「黒さつま鶏」は鹿児島で必食の“第3の黒”!名物の鶏刺しや炭火焼きでシンプルにいただこう

2019.07.16 更新

鹿児島の数あるご当地グルメの中でも、「黒毛和牛」や「かごしま黒豚」などの“黒グルメ”は絶大な人気を誇りますが、近年“第3の黒”と呼ばれる「黒さつま鶏」にも注目が集まっています。今回は地元の人からも愛される黒さつま鶏グルメをご紹介します。

日本三大地鶏の血を引く画期的な地鶏「黒さつま鶏」

ブロイラーの飼育量で全国1、2を争う鹿児島県。さらに秋田県の「比内地鶏」、愛知県の「名古屋コーチン」と並ぶ「日本三大地鶏」の一つである「薩摩地鶏」を生産しています。しかし、元々闘鶏用に飼育されていた薩摩地鶏は気性が荒いため飼育が難しく、生育にも時間がかかるため大変高価になってしまいます。
▲「黒さつま鶏」。羽に斑点があるのがオス、真っ黒なのがメス

その問題をクリアしたのが今回ご紹介する「黒さつま鶏」です。「薩摩地鶏」を父に持ち、鹿児島では「ごいし」の愛称で親しまれる「黄斑(おうはん)プリマスロック」を母とする黒さつま鶏は、地鶏特有の旨みを持ちながらも地鶏にしては生育が早く、リーズナブルな価格で楽しめる画期的な地鶏なんです。

こだわりの黒さつま鶏をシンプルに味わえる「黒豚・地鶏料理 あがり屋」

黒さつま鶏を心ゆくまで味わうなら、鹿児島市の繁華街・天文館(てんもんかん)にある「黒豚・地鶏料理 あがり屋」(以下、あがり屋)がおすすめ。
▲カウンターと掘りごたつが設えられた落ち着いた雰囲気の店内

あがり屋は2017年オープンのまだ新しいお店ですが、飲食店がひしめき合う天文館で飲食業の関係者も多く訪れるという人気店です。

黒さつま鶏のメニューの中でも、まず筆者が注文したのがこちら。
▲「黒さつま鶏の刺身」 税込918円

鹿児島の名物といったらコレ!地元では「鶏刺し(とりさし)」といわれる“鶏のお刺身”です。写真左から「ササミ」「モモ肉」「ムネ肉」と、異なる部位を楽しめます。鶏刺しは鹿児島県民が居酒屋に行ったら真っ先に注文する定番メニューですが、黒さつま鶏のおいしさは格別なんです。
▲鶏刺しは鮮度が命!新鮮だからこそ生でも安心して食べられる

表面だけを軽く炙った鶏刺しにワサビやショウガ、ニンニクなど好みの薬味を乗せて、鹿児島らしい甘い刺身醤油をつけていただきます。

ではまずモモ肉から食べてみましょう。モモ肉は弾力がありながらも歯切れが良く、噛めば噛むほど旨みが出て甘い!筋っぽさも一切なく、とろける味わいに感激!イノシン酸という旨み成分を豊富に含み、筋繊維が細かいという黒さつま鶏の魅力を、一口で実感することができます。
▲カイワレ大根やオニオンスライスを巻いて食べるのもおすすめ

筆者が特におすすめしたいのはこちらのムネ肉。ムネ肉はパサつきやすいイメージがありますが、黒さつま鶏のムネ肉はもっちもち!今まで数え切れないほど鶏刺しを食べてきましたが、ムネ肉の固定観念を覆すこの食感が大好きなんです。一方、ササミは柔らかな食感で、さっぱりといただけました。
▲「黒さつま鶏の塩ユッケ」税込864円

次に注文したのは、あがり屋の人気メニューの一つ「黒さつま鶏の塩ユッケ」。黒さつま鶏のムネ肉を粗く叩き、塩とゴマ油であえて卵黄を落としたシンプルな料理ですが、実は鹿児島県内でも鶏肉のユッケはほとんど見かけません。
卵黄を崩して、お肉にたっぷりまとわせます。これは絶対おいしい!
さっぱりとしたムネ肉に卵黄とゴマ油のコクがプラスされ、口に入れるたび幸せな気分に。また、ムネ肉特有のもっちりとした食感も存分に味わえます。とてもヘルシーなユッケは、女性に特に人気なのだそう。お酒にもご飯にも合いますよ。
▲「黒さつま鶏の炭火焼」 税込1,382円

最後に登場したのは、あがり屋で一番人気の「黒さつま鶏の炭火焼」。下味をつけた黒さつま鶏のモモ肉を身が硬くならない絶妙の火加減で焼き上げた不動の大人気メニューです。さっそくいただきまーす!
▲要望があればモモ肉をムネ肉(税込1,166円)に変更することも可能。黒い柚子胡椒をのせて

いつもは「地鶏の炭火焼はちょっと硬い」と思っている筆者ですが、黒さつま鶏は別格!噛んだ瞬間、思わず「やわらか~い!」と声が出てしまうほど歯切れが良く、程よい弾力もあって、ジューシーな肉汁と旨みを堪能できます。

そして、薬味の柚子胡椒がまたおいしいんです。それもそのはず。この黒い柚子胡椒は、すりゴマやハチミツ、柚子の皮、アオサ、焼き海苔をブレンドしたあがり屋オリジナル。柚子胡椒の香りはしますが、辛さ控えめで、食べた後に海苔の風味がふわっと感じられます。これをつけると黒さつま鶏の旨みをよりしっかりと味わえます。
▲店長の永田陽介さん

プロの料理人の目から見て、黒さつま鶏の魅力はどんなところにあるのでしょうか。店長の永田さんは「地鶏特有の脂身のおいしさでしょうね。黒さつま鶏は地鶏の中でも脂のノリが良く、脂にコクがあるんですよ。特に当店が扱っている『真栄(しんえい)ファーム』さんの黒さつま鶏は本当にクオリティーが高いですし、薩摩地鶏と比べるとコストパフォーマンスもいいですよ」と話します。

黒さつま鶏専門の「真栄ファーム」を見学

あがり屋に行った翌日、黒さつま鶏の生産の現場を見たい!ということで、永田店長が絶賛する「真栄ファーム」を特別に取材させてもらうことにしました。
▲「真栄ファーム」では、ヒナから出荷まで一カ月刻みで鶏舎を分けて飼育している

鹿児島市から九州自動車道に乗り、指宿(いぶすき)スカイラインを経由して車を走らせること約40分。「真栄ファーム」の鶏舎は、南九州市川辺町(かわなべちょう)の山中にひっそりと佇んでいます。
▲2017年に2代目代表取締役に就任した和田真弥(しんや)さん

元々、一般的な鶏を生産していた「真栄ファーム」が、黒さつま鶏の飼育を専門的に始めたのは2014年のこと。長い間、料理人として県外で働いていた和田さんは、家業を継ぐにあたって黒さつま鶏の味とコストパフォーマンスに可能性を感じ、方向転換したのです。

それまで生産していた鶏とは飼育方法がまったく異なる黒さつま鶏の飼育には、試行錯誤を繰り返したという和田さん。同じ黒さつま鶏でも、飼育方法によって肉質や味わいが変わるため、現在でも品質向上のための創意工夫を続けています。

鶏にストレスを与えないための工夫がいっぱい!

鶏舎の扉を開ける際、鶏を驚かさないよう、和田さんは必ずノックしてから入ります。闘鶏の血を引く黒さつま鶏は、興奮すると喧嘩をして体が傷つくことも。品質にも影響するため、細心の注意を払っているのです。
同じ理由で、鶏舎は照明を落とし、暗くしています。また、地鶏の飼育にあたっては「1平米につき10羽以内」という日本農林規格(JAS)のルールがありますが、真栄ファームでは1平米につき5羽以内と、さらにゆったりとしたスペースで飼育しているそう。これもまた、鶏にストレスを与えないための工夫です。

そして、鶏舎に人が入ると鶏が警戒するので、餌やりなど毎日の世話はほぼ1人で担当し、鶏舎の出入りも最小限に抑えているそう。
▲生後10日ほどのヒナの鶏舎

こちらはヒナの鶏舎。真ん中に吊り下がっている白っぽいものはヒーターです。「温度管理には気を遣いますが、特にヒナは寒がりなので注意しています。ヒーターの下にヒナが集まっているときは寒すぎるとき、四隅に固まっているときは暑すぎるとき。四方八方にバラけているときが適温なんです」と和田さん。

餌は配合飼料に米を交ぜたものがメインですが、最近、さらに麹菌を加えたことで鶏の腸内環境が整い、餌をよく食べるようになったと言います。麹菌には肉やフンの匂いを抑える働きもあるのだそう。餌は成長過程によって配合を変え、最高のコンディションで出荷できるようにしているとのこと。
▲鶏が飲む水は、山の湧き水か井戸水。川辺町の自然の恵みをいっぱいに受けて育つ

オスは生後120~150日、メスは150~180日を目処に出荷されます。出荷までが短すぎると旨みがのらず、長すぎると身が硬くなるため、出荷のタイミングを見極めることも大切です。
和田さんは取引先とのコミュニケーションも大切にしています。取引先は県外の飲食店もありますが、できるだけ店舗に足を運び、実際にメニューを食べて信頼できる店舗のみと契約しているのだそう。

そんな真栄ファームの黒さつま鶏、実は直売所で買うこともできるんです。
▲直売所は「道の駅川辺 やすらぎの郷(さと)」の並びにあるのでわかりやすい

鶏舎のある山道を下ってすぐのところにある「生産直売 黒さつま鶏 地どり屋」が、真栄ファームの直売所です。こちらでは、朝びきの新鮮な黒さつま鶏を直売価格で購入できます。
▲鶏刺しは夕食のおかずや酒の肴に大人気

鶏刺しはもちろんのこと、「黒さつま鶏のしゃぶしゃぶ」(時価)や「黒さつま鶏のスモーク」(時価)などの加工品もあり、鹿児島市内から訪れるお客さんもいるほどの人気ぶり。売り切れることも多いそうなので、早めの来店がおすすめです。
鹿児島の“第3の黒”黒さつま鶏は、リーズナブルでとってもおいしい地鶏です。その旨みを最大限に楽しむには、和田さんいわく「シンプルな料理が一番!」とのこと。鶏刺しや炭火焼きはもちろんのこと、自宅で調理するなら岩塩を振ってフライパンで炒めるだけでごちそうになりますよ。

鹿児島を訪れた際は、ぜひ「黒毛和牛」「かごしま黒豚」と共に「黒さつま鶏」も食べてみてくださいね。
さわだ悠伊

さわだ悠伊

鹿児島市出身・在住のフリーライター。グルメ、旅、コラム等ジャンルや媒体を問わず活動中。鹿児島県内の離島取材も豊富。

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