北海道スープカレー界の革命児!? 「奥芝商店」の海老出汁スープカレーは野菜たっぷり濃厚カレー

2015.10.30 更新

今や世界中で愛されるカレー。しかし、カレーの世界というのは奥深いもの。この企画では、カレーの第一人者・井上岳久先生と、私、カレー初心者ライター・井上こんの“ダブル井上”で全国の名店カレーを食べ歩き、先生の解説とともに地域性や歴史背景も交えてさまざまなカレーを紹介していきます!

前回は名古屋カレーうどんの源流となった老舗「鯱乃家」をご紹介しました。さて、今回はどんなカレーが登場するのでしょうか?

【Contents】

1.スープカレー界の革命児
2.甘海老2千匹のエキスが大爆発

スープカレーは40年を超える歴史を持ち、北海道にはその源流ともいえる「アジャンタ」「スリランカ狂我国」「木多郎」といった名店たちがあります。しかし、長いあいだ全国的にはあまり知られていませんでした。それがなぜ、今スープカレーが人気なのか。それは2003年の“あること”がきっかけでした。
それ以来さまざまな趣向を凝らしたスープカレーが登場し、今回ご紹介する「奥芝商店」も道内外から熱い視線を送られるお店のひとつです。

1.スープカレー界の革命児

古民家を改装した「奥芝商店」札幌本店は昭和テイストを残した温かみのある造り。入口からすでにノスタルジックな気分にさせてくれます。

※「奥芝商店 札幌本店」は移転のため2016年8月31日に閉店しました。
▲表札が「カレー」とはまたシャレてます
さて、スープカレーの認知度が全国的に広がるきっかけとなった“あること”とは一体?

井上「北海道以外で知名度の低かったスープカレーが、なぜ今これだけ人気なのか。それを語る上で外せないのが、札幌発のスープカレー専門店『マジックスパイス』ですね。ここが2003年に横濱カレーミュージアムで成功を収め、他店の東京進出にも勢いがついた。今、東京だけでもスープカレー専門店って50店舗はあるんじゃないかな」

こん「なるほど、『マジックスパイス』はさしずめスープカレー人気の立役者ってとこですね」
井上「そうだね。で、本題に戻るとここ『奥芝商店』の特徴はなんといっても“出汁”。スープカレー界にとってはまさに革命といえるくらい斬新な出汁がここで誕生したんです」

なぜ「奥芝商店」の出汁が革命と言われるのか。井上先生によると、現在80とも120ともいわれる道内のスープカレー店には、厳密ではないものの「ルーがスープ状であること」「野菜の形がしっかり残っていること」「ワンレッグのチキンが乗っていること」などのほか「出汁を使う(※)」という定義があるそう。

(※)出汁は鶏やカツオなど店ごとに異なる

こん「へぇ~なるほど。それで、『奥芝商店』の出汁というのは…(お店の外にも良い香りが漂っていたから薄々気がついてはいますが…)」

井上「ずばり、海老だね!」

こん「(やっぱり~!)」

井上「もともと魚介系の出汁を使ったスープカレー自体少なかったのだけど、こちらは海老出汁という新ジャンルを打ち立てたことで有名になったんです。で、これは余談ですが、その土地の旨いものというのはある職業の人たちがよく知っていたりするんだよね。たとえばさぬきうどんの旨い店を聞くならタクシーの運転手、ラーメンならトラックの運転手。で、スープカレーの情報はというと地元の美容師がよく知っているんだよ」

こん「美容師さん?なぜですか?」

井上「スープカレーというのは道内でも若い世代に好まれるため、トレンドに敏感な美容師もおのずとスープカレーに詳しくなるんだね。この辺りの美容師におすすめの店を聞けば、まず『奥芝商店』の名前が挙がってきますよ」
▲札幌本店店長の松岡剛史さん

ここで店長の松岡さんにも海老出汁の秘密を聞いちゃいました。
松岡店長「うちの出汁は甘海老をベースにしていて、一度の仕込みでおよそ2千匹分の甘海老の頭を使います。これで大体130人前くらいですね。レシピの考案者である社長によると、社長のお母さんがよく作ってくれた海老出汁のお吸い物がヒントになっているそうです」

2.甘海老2千匹のエキスが大爆発

特製海老出汁を使った同店人気ナンバーワンメニューが…こちら!
▲「やわらかチキンと特選野菜かり~の巻」1,280円(税込)

辛さは0~12の中から選ぶことができます。今回は海老が目的なので「2」と抑えめに。
運ばれてきた瞬間、海老の上品な香りがふわっと店内に広がります。井上先生も私も思わず身を乗り出してしまいました。
▲では、いただきまーす!
甘海老2千匹分のエキスがここに詰まっているかと思うと…ワクワクを超えてもはやゾクゾクさえしてきます。
パクッ。
「濃い…」。いや、恋だこれは。海老味噌の旨みを閉じ込めたスープは濃厚なコクあり、ピリリと軽快なスパイスありと剛柔の効いた仕上がり。甘海老のポテンシャルが最大限に生かされています。思わず肩の力がフッと抜けるような気さえしてくるから不思議。
それにしても、契約農家から仕入れるこだわりの無肥料野菜のインパクトもすごいこと、すごいこと。この日の具材はカボチャ、ピーマン、ナスなどがふんだんに使われており、赤、緑、黄…と華やかな見た目はまるで野菜祭り。食べ応え抜群なのはもちろんのこと、ボイルやグリルと野菜ごとに異なる食感も楽しめます。
▲ほれ、そこの骨つきチキンも出ておいで
▲北海道のブランド米「ななつぼし」はスープと相性のよい固めの仕上がり
▲「1杯分ずつ作るのが美味しさの秘密」だそう

それでは本日の格言タイムへ!
井上「名カレーは地元裏情報ツウに! 札幌スープカレーは美容師」
こん「濃厚! 海老出汁120%の世界を体感せよ!」

「魚介系は難しい」と言われていたスープカレー界に新たな風を吹き込むヒントとなったのは、創業者のお母さま特製の海老出汁お吸い物、いわばおふくろの味でした。芳醇な甘海老エキスをストレートに感じられる絶品スープカレー。素材の味を生かした地元野菜とともにお試しあれ!
▲何のポーズかって? そりゃぁ海老に決まってるじゃないですか

奥芝商店のみなさん、ありがとうございました!

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。

井上こん

井上こん

1986年生まれのフリーライター。「Yahoo!スポーツナビDo」「SPA!」「nomooo」「ウートピ」などのWEBメディアや雑誌「散歩の達人」などで執筆。

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