約250年続く「瀬戸本業窯」。使うほどに愛着が湧くうつわ

2015.11.05 更新

“◯◯焼”と、その土地の名前がついた焼き物が全国各地に存在しています。なかでも「瀬戸焼」と呼ばれる、愛知県瀬戸市とその周辺で作られている焼き物は、全国的に知られているのでは? そんな「瀬戸焼」の魅力を、約250年続く「瀬戸本業窯(せとほんぎょうがま)」に教わりました。

毎日使いたくなる、日常使いのうつわ

「焼き物は使った分だけ大切になる」そんな想いで生み出されている「瀬戸本業窯」のうつわ。特別な日に使うものではなく、丈夫で使いやすく、毎日使いたくなるような日常の食器として作られています。
「瀬戸本業窯」のうつわを手に取ってみると、確かにガッシリと重量感のある作り。これなら簡単に欠けたり割れたりすることはなさそうです。また、飽きのこないシンプルなデザインなので、和洋中と料理を選ばずに、永く愛用できます。

今も昔も変わらない、生産スタイル

「瀬戸本業窯」では、土づくりも釉薬(ゆうやく)づくりも自分たちで行っています。土は、日々の使用に耐える堅牢さを備えるために、1,300度近い高温でないと焼き締まらない地元のものを使用。釉薬は草木の灰など自然由来のものをベースに調合しています。
▲釉薬を調合する作業場の様子

作業は分業制で一つひとつ手づくり。職人たちは日々繰り返しの修業のなかで、いいものをスピーディーに作れるようになるといいます。
瀬戸焼の伝統的な柄である「馬の目」や「麦藁手(むぎわらで)」などは、あえてデザインされたものではなく、反復で描けるようになるものなんだとか。
▲馬の目
▲麦藁手

すべて手作業ながら同じ形、同じデザインを生み出す。ここに瀬戸焼本来の日用雑器づくりの歴史のなかで育まれてきた、手仕事のノウハウが詰まっています。
▲ギャラリーショップに並ぶうつわたちは、同じデザインでも少しずつ表情が違うので選ぶ楽しみがあります

瀬戸焼と、民藝運動

瀬戸焼の歴史は古墳時代にまでさかのぼりますが、他の産地と異なる特色を出すようになったのは、鎌倉時代のこと。高温で焼き締める方法が一般的だったなか、本格的に釉薬をかける技法を日本で初めて採用したのが、瀬戸焼だったといわれています。

また、江戸後期の寛政年間(1800年頃)には磁器(新製焼)の生産もはじまり、日用雑器から茶道具、美術工芸品まで、瀬戸ではあらゆる陶磁器が作られるようになりました。
▲日本のトイレタリー環境の衛生に一役買った、水周りタイルの第1号も瀬戸生まれ

「時代の潮流を捉えて新製焼を手掛ける窯元が増えましたが、うちは今も昔も瀬戸本来の陶器(本業焼)を作っています。それは、『民藝運動』の柳宗悦さんとの出会いがあったからだと思っています」

そう話すのは、「瀬戸本業窯」の8代目・水野雄介さんです。
「民藝」とは、思想家の柳宗悦が提唱した「民衆的工芸」を表現した造語。そして、「民藝運動」とは、1926(大正15)年に柳宗悦を中心メンバーとして「日本各地の無名の職人たちが生み出す日用雑器にこそ、用と美が一致した真の美がある」と提唱し、それを見つけ世に広く紹介していった活動のことです。

水野さんの祖父の時代に、「瀬戸本業窯」にも柳宗悦が実際に訪れ、その価値を見出したのです。

「6代目は勉強好きだったので、民藝の思想を受け入れたんだと思います。7代目の父は、瀬戸本業焼唯一の窯を残さなくてはいけないというプレッシャーもあった。僕は一番動ける立場なので、伝統を守りながらも新しい時代に必要なものを生み出していきたいと思っています」

陶芸体験と洞町さんぽ

「瀬戸本業窯」では陶芸体験も実施(土・日のみ受付。要予約)。実際に使われている土と自然釉薬を使って、普段職人たちが働く工房でうつわ作りを体験することができます。

コースは1日と長期の2種類。1日コースでは、普段使いの湯呑み、お茶碗、カップ、小鉢、お皿などの中から2品を選んでいただき、1品目は手捻りで、2品目は電動ロクロで2通りの作り方を体験していただきます。もちろんプロの職人がサポートしてくれるので、初心者の方でも大丈夫。

また、もっと深く陶芸について学びたい人には、5回通う長期コースで、形作りから、削り仕上げ、絵付け、釉掛けなど出来上がりまでの行程を順に体験することが可能です。
自分の手を動かして作るうつわは、世界に一つだけ。出来映えは既存の商品には敵わないかもしれませんが、どんなうつわよりも愛着が湧くのではないでしょうか。

「モノを大事にできない人は、人も大事にできないと思います。モノに愛着を持って使ってほしいですね」と水野さん。

そして、「瀬戸本業窯」のある洞町(ほらまち)には、焼き物の産地としての風景が色濃く残っています。使われなくなった窯道具で作られた「窯垣(かまがき)」が続く「窯垣の小径」や、窯元だった建物を利用した「窯垣の小径資料館」では、洞町の窯業の歴史と窯元の暮らしを垣間見ることができます。
▲「窯垣」が密集している細い路地

洞町を散歩しながら瀬戸焼や窯業の歴史に想いを馳せ、「瀬戸本業窯」で陶芸体験を楽しむ。もちろん本場の瀬戸焼のお買い物も楽しめます。

週末旅行に、瀬戸・洞町に足を運んでみていはいかがでしょうか?
長谷川浩史・梨紗(株式会社くらしさ)

長谷川浩史・梨紗(株式会社くらしさ)

広告出版社を退職後、世界一周、日本一周を経て「くらしさ」を設立。全国各地のモノ・コト・ヒトを伝え、つないでいく活動に尽力している。全国の仕事人に会いに行ける旅「Life Design Journey」も運営。http://lifedesign-j.com/

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