壺屋焼窯元「育陶園」を入り口に、沖縄の歴史に触れる旅を

2015.10.17

“やちむん”とは沖縄の言葉で「焼き物」を意味します。沖縄の土で陶土を作り、沖縄のお米の籾殻と石灰で釉薬を調合し、伝統的な技法で、陶器とシーサーを形成する壺屋焼の窯元「育陶園(いくとうえん)」。ここを入り口に、壺屋焼を知る旅に出かけましょう。

やちむん通りでひときわ明るさを放つ、壺屋焼窯元「育陶園」

那覇市壺屋の「壺屋やちむん通り」は、スージグヮー(路地)や石畳、石垣、赤瓦の屋敷、ウガンジュ(拝所)など、昔ながらの面影を残す通りで、14の窯元をはじめ、やちむんの販売店、骨董店、飲食店が軒を連ねています。

そのなかでひときわ明るさを放つのが壺屋焼窯元「育陶園」。壺屋で6代続く窯元です。
沖縄の土で陶土を作り、沖縄のお米の籾殻と石灰で釉薬を調合し、伝統的な技法で、陶器とシーサーを形成する。言葉で書くと短いですが、どうか一つひとつの行程をイメージしてみてください。これらの伝統を守り続け、「育陶園」の器やシーサーは作られています。

“唐草線彫”(唐草は壺屋焼の伝統的な絵柄。線彫とは線で模様を描いていく技法)の器や、“現代の名工”である先代・高江洲(たかえす)育男さんから技法を受け継いだシーサーなどを置く本店の他、“楽しい朝”をテーマにした「guma guwa (グマーグワー)」、“時を味わう”がテーマの「kamany(カマニー)」という3店舗を展開しているわけを、6代目・高江洲忠さんの娘であり、統括責任者の高江洲若菜さんはこう話します。
▲本店で扱う、育陶園の定番「黒シリーズ」。カップや茶碗、お皿、ポット、酒器などが並びます
「育ってきた若手職人の感覚を活かせる場として、やちむん通りの入り口に、8畳くらいの小さなお店をオープンさせることになったのが『guma guwa』です。お客様の反応を受けて、今まで以上に若手の意識と技術力が高まりました」
▲「お気に入りのカップやプレートとともに穏やかな朝をスタートしてほしい」と願って作られている「guma guwa」の器。定番柄の菊文は太陽の恵みを表す縁起のいい文様
「『guma guwa』には、もっと多くの人に壺屋焼を気軽に手にとってほしいという思いもあったのですが、さらに『kamany』をオープンする時にはコンセプトとターゲットを分けて、それぞれ違う壺屋焼を表現しようとなり、明確な店作りができるようになりました」
▲「kamany」の器は、仕事や家事の合間、一日の終わりにリラックスする時間などに“暮らしの相棒”となるように、という思いで作られています
「育陶園」のよさがにじみ出るのは、週に1回、底抜けに明るい女将の啓子さんがつくるお昼ごはんを工房全員で食べる日。
旅行で来られた方がその光景に出合えるわけではありませんが、器を選ぶ時、工房見学をする時、作陶体験する時には、育陶園の「人」と会話を交わしてみてください。

体験工房では面シーサーや立シーサー、皿シーサーを約1時間で作ることができるほか、ろくろによる作陶も楽しむことができます。また、やちむんの工房を見学できるところは多くないなか、育陶園では本店で声をかけると工房に案内してもらえます。
▲沖縄の土を踏み、陶土を作っているところ
▲ろくろで成形した器
▲壺屋やちむん通りから脇に入った小道に、陶芸体験ができる赤瓦屋根の体験工房があります

全国には歴史のなかで消えてしまった窯場があるなか、壺屋焼が残ったわけは?

壺屋が窯場になった歴史は、1682年にさかのぼります。当時、製陶で産業振興を推し進めようとした琉球王府の政策のもと、涌田(わくた)、知花(ちばな)、宝口(たからぐち)という3つの地域にあった窯が牧志村の南(現在の壺屋)に統合され、330年以上続く壺屋焼の歴史のはじまりとなりました。
相当駆け足の解説になりますが、統合されるまではというと、琉球王国では中国や東南アジア、朝鮮などさまざまな国のやちむんを使っていました。1609年、薩摩が琉球に攻め入った「薩摩侵攻」を機に自国でやちむんをつくりはじめた王府は、朝鮮・中国・薩摩の技術を導入し、窯を壺屋に統合。

1872年、日本政府が軍事的圧力で琉球王国を解体した「琉球処分」後は、 本土で大量生産された磁器が流入します。大正から昭和にかけて、日常の生活道具の中にこそ健全な美があると唱えた民藝運動家が壺屋を訪れたことで息を吹き返すも、「太平洋戦争」の戦火が沖縄を襲います…。

それでもやちむん文化が残ったのはなぜでしょうか。

沖縄は資源に乏しく、台風や干ばつなど自然災害に襲われやすい土地。生き抜くためには、あらゆる面においてたくまさしさやおおらかさが必要でした。陶工たちもまた然り。どの地点においても、彼らは逆境に屈せず、情熱を持ち続けたのです。

壺屋を知ることは、沖縄の歴史に触れること。旅が味わい深いものになるでしょう。
アイデアにんべん

アイデアにんべん

沖縄・読谷村を拠点に、パンフレットやリーフレット、パッケージなどの企画制作を承る事務所。ものごとの本質をよく見て、何を「伝える」のか、どうすれば「伝わる」のかを、人との関係性の中でともに考えていきます。(編集/株式会社くらしさ)

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