【京都×ランチ×陶芸】歴史ある朝日焼の作陶、季節を描きだす京弁当。お茶だけでない宇治の魅力を満喫!

2019.05.29 更新

高貴な人々の別荘地として、源氏物語の舞台となった京都・宇治。その地で400年続く「朝日焼」の技法を学んで、唯一無二の器を作ってみませんか?そしてランチには、宇治川の雄大な流れを愛でながら、京弁当・京懐石料理「平等院表参道 竹林(ちくりん)」で季節のお弁当。宇治の食と文化体験が堪能できるオリジナルプランをご紹介します。

こちらのプランは、京都料理界を代表する若主人たちが設立した「京都料理芽生(めばえ)会」と、飲食店情報メディア「ぐるなび」による“本物の京都体験”をコンセプトとした共同プロジェクト「KYOTO365」の特別プラン。あらためて食文化を学ぶ&味わう機会を提供する、「KYOTO365」の持続的な取り組みのひとつです。

本日のプランの充実を願って、世界遺産の「宇治上神社」へお参りを

▲「宇治上神社」へはJR奈良線・宇治駅より徒歩約20分。京阪電車宇治線・宇治駅より徒歩約10分のアクセス

午前中は朝日焼の土ひねり陶芸体験、お昼には「平等院参道 竹林」にて京弁当をいただく本プラン。集合場所である「朝日焼 shop & gallery(ショップ アンド ギャラリー)」は、宇治上神社のすぐふもとにあります。

宇治に訪れたら、宇治上神社は、ぜひ立ち寄っておきたい名所。というのも、平成6(1994)年に京都の17カ所が同時に「古都京都の文化財」として世界文化遺産に登録された際、そのなかに宇治上神社も含まれているのです。ぜひ、今日の佳(よ)き日を願って参りましょう。
境内には「桐原水(きりはらすい)」と名付けられた湧き水が。お茶の産地である宇治では、かつてあちこちに名水が湧き出していました。そのなかでも特に素晴らしい水をたたえる7カ所が、室町時代に「宇治七名水」として指定されていました。
こちらの「桐原水」はその「宇治七名水」のなかで唯一現存しているもので、今も滾々(こんこん)と水が湧き、手水(ちょうず)として使用されています。
▲国宝の拝殿。寝殿造りに加え、縋破風(すがるはふ)と呼ばれる手法による屋根も美しい

拝殿は鎌倉時代前期のもので、寝殿造りが特徴的です。その奥に位置する本殿は平安時代後期に建てられた現存するわが国最古の神社建築で、ともに国宝に指定されています。
宇治上神社では菟道稚郎子命(うじのわきいらつこのみこと)、応神天皇(おうじんてんのう)、仁徳天皇(にんとくてんのう)をお祀りしていて、学業成就、勝負運、病気平癒、良縁などのご利益があるとか。
あいにくこの日は愛用の御朱印帳を持ってきていなかったのですが、御朱印もいただきました。帰ったら、御朱印帳に挟み込みます。

木々に囲まれた境内には澄みきった空気が満ち、お参りすると身体の中が浄化されるようなパワーを感じる神社でした。

約400年の歴史を持つ「朝日焼」に触れてみる

▲宇治上神社から徒歩約4分と、とても近くに位置する「朝日焼 shop & gallery」。JR宇治駅より徒歩約17分。京阪宇治駅より徒歩約7分

お参りをすませたら「朝日焼 shop & gallery」へうかがいます。こちらに集合してから陶芸体験をする「朝日焼 作陶館(さくとうかん)」へ移動しますが、その前にショップとギャラリーが併設されている店内もぜひ見ておきたいところです。
平成29(2017)年に民家を改装してオープンした「朝日焼 shop & gallery」。白を基調とした店内には暖かな日が差し込み、とても清々しい空気が満ちています。宇治川を挟んだ対岸には「平等院」が広がっていて、とても気持ちのいい場所です。凛(りん)と並べられた朝日焼の作品は、手に取って眺めることもできますし、もちろん購入も可能です。
朝日焼は慶長年間(1596~1615年)に開窯(かいよう)したと伝えられています。名茶人として名高い小堀遠州(こぼりえんしゅう。1579~1647年)とのつながりが深く、小堀遠州より「朝日」の二字を与えられたそうです。そして小堀遠州の好みの茶器を焼いた7つの窯、「遠州七窯」のひとつに数えられるようになりました。
茶道具とは本来、人々の生活に根付いたものでした。こちらでは茶室も設けられ、さまざまな環境の中での朝日焼の姿を見ることができます。このあとの陶芸体験の参考になりそうですね。

童心に還り、無邪気に土いじりを楽しめる土ひねり陶芸体験

▲陶芸体験をする「朝日焼 作陶館」は「朝日焼 shop & gallery」から徒歩1分ほどのところにある

本物の朝日焼に触れてイメージがわいたところで、いよいよ陶芸体験です。
▲十四世・松林豊斎(まつばやしほうさい)が、昭和50(1975)年に築いた世界初の無煙式登り窯
登り窯や、焼き上げる前の作品が並べられている工房に足を踏み入れると、「これから朝日焼を作るんだ」という気持ちが高まります。
最初に講師の鈴木勝之(すずきかつゆき)先生から、作陶の流れを教えていただきます。

朝日焼の特徴は、淡い紅色の斑点です。長年寝かせて熟成された宇治の土の成分と、赤松の薪による炎が出合うと、燔師(はんし)と呼ばれる斑点が浮かび上がります。炎の温度や揺らぎで、その形は変わってゆき、ひとつひとつ味わい深い作品となってゆくのだそう。
▲エプロンとタオルは持参のこと

土ひねり陶芸体験では型と手動のろくろを使い、粘土をこねるように器を1つ作ります。
▲湯呑、皿、お椀など、形もサイズもいろいろな型が揃う
今回はお料理を盛りやすい、深皿作りに挑戦します。
▲ヘラで土を平らにならす。ヘラの真ん中をもって押すように使うと表面がきれいになる
▲型に土をかぶせ、手の腹を使ってゆっくりろくろを回しながら型に張りつけてゆく。そしてキリを使って、はみ出したひだの部分を切り落とす
難しい部分は鈴木先生が助けてくれるので安心です。でも、基本的に先生は見守るスタンス。「自分で作った」という気持ちを大切にしてくださいます。
土ひねりを続けていると、幼い頃の粘土遊びの楽しさを思い出します。土の肌触りがとても心地いいんです。
▲余った土で器に脚をつけて、ヘラでつなぎ目をなじませる
▲模様のハンコを押していくと、オリジナル図柄の器の完成も間近
▲土から型を外す。時間がたつにつれ土が乾いて型が外れにくくなるので、作陶は手際のよさが大切だそう
▲器のふちを皮でなぞって滑らかに仕上げる
1時間ほどで完成しました!とはいえ、このあと器を乾かし窯で焼くので、本当の完成は1カ月後です。
▲完成品は郵送か現地引き取り※送料別途

こんな感じに筆者の器も仕上がるのでしょうか?手にするのが待ち遠しいですね。
▲電動ろくろでの陶芸体験を選ぶこともできる※予約時に選択。追加料金あり

細部まで季節が描かれている、まるで絵画のような京弁当に舌鼓

充実の土ひねり陶芸体験のあとは、お昼をいただきに京弁当・京懐石料理「平等院表参道 竹林」(以下、竹林)へ向かいましょう。「朝日焼 shop & gallery」のすぐ隣にかかる朱色の橋を渡れば、すぐそこという近さです。
その名の通り、すぐ目の前が平等院という素晴らしい立地。荘厳な門構えに背筋が伸びます。
▲木々がきれいに刈り込まれた庭を抜けると、昭和初期に建てられた邸宅が姿を現す
▲2階席の窓からは宇治川を望める。春は桜、秋は紅葉も楽しめる
こんな素敵なロケーションで楽しむ京弁当には、時季によって素材を変えながら、鮮やかに季節が描きだされていきます。うかがった日は、うっとりと見惚れてしまう春のお料理でした。それではひとつひとつ、その美しさを見ていきましょう。
▲宇治の抹茶を使った抹茶豆腐

見た目はお菓子のような可愛らしさもありますが、玉子の味もしっかりしていて、抹茶の風味が香りたつ、竹林オリジナルのお豆腐です。
▲一般的な豆腐よりも弾力のある食感
▲煮物椀。この日は湯葉の真薯(しんじょう)と竹の子
この大きな竹の子を見てください。肉厚でシャキシャキとして歯触りもよく、春らしさが増すようです。湯葉の真薯はホタテと白身魚のすり身を引き上げ湯葉で巻いた珍しいもの。まるで明石焼きのようにふんわりとしていて、口の中でホロリとほぐれます。
▲上の段:天ぷら(海老、つぼみ菜、ふきのとう)

大きくて甘い海老が2尾もあるなんて、お弁当ではとても贅沢ですよね。時間が経っても衣のさっくり感が保たれています。
▲上の段:抹茶きなこのわらびもち
▲下の段:お造り(桜鯛、マグロ)

魚の鮮度のよさにビックリです!お弁当でこんなに旨みのあるお造りがいただけるなんて思ってもみませんでした。ご主人の、鮮魚への強い想いが伝わってくるようです。
▲下の段:取肴(とりざかな/左下から時計回りに、酢どりみょうが、鱒の幽庵焼き、厚揚げ、桜のかまぼこ、巻き湯葉、桜の麩、抹茶生麩饅頭、鯛の子の落雁、ほうじ茶の粟麩<あわふ>、だし巻き、近江こんにゃく、ホタルイカ、長芋、ふき、竹の子、貝柱、菜種)

色とりどりのお料理にときめきが抑えられません。宇治川のそばで、川魚の鱒を幽庵焼きでいただくというのも、とても洒落(しゃれ)た趣向です。
麩やお造りに添えられていた紅心大根は桜、長芋は蝶々をかたどり、本物の桜もあしらわれていて、春らしさにあふれています。見て楽しい、食べて美味しいとはまさにこのこと。夜の懐石料理と比べても遜色(そんしょく)のない手の込んだお弁当は、感動を呼び起こします。
この華やかな京弁当を作ってくださったのは、ご主人の下口英樹(しもぐちひでき)さんです。「竹林 本店」の次男として生まれ、京都の老舗料亭「菊乃井 本店」で7年間修業を積まれました。

「もともと平等院表参道のエリアは、文人・墨客(ぼっかく/優れた書画を書く人)・政財界の人々に愛された旅館『菊屋萬碧楼(きくやまんぺきろう)』や、伊藤博文が命名した『迎鶴楼(げいかくろう)』など大きな旅館や料亭が立ち並び、芸舞妓もいる賑やかな通りでした。けれども戦後にはその喧噪(けんそう)も落ち着いてしまい、宇治は奈良と京都の通過地点、名物は平等院とお茶だけというイメージが残りました。でも、平等院やお茶以外にも素晴らしいものがあることを知っていただきたいんです」(下口さん)
「宇治にかつてのような料理屋を」という父の願い受け、平成9(1997)年に「平等院表参道 竹林」をこの地に構えた下口さんの宇治への想いは、さらに熱を帯びてゆきます。

「食と工芸は密接につながっているものです。朝日焼さんと父も40年来の付き合いがあり、私も息子さんと親しくしています。私のほうが兄貴分かな(笑)。宇治には、京都市内とは違う寺院、器、お茶の姿が脈々と息づいています。今は安い値段で何でもそろう時代です。ですので、 “物”よりも“文化体験”が、より深く心に残るものではないでしょうか。400年の歴史ある窯元の朝日焼さんとともに宇治独特の体験をご披露したい――それが私の願いです」(下口さん)
文化体験が思い出を作る――そのことを実感する陶芸体験、そして絵画のようなお弁当の滋味。これらは宇治でしか味わえないものでした。今まで知らなかった宇治の一面は、なんとも潔く美しいものとして、心に刻み込まれたのです。

撮影:瀧本加奈子
竹中式子

竹中式子

フリーの編集者兼ライター。京都・伏見育ち。東京の出版社で16年間、漫画やライフスタイル誌の編集に関わったのち退職。そのまま台湾遊学という、一種典型的なアラフォー女性の道を歩みました。台湾では美味しいもの探しの日々を満喫。帰国後は伏見の水と清酒を飲みながら、久々に身近になった京都の文化を勉強中です。

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