常滑焼の窯元が仕掛ける新たなチャレンジ「TOKONAME」。ティーファミリーと体験型ストアの誕生。

2015.08.03

知多半島の西海岸に位置する、焼き物の街・常滑(とこなめ)。900年を越える伝統ある産地で、2014年、用途をお茶に限定しない、ティーポットを中心とした新しいタイプの茶器「ティーファミリー」が生まれました。2015年4月にはティーファミリーを扱う体験型スポットもでき、常滑の街は盛り上がりを見せています。

新しい常滑焼の発信基地で陶芸体験

赤い屋根の大きな倉庫を改装した「TOKONAME STORE」は、新しい常滑焼の発信基地。常滑駅から徒歩10分ほどの場所にあります。

天井の高い空間には3つの小屋があり、常滑焼の器を販売する「STORE」、陶芸体験を楽しむことのできる「WORKSHOP小屋」、軽飲食を提供する「STAND」に分かれています。
轆轤(ろくろ)ではなく、型を使用した“たたら成形”という技法で行う陶芸体験は、とても簡単なので、大人も子どもも一緒に楽しめるのが嬉しいところ。
型の上から板状の陶土をかぶせて、手でペタペタペタ。土がひんやりしていて気持ちいい!
型からはみ出た部分は、木ベラでカットします。
あとは、ローラーハンコや好きなハンコで模様をつけたり、余った陶土をクッキー型でくり抜いてパーツにしたり。ついつい時間を忘れて集中してしまいます。
最後に、白・桃・蒼・黄・緑・飴色の中から好きな色を選んで終了です。焼き上がりは約一ヶ月後。自分で作った世界にひとつだけの器を前にすると、なんだかわくわくしてきますね。これに何を盛って食べようかな…!

改めて知る、産地の現状

「陶器産業における新しい可能性を示したかったんです」

「TOKONAME STORE」を手掛ける、有限会社山源陶苑(やまげんとうえん)の鯉江(こいえ)優次さんにお話を伺いました。

常滑市出身の鯉江さんは、大学卒業後に東京の陶器総合商社に就職。その後、2004年に常滑焼の窯元である実家に戻ります。そこで感じたのが「市場と産地の圧倒的なスピード感の違い」だったといいます。市場がF1カーのスピードだとすると、産地は軽自動車のスピードだと。

そして、鯉江さん曰く、全盛期300軒近くあった常滑焼の窯元は、現在1/3ほどに減少。ここ3~4年で大きなメーカーも3軒なくなり、このままいくと10年後にはさらに減ってしまうという危機感を募らせます。
以来、鯉江さんは「常滑焼の伝統を更新する」をテーマに置き、改めて常滑焼について知るところから始めます。常滑の様々な窯元へ足を運び、そこで気づいたのが、急須作りの技術の高さでした。

「こんなにすごい技術を失くしてしまってはもったいない…」

現代のくらしに合わせた、新しい常滑焼

作り手である鯉江さんは「うまく常滑焼を伝えていく方法はないか」と知人のデザイナーに相談。その輪は広がり、グラフィックデザイナー、カメラマン、映像クリエイターなど伝える道のプロが6名集い、2013年10月に「TOKONAME」プロジェクトがスタートしました。

「メンバー全員で『常滑焼の、何を守って、何を刷新するか』ということを徹底的に話し合いました」

その結果、これまで茶器を作るために蓄積されてきた産地の技術と素材を活かして、新しいタイプの茶器が誕生。ティーポットを中心とした「ティーファミリー」です。
鯉江さんたちは、現代の食卓を思い浮かべた時に、日本茶だけではなく、紅茶やコーヒーなども楽しめるものが受け入れてもらいやすいと考えたのです。

丸みを帯びたフォルムとほんわかとしたパステルカラーは、なんだかマシュマロのよう!確かにこの器だと用途が広がりますね。自宅用にはもちろん、大切な方へのギフトにもオススメです。

ちなみに「TOKONAME STORE」のSTANDでは、実際にTOKONAMEの器を使ってドリンクが飲めます。口当たりがとても滑らかで、器を手にした時のすべすべ感もたまりません。

常滑の未来へ向かって

「TOKONAME」プロジェクトをスタートさせてから約2年。お客様からの評判はもちろん、産地からも注目を浴びているといいます。

「産地における親から子への技術継承は、残念ながらほぼなくなっています。そんななか『TOKONAME』プロジェクトをやったことで、若い地元の人たちにも興味を持ってもらえていて。これで茶器の技術継承が少しでも行われていけば本望ですね」

そう微笑む鯉江さんの眼差しは、しっかりと常滑の未来を見つめていました。

TOKONAME STOREを訪れるイベント

長谷川浩史・梨紗(株式会社くらしさ)

長谷川浩史・梨紗(株式会社くらしさ)

広告出版社を退職後、世界一周、日本一周を経て「くらしさ」を設立。全国各地のモノ・コト・ヒトを伝え、つないでいく活動に尽力している。全国の仕事人に会いに行ける旅「Life Design Journey」も運営。http://lifedesign-j.com/

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