期間限定の「松茸小屋」でマツタケ三昧!全国有数のマツタケの産地、長野県塩田平で旬の味覚に舌鼓

2015.11.04 更新

秋の味覚にして、高級食材の代名詞といえば「マツタケ」。長野県は日本有数の産地として知られていますが、なかでもアカマツ林が自生する上田市の塩田平周辺は県内随一の名産地です。収穫シーズンである9月から11月には山中で野趣あふれるマツタケ料理を堪能できる「松茸小屋」がオープンすることから、同地へと車を走らせました。

▲比較的、養分の少ない乾燥した場所を好んで自生するマツタケ。アカマツをはじめとする針葉樹が多く含まれる混合林の地上に生えることが多く、高緯度の冷涼な上田市塩田平はその最適地にあたる

人気店のひとつ、創業49年を迎える「見晴台」へ

塩田平の道路を走っていると、至るところに立っている「松茸小屋」への案内板や幟(のぼり)が目に入ります。これを見るだけでも「いよいよ“松茸山”にやってきたんだな!」と自然とワクワク感が高まってきます。
▲道路脇には地区内に点在するさまざまな「松茸小屋」の案内板が。このように幟が連続して見えてきたら目的地まではあと少し!

はやる気持ちをおさえて向かったのは、上田市内に13ある「松茸小屋」のひとつ、創業49年を迎える「見晴台」。9年前は塩田平を一望できる断崖絶壁の高台に建っていましたが、建物の老朽化とアクセスを考慮して、2006年に現在の奈良尾山の麓へと移転しました。

多くの「松茸小屋」は駐車場からしばらく山中を歩かないと辿り着けませんが、この「見晴台」は駐車場が隣接し入り口がスロープになっているので、足腰が弱い方や車椅子の方も利用しやすい造りになっています。
▲駐車場から緩やかなスロープでつながる「見晴台」。アカマツ林に囲まれた立地で、庭の植栽は先代の小林新治さんがお客様に喜んでほしいと整えたもの

それにしても、林の中に建つ建物は想像以上に野趣あふれる簡素な雰囲気。小屋というよりも「ビニールハウス」といった趣です。ここで高級食材の松茸が味わえるなんて…! 期待と不安が入り混じった気持ちで建物に近づくと、奥からふわ~っと松茸の芳醇な香りが漂ってきました。一気にテンションが上がります。
▲席数は全部で250! 座敷のほかに膝や腰に負担の少ない椅子席や個室の用意も

迎えてくれたのは、二代目の店主となる小林洋子さん。先代の父・小林新治さんは“見晴台の名物オヤジ”として多くの人を惹き寄せる人柄で親しまれていましたが、2015年4月に急逝され、洋子さんは急遽、二代目として小屋を切り盛りするようになったのだそう。
▲「先代のやり方を引き継ぎながら、気楽に来てもらえて、リピーターには『おかえり』と言えるくらいアットホームな店にしたい」と話す、二代目店主の小林洋子さん

駆け引きが必要な松茸の仕入れ面では苦労も多いそうですが、「口が悪いところも含めて先代のDNAを引き継いでいるから、10年後には私もあんな感じになっているかな」と笑います。また、代替わりの苦労から「これでもげっそり痩せたんだよ」と話すユーモアな一面も。

いざ、実食! 「松茸の姿焼き」でさらにテンションアップ

「まずは自然の中の雰囲気を楽しみながら、マツタケを食べてみてください」と洋子さん。では、早速いただきます!

注文したのは、人気の「松茸の姿焼き」が入った「佐助コース(税込11,000円)」。ずらりと9品が揃います。
▲全9品の「佐助コース」。左下から時計回りに、松茸の天ぷら、松茸ご飯、香の物(漬け物)、松茸汁、松茸すき焼きなべ、松茸土瓶蒸し、松茸入茶わん蒸し、松茸の酢の物、そして真ん中に松茸の姿焼き

メニューは単品料理と税込5,150円から楽しめるコース料理がありますが、基本的にコース料理は品数と値段が比例しており、やはり松茸本来の味わいや食感をいろいろと堪能したいなら「姿焼き」や「松茸の銀蒸し(1本)」が入ったコースがおすすめ。これらに対峙したときの気分の高揚感はぜひ体感してほしいもの。
▲せっかくここまで足を運んだのだから、この「松茸の姿焼き」を味わう興奮はぜひ楽しんでいただきたい!
▲コース料理は「千曲川コース」(税込5,150円)から「見晴台コース」(税込15,500円)まで。「お子様コース」(税込2,600円)や単品メニューも

まずは厚めのマツタケがてんこ盛りになった「すき焼き」です。
▲たっぷりの厚切りマツタケと地鶏が入った「すき焼き」。これだけでも十分満足ですが、コース料理はまだまだこれから

マツタケのほか、地鶏にネギやこんにゃくも入って具沢山なので、これだけでお腹がいっぱいになりそうですが、そもそもこんなに盛って大丈夫? そう思っていると、洋子さんの母、つまり先代の妻である美知子さんがこう説明してくれました。

「先代は損得を気にしない人だったし、私たちもマツタケが少ないのは格好悪いと思っているから、このくらいかな、と盛り付けていくと山盛りになっちゃうんですよ」

2011年の東日本大震災の際には、先代が「被災者に信州名産のマツタケを味わってほしい」と上田市の東塩田商工振興会に提案し、地元産マツタケ約50kgを使って福島県相馬市で、ご飯の炊き出しとボランティアを行ったという思い出話も涙ぐみながら話してくれた美知子さん。

大きな存在を失った悲しみはいまも続いていますが「損得勘定をせず、人のためになることをしたい」という先代の遺志は、惜しみなくマツタケを盛り込む「見晴台」のスタッフにしっかりと引き継がれているようです。
▲濃いめの割り下で煮た「すき焼き」は、新鮮な玉子でいただきます

この「すき焼き」をはじめ、いずれのメニューもマツタケのおいしさをぜいたくに味わえるのですが、特に太鼓判を押したいのが、マツタケの香りが存分に楽しめて心も体も温まる「松茸土瓶蒸し」です。

というのも、山中にある松茸小屋の夜は天候によってかなり冷え込むのですが(防寒着必須!)、厚めに切られたマツタケがいくつも入った土瓶蒸しは、そんな冷えた体にぐっと染み渡るおいしさなのです。

マツタケが貴重で高級な理由

ところで、マツタケってどうしてこんなに高価なのでしょう。調べてみるとその背景には、一般的に市場に出回っているシイタケやエノキなどのキノコとは異なり、人工栽培ができないことが理由のひとつにあるようです。

シイタケなどは伐採した木に菌を植え付けて栽培しますが、生きたアカマツに寄生して成長するマツタケは自然に生えているものを採取しなければいけません。つまり天然ものを採ってくるほかないので大量生産ができず、収穫量も安定しないので、高価になってしまうのです。
▲「見晴台」のマツタケはこんなに大きい! 香りだけでも十分なごちそう

また、近年は昔のように山を手入れする人も少なくなっていて、アカマツ林が荒廃していることも原因にあるようです。加えて「日本人はマツタケが好き」という理由もあるのだとか。なんと、私たちが芳香だと思っているこのマツタケ独特の香りは、外国人には受け入れ難いそうで、海外ではまったく人気がないといいます。文化の違いっておもしろいものですね。

さらにマツタケは生鮮食品であって、香りと味わいは鮮度が命。松茸山で採取してから調理するまでの時間が早ければ早いほどよいとされ、採取後2~3日ほどが限界だとされています。その点、輸入ものは輸送の段階でどうしても時間が経って鮮度が落ちてしまううえに、農薬等の関係で香りまで洗浄されてしまうので、国産ものにかなわないのは明らかです。
ちなみに2015年のマツタケは、梅雨時の降雨と夏の猛暑、秋に入ってからの昼夜の大きな寒暖差によって、近年でも特に豊作で良質なのだそう。マツタケの出来は自然に左右されるからこそ、豊作の2015年はぜひとも見逃さないでいただきたい!

旬の味を「松茸小屋」で味わう魅力

フルコースを堪能したら、もうマツタケで心もお腹もいっぱい。今までの人生でこんなにマツタケを食べたことはなく、なんだかバチが当たりそうなくらいぜいたくをした気分です。

ところで、マツタケ料理は街なかの日本料理屋や割烹でも味わうことができます。それでも、わざわざ「松茸小屋」に足を運びたくなる魅力ってなんでしょう。やはり採れたての香り高い新鮮なマツタケを存分に堪能できることに加え、山の中にある期間限定の小屋の中で高級食材を味わう、という“非日常感”ではないでしょうか。
洋子さんも「この自然の中でほっとひと息つきながら、紅葉や景色を楽しみつつ採れたてのマツタケ料理を味わっていただけたら」と話します。ちなみに、「見晴台」はリピーターが6割にものぼるそうで、そこから口コミによってさらに人気が高まり、近年は予約をしないとなかなか入れないとあって、帰り際に来年の予約を入れていく人も多いのだとか。

さらに、昔は男性客の宴会の予約が多かったのですが、最近では女子会の利用率も高いそう。確かに、ドライブ気分で遠くに出かけ、現地に足を運ばないと食べられない旬の食材を味わう特別感には大きな魅力があります。

「見晴台」の店内の一角にはおみやげコーナーもあり、マツタケを購入することも可能。ほかにも、手頃な価格の加工品や信州の特産品などもあります。
▲松茸の水煮(税込1,000円)、松茸釜めし(税込600円)

なお、この塩田平周辺は鎌倉時代の史跡や神社仏閣が多く点在していることから「信州の鎌倉」とよばれ、往時の面影を残す名所です。さらに見晴台から車で15分ほどの「別所温泉」は信州最古の温泉で、2016年のNHK大河ドラマとなる真田幸村ゆかりの地として盛り上がりを見せており、観光地として注目を集めています。
▲効能豊かな3つの共同浴場(外湯)は税込150円で浸かることができる

温泉街のなかには、厄除観音として知られる「北向観音堂」や、木造の八角塔としては全国で1つしかない国宝「木造八角三重塔」を有する「安楽寺」といった寺社仏閣もあり、散策も楽しめます。
▲信州最古の禅寺である安楽寺に建つ「木造八角三重塔」。全国で唯一の木造八角塔で、長野県で初めて国宝に指定された

自然と紅葉、そして温泉や歴史散策も合わせて楽しめる上田市塩田平の「松茸小屋」。ここに足を運んだ者しか味わえない、旬の旨味と醍醐味を心ゆくまで満喫してみませんか。
島田浩美

島田浩美

編集者/ライター/書店員。長野県出身・在住。信州大学卒業後、2年間の海外放浪生活を送り、帰国後、地元出版社の勤務を経て、同僚デザイナーとともに長野市に「旅とアート」がテーマの書店「ch.books(チャンネルブックス)」をオープン。趣味は山登り、特技はマラソン。体力には自信あり。(編集/株式会社くらしさ)

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