期間限定の「松茸小屋」でマツタケ三昧!全国有数のマツタケの産地、長野県塩田平で旬の味覚に舌鼓
秋の味覚にして、高級食材の代名詞といえば「マツタケ」。長野県は日本有数の産地として知られていますが、なかでもアカマツ林が自生する上田市の塩田平周辺は県内随一の名産地です。収穫シーズンである9月から11月には山中で野趣あふれるマツタケ料理を堪能できる「松茸小屋」がオープンすることから、同地へと車を走らせました。

人気店のひとつ、創業49年を迎える「見晴台」へ

はやる気持ちをおさえて向かったのは、上田市内に13ある「松茸小屋」のひとつ、創業49年を迎える「見晴台」。9年前は塩田平を一望できる断崖絶壁の高台に建っていましたが、建物の老朽化とアクセスを考慮して、2006年に現在の奈良尾山の麓へと移転しました。
多くの「松茸小屋」は駐車場からしばらく山中を歩かないと辿り着けませんが、この「見晴台」は駐車場が隣接し入り口がスロープになっているので、足腰が弱い方や車椅子の方も利用しやすい造りになっています。

それにしても、林の中に建つ建物は想像以上に野趣あふれる簡素な雰囲気。小屋というよりも「ビニールハウス」といった趣です。ここで高級食材の松茸が味わえるなんて…! 期待と不安が入り混じった気持ちで建物に近づくと、奥からふわ~っと松茸の芳醇な香りが漂ってきました。一気にテンションが上がります。

迎えてくれたのは、二代目の店主となる小林洋子さん。先代の父・小林新治さんは“見晴台の名物オヤジ”として多くの人を惹き寄せる人柄で親しまれていましたが、2015年4月に急逝され、洋子さんは急遽、二代目として小屋を切り盛りするようになったのだそう。

駆け引きが必要な松茸の仕入れ面では苦労も多いそうですが、「口が悪いところも含めて先代のDNAを引き継いでいるから、10年後には私もあんな感じになっているかな」と笑います。また、代替わりの苦労から「これでもげっそり痩せたんだよ」と話すユーモアな一面も。
いざ、実食! 「松茸の姿焼き」でさらにテンションアップ
注文したのは、人気の「松茸の姿焼き」が入った「佐助コース(税込11,000円)」。ずらりと9品が揃います。

メニューは単品料理と税込5,150円から楽しめるコース料理がありますが、基本的にコース料理は品数と値段が比例しており、やはり松茸本来の味わいや食感をいろいろと堪能したいなら「姿焼き」や「松茸の銀蒸し(1本)」が入ったコースがおすすめ。これらに対峙したときの気分の高揚感はぜひ体感してほしいもの。


まずは厚めのマツタケがてんこ盛りになった「すき焼き」です。

マツタケのほか、地鶏にネギやこんにゃくも入って具沢山なので、これだけでお腹がいっぱいになりそうですが、そもそもこんなに盛って大丈夫? そう思っていると、洋子さんの母、つまり先代の妻である美知子さんがこう説明してくれました。
「先代は損得を気にしない人だったし、私たちもマツタケが少ないのは格好悪いと思っているから、このくらいかな、と盛り付けていくと山盛りになっちゃうんですよ」
2011年の東日本大震災の際には、先代が「被災者に信州名産のマツタケを味わってほしい」と上田市の東塩田商工振興会に提案し、地元産マツタケ約50kgを使って福島県相馬市で、ご飯の炊き出しとボランティアを行ったという思い出話も涙ぐみながら話してくれた美知子さん。
大きな存在を失った悲しみはいまも続いていますが「損得勘定をせず、人のためになることをしたい」という先代の遺志は、惜しみなくマツタケを盛り込む「見晴台」のスタッフにしっかりと引き継がれているようです。

この「すき焼き」をはじめ、いずれのメニューもマツタケのおいしさをぜいたくに味わえるのですが、特に太鼓判を押したいのが、マツタケの香りが存分に楽しめて心も体も温まる「松茸土瓶蒸し」です。
というのも、山中にある松茸小屋の夜は天候によってかなり冷え込むのですが(防寒着必須!)、厚めに切られたマツタケがいくつも入った土瓶蒸しは、そんな冷えた体にぐっと染み渡るおいしさなのです。

マツタケが貴重で高級な理由
シイタケなどは伐採した木に菌を植え付けて栽培しますが、生きたアカマツに寄生して成長するマツタケは自然に生えているものを採取しなければいけません。つまり天然ものを採ってくるほかないので大量生産ができず、収穫量も安定しないので、高価になってしまうのです。

また、近年は昔のように山を手入れする人も少なくなっていて、アカマツ林が荒廃していることも原因にあるようです。加えて「日本人はマツタケが好き」という理由もあるのだとか。なんと、私たちが芳香だと思っているこのマツタケ独特の香りは、外国人には受け入れ難いそうで、海外ではまったく人気がないといいます。文化の違いっておもしろいものですね。
さらにマツタケは生鮮食品であって、香りと味わいは鮮度が命。松茸山で採取してから調理するまでの時間が早ければ早いほどよいとされ、採取後2~3日ほどが限界だとされています。その点、輸入ものは輸送の段階でどうしても時間が経って鮮度が落ちてしまううえに、農薬等の関係で香りまで洗浄されてしまうので、国産ものにかなわないのは明らかです。

旬の味を「松茸小屋」で味わう魅力
ところで、マツタケ料理は街なかの日本料理屋や割烹でも味わうことができます。それでも、わざわざ「松茸小屋」に足を運びたくなる魅力ってなんでしょう。やはり採れたての香り高い新鮮なマツタケを存分に堪能できることに加え、山の中にある期間限定の小屋の中で高級食材を味わう、という“非日常感”ではないでしょうか。

さらに、昔は男性客の宴会の予約が多かったのですが、最近では女子会の利用率も高いそう。確かに、ドライブ気分で遠くに出かけ、現地に足を運ばないと食べられない旬の食材を味わう特別感には大きな魅力があります。
「見晴台」の店内の一角にはおみやげコーナーもあり、マツタケを購入することも可能。ほかにも、手頃な価格の加工品や信州の特産品などもあります。


なお、この塩田平周辺は鎌倉時代の史跡や神社仏閣が多く点在していることから「信州の鎌倉」とよばれ、往時の面影を残す名所です。さらに見晴台から車で15分ほどの「別所温泉」は信州最古の温泉で、2016年のNHK大河ドラマとなる真田幸村ゆかりの地として盛り上がりを見せており、観光地として注目を集めています。

温泉街のなかには、厄除観音として知られる「北向観音堂」や、木造の八角塔としては全国で1つしかない国宝「木造八角三重塔」を有する「安楽寺」といった寺社仏閣もあり、散策も楽しめます。

自然と紅葉、そして温泉や歴史散策も合わせて楽しめる上田市塩田平の「松茸小屋」。ここに足を運んだ者しか味わえない、旬の旨味と醍醐味を心ゆくまで満喫してみませんか。
信州上田 奈良尾山 見晴台
長野県上田市富士山4248
[営業時間]11:00~21:00(食事のL.O.18:00)※9月上旬~11月下旬
[定休日]営業期間中なし
0268-38-5884

島田浩美
編集者/ライター/書店員。長野県出身・在住。信州大学卒業後、2年間の海外放浪生活を送り、帰国後、地元出版社の勤務を経て、同僚デザイナーとともに長野市に「旅とアート」がテーマの書店「ch.books(チャンネルブックス)」をオープン。趣味は山登り、特技はマラソン。体力には自信あり。(編集/株式会社くらしさ)
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
この記事の関連キーワード
こちらもおすすめ
上田・小諸・佐久で体験できるプラン
-
オンライン予約OK
【信州小諸の老舗旅館別邸】趣きある旧古民家(国登録有形文化財…
約60分|2,750円(税込) / 人
上田・小諸・佐久
-
オンライン予約OK
【信州浅間山麓】浅間サンライン沿いの眺めの良い農場で有機栽培…
約60分|300円(税込) / 人
上田・小諸・佐久
-
オンライン予約OK
【信州浅間山麓】浅間サンライン沿いの眺めの良い農場で有機栽培…
約60分|300円(税込) / 人
上田・小諸・佐久
-
オンライン予約OK
【長野・上田】松茸を味わい尽くす松茸料理(Eコース) 所有管…
約2時間|16,500円(税込) / 人
上田・小諸・佐久
-
オンライン予約OK
【長野・上田】松茸を味わい尽くす松茸料理(Cコース) 所有管…
約2時間|11,000円(税込) / 人
上田・小諸・佐久