「銀座木村家」は、もっちり元祖あんぱんからパン食べ放題まで楽しめる、パン好きの天国だった!

2019.07.26 更新

東京都中央区、銀座駅すぐの「銀座木村家」は、140年以上にわたって銀座の一等地に店を構える、老舗中の老舗のパン屋さんです。8階建てのビルにはパンの製造工場、ベーカリーショップ、カフェやレストランが併設されており、焼きたてのパンを楽しむことができます。名物は何といっても元祖「あんぱん」!今回は、銀座木村家が守り続けるパン作りへのこだわりと、ベーカリーショップ、カフェ、レストランそれぞれの魅力を、たっぷりご紹介します。

創業150年余の歴史を誇る老舗の「パン屋」

東京メトロ各線・銀座駅のA9番出口から階段を上がってすぐのところに、銀座木村家のビルがあります。白地に大きく赤字で書かれた「キムラヤのパン」の看板が目印です。
▲銀座木村家の外観。左隣には老舗宝飾店の「銀座・和光」、向かいには「銀座三越」がある
▲2階にとりつけられた看板。見慣れた「キムラヤのパン」の文字がある

銀座木村家がこの場所に店を構えたのは、明治7(1874)年のことです。
銀座木村家の前身である「文英堂」は、明治2(1869)年に芝・日陰町(現在の新橋駅付近)で開業しました。しかし、翌年火災に見舞われ、京橋区尾張町(現在の「GINZA PLACE」付近)に移転。屋号を「木村家」に改めます。

ところが明治5(1872)年、銀座大火によって再び店舗が焼失しました。創業者である木村安兵衛は、次男の英三郎と力を合わせてこの困難を乗りこえ、明治7(1874)年に「銀座木村家」を再建します。
▲大きい入口からは、店内の様子がよく見える。親しみやすい雰囲気が魅力的

同年に誕生したのが、名物となる「酒種(さかだね)あんぱん」です。しっとりとした生地であんこを包んだこのパンはあっという間に評判になり、翌年には明治天皇に献上されました。天皇皇后両陛下からお褒めの言葉を受け、「木村家のあんぱん」の評判はいっそう高まりました。
▲1階のベーカリーショップの1番人気は、今も酒種を使ったあんぱん。定番商品から季節の限定商品まで、常時10種類前後が販売されている

実は、現在の「キムラヤ」には2つのブランドがあります。1つはここ、「銀座木村家」。店内で製造したパンを販売する唯一の店舗であり、ブランドです。もう1つは「木村屋總本店」(株式会社木村屋總本店)。関東に25店舗(2019年7月時点)ある直営店でパンの販売を行うほか、コンビニやスーパー向けに製品を製造、販売しています。保存や流通の関係で、両者のパンのレシピは異なるんだそう。

手軽に味わえるのは「木村屋總本店」のパンですが、パン好きならぜひ「銀座木村家」に出かけたいところ。どこよりも焼きたてに近いパンを味わえます!
▲焼きたてで、湯気が立ちそうなほどほっかほかのあんぱん

筆者が訪れた日はあいにくの雨模様でしたが、1階のベーカリーショップは午前10時の開店直後からお客さんの姿で賑わっていました。みなさんのお目当ては、焼きたてのあんぱん。木のトレーに並んだ各種あんぱんが、飛ぶように売れていきます。
このあんぱんは、ビルの7階で製造されているもの。パンの製造工場は7・8階にあり、4階はフレンチビストロ、3階が洋食グリル、2階はカフェになっています。

工場の中は一般公開されていませんが、今回は特別に見学させていただけることになりました。白衣とヘッドキャップ、マスクを身につけて、いざ!

創業以来変わらない、伝統とこだわりの「酒種あんぱん」

7・8階にある工場では、朝6時から夕方ごろまで絶えずパンを製造しています。あんぱんは7階の工場で作られており、開店前に700~800個ほどは用意するのだそう。1日の製造数は、平日で約5,000個、週末では10,000個にものぼります。想像以上の個数に、改めて「木村家のあんぱん」の人気を実感しました。
▲常時10人ほどの職人が、ほぼ手作業でパンを製造している

それほどの個数にもかかわらず、あんぱんの製造はほぼ手作業で行われます。「あんこを包むのは、機械じゃできないんですよ」と語るのは、製造課課長の水谷健司さん。
▲ものすごいスピードであんこを包みつつ、質問に答えてくれた水谷さん

「パン作りには、温度や湿度、時間、重量の管理が大切です。季節や天気によって、材料や生地の状態は変わってしまう。その変化に合わせて、工場内の温度や湿度を毎日調整しています」

人間にとっては暑いくらいの環境が、パン作りにはベストとのこと。確かに、工場内の気温は高めで、汗がにじむほどでした。木村家のあんぱんはイースト菌ではなく酒種(日本酒の酵母)を使っているため、特にしっかりした温度管理が必要なのだそうです。

「酒種は米、麹、水からできています。天然酵母の一種なので、イースト菌よりも管理が難しく、コツと経験が必要です。しかも、仕込みからパンの出来上がりまで約11日もかかります。その分、風味がよく、しっとりとした日本人好みのパンを作ることができるんです。製造方法自体は、創業当時からほとんど変えていないんですよ」(水谷さん)
▲生地の微妙な違いを感じ取るため、作業は素手で行われる

「手袋をつけていると、生地の繊細な変化がわかりません。だから、衛生管理を徹底した上で、素手で作業をしています。触って、確かめる。当たり前のことですが、その当たり前のことをていねいにやっていくのが、木村家のポリシーです」(水谷さん)

そのこだわりは、ほかの材料にもしっかり表れています。小麦粉は酒種あんぱんのために配合した、オリジナルブレンドのものを使用。小豆は北海道の十勝産のものを厳選しています。いずれも、創業当時からほとんど変わらない伝統のレシピです。
▲「木村家のあんぱん」のシンボル、桜の塩漬けも140年以上変わらない一品
▲焼き上がった「桜あんぱん」(170円)

焼き上がったパンが窯から出された途端、思わず「うわあ!」と声を上げてしまいました。ぱっと広がった酒種の甘くふくよかな匂いを、香ばしい小麦の香りが追いかけます。現れたのは、優しく光るまあるいあんぱん!すぐに鉄板から木製のトレーに移され、店頭用にきれいに並べられます。
▲1つのトレーに、およそ100個のあんぱんが並んでいる

「焼きたてのパンは水分を多く含んでいるので、プラスチックなどのトレーに並べると表面に水滴がついてしまうんです。木製のトレーは、ちょうどよく水分を吸ってくれる。管理に手間はかかりますが、できるだけ美味しい状態でお客さまに提供したいので、昔からこのトレーを使っています」(水谷さん)

焼きたてをすぐに提供する、銀座木村家ならではのこだわりですね。それにしても、本当に美味しそう!

「食べてみますか?」

いいんですか!?と、即座に飛びつき、窯から出したばかりの正真正銘焼きたてのあんぱんを頂きました。当然、ものすごくアツアツです。しかし、冷めるのを待てないほどいい匂いがします。我慢できずに、2つに割ってみると……。
▲生地が餅のように伸びているのでは?と思うほどやわらかい
▲ふかふかというより、ものすごくしっとりした生地

割るのに苦労するほど、生地がしっとり、もっちりとしています。日頃食べている一般的なパンとは、まったく違う触感です。ドキドキしながら口に運ぶと、まず口いっぱいに酒種と小豆の芳醇な匂いが広がりました。あとから、じわっと生地の甘み、バターのコクが舌に染みます。追いかけてやってきたのが、こっくりと強いあんこの甘み。熱々のせいか、よりはっきりした甘さを感じます。普通のあんぱんとは、食感、味のバランスともに別物です。これ、ものすごく美味しい!

「冷めるともう少しパンが締まって、味がまとまります。この風味は、焼きたてでないと味わえないですね」(水谷さん)

木製のトレーに並べられたパンは、すぐに1階のベーカリーショップへ運ばれます。運よくほかほかの焼きたてに出合えたら、ぜひすぐに購入して食べてみてください。ちょっと感動する味わいですよ!

ティータイムを楽しむなら2階の「喫茶」で!

7・8階で製造されたパンは、2~4階にあるカフェやレストランでも提供されています。なかでも気軽にティータイムを楽しめるのが、2階の「喫茶」。サンドイッチなどの軽食に加え、パフェやパイなどのスイーツ、アルコールを含めた各種ドリンクが提供されています。
▲店内はモダンでおしゃれな雰囲気

さっそく、名物のあんぱんをドリンク付きでいただける「あんぱんセット」(1,050円)をオーダーしました。定番の「小倉あんぱん」と「桜あんぱん」に、お好きなドリンクを選んで注文できます。小腹が空いたときや、ちょっと休憩したいときにもぴったりのメニューです。
▲左が「小倉あんぱん」、右が「桜あんぱん」。コーヒーは1杯ずつドリップしたものを提供している

7階で焼き上げられたばかりのあんぱんは、まだふんわりとあたたかく、もっちりとやわらか。一口食べてみると、焼き立てのものよりもパンの味がしっかりとしていて、あんこの甘さとのバランスが絶妙です。コーヒーのすっきりした苦みともベストマッチ!あっという間に2個ともいただいてしまいました……。

しかし喫茶には、実は「あんぱんセット」以上の人気のメニューがあるのだそう。これは絶対に食べてみなければ!ということで、不動の人気ナンバーワン「エビカツサンド」(1,200円)もオーダーしてみました!
▲大きなエビカツを丸ごと1つ挟んだボリューミーな一品

ぶ、ぶ厚い!というのが第一印象。薄めの衣に包まれて、ぷりぷりの小エビがこれでもかと詰めこまれています。6つに切り分けられているので、見た目よりも食べやすいのがうれしいですね。

ずっしりとした重さにわくわくしながらかぶりつくと、小エビの歯ごたえに驚かされました。エビらしい甘味とうまみ、弾力を、カツの香ばしい衣がしっかり包み込んでいます。軽くトーストされたパンも、カツに負けない香ばしさです。ほんのり甘い生地に染みたオーロラソースのコクと酸味が後を引いて、ついつい2切れ、3切れと手が伸びます。かなりボリュームがありますが、ぺろりと食べてしまいそう……。
▲ここでしか味わえない「あんこパイ」は20年以上にわたるロングセラー

また、パイを提供しているのは2~4階でもこちらの喫茶のみ。とくに「あんこパイ」(950円)は1階のベーカリーショップでも販売していない、ここだけのメニューです。甘いものが好きな方は、ぜひ一度オーダーしてみてください。

パン食べ放題がうれしい!3階「洋食グリル」

3階にある「洋食グリル」は、パンの食べ放題で人気のレストランです。店内は少しレトロな雰囲気で、明るいカラーの内装が印象的です。2~4階で1番人気なのが、こちらのお店のランチなのだそう。
▲女性1人でも入りやすい、清潔感のある店内

パンの食べ放題はすべてのフードメニューについているので、料理を注文すると、自動的にパンが食べ放題になります。カゴを抱えた店員さんに声をかけ、好きなパンをお皿に乗せてもらいましょう。
▲パンの食べ放題の時間は無制限。心ゆくまでおいしいパンを味わえる

パンは、常時7~10種類ほど用意されています。上の工場で焼き上がったものが順に運ばれてくるので、時間によってパンの種類も入れ替わるそうです。焼きたてのタイミングに当たるとラッキーですね!
▲左上から時計回りに、コーンパン、ほうれん草のパン、シンプルパン、くるみとチーズのパン、レーズンとオレンジピールのパン、ロールパン、キャロットブレッド

ちなみに、1番人気はキャロットブレッド。野菜嫌いのお子さんのために開発されたパンですが、老若男女を問わず愛されているそうです。全種類のパンを制覇するもよし、好きなものを何度もおかわりするもよし。自由に食べ方を選べるのが、食べ放題の嬉しいところです。

さて、パンだけではなく、洋食の味にも定評がある「洋食グリル」。オムライスやハンバーグなど、子供から大人まで愛されるスタンダードな定番メニューが並びます。なかでも人気なのが、「ビーフシチュー」(2,000円)です。
▲熱々の状態で運ばれてくる。食欲をそそる匂いが香り立つ

一目見ただけでわかるほど、ごろっとした牛肉がたっぷりのシチューです。香りは少しスパイシーで、お肉の旨みをぎゅっと詰めこんだ濃厚な味わい。そのまま食べても美味しいのはもちろん、トッピングの野菜と絡めても、パンをひたしても絶品!人気の理由がよくわかります。
▲こちらも洋食の定番、カニクリームコロッケ(写真提供:銀座木村家)

ほかにも、2色のソースで味わう「ズワイ蟹のカニクリームコロッケ」(1,800円)なども人気のメニュー。ファミリーや友人同士の来店も多く、気軽な雰囲気なので、つい何度もリピートしたくなるレストランです。

優雅な時間を堪能できる、4階「Arbre village」

4階は、うってかわって高級感あふれるシックな佇まい。本格的なフレンチを手ごろな価格で味わえるフレンチビストロ、「Arbre village(アーブルヴィラージュ)」です。ランチタイムが人気ですが、ディナータイムは会社の歓迎会や同窓会など、貸し切りパーティーでの利用も多いのだとか。名店「マキシム・ド・パリ」で腕を振るった名シェフが料理長を務めます。
▲奥の壁を飾るのは、「幕末の三舟」山岡鉄舟の筆を複製したもの。本物は関東大震災で焼失している

こちらのお店も、各メニューにパンの食べ放題がセットになっています。1番人気のランチプレートは、さらにデザートとコーヒーがついて2,500円。かなりお得に本格フレンチを味わえるメニューです。
▲ランチプレート(2,500円)。肉と魚の2種から選ぶことができる

迷いに迷って、お肉のプレートをオーダーしました。現れたプレートは、とっても華やか!前菜、サラダ、メインディッシュを1皿で味わえるだけあって彩りも鮮やか、目にも楽しい一品です。
▲絶妙な焼き加減が美しい

お肉は、ナイフを滑らせただけですっと切れてしまうほどのやわらかさ。うっすらとピンクがかった色合いは、溜息が出るほど美味しそうです。口に入れると、しっかりした肉の旨みが舌の上にじゅわっと広がります。飲み込むのがもったいないほど、濃厚な味わいです。口の中が幸せ……。
▲パンの種類は3階の「洋食グリル」とほぼ同じ。最初は4種類、その後、カゴが空になると2種類ずつパンが追加される

食べ放題のパンとともに、たっぷりと贅沢な時間を味わいました。ちなみに、ディナーコースは3,800円から、パーティープランは3,500円からと、かなりリーズナブルな価格で提供されています。銀座の街並みを眺めながら優雅な時間を過ごすには、もってこいの名店です。
▲コースのメイン料理は、常時10種類ほどから好きなものを選べる(写真提供:銀座木村家)
▲パーティープランは3名以上から予約できる。大人数での宴席はもちろん、家族の記念日などにもぴったり(写真提供:銀座木村家)

おいしいパンと笑顔があふれる、パン好きのためのショッピングスポット

▲入口すぐのところで、名物のあんぱんが販売されている

お腹がいっぱいになったところで、銀座木村家の顔ともいえる1階のベーカリーショップへ。常時120種以上のパンが並ぶ店内は、まさにパン好きのためのテーマパーク。暖簾(のれん)の下には7階から直接運ばれたあんぱん各種が並び、その左隣のショーケースには、8階で製造されたペストリーやお惣菜パンがずらりと並びます。
▲定番の「小倉あんぱん」や「桜あんぱん」から、季節限定の特別なあんぱんまでぎっしり
▲スコーンやキッシュなど、パン以外の商品も充実
▲フランスパンは希望のサイズに合わせて量り売りもしてくれる
▲クッキーやパイなど、手土産にぴったりのお菓子も上の工場で製造している
▲あんぱんの次に人気だという「あんバター」(250円)は、あんこの甘みとバターの塩気が絶妙な一品

圧倒されるほどさまざまな商品が並ぶ店内ですが、何よりも一番印象的だったのは、スタッフのみなさんの笑顔でした。明るいあいさつが店内を飛び交い、活気に満ちあふれています。商品を渡すときも、「ありがとうございます」の言葉とともに、常に笑顔が添えられています。
▲笑顔の秘訣をたずねると「木村家愛ですよ!」
▲ドアを開けたり、商品のある場所まで案内したり、きめ細かなサポートが行き届いている

お客さんがやってくるたび、さっとドアを開けて「いらっしゃいませ!」と明るく声をかけるスタッフさんがいます。こういった光景は、普通のパン屋さんではあまり見かけないもの。一人一人のお客さんを大切にする、銀座木村家のていねいな心遣いと、心意気を垣間見ました。
▲隠れた人気グッズ「木村家ストラップ」(540円)
▲なんと、あんぱんを2つに割ることができる。かわいい!

お店を後にして、右手に持ったショッパーの重さについ笑ってしまいました。こんなに気持ちよくショッピングしたのは、いつぶりだろう……。しかも、味は折り紙付き。美味しいものをたくさん食べてすっかり満足しているはずなのに、早く家に帰って、お土産を開けたくてたまりません。「銀座木村家」は、まさにパン好きのための天国でした!
※記事内の料金・価格はすべて税込です

撮影:庄司 直人
高橋星羽

高橋星羽

編集者、ライター。出版・編集プロダクションデコ所属。書籍、雑誌、Webの編集やライティングを担当。医療健康マガジン『からころ』や『日本鉄道事始め』(NHK出版)などの編集を手掛ける。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

こちらもおすすめ

もっと見る
PAGE TOP