古都、京都をきもので散策。300年続く老舗料亭で京懐石をいただく、しっとり大人時間

2019.12.25 更新

歴史と文化の街、京都にふさわしい装いといえば、やはり「きもの」一択ではないでしょうか。せっかく京都で過ごすなら、きもので散策や目にも美味しい京料理を味わってみませんか? 今回は、旅の思い出がより特別なものになる『KYOTO365』オリジナル京懐石×きものレンタルプランをご紹介します。朝、レンタルした後は夜まで自由時間。夕食をいただいている間に、着替えと荷物がお店に届くので、とても身軽に京都の一日を満喫していただけます。

『KYOTO365』は2018年にスタートした、特別な食に特別な体験を組み合わせたプランを、インターネットで予約できるサービスです。通常では予約困難なお店や、京都の四季と四大行事だけに用意される特等席、料理人同士の響宴、地元の人でさえ知らなかった体験など、その一瞬でしか触れることのできない貴重な内容を、体験プランに仕立てています。

約1000着のきものから、今日の京都を彩る一枚を選ぶ

花見小路や清水五条など京都の観光地では、きものをまとって散策を楽しむ観光客の姿を、あちこちに見かけます。風情ある石畳、歴史深い寺社仏閣にきもの姿が映え、みなさんとても嬉しそう。その表情に、こちらも思わずにっこり、そして羨ましくなってしまいます。

そんな「きものを着て京都散策」への思いを満たしてくれ、さらに老舗料亭「美濃吉本店 竹茂楼(みのきちほんてん たけしげろう)」(以下、竹茂楼)で京懐石をいただけるプランを、体験しないわけにはいきません。
▲「レンタル着物 岡本 祇園店」は、京阪・祇園四条駅から徒歩12分ほど。朝9時から受付開始

訪れたのは「レンタル着物 岡本 祇園店」(以下、岡本)です。「岡本」の本家は、1830(天保元)年創業の、西陣織の小物などを扱う「岡本織物店」。観光でのレンタルきものの発祥店といわれ、京都に6店舗を構えています。上質なきものと和小物を提供してくれるとあって、観光客だけでなく、地元の人も訪れるのだとか。
今回のプランの集合場所である祇園店は八坂神社や高台寺まで徒歩3分ほどで、隣は「西行庵(さいぎょうあん)」という、静かで趣のある場所にあります。
▲隣家の「西行庵」。「新古今和歌集(しんこきんわかしゅう)」の代表的歌人である、西行法師(元永元[1118]年~建久元[1190]年)は、この地で終焉(しゅうえん)を迎えたといわれている。1893(明治26)年に再建された
▲奥に見える茅葺(かやぶき)の屋根が目印
ゆったりとしたお庭の、鮮やかな木々の緑が出迎えてくれました。このお庭では、きものを着た後で写真撮影もできます。
小上がりで丁寧なご挨拶をいただき、ほっこりとした気持ちで荷物を預けます。そしてさっそくきもの選びがスタート。
▲「岡本」で扱っているのは、デザイナーズきものをはじめ約1000着
ずらりと並んだ色とりどりのきものに、「これも素敵」「あれも可愛い」と、うれしい悩みでいっぱいになってしまいます。取材日は6月下旬だったため、お店には涼やかな単衣(ひとえ)が並んでいました。今回特別に、本来なら10月~5月ごろに着る袷(あわせ)をご用意いただきました。
きものが決まったら、帯や帯揚げなどを店員さんが提案してくださいます。「帯揚げはきものと帯との仲介役なので、目立たない色がいいですよ」と頼もしいアドバイスも。
▲帯留めも約350種類用意されている
▲カップルで来た際も、相手の着付けをゆっくりと待つことができる待合室を完備

一式選び終わったら、いよいよ別室にて着付けが始まります。
てきぱきと長襦袢(ながじゅばん)、袷(あわせ)と着付けてくださるのは浅田久美子(あさだくみこ)さん。10年近く勤めていらっしゃるベテランで、「岡本」で働く前もご自身で長く着付けをされていたのだそう。
「岡本」では着付け師になるにはテストが必須。小紋、訪問着、振袖などを着崩れしないように着付けることができるか、厳しい技術チェックをパスした方だけが勤務されているそうです。着慣れないきもので一日を過ごすのですから、付け焼刃ではない、その高い技術に安心します。
着付け時間はたったの10分ほど。あっという間に帯が結び上がりました。
今回のプランにはヘアセットが付けられており、ロングなら6種類のアップスタイル、ショートなら3種類から選ぶことができます。普段自分ではできない、編み込みスタイルを選ばれる方が多いそうです。また、プラス1,000円(税込み、以下同)で、自由なアレンジをリクエストすることも可能。こちらもヘア専門の美容師さんが手際よく、約10分ほどで仕上げてくださいました。
▲髪飾りは無料で選ぶことができる
▲きものに色味を合わせた髪飾り

今回ご紹介しているプランには、帯、色襟、帯飾り、カバン、草履(ぞうり)、足袋(たび)がセットになっています。でも今日は、老舗料亭の「竹茂楼」にうかがうので、せっかくならしっとりとした大人の佇まいを演出したい――。そこで、きものを変え、帯をお太鼓に結んでいただくことにしました(お太鼓帯プラス1,000円)。
かばんも、きものに合わせて選びます。巾着タイプは最初に着たきものに似合いそうです。
こちらが、それぞれの装いになります。右のアンティークきものは、鮮やかな色合いがとても若々しく、可愛い印象です。そして左の袷(あわせ)は、凛とした大人の色香が漂っています。モデルさんも「こんなに印象が変わるなんて、きものって楽しいですね」と、きものの奥深さを味わっていました。

女らしいふるまいが自然と出てしまう、きもので京都散策

着替えを「岡本」に預けたら、お食事の前に、きもの姿で京都の町を散策しましょう。「岡本」の周辺には名所がたくさんあります。今日はねねの道を通って、高台寺を訪れてみます。
▲上品なお太鼓結びが、石畳に映える

きもの姿だと、ねねの道に立ち並ぶ和小物店やカフェをのぞきながら、ゆっくりと歩くだけでも気分が高揚します。
生い茂る木々に囲まれた、台所坂のなだらかな石階段を登ってゆくと、その先に高台寺の大門が現れました。
高台寺は、1606(慶長11)年、豊臣秀吉の正室であった北政所(きたのまんどころ)、通称ねね(または、おね)が、秀吉の菩提を弔(とむら)うために建てた寺院です。近くにある圓徳院(えんとくいん)に住んでいたねねは、毎日、高台寺まで通っていたそうです。
散策の休憩には、お抹茶席のある「雲居庵(うんごあん)」で一服いただきましょう。
▲お抹茶に、お茶菓子がついて500円。庭にも席があり、眼福のひとときを過ごせる
広い境内には、桜、竹、百日紅、紅葉などが植えられ、一年を通して楽しませてくれます。お天気もよく、時折、心地よい風が頬を撫でてゆくこの日。「ねねの秀吉への想いが詰まった高台寺を拝観していると、温かな気持ちがわいてくるようです」。モデルさんの表情も立ち居振る舞いも、とても自然になっていきました。

きもので料亭を訪れ、京懐石をいただく。それも素晴らしい文化

散策が終わり、「竹茂楼」へ向かうときに、おすすめなのが「MKタクシー」です。「MKタクシー」では、きもので乗車すると運賃が1割引になる、きもの割引を行っているのです。グループのなかで、ひとりでも和装の方がいると、適応されるというのですから、とてもありがたいですね。
最近はボックスタイプの車両も増えました。運転手の方が乗車しやすいように、踏み台を置いてエスコートしてくださり、お嬢様気分に。車内は天井が高く足元も広々としていますから、着崩れを気にすることなくゆったりと移動できます。
▲「竹茂楼」は、地下鉄東西線・東山駅より徒歩約5分

わずか10分ほどのドライブで、高台寺から「竹茂楼」に到着しました。その名にちなんで、表玄関には竹が植えられ、サヤサヤと心地いい葉の音をたてながら、客人を出迎えてくれます。
「美濃吉」は享保年間(1716~1736年)に、今の三条京阪の近くに腰掛茶屋(※屋外で、豆腐田楽など軽食や酒を提供する小屋)を開いたのが始まりとされています。その後、川魚料理屋として形を整え、江戸時代後期には京都所司代(きょうとしょしだい)から「川魚生洲八軒(かわざかないけすはっけん)」のうちの一軒として認可を受けました。そして明治時代には、その名は全国に知られるほどの有名店になっていったそうです。
戦前戦後の混乱期も乗り越え、1992(平成4)年に、日本建築の重鎮である今里隆氏の設計による、数寄屋(すきや)造りの本館と、合掌(がっしょう)造りの別館からなる「美濃吉本店 竹茂楼」として生まれ変わりました。「川魚生洲八軒」で現存しているのはこちらしかなく、玄関の暖簾に書かれた「川魚生洲」の文字は、原点が川魚料理であることを象徴しています。
今回は数寄屋造りの本館のお部屋で京懐石をいただきますが、お食事の前に別館を見せていただきました。
▲合掌造りの別館は他のお客様がいらっしゃらないときに限り見学可能
▲天井が高く、張り巡らされた梁の荘厳さに息をのむ
▲1895(明治28)年のある夜、「美濃吉」を贔屓(ひいき)にしていた、書家であり、貴族院議員でもあった巌谷一六(いわやいちろく)が、店の繁栄を願って「竹茂楼」と記した。これより100年後の本店改装にあたり、「竹茂楼」と名を改めたという

とても美しい合掌造りに、思わずため息が漏れます。ほかのお客様へのご迷惑にならなければ、館内での記念撮影もOK。きもの姿での写真はフォトジェニックな雰囲気になること必至です。
数寄屋造りの本館では、京都を表現した苔むす竹林の庭がそれぞれの座敷に面しており、食事を楽しみながら四季折々の風情を感じることができます。
和室ではありながらもテーブル席になっており、足元には足用のやわらかなクッションが置かれ、きものでも身体を楽にして食事ができる気配りが。掛け軸も、テーブル席から見ることを配慮して、あえて高い位置に掛けているそうです。
調理総支配人を務める、若主人の佐竹洋治(さたけようじ)さんは、地方自治体などの料理教室や、子供たちへの食育事業の講師を務めたことも。京都の食文化発展事業にも積極的に取り組んでいらっしゃいます。
本プランでいただく懐石コースのなかから、より「美濃吉」らしい料理を感じられる4品をご紹介します。
まずは6月末日の厄除けを意味する茅の輪(ちのわ)くぐり、それをイメージした飾りをあしらった、先付です(取材日は6月)。水無月胡麻豆腐(みなづきごまどうふ)に、じゅん菜、小豆にわさびが添えられています。出汁と絡みあう、胡麻豆腐のなめらかさに、ふと目を閉じ感じ入る一品です。
「胡麻豆腐作りは、葛とわらび粉を、とろ火で30分練り続けなければならない重労働なんです。IHや、ゼラチンなどいろいろな方法と食材を試す機会がありましたが、結局、昔ながらのこの方法でしか、絶妙なとろみは生まれないことが分かりました」(佐竹さん)
▲前菜:手前中央より時計回りに、すっぽんフォアグラゼリー、新甘芋、新蓮根、鱧寿し、白瓜うるか和え、車海老酒盗焼

すべて、女性が食べやすいひと口サイズです。すっぽんフォアグラゼリーの、出汁の効いたぷるっぷるの食感と、フォアグラの濃厚な味わいの重なりに、衝撃と感動を覚えました。
「美濃吉」の名物のひとつが、しゃぶしゃぶです。目の前で、最上級の黒毛和牛を湯に軽くくぐらせたものを器に盛っていただきます。そのパフォーマンスを拝見するのも、楽しい時間です。
昆布や柑橘類などの25種類の調味料による胡麻だれは、胡麻の風味を保ちながらもサッパリとし、お肉の旨みを引きたてます。
「きものを着ていると、帯があるのでいつもよりおなかがいっぱいになりやすいと思います。このあたりから、様子を見てお出しする分量を調整していきます」(佐竹さん)
▲御飯:こしひかり、名物 鰻かば焼

炭火でじっくり焼いてから蒸すという、江戸焼きの鰻も名物です。ふんわりとした口あたりのいい鰻と、粘りと甘みのあるこしひかりが口中に広がると、それは至福の時。江戸時代から川魚を扱ってきた歴史を感じます。
佐竹さんは、“料亭ときもの”の関係について語ってくださいました。
「料亭では、仲居さんたちはみな、きもので接客しています。また、お座敷に呼ぶ芸舞妓さんも、きものを着ています。きものの文化が料亭には根づいているんです。きものはそのお家ごとにも文化がありますよね。たとえば、祝い事の帯締めが代々受け継がれていたり……。きものとは家のプライドを象徴するものでもあります。ですから、お客様にもきものを着てお越しいただけるのは、このうえなく名誉なことだと思います」(佐竹さん)
若主人のご配慮のおかげで、おなかもちょうどいい感じです。この後、きもののままバーへ行くのもいいかもしれません。
きものは翌日、店舗に返却しに行くこともできますし(要事前相談)、「岡本」のスタッフが荷物と着替えを届けてくださるので、「竹茂楼」のお部屋で自分の服に着替えて帰ることもできます。
きものとの関わりの深い京都で、たっぷりときもの時間を楽しめるこのプランは、しっとりと大人の気持ちを満たしてくれるものでした。

撮影:竹中稔彦
竹中式子

竹中式子

フリーの編集者兼ライター。京都・伏見育ち。東京の出版社で16年間、漫画やライフスタイル誌の編集に関わったのち退職。そのまま台湾遊学という、一種典型的なアラフォー女性の道を歩みました。台湾では美味しいもの探しの日々を満喫。帰国後は伏見の水と清酒を飲みながら、久々に身近になった京都の文化を勉強中です。

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