予約のみ!金沢のお茶席で愛される「吉はし」の上生菓子を味わう

2015.11.10 更新

加賀百万石の城下町・金沢では江戸時代から庶民の間にも茶の湯が広がり、今日でも茶道人口は全国第3位(石川県)。お招きされたお宅で、抹茶と上生菓子が出てくる…なんてことも珍しくありません。さらに、和菓子消費量においては全国第1位(!)とあって、金沢人は甘いものにうるさいのです。そんな金沢の茶席でも「あそこのお菓子は間違いない」と定評のある和菓子屋さんがあります。今回は茶席菓子の名店、「吉はし」を訪ねます。

吉はし看板

「吉はし」で上生菓子を買うなら、予約がマスト!

金沢の観光地として名高いひがし茶屋街からちょっと奥へ入った住宅街に、「吉はし」はひっそりと看板をあげています。注意して歩いていないと、うっかり通り過ぎてしまうほど。
吉はしのれん
▲「吉はし」の外観。パリッと美しい暖簾がお店の格を物語ります。
吉はし店内
暖簾をくぐると、店内には小さなカウンターがあり、見本の干菓子や羊羹などが並んでいます。しかし、お目当ての上生菓子が見当たりません…。
そう、「吉はし」は昭和22(1947)年の創業から、主にお茶席のお菓子をつくる受注販売スタイルなので、基本的に店頭販売はしていません。
お菓子を購入したい場合は、前日15時までに予約をして、当日お店まで商品を受け取りに行きます。そのため、地元でも“知る人ぞ知る”というお店なのです。

“甘いもの嫌い”も唸る、「吉はし」の上生菓子

「吉はし」といえば、やはり“上生菓子”です。餡子だけでつくられることが多いため、甘いものは苦手…と言う人は特に敬遠しがちですが、そんな人にこそ是非一度「吉はし」の上生菓子を食べていただきたい。
上生菓子2個
▲取材に訪れた9月中旬の上生菓子。左が「草ノ露」、右が「雁ヶ音」(各291円・税込)
口に入れた途端、みずみずしい餡が舌の上でさらさらと溶け、豆の風味と品のある甘さが広がった刹那、霧のごとく美しく消えてゆく―。
あとには何も残さず、秋の夕暮れに立ち会ったかのような余韻のみが胸に残ります。奇をてらわず、真正面から食べた者を唸らせる圧倒的な“力強さ”、これぞ「吉はし」の凄みなのです。

金沢の茶席で鍛え抜かれた日々

吉はし店主
「うちは家族だけでやっているので、質を保つには今の大きさが精一杯」と話すのは、「吉はし」の二代目・吉橋廣修(ひろのぶ)さん。
お茶の先生方からも厚い信頼を寄せられる廣修さんですが、今日の「吉はし」が築かれるまで、並々ならぬ苦悩の日々がありました。
初代であったお父様が急逝し、廣修さんがその看板を背負うことになったのは30歳になったばかりの頃。先代がお茶の世界で培ってきた信頼を、修業して間もない菓子職人が一人で担う重圧は想像以上のものでした。
また、歴史から工芸、歌、書や花に至るまで、お茶席の菓子づくりは膨大な文化的教養を要します。「毎日、往復ビンタを受けているようでしたね」と廣修さんは当時の心境を苦笑いで振り返ります。
ご主人対談風景
「世の中を知る程に、自分の未熟さを知って恥ずかしくなります」と廣修さん。どこまでも謙虚で甘えのないこの姿勢が、清らかなお菓子を生むのです。
今回はわがままを言って、工房での仕上げを特別に拝見させていただきました。
和菓子制作手もと
▲漉し餡は長男の慶祐(けいすけ)さんが、つぶ餡は次男の太平(たへい)さんが担当。農家さんに会いに出向いたりと、材料にも並々ならぬこだわりがあります
和菓子制作手もと その2
▲色付けした餡を三色ひょいと手にとり、コロリと丸めた瞬間、流れるような手つきで花びらが刻み込まれ…
花形の和菓子
▲あっという間に美しいお花が完成!その間十数秒…!菓名は「菊の宿(302円・税込)」

予約してない…!だけどやっぱり「吉はし」が食べたい!

事前予約制の「吉はし」の上生菓子。「金沢に着いたけど、予約するのを忘れてた…!」ということもあるでしょう。それに、上生菓子はなんといっても鮮度が命。
お土産として持ち帰るよりも、現地で出来たてをいただく方が断然美味しい。そこで観光客の方には、市内に数軒だけある、吉はしの和菓子を扱うカフェがおすすめです。
「久連波」外観
中でも、ひがし茶屋街に佇む茶房「久連波(くれは)」は「吉はし」からも目と鼻の先。出来立てほやほやの上生菓子が毎朝運ばれてきます。元お茶屋だった建物を改装した造りで、風情満点のシチュエーションだから、お菓子もより一層おいしくいただけるというもの。
「久連波」内観
▲2階のカフェスペース。窓からは茶屋街の様子も見下ろせます
生菓子と抹茶
▲こちらが「吉はし」の上生菓子と抹茶のセット(800円・税込)
和菓子アップ
▲“いきいき”とした上生菓子。小手先ではない職人技を感じます
さすがは茶の湯文化が浸透する金沢。店員さんが点ててくださるお抹茶も、泡がきめ細かく後味も爽やか。いやはや結構なお点前で…。
「吉はしさんのお菓子は美しくて繊細、そして何と言っても、ただただ美味しい。ご近所さんから観光客の方まで、リピーターの方も多いんです」と店員さん。人気のため、日によっては早々に売り切れてしまうこともあるので、どうかあしからず。
干菓子
最後に豆知識を。実は「吉はし」で予約なしでも買えるお菓子もあります。それは、息子さん達がつくるユニット「豆半」の「寒氷(300円・税込)」や「羊羹(200円・税込)」など。大きさも手頃で可愛らしく、日持ちもするのでお土産にもぴったりです。
金沢の茶の湯文化の奥深さを感じられる「吉はし」の上生菓子。旅の思い出に、是非一度は召し上がってみてくださいね。
柳田和佳奈

柳田和佳奈

金沢市在住のライター・エディター。石川県・富山県で発行するフリーマガジン「Favo」の金沢版編集部員。観光地として名高い金沢ですが、住んでいる人の目線で情報発信しています。(有限会社ストアインク)

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

こちらもおすすめ

もっと見る

関連エリア

PAGE TOP