お茶にまつわるかき氷/小池隆介のかき氷あっちこっち食べ歩きvol.4

2015.10.31

今年の夏も暑かった。「冷夏になる、冷夏になる」と言われていたものの、蓋を開けてみると「真夏日」「熱帯夜」が続き、日本各地のかき氷屋さんも大繁盛だったようだ。

かき氷の季節も、一昔前なら「秋のお彼岸」には一段落を迎えていただろう。
「暑さ寒さも彼岸まで」との言葉に倣って、暑さが落ちつく秋分の日をかき氷の最終日と決めているお店もあり、翌日にお店を訪れてガッカリ…なんて事もあった。

ところがかき氷人気に伴って提供期間が長くなってきたこの頃では、秋になると、かき氷通の面々が「かき氷の旬はこれから!」と食べ歩きを再開するのだ。

夏の間は涼を求め、あるいは休みを利用した人々がおいしい氷を求めてかき氷店に行列する。常連客やかき氷好きな人々は混雑を避け、この季節になるとようやくお店に足を向ける。「久しぶり!そろそろ良い季節になったね」と常連同士久しぶりの再会を楽しむのだ。

かき氷を食べると少しひんやりとするこの季節、最後にお茶を頼んでからお店を出るとちょうど良い心地。今回は美味しいお茶とお茶にまつわるかき氷のお店を紹介しようと思う。

紅茶好きのための、紅茶を楽しむかき氷「ティーハウスマユール宮崎台店」

インド紅茶の専門店「ティーハウスマユール宮前台店」は、もともと紅茶と軽食を提供している喫茶店だが、数年前にかき氷を提供し始めてからは「かき氷のおいしい店」としてすっかり有名になってしまった。
夏はもちろん、冬でも週末になると行列ができる事もある神奈川の人気店だ。
▲特選ダージリン740円(税別)

ここでまず頼んでほしいのは、もちろん紅茶のかき氷。
夏から初秋限定の「特選ダージリン」は紅茶専門店ならではの直球勝負のようなかき氷で、店主が試行錯誤して紅茶の味と香りを蜜に封じ込めている。

香りの高い春摘み紅茶(ファーストフラッシュ)と、味のしっかりした夏摘み紅茶(セカンドフラッシュ)の2つをブレンドしなくてはバランスのよい紅茶シロップは出来ないのだという。
甘さは控えめで、紅茶の美味しさを最大限感じられるように余計なものは全てはぶいたシンプルなこのかき氷、紅茶を飲み慣れた人には是非こちらをお勧めしたい。

一方「アッサムとディンブラ(紅茶練乳付き)740円(税別)」は、そのまま食べても練乳をかけても美味しく食べられるようにと、香りのよいアッサムティー・味のしっかりしたアッサムティー・紅茶らしい味わいのディンブラという3つの種類の紅茶をブレンド。練乳をかけるとロイヤルミルクティーのような味になり、お子さんから大人までファンの多いメニューだ。
▲マサラチャイ800円(税別)

それ以外にも、ちょっと変化球のきいた紅茶のかき氷も充実していて、インド風ミルクティーの「チャイ」をベースに、4種類ものスパイスを煮だしたシロップをかけて頂く「マサラチャイ」やラム酒につけたレーズンを加えた「ラムチャイ」、ジンジャーシロップをいっしょにかけた「ジンジャーチャイ」など、チャイのかき氷のメニューもずらり。

冬になってフレッシュな果物が少なくなり、果物ベースのかき氷が品薄になってくるとチャイのメニューが増えるらしく、紅茶のかき氷を目当てに訪れるのであればこれからの時期が一番の狙い目!
少しゆっくりかき氷を食べて、じっくりと紅茶の旨みを味わうことが出来る。

▲黒ごまみるく800円(税別)

紅茶専門店の「マユール」だが、もちろんかき氷はこれだけでは終わらない。
もともとお菓子作りの得意な店主、旬の果物を見つけるとさっと火を通してシロップを作り上げる。
「なんだか、色々作るのが楽しくなっちゃって」と、季節の果物の他にも黒ごま・ずんだ(枝豆)・アボカドなど、ちょっとかわったかき氷もあり、いつでもかき氷のメニューボードには魅力的なメニューがぎっしりと並んでいる。
▲ぶどう760円(税別) ※提供期間9月~10月中旬
▲栗みるく880円(税別) ※提供期間10月中旬~11月中旬

一年中色とりどりのかき氷が並ぶ「ティーハウスマユール宮崎台店」、これからの季節に訪れてほしいとっておきのお店だ。

地域に寄り添う小さなコーヒー屋さん「まめしばコーヒー」

「まめしばコーヒー」に初めて立ち寄ったとき、こんなコーヒー屋さんが自宅の近くにあったら!!とうらやましく思った事を覚えている。
大きな病院や住宅街にぽつりと佇む小さな長屋。気持ちのよい公園の前にかわいい花屋さんとケーキ屋さん、そして「まめしばコーヒー」が寄り添うように営業している。
ケーキ屋さんで買ったケーキを持ち込んで、コーヒーと一緒にティータイムを楽しむ人もあれば、お花を買いに来たついでにテイクアウトのコーヒーを買って帰る人もいる。
きっと近所にあれば、この店を素通りする事なんて出来ないんじゃないかとおもうほど、あたたかいやさしい空気が溢れている。
夏の間に提供されるかき氷は、近所の子供達のために作る昔ながらの安価なかき氷と、大人向けに作るコーヒーや黒蜜の素朴なかき氷。
毎日食べに来てもらえるようにと手頃な値段に設定されているのが嬉しい。
もちろん黒蜜もコーヒーも、店主が作る自家製シロップ。今年からは果物シロップを天然甘味料・天然着色料・保存料無添加にして、更にやさしいシロップを心がけたという。
▲くろみつ抹茶400円(税込)
▲くろみつきなこ400円(税込)

コーヒーを使ったかき氷メニューは「フレンチ珈琲」一点だけ。豆やロースト具合を変えながら作るので、毎年少しずつ変化をしているようだ。
小さなお店で毎日コーヒーに向き合っている店主が作るコーヒーのかき氷を、身を委ねるように注文する。後は練乳をかけるかどうか決めるだけだ。(練乳は+50円)
▲フレンチ珈琲400円(税込)

いろんなものが選べて、カスタマイズ自由な現在。選ぶのはとても楽しいけれど、自分で選ぶとなるとちょっと緊張感を持って注文しなくてはならない。
全てお店にまかせて、出て来たものが美味しいというのも良いものだなと思う。

かき氷を受け取り好みの席に座って、店主がトポトポ落とす珈琲の香りを嗅ぎながら味わうかき氷。酸味は強くなく、ほろ苦スッキリとしたコーヒーシロップなのでコーヒー好きなら是非そのままで。練乳をかけるとミルクコーヒーのような味わいで、普段コーヒー派ではない人やお子さんも美味しくいただけると思う。
残念ながら今期は9月で終了。小さなお店なので休日を避けて行く事をお勧めする。

お茶の美味しさと地元妻沼の産物にこだわる「茶の西田園」

紅茶、コーヒーとくれば、次に紹介したいのはやはり日本茶だろう。
抹茶を使ったかき氷は日本各地に沢山あるが、玄米茶となるとどうだろう?
日本各地を食べ歩いても、なかなかお目にかかる事は無い。この玄米茶のかき氷が抜群に美味しい店が埼玉県妻沼にあるのだ。
平成24年に国宝に指定された「歓喜院聖天堂」を有する妻沼聖天山の参道にある「茶の西田園」は明治元年(1868年)創業の由緒あるお茶屋さんで、提供しているのは自家製のお茶をベースにしたかき氷。なかでも人気が高いのが玄米茶を使った「玄米茶あずきミルク」だ。
かき氷が盛られているのは飯椀で、お茶漬けをイメージしているのだという。お茶の緑に白い器が良く映えて、とても美しいかき氷だ。
▲玄米茶あずきミルク500円(税込)

濃厚な抹茶とは全く異なる味わいで、スッキリとした香ばしい玄米茶がたっぷり染みたかき氷をひと匙食べると、玄米茶がこんなにかき氷に合うのか!?と驚きを隠せなかった。
氷の上にはこれまた香ばしく煎られた玄米がちりばめられていて、カリカリと噛み砕くと更に美味しさが増す。そえられたほっこり甘いあずきと一緒に玄米茶を食べると、これもまたもちろん旨い。
玄米茶、玄米、あずき…と一つ一つの美味しさを堪能しながら、もうループがとまらない!あっという間に完食だ。

玄米茶のかき氷とともに人気なのが、ほうじ茶を使った「ほうじ茶あずき」。
こちらは玄米茶のかき氷とは異なり、黒い器に盛られて提供された。
この器の使い分けのセンスがまたいいではないか。
瀟洒な玄米茶に、無骨なほうじ茶。器も一緒に楽しんでほしいという気持ちの現れなのだろう、そんなもてなしに嬉しくなる。
▲ほうじ茶あずき500円(税込)

じつはこのほうじ茶、今年から自家焙煎に変わったため今まで以上に香り高くなったのだと言う。焙煎したてのほうじ茶の心地よい苦みを味わいながら、チャレンジ好きな店主の今後のかき氷への企みを楽しく聞いて、秋の夕暮れは深まって行く。
夏の喧噪がおわり、秋の顔のかき氷屋さんに会いにゆく。そんな密かな楽しみ
方もなかなかいいもんじゃないか、と思う。

小池隆介

小池隆介

かき氷のフードイベント『かき氷コレクション』実行委員会代表。かき氷専門ガイド本『かきごおりすと』の編集・発行者。一般社団法人日本かき氷協会代表。日本中のかき氷を食べ歩いて取材し、日本古来の食文化で伝統食でもあるかき氷を広く伝える為に活動。かき氷にとどまらず、氷雪業(氷の卸しや販売、製造)全体にも精通している。

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