盛岡人がこよなく愛す「べアレンビール」。赤レンガの醸造所を訪ねて

2015.08.10

岩手県盛岡市にある「べアレン醸造所」は、今年で立ち上げから12年を迎えるクラフトビールのブルワリーだ。ヨーロッパに古くから伝わる伝統的製法を大切にし、ドイツの古い釜を使って丁寧に仕込まれるビールは、現在スタンダード3種と季節のビールなどを合わせた20種ほど。どれもそれぞれに味わい深く、地元の人から愛されている。

日常も非日常も、「べアレンビール」で乾杯

赤レンガの「べアレン醸造所」は、ヨーロッパの佇まいを連想させる趣ある建物だ。併設された直売所には、常連客もちらほら訪れる。

べアレンビールの基本にあるのは、味わい深く、飲み飽きることのないドイツのビール。
苦みとコクのバランスが良いラガービール「クラシック」、まろやかながらキレのある黒ビール「シュバルツ」、ホップの香り爽やかな「アルト」がスタンダードラインナップだ。
ゆっくり飲みほしたあとの旨みは、どれも格別。「今日は、ちょっといいことあったなあ」なんて日には、べアレンで幸せを分かち合いたくなる。

定番ビールのほかにも、「季節限定ビール」や「岩手の果実シリーズ」といった新しいビール、「父の日ギフト」などとっておき感あふれる演出もあって、ビール好きの心はくすぐられっぱなしだ。とはいえ、何でもいいのではなく「ヨーロッパに原型のある味を尊重してつくること」が新ビールづくりのポリシーだという。たとえば、岩手の陸前高田で生産する「北限のゆず」の皮を使用したビールは、ヨーロッパにあるオレンジの皮を利用したビールをヒントにしているそう。ヨーロッパにはそれぞれの土地だけで味わい、知られていないビールがまだ沢山あるのだと、ブランドマネージャーの嶌田(しまだ)洋一さんは楽しそうに話す。

じっくり楽しめるビールをつくりたい

べアレンビールの醸造がはじまったのは2003年の春。ちょうど、地ビールブームが去った頃で、全国各地に生まれた地ビール会社が淘汰されていった時代だ。しかし、同社は流行に乗ろうとしたわけではない。喉ごしや爽快感だけを味わうビールではなく、ヨーロッパのように生活のなかでじっくりビールを楽しむ「価値観」を、盛岡の土地に広めたいとの熱い思いがあった。

嶌田さんは社長の木村剛さんと共に会社立ち上げに関わった創業メンバー。創業当時からこだわっているビールづくりについてお話を伺った。

100年以上前の仕込み釜で醸造する

「クラフトビールとは、小規模でつくるビールを指しますが、昔ながらの伝統的な機械を使い小ロットでつくることで、よりブルワリーの特徴が出しやすく個性的なビールが生まれます」。

同社の場合、麦芽を砕くモルトミルや仕込み釡などは、ドイツ製の古い設備を使う。100年以上前に製造された銅製の仕込み釡は、べアレンビールの味わいを生みだす心臓部。社長がドイツへ直接足を運び、見つけてきたものだ。

こうした設備をパートナーに備え、麦芽、ホップの組み合わせや配合バランスを調整していくことで、一つひとつ違った味、苦み、香りが生まれる。ビールには尽きることのない奥深さがあるのだとか。

「味やおいしさの基準はとてもあやふやなものですが、その土地で長く飲み続けられている、そこにこそ価値がある。一つの土地に長く息づく味においしさを感じないなら、それは自分の舌が追いついていないのだと思っています」と嶌田さん。味わいの探究は、尽きることがない。

土地ならではのビールを味わう文化を育てる

創業時から変わらないのは、決して観光用のおみやげに留まらず、地元の人々に長く親しまれるビールをつくりたいということ。ヨーロッパと違って、岩手はビールの歴史が浅い。生活に取り入れていくためにと、ビールを楽しむイベントに力を入れてきた。毎月開くビール会、屋外で大勢が楽しむ「オクトーバーフェストINべアレン」等自社イベントをはじめ、地域への出張販売など、べアレンビールを味わう場づくりを地道に続けてきたことで、徐々にあちこちから声がかかり、今ではイベント専門部隊もできた。
誕生から12年。なんと、今年の春には日本外国特派員協会主催の「世界に伝えたい日本のクラフトビールコンテスト」で、「クラシック」がグランプリを獲得!うれしいニュースに地元も沸いた。今や地元のスーパーでも手軽に買えるべアレンビールは、すっかり盛岡の「土地のビール」になり、盛岡ならではのビール文化が育ちはじめている。
まだまだ厳しい夏が続く。今日はどんなビールを飲もうか、と迷った夕暮れ時の一杯目は、フルーティな「ヴァイツェン」やすっきりした「ラードラー」もおすすめだ。
べアレンビールが飲める場所
水野ひろ子

水野ひろ子

岩手県在住フリーライター。行政や企業等の編集制作に関わる傍ら、有志とともに立ち上げた「まちの編集室」で、ミニコミ誌「てくり」やムック誌の発行をしている。 (編集/株式会社くらしさ)

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