、空高く伸びていく天井。その隙間から差し込む光さえ幻想的に見え、板張りの空間は厳かな雰囲気に包まれていました。
着物の美しさと迫力に興奮させられた気持ちを鎮めるため、本館の奥にある茶房「一竹庵」へひと息つきに行きましょう。
不思議と優しさを感じる茶房「一竹庵」

内壁は、琉球石灰岩を砕いた際に出来る粉を使用した沖縄漆喰仕立て。洞窟の中にいるような雰囲気は、母親の胎内をイメージしたそうです。どうりで!と思わず納得がいくほど、ほっとできる心地良い時間が流れています。

窓の外に目を移すと、目線と同じ高さに広がる「龍門の滝」。テーブルと同じ高さに池があり、外と内が一体になっているかのような幻想的な世界になっています。さらに店内を見渡すと、900年前に使われていたアフリカのベッドがテーブル代わりに置かれていたり、インド・東南アジアの古い家具がインテリアとしてセンス良く並んでいたりします。


一竹庵では、抹茶と季節の和菓子がセットになったメニューをいただくことができます。「夏限定 抹茶と季節の和菓子セット」(1,300円・税込)には、小手鞠の花が添えられていて可愛らしく、涼しげな気分にさせてくれます。

まずは抹茶をひと口。旨みがしっかり感じられるのに苦味が少なく、香り豊かで奥深い味わい。抹茶が初めての人でも、飲みやすい味です。練り切りは、甘さを抑えた上品な味わい。抹茶とよく合い美味しくいただけました。

目の前の滝を見ながら甘味をいただくひととき…、なんて素敵な時間なんでしょう。季節を肌で感じながら、ゆるりと過ごしてみてください。
ありのままの自然を活かした美しい庭を散策



運動不足にはこたえる傾斜を5分ほど上った場所に、「慈母像窟」がありました。
一竹が亡き母を偲んでつくった慈母像が祀られている場所です。溶岩の洞窟の中に「普賢菩薩像(ふげんぼざつぞう)」と嬰児(えいじ)を抱いた「女人像」の2体が安置してあり、その周りに水が張られています。

昔この場所は「水口字(みずぐちあざ)」という地名で、名前の通り水が湧き出ていたのだとか。今でもわずかに水が湧き出ているため、その水を洞窟の方へ流しているそうです。

美術鑑賞だけではなく、自然に触れられるなんて思ってもみず、ちょっとお得な気分。2体の像の前に立つと、とても神聖な気持ちになりました。
新館のカフェでまったりティータイム

こちらでは、甘さ控えめで余計な添加物を一切使用していないティラミスとドリンク類を提供してくれます。さらにテラス席があり、天気の良い日や過ごしやすい季節は、自然の中でお茶ができるそう。ちょうど目の前に富士山が姿を現すそうですが、この日はあいにくの曇り空で見ることができませんでした。



久保田一竹の魅力を存分に知ったのなら、最後は「ミュージアムショップ」でお買い物をしないと!蜻蛉玉やオリジナルグッズをはじめ、アクセサリー、雑貨、山梨ならではのワインや富士山グッズなど、魅力的な商品が並びます。



見どころたっぷりの久保田一竹の世界、いかがでしたか。着物という日本の伝統美を後世につなげていきたいという一竹の想いが伝わってくるとともに、庭や建築なども含めたアートの魅力に触れることができました。
着物の美しさだけではなく、伝統的な日本の文化に触れられる「久保田一竹美術館」へ、ぜひ足を運んでみてください。
久保田一竹美術館
山梨県南都留郡富士河口湖町河口2255
[開館時間]4~11月9:30~17:30(入館17:00まで)、12~3月10:00~16:30(入館16:00まで)
[休館日] 火曜(祝日・第1火曜は除く)、12月26日~29日(他、不定休あり)※10・11月は無休
[入館料] 一般1,300円、大学・高校生900円、中・小学生400円 ※すべて税込
0555-76-8811

平岡宏枝
ライター。毎日を楽しく幸せに過ごせるような小さな発見をしていけたらと、 日々アンテナを張り巡らせています。 (編集/株式会社くらしさ)
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
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