焼き鳥なのに豚肉!?日本七大焼き鳥としても有名な「室蘭やきとり」の極意を探る

2019.07.10 更新

北海道室蘭市の名物グルメ「室蘭やきとり」は、“焼き鳥”と名乗りながらもなんと、鶏肉ではなく豚肉を使用するのが定番!豚肉とタマネギの串焼きをタレで、洋ガラシにつけて食べるのが室蘭流なんです。その個性的な焼き鳥は日本七大焼き鳥のひとつとして名を馳せるほど。そんな独自の焼き鳥文化を体感すべく、市内の人気店「やきとりの一平」と「吉田屋」へ行ってみましょう!

▲「室蘭やきとり」にピッタリな一品料理もあわせて紹介!

「室蘭やきとり」のルーツ、なぜ豚肉?

まずは「室蘭やきとり」のルーツを紹介。1933(昭和8)年頃、製鉄の街として栄えた室蘭市で労働者向けの屋台として提供されたのがはじまりです。
▲製鉄の街として栄えた室蘭市は近年、工場夜景が美しいことで有名

当時、食糧増産と軍靴用の皮を生産するため養豚が奨励され、屋台などで豚のモツが売られるようになりました。また、スズメなどの野鳥も串焼きにして提供していたことから、これらを総称して豚肉も野鳥などの肉も「焼き鳥」と呼ばれるようになったそうです。
▲豚肉と豚肉の間は長ネギではなくタマネギ。北海道はタマネギの量産地で、長ネギより安く手に入るためです

現在では室蘭市内をはじめ、伊達市や函館市など道南地方で“焼き鳥”といえば豚肉+タマネギの串焼きが一般的。ただ、紛らわしいので豚肉の串焼きは「豚精(ぶたせい)」や「豚精肉」、鶏肉の串焼きは「鶏精(とりせい)」や「鶏精肉」とメニュー表に書いてあることが多いです。

レバーなど精肉以外の串焼きも基本は豚肉ですが、鶏肉も用意している店が多いです。ただ、タマネギは精肉以外の串焼きではそれほど使用されることがありません。
▲洋ガラシのルーツは、おでんの洋ガラシに倣ったとかトンカツの洋ガラシを真似たとか諸説あります

タレはお店ごとに異なる独自の味。各店に長らく伝わる秘伝の味を食べ比べするのも一興ですよ。
今回は、そんな室蘭やきとりの人気老舗店を2軒紹介します。

行列のできる人気店「やきとりの一平 本店」

1軒目は、JR東室蘭駅から歩いて10分ほどの繁華街の中にある「やきとりの一平 本店」。1950(昭和25)年創業の老舗で、市内をはじめ登別市などにも支店やグループ店舗がある人気店です。
▲蔵を模した建物が目を引く本店の店舗
▲平日でも入店待ちの行列ができるほどの人気店です
▲カウンター席の目の前で焼いてくれます
▲カウンター席のほかテーブル席、小あがりなどなど全140席あります

店長の加藤さんに、人気メニューを3品紹介してもらいました。まずは、焼き鳥と創作焼き鳥を焼いてもらいます。
▲手前から反時計回りに、室蘭やきとりの定番「豚精肉」(1本150円)、創作焼き鳥の「殻付うずらの炭火焼」(2本300円)、温野菜の「丸ごと玉ネギ」(380円)※焼き鳥類は各品2本からオーダー可
▲店長の加藤英哲(ひであき)さん。炭火でじっくりじわじわ焼きます
▲火力が強く火持ちし、食材に煙の雑味がつきにくい厳選した炭を使用
串をひっくり返し、一本一本最高の状態に焼けてきた頃合いを職人の目利きで見計らい、創業以来継ぎ足し続けてきた秘伝のタレにつけて再度焼きます。肉汁がたっぷり残っている状態でタレにつけて焼くことで、タレのうま味が肉に染み込むうえ、肉汁が閉じ込められるそうです。
▲タレをつけて二度焼きをしたら、間もなく焼き上がり
▲「豚精肉」焼きあがりました!洋ガラシは室蘭やきとりの必需品
▲洋ガラシをつけて、いただきまーす!

豚の肩ロース肉は噛み応えがありつつも軟らかいです。タレは気持ちさらっとした印象ながら、甘辛い濃厚な味わいが後からじわじわと湧いてくるよう。豚肉にタレとうま味がしっかり閉じ込められている証です。軽くつけた洋ガラシで濃厚なタレの味がビシッとしまります。

もう一品、「殻付うずらの炭火焼」は珍しい一品。なんと、うずらの卵を殻ごと3個串に刺したものを炭火で焼いているのです。お肉と同様、タレをつけて二度焼きしています。
▲うずらを無薬飼育している「室蘭うずら園」の卵を使用

殻ごと食べられるというのですが、ガリガリ・イガイガしないかちょっと不安……。
恐る恐る食べてみると、これがびっくり!まるでソフトシュリンプのような食感で、殻は軟らかく中の卵はしっとり感があります。
▲殻というより衣がついた卵という印象で、タレの甘辛さが卵に絡んでマイルドな味わいです

焼き鳥の口直しにピッタリな一品が、3品目の「丸ごと玉ネギ」。北海道産の大ぶりなタマネギの温野菜で、ポン酢をかけていただきます。
▲タマネギがかなり甘く、ポン酢でシュッとしめるような感覚

どれもじわじわと湧いてくるような美味しさを感じられ、飽きることなく食べられます。素材のよさに加え、匠の焼き技と秘伝のタレの相乗効果に違いありません。人気店というのも頷けます。
大正ロマンスタイルをコンセプトにしたお店。アンティークの家具や装飾品などレトロな雰囲気と店内に流れるジャスの音色とともに、絶品の焼き鳥を味わえます。

地元の常連客に長年愛される「吉田屋」

2軒目は、JR室蘭駅から歩いて3分ほどの街中にある「吉田屋」です。1946(昭和21)年に創業した老舗やきとり店で、ここから目と鼻の先にある場所で長らく営業を続けてきましたが、2017(平成29)年に建物の老朽化などのため現在地へ移転しました。
▲店構えは新しく見えますが、長い歴史がある焼き鳥店。焼き鳥類は基本的にどれも豚肉で提供しています
▲居ぬき物件に入ったため、移転して月日が浅いとはいえ風格は感じます

お店を切り盛りするのは3代目女将の吉田静枝さん。パートさんが手伝いに入ることもありますが、基本一人で調理や接客などすべてをこなしています。アットホームな雰囲気で、混雑時は常連さんがお皿を下げたりビールを注いでくれたりすることも。
▲炭を準備してお肉を焼き始める吉田さん

「室蘭やきとり」をはじめ、人気のメニューをいくつか出してもらいました。まずは焼き鳥から。
▲皿手前から2本ずつ、「レバー」(1本140円)、「ハツ」(1本140円)、「シロ」(ホルモン、1本140円)、奥が絶対外せない定番の「豚精肉」(1本150円)※焼き鳥類は各品2本からオーダー可
他店では豚肉の肩ロースを使用することが多いのですが、吉田屋では豚バラ肉を使用。赤身と脂身のバランスがよく、軟らかい食感をたのしめるうえ冷めても美味しいため、「焼き鳥は豚バラに限る!」と先代から言い伝えられてきたそうです。
▲バラ肉は肩ロースより脂身が多いため、炭火で焦がさず均一にふっくらと焼くのは難しく、長年の経験と勘が必要。まさに職人技です
▲ほぼ焼けたら、壺に入った秘伝のタレにドボッとつけ、再び軽く炙ります

吉田屋のタレは、創業時に近隣で人気焼き鳥店を経営していた小林さんの味を近所のよしみで譲り受け、それ以来ずっと継ぎ足ししながら使っている伝統のもの。
ただ、当時は労働者向けのややしょっぱ目な味わいでしたが、時代とともに客層が変わってきたため少しずつマイルドな味わいに変化させてきたそうです。変えたとはいえ配合のしかたを調整しただけで材料は変えていないそうです。
▲できあがり!再びタレにくぐらせてから洋ガラシを添えたお皿に盛りつけて提供します
▲豚精肉から、いただきまーす!

豚バラ肉は、やわやわでジューシー!脂があるため肩ロース肉に比べてさらに軟らかいです。タレは塩辛さがなく、甘さもくどくなく、濃すぎないまろやかなコクが絶妙な美味しさ。洋ガラシがほどよいパンチになり、タレの味わいとともに肉のうま味を引き立たせます。
▲モッチリ感のあるレバーは、タレにしつこさがなくコクがあるのでちょうどよいバランス
▲少し歯応えのあるハツは、噛めば噛むほどまろやかなタレの味わいが絡みます
▲シロにも洋ガラシがピッタリ!ピリッとしまります

焼き鳥のあとは、そのほかの人気メニューをオーダー。一品料理で人気なのが、牛すじを長時間煮込んだ「牛すじ煮込み」(600円)。
▲さらっとした出汁に浸かった牛すじはほろほろとほぐれるほど軟らかく、唐辛子の風味が軽いアクセント。焼き鳥とは違ったお肉の美味しさを楽しめます

最後に登場したのは、シメにピッタリな「焼おにぎり」(180円)。おにぎりに焼き鳥のタレを塗って焼いたものです。実はメニュー表に載っていない裏メニューで、常連さんの多くがこれをオーダーするのだそうです。これを注文すれば“通”かもしれませんね。
▲香ばしさとタレの奥深い味わいがごはんに染みて極旨!「室蘭やきとり」のシメにピッタリ

慌ただしく切り盛りする女将さんの姿に元気をもらいつつ、長年のうま味が凝縮されたタレの奥深い味わいを楽しめます。またいつか「ただいま~」といって再訪したくなるような雰囲気で、舌に刻まれたまろやかな味が忘れられません。
「室蘭やきとり」の極意、伝わりましたか?この地で“焼き鳥”といえば豚肉+玉ネギをタレで、洋ガラシ付きなのです。多くのお店で塩もオーダーできますが、基本はタレ。特に豚精肉で塩をオーダーする人はほぼ皆無といっても過言ではありません。
甘辛い濃厚な味わいが後からじわじわ湧いてくるような、やきとりの一平 本店のタレの味や、濃すぎずまろやかなコクがある、吉田屋のタレの味。各店独自に研究を重ねて編み出したタレと、ピリッとしめる洋ガラシは最高のマリアージュ。豚肉の味わいが引き立ちます。

室蘭夜景など室蘭観光をはじめ、近隣の登別温泉や洞爺湖などへ訪れる際に足を延ばしてみては?ぜひ一度、本場室蘭市で「室蘭やきとり」を堪能あれ!
川島信広

川島信広

トラベルライター・温泉ソムリエ・イベントオーガナイザー/横浜市出身、札幌市在住。北海道内の全市町村を趣味で訪ね歩くうちに北海道の魔力に惹かれ、都内での雑誌の企画営業と執筆業務を経て北海道へ移住し独立。紙媒体やweb媒体などで主に観光や旅行、地域活性をテーマにした取材執筆と企画・編集を手がける。スイーツ好きの乗り鉄、日光湿疹と闘う露天風呂好き。

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