粉もんとかき氷/小池隆介のかき氷あっちこっち食べ歩きvol.5

2015.11.30 更新

粉もんとかき氷、それは切っても切れない悪友のような、相性最高の相棒のような、軽食最強の組み合わせじゃないかと密かに思っている。

※雪ノ下 原宿は閉店しました(2016年2月現在)
▲神戸みなと屋「くりみるく」900円(税込)


鼻をくすぐるソースの香りと共に、フワフワと踊るかつお節、鮮やかな緑が美しい青のりがたっぷりとかけられたたこ焼きを食べた後、一番合うデザートはさっぱりとしたかき氷に間違いない。これよりピタリとくるデザートを、僕は思いつかない。
一方、熱々のたい焼きを頬張りながら、ひと匙冷んやりと口に含むかき氷のおいしいことと言ったら…。
「粉もんとかき氷って最強の組み合わせ」と思わせてくれる店を、今回は食べ歩いてみようと思う。

ソースの香りに誘われて「神戸 みなと屋」

たこ焼きが一番売れる季節は寒くなってくる秋から冬にかけて、と言われている。寒い季節に温かい食べ物を食べたくなるのは皆同じで、熱々の焼き芋・たい焼き・たこ焼きは冬になるとやたらと人を誘惑してくる。
夏には素通りできた店の前を通り過ぎる速度がめっきり遅くなって、ついには立ち止まってしまう。
逆を言えばたい焼きやたこ焼きが売れなくなるのは暑い夏だそうだ。

粉もん好きの自分としてはいつでも美味しそうに思えるし、夏の夜店の定番の一つにたこ焼きは必ず入るだろうと思うのだが、暑い夏の日中になるとぐんと売り上げが落ちこむらしく、たこ焼き専門店では「夏を乗り越えられたら年が越せる(売上が戻る)」と言われているらしい。
この売り上げが落ちる夏の期間を救ってくれるのが「かき氷」というわけだ。

「神戸 みなと屋」がかき氷を提供し始めたのは2013年の夏のこと。当初は店頭で持ち帰り用に作る市販シロップのかき氷の方がメインで、手作りシロップのかき氷の方は店内でひっそりと提供していたという。
夏の売り上げの低迷を補うつもりで始めたかき氷だったが、注文をうけてからミキサーで作る出来立ての手作りシロップを使ったかき氷が美味しいと評判になって、夏には店内には収まらないかき氷待ちの行列が商店街に溢れ出す人気の店となった。
▲おいも700円(税込)

ツイッターやインスタグラムで噂になった人気メニューは、美味しい焼き芋を使った、香ばしい石焼き芋の「おいも」のかき氷。
ごま塩ののった濃厚なお芋シロップがたっぷりかかった写真がマスコミにも取り上げられ、芋好き女子たちが押し寄せるようにやってきたという。
店内ではいつもどこかで「おいも」の注文が入っている人気のメニューだ。
▲柿700円(税込)

店主の北さんは、いつでもお客さんと談笑しながら店内をあちらこちらと移動してかき氷を作り上げている。
もともと手作りシロップのかき氷にここまで力を入れるつもりはなかった為に、かき氷の制作スペースが客席の手前と奥に分かれているのだ。
そんな「客席に最も近い店主」が、客席間近で作ったかき氷をそのまま運んで来てくれる。ふわっと匙通りのよいかき氷は、削りもシロップの掛け方も最高のバランスで、ボリュームが無い訳ではないのに食べ終わった後にすぐにもう一つ食べたくなってしまう。
メニューボードに目をやると、秋から冬が旬の「柿」や「くりみるく」の文字が…しかし続けて食べるとなると、さすがにちょっと寒いか…。
▲たこ焼き10個 670円(税込)
▲明石焼き8個 590円(税込)

そこで登場するのが、熱々のたこ焼きだ。冷たいかき氷のあとにたこ焼きを頼み、口の中をソース味に塗り替える。冷えた体は温まり、何かさっぱりしたものを…と、もう一度かき氷のメニューを眺めるというのがこのお店でのお勧めコース。
「かき氷→たこ焼き→かき氷」は夏のフォーメーションで、冬になると「かき氷→たこ焼き」の順に食べて体を暖めてから店を出る、という人もいる。
僕的には「かき氷→明石焼き→かき氷→たこ焼き」のフルコースがお勧め。少し食べすぎになってしまうのが悩ましいが、たこ焼きもかき氷もとても美味しいので、是非両方食べてほしいと思う。


片手にたい焼き、片手にスプーンの贅沢「浅草浪花家」

▲たいやき1個 150円(税込)

日本を代表する観光地、東京・浅草に店を構える「浅草浪花家」は、たい焼きといえば必ずと言っていいほど名前のあがる老舗、麻布十番の「浪花家総本店」で修行を積み暖簾分けを許された、たい焼き界のサラブレッドのような血筋の店だ。

浅草のメインストリートからは少し離れているのと、店主さんが控えめな性格で手作りシロップをあまり宣伝せずにひっそりと提供していたため、数年前は「行列のない名店」としてかき氷好きの仲間達とこっそり美味しいかき氷を楽しんでいたのだった。

もちろんそんな時期は長くは続かず、今では都内でも有名な行列店となって、夏の盛りや休日にはお店に近寄る事も出来ないほどの行列だ。
残暑が終わり風が冷たいなぁと感じ始めると、ようやくこの店の「かき氷騒動」が落ち着き、待ちに待ったたい焼きの季節が訪れる。いよいよ秋氷、冬氷の始まりだ。
▲あさやけ750円(税込)

このお店が看板メニューとして掲げるのは、たい焼き屋の自慢のあずきを使った「あさやけ」(期間限定 4月頃~8月頃)という美しいかき氷だ。
あさやけのように真っ赤に氷を染めるのは自家製のいちご蜜、更にたっぷりのあずきとあっさりしたミルクという王道の組み合わせ。あずきと自家製ミルクが混ざった味は、どこか懐かしい昭和のかき氷の味で、そこにいちごの華やかな甘酸っぱいシロップが絡んでくる。
いちごの甘さとあずきの甘さ、二つの趣の異なる甘さが互いの美味しさを惹きたてて、無糖ミルクをブレンドしたさっぱりとしたミルクがそれをまとめあげる。いつ食べても飽きない美味しさだ。
▲四種のベリーとヨーグルト750円(税込)

妖艶な美しさの「四種のベリーとヨーグルト」は、ストロベリー・ブルーベリー・ラズベリー・クランベリーを合わせたシロップに無糖ヨーグルトをトッピング、見事な調和を保っている。口の中で甘酸っぱさが広がったかと思えば、とろり濃厚なヨーグルトが酸味を緩和してくれる、じっくりゆっくりと味わいたくなる大人のかき氷だ。
▲みるくといろんなフルーツ750円(税込)

また、「みるくといろんなフルーツ」などのフレッシュフルーツをのせたパフェのようなかき氷も人気で、フルーツの味が活きるように他のかき氷のミルクとは配合を変えてあり、フルーツ単体で食べるよりもいっそう贅沢で美味しい気がする。小さなお客さん達が嬉しそうにスプーンを握りしめて頬張っているが、もちろん大人も大好きな味だと思う。
▲みるくといろんなものがはいったあんこ750円(税込)

最近気に入っているのは「みるくといろんなものがはいったあんこ」のかき氷だ。これは自家製こしあんと香ばしい木の実や種を氷の中にしのばせたかき氷で、なめらかに溶ける氷とあんこに、全く食感の異なる木の実を組み合わせた挑戦的なメニューだ。食べ始めると、とろりカリッ、とろりカリッっと噛む度に口の中に広がる木の実の香ばしさと自家製あんこの風味が混じりあう…なんという旨さ!

「浅草浪花家」の魅力は、伝統を引き継ぐ確かな味に柔らかい感性で組み合わせた新しい味の調和だ。
伝統にあぐらをかいていてはならない。けれど新しさに踊らされて基盤の味をおろそかにしてはいけない。
真面目で努力家で、お客様に常に喜んでほしいと願う店主が探り当てたバランスのよいかき氷が、この街の新しい名物になろうとしている。


日本一の食材と徹底した手作りメニュー 「雪ノ下 原宿」【閉店】

▲発酵バター蜜柑蜂蜜を添えて860円(税込)

「雪ノ下」に初めて訪れたのは、まだ大阪にしか店舗が無かった頃。「大阪にホットケーキが美味しくて、かき氷がとても変わってて、予約もとれないほど人気な店がある」と言う噂がかき氷好きの中で広がっていた。ちょっと分かりにくい場所にある店舗は噂通り満席で、それでも運良くあまり並ばずに席に着く事が出来た。

席に着くと見える鉄板には分厚いホットケーキが並び、あの誘惑の香りが店内に満ち満ちている。「雪ノ下」のホットケーキは、ホットケーキの弾力とスポンジケーキの軽さを合わせたような食感で、濃厚な卵の風味と素材一つ一つの美味しさに感動したのを覚えている。
続いて運ばれて来たかき氷は、かき氷とシャーベットの中間のような口溶けで、珍しいかき氷とホットケーキに満足して店を出た。なかなか行く機会がない関西の人気店、またいつの日か…と思っていたところ、なんと東京の原宿にもお店ができたというではないか。
「雪ノ下」はここ数年のうちに全国に十数店舗の新店舗を開店、どの店舗も本店と変わらない美味しいメニューを提供している。オーナーパティシエが厳選した素材を一貫して契約農家から産地直送で仕入れ、徹底して伝達された調理技術で各店舗の店主らが一つ一つ手作りしているという。
人気のホットケーキは厚さ約4センチ。最もシンプルな「発酵バター 蜜柑蜂蜜を添えて」を食べると、もっちりしっとりとした生地は噛むほどに卵のおいしさが染み出してくる。

数種類あるホットケーキは全て生地の配合が異なり、練乳の味を楽しむ「白」や静岡牧ノ原茶を生地に練り込んだ「緑」など、どれも贅沢な素材の味が楽しめる。しかし、この分厚いホットケーキが焼き上がるまでなんと20分以上かかる。この時間を利用してかき氷を楽しむ人が多いという訳だ。
▲高知黄金生姜氷860円(税込)

旬の素材を使ったかき氷は、どれもその素材の味そのものを味わえるシャーベットとかき氷の中間のような食感。中でも驚くのが「高知黄金生姜氷」、食べた後に体がぽかぽかとあったまってくる不思議なかき氷だ。
生姜のかき氷は今まで食べた事がない訳ではないが、ここまで生姜の辛さを押し出したものも珍しい。食べすすむごとに生姜の刺激が強くなるのだが、ところどころにシャリシャリと甘い練乳アイスが入っていて辛さにしびれた舌を癒してくれる。
「オーナー絶賛の自慢の一品」という謳い文句がついているのだが、なるほど、参りました、と言いたくなるような個性の強い、刺激が癖になるかき氷だ。
▲大見伊豆牧場牛乳と静岡ブルーベリー氷1,080円(税込)

「大見伊豆牧場牛乳と静岡ブルーベリー氷」は、濃いけれど牛乳臭さを感じない伊豆牧場牛乳を氷にして削ったものに、完熟ブルーベリーのコンポートをトッピング。牛乳とフルーツの二つの素材を混ぜても良し、それぞれ食べても良し、思い思いに楽しむ事ができる期間限定商品(5月頃~10月頃)。
その他にもフルーツをそのまま氷にしたようなメロン氷や柑橘系の氷など、飽きさせないメニュー展開が注目されている。
ギャラリーを兼ねた広々とした店舗で、ちょっと大人の原宿の楽しみ方を堪能されてみてはいかがだろうか。


小池隆介

小池隆介

かき氷のフードイベント『かき氷コレクション』実行委員会代表。かき氷専門ガイド本『かきごおりすと』の編集・発行者。一般社団法人日本かき氷協会代表。日本中のかき氷を食べ歩いて取材し、日本古来の食文化で伝統食でもあるかき氷を広く伝える為に活動。かき氷にとどまらず、氷雪業(氷の卸しや販売、製造)全体にも精通している。

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