吉野葛の老舗「黒川本家」で、伝統の技が生む新感覚の葛スイーツを

2015.11.13

つるつるっとしたのど越しの良さで、甘味や鍋の具材として人気の「葛きり」。その原材料である「葛」は、奈良が発祥の伝統食品です。古くから吉野地方で作られてきた葛の中でも、最高級ブランドが「吉野本葛(よしのほんくず)」と呼ばれるもの。本場・奈良では、伝統の技で手作りする葛を使った、おいしくて魅力的なスイーツや料理が味わえます。ご紹介するのは、2015年に創業400年を迎えた老舗「黒川本家」です。

歴史と伝統を守り継ぐ名店

黒川本家の創業は江戸初期。元和元年(1615年)、京都に住んでいた初代の黒川道安が、吉野から葛根を取り寄せて葛粉を作り、朝廷に献上。その後、大和松山藩(現在の奈良県宇陀市)に移り、葛作りをスタートさせました。
そして、大和松山藩主・織田伊豆守長頼より「当代随一」の誇り高い称号を与えられます。
▲400年前からお店の場所は変わらず。建物はなんと築280年!
▲大正時代から変わっていないという、「随一」と描かれたパッケージ
明治時代初期になると宮内省御用達となり、昭和天皇もこちらの葛湯をご愛飲されていたといいます。
また、文豪・谷崎潤一郎が小説『吉野葛』の執筆にあたり、こちらに逗留していたというエピソードも。
まさに歴史ある名店ですね。
▲今も店内には「宮内省御用達」の看板が掲げられています
▲13代目にあたる専務の黒川伸一さん

吉野葛とは違う?「吉野本葛」とは

そもそも「葛」とは、どんなものかご存知ですか?
葛は、マメ科の植物で、秋の七草の一つ。夏から初秋にかけて紫色のきれいな花を咲かせるのが特徴です。
その葛の根から摂れるデンプンを乾燥させてできるのが吉野本葛です。
▲こちらが葛の根。重量感があって大木のよう
では、「吉野葛」と「吉野本葛」。どこが違うのでしょうか。
「吉野葛」は、葛デンプンに、サツマイモやジャガイモから摂れるデンプンを混合したもののこと。
それに対し「吉野本葛」は、葛デンプン100%のもののことをいいます。

通常、デンプンは1つの根から10~20%ほどしか摂れず、10㎏の根であれば、わずか1㎏前後しか摂れないのだそう。
ゆえに貴重で高価な本葛は、その純白の美しさから、「白いダイヤ」とも評されています。
▲乾燥させている吉野本葛

極寒の中、昔ながらの製法で丁寧に

葛が作られるのは、12月から3月までの真冬の期間です。
良質な水が豊富にあること、雑木林の山に囲まれた寒冷の地であることから、葛の製造に適する吉野地方では、古くから葛作りが行われてきました。

黒川本家の葛の製造は、山方(やまかた)と呼ばれる葛堀り専門の職人たちが、山奥から葛根を掘り起こしてくることから始まります。
葛根を砕いて桶に入れ、300年前から使用している上質の井戸水で精製していきます。

「水の冷たい早朝に、葛を晒(さら)すんです。何度も何度も寒水で葛を晒していって、純白の本葛に仕上げていくんです。その工程を“吉野晒し”といいます」と、専務の黒川さん。

精製された葛は純度の高いデンプンとなって桶の下に沈殿し、それを2~3ヶ月かけて自然乾燥させると、ようやく本葛が完成します。
▲風通しのいい場所で、木枠に入れた葛を自然乾燥させます
葛粉を和菓子に使用するようになったのは、江戸時代中期以降。
独特の風味や粘り、透明感などを生かして、葛まんじゅうや葛きりなどが作られ、のちに庶民に親しまれるようになりました。
▲桜をあしらったかわいい葛菓子750円(税込)
▲くず湯6個入り900円(税別)

葛の新しい使い方とおいしい食べ方を提案

葛といえば和菓子に使われることが多いですが、ごま豆腐やあんかけなど料理に使われることもしばしば。しかし葛が主役になる料理となると、すぐには思いつきません。

そこで、葛の使い方やおいしさをもっと知ってもらおうと、奈良市に直営のレストランをオープンさせました。奈良の大仏で有名な東大寺のすぐ近くに構える「黒川本家 東大寺店」です。
▲レストランや雑貨店などが集う「夢風ひろば」にある、黒川本家 東大寺店
▲店内は洗練された雰囲気
本葛を練り込んだパスタや葛あんかけ丼など、ここでしか味わえないようなメニューが揃っています。
なかでも人気なのが、季節の創作「葛匠」ランチ。湯葉まんじゅうの蟹葛あんかけや葛グラタンなど、季節の食材と葛とのコラボが楽しめる創作葛会席です。
上質な吉野本葛をふんだんに使った料理が味わえるのも、直営店ならではですね。
▲季節の創作「葛匠」ランチ2,100円(税込)。ご飯と赤だしが付きます
もちろん、スイーツも和洋揃っていますが、おすすめは「葛ブランマンジェ」。
ゼラチンの代わりに、贅沢にも吉野本葛で仕上げたというブランマンジェで、口当たりなめらかでクリーミー。テイクアウトもできるので、奈良らしいおみやげとしても喜ばれること間違いなしです。
▲葛ブランマンジェ630円(税込)
「若い人にも葛のおいしさを知ってほしい」と黒川さん。
さらに「葛は伝統ある貴重な食材。無添加の自然食品であり、健康食品でもあります」とも。

葛根には血行を良くするという効能があるそうで、体調がすぐれないときに葛湯を飲んでいたという人もいるのでは。
また、骨粗鬆症やコレステロール値の低下に効果があるというイソフラボンも含まれているほか、上質な本葛は滋養強壮、美肌にも効果的とか。

ホッと温まって身体にもいい吉野本葛、ぜひ本場で味わってみてください。
白崎友美

白崎友美

奈良の編集制作会社EditZ(エディッツ)の編集者。大阪、京都で雑誌や通販カタログなどの制作を行い、現在は居住する奈良県に軸足を置き、奈良の観光関連のガイドブックやホームページなどを制作。自社媒体の季刊誌『ならめがね』にて、「ユルい・まったり・懐かしい」奈良の魅力を発信している。

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