奥尻島編/離島をぐるっとひとまわり。旅ランVol.7

2015.11.06 更新

島ランシリーズ第7弾の舞台、北海道の南西部、日本海に浮かぶ奥尻島は1周約75km。島北部は民家もない山が連なる地帯のため、沿岸をぐるっと一周通して走るのは厳しいかもしれません。今回は奥尻港から奥尻空港まで約17kmの北東・奥尻エリアコース、奥尻空港から北追岬公園まで約13kmの青苗・北西エリアコースのあわせて約30kmのランニングコースをご紹介しましょう。

奥尻島には函館から飛行機、もしくは江差町・せたな町からフェリーで行くことができます。移動の時間は飛行機なら約30分、フェリーを利用した場合は2時間前後です。
出発点は奥尻港。素晴らしい晴天に恵まれ、まずは奥尻空港へ向かう約17kmのランニングがスタートです!
<集落を通って島のシンボル「鍋釣岩」へ>
コースは青苗集落付近まで一本道ですが、港の出口は左折します。右折すると、島北部に行ってしまいます。
港付近は集落となっており、家やお店があります。ふと上を見ると、不思議な形をした街灯がありました。こちらは、島の特産品である“ウニ”をモチーフとしたもののようです。こういう小さな発見は、つい嬉しくなってしまいますね。
約1km走ると見えるのが、奥尻島のシンボルとして親しまれている「鍋釣岩」。その名の通り、ドーナツのような形状はまるで鍋の持ち手のよう。「なぜこんな形になったのだろう?」そんな疑問を抱きつつ、先へと歩を進めていきます。

<海風を受けながら“ウニ”のモニュメントを見に行く>
細かなアップダウンはありますが、走れないほどの急勾配はありません。走っていると、ときどき心地よい海風が身体を冷やしてくれます。ふと海側へ視線を向けると、海鳥も気持ちよさそうに風を受けていました。飛び立つでもなく、じっと海を見つめる海鳥の姿。まさに離島だからこそ見られる光景に、走りながらも頬が緩んでしまいました。
スタートから約2.5kmの曲がり角。コースは直進ですが、ちょっと寄り道して右折してみました。すると、うにまる公園へと続く道に入ります。公園までは少し急な上り坂が400mほど続きますが、ぜひ見ておきたいモニュメントがあるんです。それが…
巨大な「うにまるモニュメント」です。港付近の集落で見かけた街灯に似ていますが、やはりこちらもモチーフは“ウニ”。夜にはライトアップされて、まったく異なる姿を見せてくれるそうです。
コースへ戻ったら、また道なりに走り続けます。見通しのよい道路ですが、延々と続く道では単調に感じてしまうかもしれません。しかし右手に山、左手に海がずっと広がっているので、景色に目を向けると飽きもなく楽しく走れました。

<島一番の長さを誇る「長浜海岸」を走る>
スタートから約5kmにある山ヶ岬。この付近から続く海岸は、島で一番長い「長浜海岸」です。海岸沿いには民家などはなく、どこまでも青々とした海だけが、ただただ続いています。
太陽の光を受けて、キラキラと光る水面。海水は透き通り、海中にある石などがコース上からでも見えます。何度見ても、その美しい海に「これは凄いな」とつい言葉が出てしまいました。
長浜海岸には、砂ではなく石が敷き詰められています。どの石も丸みを帯びているのが大きな特徴。波に揺られ、少しずつ角が削られていったのでしょうか。
海岸には何ヶ所か降りられる場所があります。足元は不安定なので注意しつつ降りてみました。最初は海を間近に眺めたいと思っただけでしたが、あまりに綺麗な海に「この水に触りたい」という欲求が。気づけば、つい手が伸びてしまいました。
長浜海岸の長さは約8km。海岸沿いを走り終える頃には、再び民家などが増えてきます。しばらくひと気の少ない道だったので、建物が見えるとちょっと安心です。
近くに港があったので、防波堤から海を見下ろしつつ休憩タイム。どこまでも広がる海は、いくら眺めていても飽きません。すっかり落ち着いてしまいました。あと少し走れば青苗集落、そして中継地点の空港が見えてくるはず!

<青苗集落から空港へ>
青苗集落が近づくにつれて、歩道もしっかり整備されてきます。走りやすいですね。
緩やかなアップダウンを繰り返しつつ進むと、スタートから約15kmで青苗へと到着です。
あとは集落を駆け抜け、空港へと向かうだけ。心地よい風、そして道端に咲くキレイな花に癒やされます。車や人が増えますが、歩道が広く設けられているので安心でした。
奥尻空港への看板が!スタートから約16km地点で右折し、中継地点の空港へと向かいます。「もう半分終わりか、楽しかったな。」なんて思っていたら、なんと難関が待ち構えていました。
右折した途端に現れた上り坂は、なかなかの急勾配です。しかし「空港でひと休みできる」というだけで力が出るもの。気合を入れて一気に駆け上がります。
さらに進むと奥尻空港の看板が。ここは看板に従って空港方面へ。まだ最後まで上り坂ですが、ここは一気に登り切ってしまいたいところ。どんどん脚が進みました。
そして奥尻港から約17km、奥尻空港に到着!頭上に広がる青空が気持ちいい!素晴らしい景色との出会い。そして数々の名所を繋いだランニングコースは、長いようであっという間ですね。ここから残りは、北追岬公園までの約13km。少し疲れたので、空港で休憩していくことにしました。

<奥尻空港でちょっとひと休み>
奥尻空港は、まだ新しさがあり綺麗!空港内にはトイレやコインロッカー、自動販売機が。ベンチを使わせていただき、北追岬公園までの約13kmを走るため、ちょっとひと息入れさせてもらいました。

<芸術と素晴らしい夕焼けの待つ北追岬公園へ13kmのランニング!>
疲れがとれたところで、空港から神威岬(かむいみさき)に向かいます。空を見る限り、きっと素晴らしい夕焼けが見られそう。気分が高まります。

空港から500mほどのところにあるT字路を左折すると、北追岬公園までは一本道です。島西側の海岸沿いには、いくつも特徴的な岩が見られるとのこと。まずは木々に囲まれた道が続きますが、海が見えたら左手に注目!ですね。

<アップダウンを乗り越えて…>
島といえば、やはり平地ばかりとはいきません。奥尻島は神威山をはじめ北部に山が連なりますが、南部もなかなかのアップダウンが続きます。無理せず上りはペースを落とし、下りは流れに任せてペースアップ。基本は歩道、歩道がなければ道路左側を進みます。
2kmほど走ると、周囲には田んぼが広がっていました。なんとここ奥尻島、日本の離島で最北限の“米どころ”なのです。まさに貴重な光景。つい立ち止まって眺めてしまいました。
さらに進むと千畳坂覆道というトンネルがあります。200mほどの短いトンネルですが、中は暗いので足元に注意が必要。また下り基調なので、スピードの出しすぎにも注意します。
走り始めて3.5kmほどすると景色が一変!目の前に海が開けました。耳に飛び込んでくるさざ波の音。想像以上に透き通った青色の海に、つい「うわー、これは凄いな!」と声が出てしまいました。

<岩、岩、岩!の海岸沿い>
空港から約6km。海岸沿いを走り続けていると、何やら大きな岩山のようなものが目に飛び込んできました。これは、岩でできた周囲500mほどの「無縁島」。最初はただの岩山と勘違いしてしまいましたが、れっきとした島です。

ここでふと、足元に広がる海に目がいきました。何やら黒いものが、いくつも点々と海中に見えるのです。「これは、いったい何なのか!?」よ~く覗きこむと、そこには目を疑うような光景が…
なんとこれ、すべて“ウニ”なんです!ウニは奥尻島の特産物の1つ。シーズンは7~8月頃ということで残念ながらウニ漁は終わっていましたが、ウニ好きにはたまりませんね。
さらに無縁島からすぐの場所にあるのが、高さ25mもある「ホヤ岩」。ホヤ岩は海岸に降りることで、目の前まで行くことができます。せっかくなので、休憩がてらホヤ岩の足元まで行ってみました。
間近に見るホヤ岩は想像以上に巨大。ゴツゴツした見た目ですが、岩肌はとても滑らかでした。長く波に打たれたことで、この形状となったのでしょうか。自然の偉大さを感じられずにはいられません。
さらに海岸沿いのなだらかな道を進みます。右手には山、左手には海と贅沢な景色を楽しめるロケーションです。
ホヤ岩から1.3kmほどで、今度は「モッ立岩」が現れます。こちらは比較的小さく、他の岩山と比べると丸みを帯びています。
そしてゴールとなる北追岬公園の手前、空港から約10kmの場所にあるのが「カブト岩」です。戦国時代、武将が身につけた鎧兜のように見えることから、その名が付いたと言います。平成5年に発生した北海道南西沖地震の津波で半分が崩れてしまったとのことですが、それでも尚その姿は荘厳。力強さを感じました。

<最後の坂道を越えてゴールの北追岬公園へ>
カブト岩を越えればゴールの北追岬公園は目前。奥尻空港から約12kmの場所にある鴨石トンネルを抜けると、最終難関となる長い上り坂が待っています。
1km弱の上り坂。「まもなくゴールだ」と気持ちが上がり、自然とペースが上がっていきました。この坂道を上ると今度は下り坂となり、その途中に北追岬公園があります。
そして空港から約13km。北追岬公園の看板が見えました!海沿いの景色から一変して山の中でゴール!深呼吸すると、澄んだ空気が体中に巡るのを感じます。

奥尻港から約30kmにおよぶランニング。しかし景色を眺め、海風を感じながら走るとあっという間でした。これほどの大自然と触れ合えるのは離島ならでは。最高です!天候にも恵まれ、終始楽しんで走ることができました。

<北追岬公園には不思議な彫刻がいっぱい!>
北追岬公園は観光スポットでもあり、公園内には世界的に有名な彫刻家・流政之(ながれまさゆき)氏によって創作された8つのモニュメントが置かれています。せっかくですから、走り終えてそのまま公園内へ。
まず目を引くのが、巨大な「北追岬」という彫刻でした。引き寄せられるようにして近くに行ってみると、その高さは身長の倍以上に及びます。
その他、園内にはさまざまな形状のモニュメントが。公園内を散策しつつその姿を見つけると、つい「あった!」なんて声を出して駆け寄ってしまいます。なんだか、宝探しみたいですね。
木々の生い茂る公園内には散策路が設けられています。走って疲れた身体を、ウォーキングしながらクールダウン。涼しい風と木々の緑に癒やされます。
公園は海に面しており、視界の開けた場所に行くと、遠くにこれまで走ってきたコースが見えました。実はこの北追岬公園、素晴らしい夕日の見られる絶景ポイントでもあります。ちょうど日が沈み始めてきたタイミング。せっかくなので夕日を待つことにします。
日が沈むにつれて変容する景色。空と海、そしてモニュメントが相まって、想像を超える素晴らしい景色が見られました。何をするでもなく、ただ沈みゆく夕日を見つめ続ける。景色に魅了され、私は何も考えずただ見とれるだけでした。
完全に太陽がその姿を消すと、空一面が紅色に染まりました。聞こえてくるのは波の音だけ。「1日が終わったな」なんて、当たり前のことをしんみり感じてしまいます。ほんの僅かな時間、しかしその時間はとてもゆったりと流れていくようです。

ぜひ訪れたい青苗・北西エリアの観光スポット

奥尻島の青苗・北西エリアには、コース外にもさまざまな観光スポットが点在しています。時間があれば、ぜひ足を伸ばして訪れてみてください。

1.走った後のリフレッシュ!「神威脇温泉」で汗を流す
奥尻島の西部には温泉が湧き出ています。ゴール地点だった北追岬公園から1km弱のところにある「神威脇温泉」。入浴料は420円(税込)で、駐車場も設けられている入浴スポットです。なんと昭和53(1978)年から営業されており、観光客はもちろん地元民も多く訪れるとのこと。私も走り終えてすぐ、こちらの温泉で疲れを癒しました。ランニング後のリフレッシュに最適ですね。
浴場は1階と2階に設けられています。1階のお湯は赤茶色、源泉そのままかけ流しでした。温度が高めのため、少しずつ身体を湯温に慣れさせていきます。
2階のお湯は鉄分が除去されているそうで、湯の色は1階に比べると透明。広めの脱衣所が設けられていました。入浴客が多く写真撮影できなかったのが残念ですが、風呂から窓ガラス越しに外の景色が見えるためか、1階より人気が高いようです。

2.絶品の海の幸、「青苗丼」を食べよう
奥尻島はイカ漁が盛ん。そして青苗地方で食べられるのが、生イカが「これでもか!」というほどのった「青苗丼」です。もう、見るからに美味しそうでヨダレが出てしまいますね。
さっそく実食!甘めのタレで味付けされた「青苗丼」。その味もさることながら、ツルツルと入ってくるイカの食感が最高です。気が付けば箸が進んでしまう美味しさ。なかなかボリュームのある丼物でしたが、あっという間に完食してしまいました。奥尻島を訪れたなら、ぜひとも食べていただきたい一品です!

3.島で育てられた「奥尻ワイン」を堪能する
北追岬公園からすぐの場所にある「奥尻ワイナリー」。ここでは、奥尻島で収穫された葡萄を使った奥尻ワインを販売しています。
中にはこちらのワイナリー内でしか販売されていないというワインも。私も実際に飲ませていただきましたが、白ワインはとってもフルーティー、赤ワインは味がしっかりしています。「これは飲み過ぎてしまいそう」と、心配になるほど飲みやすい味わい。お土産にもおすすめです。

4.北海道南西沖地震の犠牲に思いを馳せる「時空翔」
島の南側、青苗岬にある「時空翔」。ここは、北海道南西沖地震で犠牲になった方々の慰霊碑です。時空翔の中央部には窪みがあり、南西沖の震源を向いているとのこと。私もその方位に向け、黙祷させていただきました。

時間があれば立ち寄りたい北東・奥尻エリアの観光スポット

奥尻島内には、まだまだ見所がたくさん!せっかくなのでランニングを終えてから、奥尻港側へ戻って観光スポットを回ってみました。

1.岬にひっそりと佇む「宮津弁天宮」
奥尻港から北へ6kmほど。小高い岩山の上に見えるのが、宮津弁天宮です。以前はここに番所が設けられていましたが、江戸時代末期、島民によって大漁を祈願する社が建てられました。
せっかくなのでお参りに行ってみます。ただし社へ向かうには、かなり急な階段を登らなくてはなりません。手すりを使って一歩ずつ。雨の日などは、特に足元へ注意が必要そうでした。
真紅の柱で造られた社は存在感があります。扉が開いており、中に入って休憩などもできるようでした。周囲を取り囲む木々で海こそ見えませんが、頭上には青空が広がり爽快です。

2.山間から望む「北部の景観」
奥尻島北部には、ほとんど民家などがありません。道路は通っているものの車の通りも少なく、ランニングコースとしては厳しい印象でした。ただし高い山が多いので、景色を楽しむにはおすすめです。道中で、避難用と思われる階段が山の上へ続いているのを発見!好奇心をくすぐられ、ちょっと登ってみることにしました。
登り切った場所から見える景色は、ランニングコースから見られるものとはまた違います。連なる山々、そして眼下に広がる青い海を見下ろすと、「こんな大自然の中を走れるなんて幸せだな」なんて感情がわき起こってきました。つい「ヤッホー」なんて叫んでしまいそうですね。

美味しい海の幸と、美しい大自然。函館から飛行機なら約30分という近さで味わえる非日常的な時間を、ぜひ味わってみてはいかがでしょうか。
三河賢文

三河賢文

フリーランスライター/エディター。中学校陸上競技部コーチ。法人経営者。"走る"フリーライターを名乗り、主に「マラソン」「トライアスロン」を中心としたスポーツ分野での執筆を得意とする。現在もマラソンやトライアスロンに選手として競技参加。自らの走力を活かしたレポート取材は、ファンランからフルマラソン、ウルトラマラソンまで幅広い実績を持つ。

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