日本三大そうめんのひとつ「揖保乃糸」の本場で、そうめんの魅力を学び味わう

2019.08.09 更新

兵庫県南西部の播州(ばんしゅう)地方にある揖保川(いぼがわ)流域は、日本三大そうめんのひとつ「播州そうめん」の生産地。なかでも「揖保乃糸(いぼのいと)」は全国的に親しまれている手延べそうめんのトップブランドです。その歴史や製法を学べて、そうめんグルメまで楽しめるのが兵庫県たつの市にある「揖保乃糸資料館 そうめんの里」。今回はこの施設に足を運び、揖保乃糸の魅力を探ってきました!

▲約50年前まで実際に行われていた、小分け作業の実演を見学・体験できます

揖保乃糸のふるさとにある「揖保乃糸資料館 そうめんの里」

播州そうめんは、奈良県の「三輪そうめん」や香川県の「小豆島そうめん」と並ぶ日本三大そうめんのひとつ。熟練職人の手によって麺に縒(よ)りをかけて延ばす作業と、ねかし(熟成)を繰り返すことで生まれる人気の特産品です。「揖保乃糸」という名でも知られ、CMなどで知名度も抜群。お中元やお歳暮などの贈答品として、口にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

そんな揖保乃糸にまつわる施設が「揖保乃糸 資料館 そうめんの里」(以下、そうめんの里)です。JR姫路駅から姫新(きしん)線に乗り25分ほど。最寄駅の東觜崎(ひがしはしさき)駅から歩いて15分ほどでアクセスできます。
▲「そうめんの里」。道路に面した建物が資料館です。奥には、出荷前のそうめんを熟成・保管するための倉庫が立ち並んでいます

建物は4階建てで、見学できるのは1階と2階。1階にはそうめんを延ばす「小分け作業」を見学・体験できる実演コーナーや、そうめんをはじめとした地元の特産品を販売する売店、そうめんをメインにしたメニューを味わえるレストランがあります。2階は有料ですが、そうめんの歴史や製造工程などを充実した展示によって学べるフロアになっています。

そうめんは遣唐使船に乗ってやってきた!「揖保乃糸」の歴史を学ぼう

そもそもそうめんはいつから食べられているのでしょうか。播州そうめんのことを学ぶために、まずは1階にある受付で入館料を払い、2階へ上がってみましょう(大人300円、中・高校生200円、小人100円 ※すべて税込)。
▲開放的な雰囲気の展示室。パネルを用いた紹介や、等身大の人形を用いた展示など、楽しんで学べる工夫がいっぱい
▲「そうめん文化史ゾーン」や「そうめんができるまでゾーン」など、展示のテーマごとにゾーン分けされています

まずは「そうめん文化史ゾーン」から。そうめんの原型は今から約1400年前、遣唐使船によって中国から日本に伝来しました。しかし当時は今のような麺状のものではなく、小麦粉と米粉を水で練って延ばした生地を、形を整え乾燥させた「索餅(さくべい)」と呼ばれる「唐菓子(からがし)」の一種だったそう。
▲さまざまな形の唐菓子。中央にある縄状のものが索餅(レプリカ)で、そうめんの原型といわれています。今のそうめんとは似ても似つかない形ですね
▲索餅は宮中の特別なごちそうで、庶民の口にはなかなか入らなかったそう

年月を経て、たつの市に隣接する揖保郡太子(たいし)町にある斑鳩(いかるが)寺で「サウメン」と書かれた古文書が発見されます。今から約600年前の1418(応永25)年、室町時代に書かれたもので、そこには当時から播州地方でそうめんが食べられていたことが記されています。この頃には形状も今のような麺状になっていたそう。しかも、当時使用されていた道具も今とほぼ同じだったというから、驚きです。
▲索餅からサウメンに変化した詳しい経緯は、はっきりわかっていません。「もしタイムマシンがあれば、見にいきたい」とは、案内してくれた同館支配人の齋明寺(さいみょうじ)さん

播州地方で本格的にそうめん作りが始まったのは、江戸時代にこの地方を治めていた龍野藩がそうめん作りを奨励したことによると考えられています。
しかし生産者が増え、生産量が増えるにつれて質の悪いそうめんで信用を落とす人が現れるようになりました。そこで生産者たちは、自分たちで品質を守るための取り決めを交わします。

そして1887(明治20)年に「兵庫県手延素麺協同組合」の前身となる「播磨国揖東西両郡素麺営業組合」を設立。さらに組合員となっている企業が製造する手延べそうめんの統一商標として、1894(明治27)年に「揖保乃糸」が誕生しました。
▲明治時代のそうめん作りの工程が、イラストでわかりやすく解説されています

「そうめん文化史ゾーン」と隣り合う「そうめんができるまでゾーン」では、明治時代のそうめん作りの様子をパネルで、また大正末期~昭和初期頃のそうめん作りの様子を等身大の人形で再現。うどんやそばは平たく延ばした生地を切って麺にするのに対し、手延べそうめんは生地に何度も縒りをかけながら延ばしてはねかし(熟成)を繰り返し、麺を細めていきます。その工程がよくわかります。
▲大正末期~昭和初期頃のそうめん作りの様子。小均(こなし)機で、麺を直径6mmまで細くします

「播州の風土とそうめんゾーン」では、揖保乃糸を育んだ播州地方の風土をパネルと映像で紹介。なぜ播州地方が手延べそうめんの生産に適していたのかがわかります。
▲冬に雨の少ない気候、それによって実る豊かな小麦、近くの赤穂で採れる良質な塩、揖保川の豊かな水という条件がそろって、播州そうめんが生まれました

ちなみに「揖保乃糸」という名前は、揖保川に由来しているそう。揖保川は、そうめん作りに欠かせない小麦の粉を挽く水車の原動力として、またそうめんを港に運ぶルートとしても利用されました。今も揖保川は、母なる川と呼ばれ親しまれています。
▲「そうめん学習ゾーン」には、そうめんの歴史や製造について楽しみながら学べるクイズコーナーが
▲「そうめんシアターゾーン」では、「そうめんやっぱり揖保乃糸♪」でおなじみの歴代のCM映像や、製造工程などを紹介した映像コンテンツを楽しめます
▲「そうめんアラカルトゾーン」では、実際に使われていた道具類が展示されているほか、この地方のそうめんにまつわる文化も紹介されています

こうしてテーマごとにゾーン分けされた展示によって、そうめんについて詳しく学ぶことができました。
身近な食べ物なのによく知らなかったそうめんの歴史や製法。齋明寺さんは、「そうめん作りは天候や温度、湿度の違いによって変化する生地の具合に注意を払いながら行うもの。その中で今も昔も大事なのは、研ぎ澄まされた五感と経験」と言います。それを聞いて、もっと大事にそうめんをいただこうと思いました。

そうめんづくりを体験しよう

さまざまな工程を経て完成するそうめんですが、そうめんをさばくと同時に延ばす「小分け」作業を体験できるのが1階の実演コーナーです。職人さんによる小分け作業の実演を1日5回行っており、各回の実演の後、見学者の中から希望者2名に無料で同様の作業を体験をさせてくれます。
▲これから実演していただく職人さん

職人さんが持っているのは、延ばす前の生地です。長さ50cmほどの麺を、これから約3倍の160cmにまで細く長く延ばしていきます。

麺同士がくっつかないよう2本のハシでさばいていきます。麺が乾くとうまく延びなくなるので手早さが要求されます。
▲迷いのない素早い動作に見とれていると、「見学者が見やすいよう、実際よりも少しゆっくり作業を行っています」との案内

これでも十分手早いと感心していたのに、実際はもっと早いと聞いてびっくり。見ていて気持ち良いほどテンポよく麺がさばかれていく様子は、さすが熟練の技です。
▲160cmほどの長さまで延ばして終了です(写真提供:揖保乃糸 資料館 そうめんの里)

さあ、筆者も挑戦してみます。まずは手前の方向にぐいっぐいっと引っ張っていきます。思ったより弾力が強くて、思うように延びてくれません。
▲麺が切れないかと、手つきもこわごわ。「もっとぐっと引っ張ってくださいね」という係の人に促され、えいっと引っ張ります

今度は2本のハシを使って、延びたそうめんを縦方向にさばきます。「ハシは、ここの間に通してくださいね」と指導があるので安心です。
▲「麺の束の向こう側にハシが出るまで、ぐっと通してくださいね」と、ポイントもアドバイスしてくれます

さばき終えると係の人が、麺をかけた上の方の棒を穴から外し、ぐいっと平行に右へずらして別の穴にかけ直しました。すると麺が斜めにピンと延びます。「さあ、今度は上下の麺の間にハシを入れて、上に向かってもう1度よくさばいてくださいね」。
▲麺が長くなった上に、左右にさばいていたハシを斜め方向にさばくことになるので、やりにくく感じます。腕も疲れてきたけどあとちょっと!頑張ります
▲2~3本切ってしまいましたが、なんとか延ばし終え、10分ほどの体験終了!かなり細くなったのがお分かりでしょうか

本来の工程では、この後も微妙なばらつきがある細さを均等に整え、乾燥させる作業を繰り返します。なお、実演コーナーで使われるそうめんは実演用に作られたもので、食用ではないので安心してくださいね。

スッスッとリズミカルに作業されていた職人さんを見て、自分も同じようにやれると思ったら大間違いでした。熟練技の巧みさを実感した、楽しい実演コーナーでした!

さて、実演体験を楽しんだらお腹が空いてきました。同じ1階には無料のそうめん試食コーナーがあります。
▲そうめん試食コーナー。一口サイズの揖保乃糸のそうめんを無料で味わえます

「レストラン庵」でそうめんを味わう

試食もいいですが、やはり本格的なそうめん料理も味わいたい!1階にある「レストラン庵(いおり)」で、おすすめメニューをいただきましょう。こちらでは、そうめんをメインにした豊富なメニューを楽しめます。
▲テーブルと座敷あわせて約150席ある店内。資料館の外からも入店できます

一番のおすすめは「鯛そうめん」(1,280円・税込)。海の波に見立てたそうめんの上に鯛を丸ごとのせる、この地方に伝わる郷土料理をアレンジした一品です。
▲温かいにゅうめんと鯛のかぶと煮、白ご飯がセットになっています
▲店の人に食べ方を伺うと、「それぞれ別に召し上がっていただいても良いし、甘辛く煮付けた鯛の身をにゅうめんに入れてもおいしいですよ。自由に召し上がってください」とのこと

鯛の頭の半身が、丸ごとのったお皿に圧倒されます。お頭なのに身がしっかりついていて、白身魚ならではの淡白な味ながら甘辛い味付けに負けていません。その後はにゅうめんを一口。麺の繊細な食感と穏やかな出汁の味が、舌に沁みます。
▲一見普通の巻き寿司に見えますが、近づいてよく見てみましょう

ここならではの一品もありました。それが「そうめん巻寿司」(430円・税込)。なんと寿司飯の代わりに、そうめんを使った巻き寿司です。
▲きれいに整ったそうめんの断面が、まるで芸術作品のよう!

作り方を伺うと、束にしたそうめんの一方を縛ったまま茹で、しっかり三杯酢に付けた後で水気を絞ってからほどき、他の具材と一緒にのりで巻いていくのだそう。口の中でそうめんのほどける食感がなんとも不思議な、変わり種の巻き寿司です。

さらに女性に人気のメニュー、「豚しゃぶサラダそうめん」(870円・税込)もいただきました。シャキシャキの葉野菜にジューシーで冷んやりしたトマトの角切り。さらにつるんとしたそうめんを一緒に口に入れると、食感の違いが楽しい!
▲ゆずの風味豊かな「金ごまポン酢」をたっぷりかけていただきます

他にも、すだちそうめんやそうめんチャンプル、ざるそうめんなどの単品から豪華なセットまで、そうめんをおいしく味わえる工夫を凝らしたメニューが盛りだくさん。一皿の量が多めでお腹いっぱい!大満足でした。

冷たい流水で、歯ごたえも喉ごしもスッキリな「そうめん流し」

「レストラン庵」では、中庭を利用した期間限定の「そうめん流し」も開催しています。4卓24名が利用でき、2019年の開催期間は9月29日(日)まで(予定、延長の可能性あり)。休館日の月曜以外、毎日営業しています。そうめんは一人前540円(税込)です。
▲一人前ずつ盛られたそうめんの入った桶を真ん中に。冷水に流したそうめんを、つゆと薬味でいただきます。あゆの練り物が涼やか(写真は3人前です)

外のおいしい空気の中でいただくそうめん流しは、さらにつるつるっと喉ごしも良い!いくらでも食べられます。
▲流水に乗って回るそうめんを箸ですくい上げていただきます

また、9月1日(日)までは、敷地内にある屋外駐車場を利用した「屋外そうめん流し」も実施しています。暑い夏に、流水にそうめんを流しながらいただく屋外そうめん流しを楽しんで、友人や家族と涼しく過ごすのもいいですね。

産地ならではのお土産をゲットしよう

最後に、各種そうめんが勢ぞろいする売店で、ぜひお土産も買いましょう。
売店は1階に2店舗あります。今回はそうめんをメインに置いているお店から、おすすめの2品をご紹介しましょう。
▲揖保乃糸の産地ならではの、他では見られない品々も豊富にそろっています

おすすめの1品目は、その名もずばり「そうめんバチ」(240円・税込)。そうめんバチとは、そうめんを延ばす際に両端の棒に当たった部分の麺のことで、まるで三味線のバチのように平たくなっていることから付いた名前です。まさに産地ならではの商品ですね。
▲採れる量が少ないためレアなことに加え、調理がしやすいので隠れた人気商品。お味噌汁などに入れていただく人が多いそう

揖保乃糸は、小麦粉の質や原材料、麺の細さ、製造時期などの違いによっていくつかの等級があり、その等級ごとにそうめんを束ねる帯の色を変えています。中でも黒帯は特級品。組合から選ばれた熟練の製造者が12~2月の短期間にしか作らない、上質な小麦を使った本当に特別なそうめんです。化粧箱に詰め替えられ贈答用に使われることが多いのですが、ここでは化粧箱入りだけでなく、そうめんの里オリジナルの紙箱(10束入)に入ったタイプも1箱1,390円(税込)で販売しています。
▲数多くの種類の上質なそうめんを購入できるのも、産地ならでは

この他にも同店には、通常のそうめんよりやや太い「手延べひやむぎ」や「手延べうどん」、「手延べ中華麺」など、量販店に並ぶものからなかなかお目にかかれないものまで、多種多様な揖保乃糸の商品が並びます。どれにしようか迷ってしまいますね。

奥深いそうめんの歴史や長年伝えられてきた製法を伝える、「揖保乃糸資料館 そうめんの里」。実演コーナーでの小分け作業体験で、そうめん作りの大変さも体感できました。これからも、さらにおいしくそうめんをいただけそうです。皆さんも、ぜひ揖保乃糸の本場で、その魅力を学び、体験し、味わってみてください。
國松珠実

國松珠実

大阪エリアの女性ライターズオフィス「おふぃす・ともとも」所属。人と話すのが好きで店舗や企業取材を得意とする。また旅行好きが高じて世界遺産検定1級を持っている。 編集/株式会社くらしさ

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