カレー県・鳥取でチキンカツカレーを食べるなら「ベニ屋」がおすすめ!カツとカレーのマッチングが絶妙

2015.12.04 更新

今や世界中で愛されるカレー。しかし、カレーの世界というのは奥深いもの。この企画では、カレーの第一人者・井上岳久先生と、私、カレー初心者ライター・井上こんの“ダブル井上”で全国の名店カレーを食べ歩き、先生の解説とともに地域性や歴史背景も交えてさまざまなカレーを紹介していきます!

前回は、島根県松江市の老舗料亭「臨水亭」からシジミを煮こごりにした「シジミカレー」をご紹介しました。今回はどんなカレーが登場するのでしょうか?

【Contents】

1. 店名の由来は化粧品にあり
2. ファンを魅了してやまない、60年以上守られるレシピ
3. ごちそうさま、のその前に

2014年、一世帯あたりのカレールウ消費量日本一の座を奪還した鳥取市。過去にはカレールウの支出総額で4回、購入数においては8回も日本一を獲得するほどカレー文化が根付いた市なのはご存知ですか?(参照:総務省家計調査)

今回の旅はそんなカレー県・鳥取からお届けします。
▲ん? このベンチは…
目的のお店へ向かう前に立ち寄ったのは鳥取名物「水木しげるロード」。漫画家・水木しげる先生の故郷である境港は別名「妖怪の町」として知られ、駅前から本町アーケードまでの約800メートルの間には漫画『ゲゲゲの鬼太郎』に登場するキャラクターのブロンズ像153体がずらりと並びます。
▲このあたりでは人間の方がマイノリティ
▲こんなとこにも妖怪が!
▲こん「鬼太郎さんの家でもよくカレーを食べますか?」鬼太郎「…」

愛らしいキャラクターたちに後ろ髪を引かれつつ、水木しげるロードを後にした私たち。目的のお店がある鳥取市中心部へ。

1.店名の由来は化粧品にあり

ここは、JR鳥取駅から徒歩5分ほどの鳥取本通商店街。

こん「そもそも、鳥取でカレーが多く食べられる理由とは何でしょうか?」

井上「ひとつは女性の有職率の高さにあります。簡単に調理することができ、かつ作り置きが可能なカレーは働くお母さんにとって強い味方です。それに、流行りものより昔ながらの味を好む県民性も関係しているのではないかと言われています。学校給食でもカレーは頻繁に登場するそうですよ」

こん「そういえば、鳥取県はカレーのお供に欠かせないらっきょうの生産地でもありますね」
さて、こちらが本日のお店、1948(昭和23)年創業の「ベニ屋」さん。外観はいわゆる昔ながらの喫茶店ですが、同店のカレーは間違いなく鳥取を代表するもので、これまでカレー県・鳥取を牽引してきた立役者といえます。

井上「鳥取カレーと言えば、この『ベニ屋』は絶対に外せません!もはや鳥取カレーの代名詞と言えるお店です」
こん「ん?のぼりにある、この“鳥取カレー倶楽部”というのは何ですか?」

井上「鳥取のカレーマップを作ったり、毎月0のつく日を『カレーの日』として県内外へカレーの普及活動を行っている団体です。『カレーンジャー』というヒーロー姿でPR活動もしているんですよ」
▲全26席のこじんまりとした店内。コーヒーの香りの中にほのかにカレーの香りが混じります
こちらは2代目ご主人・平田瑩壹(えいいち)さん。67年前、親族が営む化粧品店の片隅に先代が設けた小さな休憩スペースが喫茶「ベニ屋」の始まりだそう。なるほど、店名の「ベニ」は口紅・ほお紅を指すのですね。
▲カレーライスが150円だった創業当時の貴重なメニュー

「うちではなるべく地元食材を使うようにしています。一番人気は鳥取の米と鳥取の地鶏を使ったチキンカツカレー。朝8時からモーニングとして食べていくお客さんもいらっしゃるほど」と平田さん。

2.ファンを魅了してやまない、60年以上守られるレシピ

長年、カレー好きを魅了してやまないベニ屋のチキンカツカレー(税込800円)。深みのあるダークブラウンのルウとこんがりきつね色のカツのコントラストが食欲をそそるひと皿です。
▲いただきま~す!
こん「わあ! このカツ、衣がすごく細かいんですね。ルウに面している方までサクサクとした食感で驚きました」
井上「ルウもバランスが取れてますよ。一口目は甘みと旨みが凝縮されているのを感じ、そのあとスパイシーさがぐぐっと来るんだけど、辛すぎず食べ進めやすい」

こん「本当、深みのある甘さがいいですね。これは玉ねぎかな?」
創業当時からほとんどレシピを変えずにいる秘伝のルウ。その仕込みにはなんと10日を要するとか。その作業は小麦粉と大豆油を練り込むことに始まり、そこにカレー粉を加えてから数日寝かせ、その後浮いた油を取り除く…など手間のかかるものばかり。ルウに合わせる特製豚骨スープもゲンコツだけを丸1日煮込むこだわりっぷりです。

味の決め手であるカレー粉は先代から同じものを使用しています。「使っている店は少ないと思うけど、うちはこの食品メーカーさんのカレー粉ひとすじ。これは企業秘密ですね(笑)。もうね、香りの抜け方が他とは全然違いますよ」と平田さん。
井上「たしかに、コリアンダーや陳皮(ちんぴ)を多く含むだけあって爽やかな味わいですね。カレー粉の使い方にこだわりを感じます」
また、カツに使用するのは鳥取の名産・大山(だいせん)どり。さっくりとした衣に歯を立てると、ふっくらジューシーな食感と豊かな旨みが広がり、カレーに負けない存在感を放ちます。
平田さん「カツといえば、みなさんパン粉をつけたらすぐに揚げないといけないと思ってるでしょ? でもね、パン粉をつけたあと実は10分ほど置いておくの。そうすると肉と衣がなじんで衣だけはがれるなんてことにならないんですよ~」

3.ごちそうさま、のその前に

おっと、これで終わりじゃございません。ベニ屋を代表するメニューがもうひとつあるそうです。
▲そうそう、こうして氷をしゃくしゃく削って…
▲うん、やっぱり夏はかき氷だよね~

こん「…って、ご主人!もう秋ですけど!」

平田さん「あはは、うちでは一年中この『インド氷』が注文されるんですよ」
「インド氷」(税込500円)とは、削った氷にココアパウダーとオリジナルシロップを混ぜたものを回しかけた同店オリジナルスイーツ。カレーに並ぶ名物メニューで、男女問わず、そして季節問わず注文されるそう。ちなみに創業当時のお値段は70円だったとか。

それでは、そろそろ格言で締めさせていただきます。
井上「カレーNo.1都市には地元を率いる名店があった。カレーが主役でない、カツが主役でない、カレーとカツが自然とマッチ!!」

こん「サクサクが止まらない! 鳥取にベニ屋あり!」

先生によると、カツカレーとは往々にしてカツかカレーどちらかの主張が強くなってしまいがちなのだそう。それに対し、ベニ屋のチキンカツカレーはふたつが自然にマッチした穏やかな仕上がりで、まさにご主人の温和な人柄そのもの。静かな時間が流れる老舗喫茶店には、67年にわたり全国のカレーファンを魅了してきた名物カレーがありました。
▲今回はチキンポーズ!

ベニ屋さん、ありがとうございました!

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。

井上こん

井上こん

1986年生まれのフリーライター。「Yahoo!スポーツナビDo」「SPA!」「nomooo」「ウートピ」などのWEBメディアや雑誌「散歩の達人」などで執筆。

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