えびの高原トレッキングで霧島連山&火口湖の絶景に感激!初心者向けコースをゆるっと

2019.06.25 更新

南九州を代表する絶景スポット・宮崎県の「えびの高原」。この高原を含む「霧島錦江湾(きんこうわん)国立公園」は、日本で初めて国立公園に指定された場所の一つです。大小20以上の火山やコバルトブルーに輝く火口湖、そして山々に息づく貴重な動植物の姿は、多くの登山客の心を惹きつけてやみません。今回はガイドさんを付けて、初心者でも気軽に楽しめるトレッキングコースを案内してもらいました。

▲ビュースポットとして人気の高い「白鳥山(しらとりやま)」の山頂

霧島連山を丸ごと楽しめる「えびの高原」の魅力

「えびの高原」は宮崎県と鹿児島県の県境に位置し、宮崎空港から宮崎自動車道経由で約1時間30分、溝辺鹿児島空港からは九州自動車道経由で約1時間で行くことができます。標高約1,200mの火山に囲まれた盆地状の高原で、夏でも30度以上になることはほとんどないことから、寒冷地の植物が多く生息しています。
▲ミヤマキリシマと「甑岳(こしきだけ)」

えびの高原は、1934(昭和9)年に瀬戸内海や雲仙と並び、日本で初めて国立公園に指定された「霧島錦江湾国立公園」(旧「霧島国立公園」)の北部にあります。韓国岳(からくにだけ)や白鳥山、甑岳や硫黄山などの山岳に希少な植物たちが華を添え、美しい風景を形成する名勝地であることが国立公園となった要因のひとつです。
▲「えびの高原池巡り登山口」。韓国岳を正面に見て左側に登山口がある
▲えびの高原では寒冷地の植物が多く見られる

そんな絶景を気軽に楽しめるのもえびの高原の魅力。初心者向けのトレッキングコースが豊富なので、体力に自信がない人でも安心して登れちゃうんです!気ままにトレッキングを楽しむのも良いですが、えびの高原を知り尽くしたガイドに案内してもらうとより一層えびの高原の魅力がわかるはず。今回は、「えびのガイドクラブ」所属のガイドさんに案内していただくことにしました。取材に訪れたのはGW明けの5月上旬。新緑や春の花々を見られるのではないかと期待が膨らみます!

えびのガイドクラブの予約は、「えびの市観光協会」に電話で問い合わせればOK。希望のコースや時間帯、人数に応じてえびのガイドクラブが必要なガイドさんを手配してくれます。ガイド料は参加人数にかかわらず、1時間税込1,000円(最長5時間まで)とリーズナブル(ガイド1名につき10名まで)!
▲ピンクのユニフォームを着たガイドの吉川美子(びいこ)さん(中央)と西道(さいどう)りえさん(右)

えびの高原からは、霧島連山の中でも登山客に人気の高い標高約1,700mの火山・韓国岳にも登ることができますが、火口湖を見たい筆者は「池巡りコース」をチョイス。えびの高原の登山口で2名のガイドさんと待ち合わせました。ちなみに今回は撮影のため、特別に2名のガイドさんに来ていただきましたが、少人数のトレッキングの場合、通常は1名です。

トレッキングコースは行きたい場所や希望する下山時間などによってカスタマイズしてくれます。筆者は、「池巡りコース」をカスタマイズしてもらって、「白紫池(びゃくしいけ)」と「六観音御池(ろっかんのんみいけ)」を同時に見られる「二湖パノラマ展望台」から「白鳥山」の山頂まで行って下山するルートにしました。黙々と歩けば、2時間ほどで下山できる距離です。休憩したりガイドさんの説明を聞いたりしながらゆったりトレッキングしても3時間ほど下山できるとのこと。

では早速、トレッキングに出発です!

いざ、霧島の山へ出発!

▲登山口からしばらくは舗装されていて傾斜も緩やかなので歩きやすい♪

山登りというより散歩というほうがしっくりくるほど歩きやすい遊歩道を進み、山道に入っていきます。
登山口から歩いてすぐ、小川を発見!
「活動が活発な硫黄山の影響で、水が白く濁っているんです。これから山を登れば硫黄山の噴気もよく見えると思いますよ」と吉川さん。

硫黄山周辺は入山禁止区域(2019年6月現在)となっていますが、筆者が登る白鳥山は安全なので安心です。

道を進むにつれて、新緑が眩しくなってきました。空気も澄んでいてとっても気持ちいい!
えびの高原にはニホンジカやイノシシ、タヌキはもちろん、ムササビやアナグマ、テンやヤマネ、ヒメネズミなども生息しているそうです。

「運が良ければシカが見られるかもしれませんよ」と西道さん。さらに、この地を代表する植物・ミヤマキリシマ(例年5月中旬~下旬頃に開花)もシーズンより少し早めとはいえ、すでに咲き始めているとのこと。それはぜひとも見てみたい!

出発から20分ほどで早くも最初のビュースポットに到着!
▲噴気を上げる硫黄山は迫力満点!三角屋根の建物が「えびのエコミュージアムセンター」

うわぁ!まだ序盤なのにこんな絶景が見られるとは……感動しちゃいます!目の前には韓国岳がそびえ、左手に噴気を上げる硫黄山を望む「えびの高原展望台」は、えびの高原登山口から300mほどなので、散策感覚で気軽に行けるビュースポットです。出発した登山口付近にある「えびのエコミュージアムセンター」の姿も見ることができ、「あそこから歩いてきたんだ!」とちょっとした達成感も味わえますが、トレッキングはこれからが本番です。
▲アカマツに絡みつくツタウルシ。ウルシ科なので肌に樹液がつくとかぶれてしまう

さて、展望台から再び山道に戻り、トレッキングを再開します。吉川さんも西道さんも植物がとてもお好きとのことで、山の植物に詳しく、道すがらいろんなことを教えてくれます。
▲ツタウルシの紅葉は10月が見ごろ

「アカマツに巻き付いているのは、ツタウルシという木で、アカマツに栄養をもらいながら共生しているんです。ツタウルシは花もかわいいし、紅葉もとってもきれいなんですよ」と吉川さん。
▲春に黄色の花を咲かせるツルキジムシロ

道端に咲く小さな花もガイドのお2人は見逃しません。「これはツルキジムシロっていうお花。小さくてかわいいでしょう?」と少女のような笑顔で教えてくれます。1人で登っていたら見逃してしまうような小さな植物も、ガイドさんがいれば目を留めるきっかけになりますね。

植物の話をあれこれ聞きながら山道を歩いていると、突然パッと視界が開けました。2つ目のビュースポット「二湖パノラマ展望台」です。
▲展望台から望める「六観音御池」。奥には甑岳がそびえる

この展望台は名前の通り、「白紫池」と「六観音御池」という2つの火口湖を一度に見ることのできる場所。えびの高原の数あるビュースポットの中でも最も人気が高く、ほとんどの登山客がここを訪れるのだそう。

わぁーっ!きれい!筆者は火口湖を見たのは初めてだったので、感動もひとしお。山々に囲まれた火口湖は、とても神秘的な雰囲気です。
▲白紫池

展望台から見て右手に「六観音御池」、左手に「白紫池」があります。白紫池は冬になると凍るので、かつては天然のアイススケート場として地元住民に親しまれていたそうです。現在は、えびの高原の登山口近くに人工のアイススケート場があり、そちらは冬季のみ営業しています。
プリンのような形がどこか愛らしい甑岳もよく見えます。甑岳もトレッキングを楽しめるそうで、山頂から火口に下ると湿原になっているのだとか。いつか行ってみたい!

さて、ここからは白鳥山の山頂を目指してさらに登って行くので、いい景色を眺めつつちょっと休憩することにしました。
ガイドさんのご好意で、フルーツやチョコレートを分けていただきました。初心者向けのトレッキングとはいえ、休憩をとっての水分や糖分の補給は大事ですね。

さぁ、パワーをチャージしたら再び出発です。

山を彩る可憐な花々にうっとり

まもなく、筆者はあるものを発見!もしかしてこれは……。
そう、ミヤマキリシマです。山肌に張り付くように群生しています。麓付近でも見かけましたが、山の中腹ではもう咲き始めていました。歩道に植えられている一般的なツツジのミニチュア版といった感じで、とってもかわいい!

ミヤマキリシマは九州地方の山岳地帯に生息するツツジ科の植物で、霧島連山を代表する花です。筆者も実物を見たことはありませんでしたが、想像以上にかわいらしく、感激しました。

さらに歩を進めると、ほのかに花のいい香りが漂ってきました。
香りの正体はこれ。ハイノキという木で、白い小さな花を咲かせます。よく燃えて灰になることから、この名がつけられたのだそう。
▲ハイノキは5月中旬が見頃。繊細な花びらが魅力

「シカは山の植物を食べるんだけど、ハイノキとシキミ(仏事に欠かせない樹木)とゼンマイは食べないのよねぇ」と西道さんは言います。シカにも好みがあるんですね!
ガイドさんたちは、とても勉強熱心。トレッキングの際は、ポケットサイズの植物図鑑を必ず持参しているそう。「えびのの自然が大好きだから、新しい発見があるとワクワクするの」と楽しそうに話します。
珍しい植物を観察しながらのんびりと登っていきます。さすがに麓付近よりは傾斜がありますが、足場がしっかりしているので、普段あまり運動をしない筆者でも楽に歩けます。

そして視界が開けると、岩場を進んでいきます。岩場になってくると、山頂が近いという実感が湧いてきますね!
すると突如、目の前に巨岩が現れました。人の背丈と比べるとサイズが想像いただけると思いますが、この辺りでひときわ目を引くビッグサイズ!大昔の噴火の際に飛んできたものらしいのですが、絶妙なバランスでここに留まっています。自然の力強さを感じますよね。

ここまで来れば白鳥山の山頂はもうすぐそこ!

白鳥山山頂で絶景を眺めながら、至福のランチタイム♪

2つのビュースポットもとても良い眺めでしたが、山頂からの眺めはやっぱり格別!硫黄山の火口もはっきり確認することができます。この日は残念ながら見えませんでしたが、条件が揃えばはるか遠くに桜島の姿も見ることができるそうですよ。

山頂からの景色に見とれていると、ガイドさんが「ここで昼食にしましょうか」と提案してくれました。確かにちょうどお昼どき。でも筆者はお弁当を持ってきておらず、「休憩しているので、召し上がってください」とお伝えしたところ、ガイドさんが「人数分作ってきたから大丈夫!みんなで食べましょう」と言うではありませんか!
ガイドさんがバックパックからおいしそうなお弁当やフルーツ、カステラなどを次々と取り出し、並べていきます。「家にあったものを詰めただけだから」とは言うものの、豆ごはんや煮物、手作りの梅干しとお漬物など、どれもおいしそう!
▲山頂でのんびりとランチタイムを楽しむ登山客が多い

せっかくなので、絶景を眺めながらいただきました。山頂で食べるお弁当は、最高においしい!

今回担当してくれた西道さんは、よくこうしてお客さんに無料でお弁当をふるまっているそうです。もちろん、えびのガイドクラブに所属するガイドさんが皆同じことをしているわけではありませんが、お客さんに登山を楽しんでもらえるよう、それぞれがオリジナリティあふれるサービスを心がけているそう。

想定外の展開に驚きつつも、おいしいお弁当と絶景を心ゆくまで味わい、そろそろ下山することに。帰りは「白紫池」を通るとのことで、とっても楽しみです。

珍しい植物と出会える「白紫池」

帰り道でもミヤマキリシマの姿がチラホラ。吉川さんも「思ったより咲いているわね」とうれしそう。

山は登るより下りるほうが楽ちん。軽快な足取りでサクサク下山すると、あっという間に「白紫池」に到着しました。
間近で見る「白紫池」は上から見るのとはまた違った雰囲気。辺りは静寂に包まれ、池の周りは草木で覆われています。周辺には「六観音御池」と「不動池」もありますが、「白紫池」が天然のアイススケート場として利用されていたのは、この池の水深が最も深いところでも1.5mほどと浅く、たとえ氷が割れても安全だからなのだそう。
▲指の先にある小さな植物がモウセンゴケ。葉一面に生えている毛の先端から甘い粘液を出して昆虫を誘い込む

池の周辺に、湿地を好む食虫植物・モウセンゴケを発見!まだ小さいので意外とかわいいかも?と思った筆者でしたが、成長すると食虫植物らしく毒々しい姿に変わります。

トレッキングのラストを飾る、アレとの遭遇!

今回のコースは「白紫池」が最後のビュースポット。あとは登山口を目指して帰るだけなのですが、筆者には一つ心残りなことがありました。まだ、野生動物を見ていない!トレッキングもあと少し、「やっぱり無理かな」と諦めかけたそのとき、西道さんが叫びました。「あっ!今シカのお尻が見えた!」
▲草や木の皮を食べるのに夢中な様子のニホンジカ

わぁぁぁっ!かわいい!人間の姿を気にする様子もなく、のんびりと食事を楽しむ野生のニホンジカを発見!一同、俄然テンションが上ります。

「シカは家族で行動することが多いけど、この子は単独ね。珍しいなぁ」と西道さん。新緑の美しい山に佇む1匹のシカ。まるでファンタジーの世界を見ているようです。

最後の最後に野生動物と遭遇するという、貴重な経験ができて大満足のうちに下山しました。ちなみに貴重といえば、えびの高原にはここでしか見ることのできないノカイドウという植物が生息しているんですよ。
▲ノカイドウは4月下旬~5月上旬が見頃

ノカイドウは、国の天然記念物に指定されているバラ科の植物で、自生しているのは世界中で「えびの高原」だけなんです。取材時はちょうど見頃が終わり、山に自生するノカイドウの花はほとんど散っていましたが、登山口の近くに1本だけ満開の木があり、幸運なことにその美しい姿を見ることができました。
▲ノカイドウの蕾

ノカイドウの花はサクラよりやや小さめで白い色をしていますが、蕾はピンク色。蕾も花と同じくらいきれいですよね。GW中に見頃を迎えることもあり、ノカイドウ目当てに多くの登山客がえびの高原を訪れるのだそう。

霧島連山の絶景や美しい火口湖だけでなく、シーズンではないはずのミヤマキリシマやノカイドウの花、そして野生のシカまで見られるなど、数々の幸運に恵まれたえびの高原のトレッキング。下山後は何とも言えない爽快感を得ることができました。
池巡りや白鳥山コースの登山口近くには、霧島の山々の自然や文化を紹介するビジターセンター「えびのエコミュージアムセンター」もあります。登山前に立ち寄れば、トレッキングをより一層楽しめますよ。

トレッキングのあとは、やっぱり温泉!

火山に囲まれたえびの高原は、温泉の泉質も素晴らしい!ということで、「えびのエコミュージアムセンター」から徒歩3分ほどのところにある「国民宿舎 えびの高原荘」で汗を流すことにしました。ここでは大人520円、小学生は300円(ともに税込)、未就学児は無料で日帰り入浴ができます。
こちらの温泉の魅力は何といってもこの眺望!韓国岳を眺めながら温泉に浸かるひとときはまさしく至福。冬になると雪化粧をした韓国岳の幻想的な姿が見られることもありますよ。
▲内湯もガラス張りになっていて眺望を楽しめる

源泉かけ流しの温泉は、肌当たりがやさしくさらりとした炭酸水素塩泉。トレッキングの疲れを癒やしてくれます。
また、宿泊客優先ではありますが、家族湯(1時間税込1,030円、入浴料別)も4室あります。予約不可なので、空いているかどうかは当日フロントで確認してくださいね。
筆者がえびの高原を訪れたのは新緑が眩しい春でしたが、えびの高原には多種多様な植物が生息していて、一年を通じてトレッキングを楽しめるスポットです。さらにガイドさんに案内してもらえば、えびの高原の魅力をより深く知ることができます。現在は火山の活動の状況によって一部立ち入れないエリアもありますが、ガイドさんや「えびのエコミュージアムセンター」が最新情報を把握しているので心配無用!登山未経験の人こそぜひ一度、えびの高原のトレッキングに挑戦してみてください。
さわだ悠伊

さわだ悠伊

鹿児島市出身・在住のフリーライター。グルメ、旅、コラム等ジャンルや媒体を問わず活動中。鹿児島県内の離島取材も豊富。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

こちらもおすすめ

もっと見る
PAGE TOP