島根・松江でシジミカレーを実食!老舗料亭「臨水亭」でいただく上品な味

2015.11.16 更新

今や世界中で愛されるカレー。しかし、カレーの世界というのは奥深いもの。この企画では、カレーの第一人者・井上岳久先生と、私、カレー初心者ライター・井上こんの“ダブル井上”で全国の名店カレーを食べ歩き、先生の解説とともに地域性や歴史背景も交えてさまざまなカレーを紹介していきます!

前回は、ホッキ貝漁獲量日本一を誇る北海道苫小牧市からホッキ貝をふんだんに使ったマルトマ食堂名物「ホッキカレー」をご紹介しました。今回はどんなカレーが登場するのでしょうか?

【Contents】

1.名実ともに日本一のシジミの街、松江
2.古くは松平家御用達の屋敷として
3.もちっ、ぷるっ?驚きの食感天国

島根県松江市。市街を豊かに流れる川や水路、そして夕暮れどき、茜色に染まるさまが日本夕日百選に選定されている松江のシンボル・宍道湖など、水があふれる景色は同市が「水の都」と呼ばれるゆえんです。

1.名実ともに日本一のシジミの街、松江

そんな松江の味覚の代表といえば、シジミ。わずかに塩分を含む宍道湖では年間3千トン以上もの漁獲量を誇り、2014年は青森県の十三湖を抑え4年ぶりに日本一に返り咲いたとか。さらに、同市のシジミ消費量は7年連続日本一と、まごうことなき“シジミ好きの街”であることが分かります。(参照:宍道湖漁業協同組合)
井上「ということで、今日はシジミを使ったカレーをご紹介しますよ!」
こん「シジミカレーかぁ。たしかにシジミは栄養豊富で出汁も美味しいけれど、カレーと組み合わせるとなると正直想像できないんですよねぇ」
井上「フッ…こんさん、7年ほど前に松江市が舞台だった朝ドラを覚えていますか?その中でシジミカレーなるものが登場したのをきっかけに、このあたりでは一大シジミカレーブームが起きたんです。残念ながらその多くは現在終売していますが、これから行くお店は今でも人気なんですよ」

2.古くは松平家御用達の屋敷として

京橋川に架かる東京橋(ひがしきょうはし)を後にした私たちが向かったのは、末次本町にある1890(明治23)年創業の料亭「臨水亭(りんすいてい)」。このあたりは江戸時代、松江藩の城下町として栄えた歴史を持ち、当時を彷彿とさせる武家屋敷が並ぶ風情あるエリアです。こちらの「臨水亭」の建物も、松平家の歴代当主がくつろぎの場として利用していたご用地だったとか。宍道湖を見渡せる日本庭園や茶室などは当時のままだというから驚き。
▲300年以上前からあるという庭のつくばい

「私たちがシジミカレーを作ったのは7年前、ちょうど朝ドラに登場する少し前になりますね。松江の名産シジミを使って新たな客層を獲得できるメニューを作れないかと考えたのがきっかけです」と四代目・西尾泰賢(やすたか)さん。県内に留まらず山口、京都と全国を飛び回り、新メニューの考案に没頭する日々だったそう。
▲西尾さんら料理人だけでなく常連客もシジミカレー開発に携わったそう

「お待たせしました」とご主人が運んで来られたものを見て「わあ!」と声を上げてしまいました。
まず目が行くのは野菜がゴロゴロ入ったカレー、次に別皿のライス、そして…いました、いました。ゼリー状のシジミの塊が。
西尾さん「シジミカレーというと、殻付きのシジミをそのままカレーに入れる店が多かったのですが、どうしてもカレーの味にシジミが負けてしまう。うちは料亭ということもあり、シジミのエキスを凝縮した煮こごりという形でお出ししています」

シジミカレーの正体、それは「シジミinカレー」ではなく「シジミwithカレー」だったのです。さあて、そのお味は?

3.もちっ、ぷるっ? 驚きの食感天国

▲それでは、いただきます
▲食べ方はこう。まず煮こごりをカットし
▲ライスに乗せる
▲そこにカレーをかける。煮こごりが溶けてしまわないよう手際よく食べるべし
▲「ンムッ」
こん「す、すごい! 煮こごりの冷たくてぷるぷるの食感と熱々のカレーが口の中で絶妙にマッチしますね。それにこのカレー、『あたし!あたし!』と主張しすぎない感じが好印象です」

鶏ガラをベースにじっくり煮込まれたカレーは、辛さより野菜の旨みや甘みを引き立たせた優しい味わい。スープタイプということもあり、そのままさらっと飲めてしまうほどです。

こん「ご主人、ご飯のこのもちっとした食感はなんでしょう?」

西尾さん「それは茶懐石の最後に出る『湯斗(ゆとう)』をイメージしたもので、ご飯をバターで香ばしく焼き上げることで外はかりっと中はもちっとした独特の食感を出しています」
井上「ふむふむ、カレーは優しいインド系だね。野菜の旨み、特に玉ねぎの甘みがよく出ている。全体的にはあっさりとした仕上がりながら、カレーにコクを与える役割のバターをライスにこういう形で細工するとは…面白いアイデアです!」

こん「ご飯のバターとカレーを口の中で合わせて初めて100になるわけですね」
▲カレー、ご飯、煮こごり。この3つが合わさりこの料理は完成するのです
井上「うん、それとこの山椒もカレーによく合うね。自分で味を変える楽しみがあって非常に良いと思います」
▲5分で完食、そしてこの笑顔

では、シメはいつもの格言で。じゃん!
井上「創作カレーの成功は妥協なき試作試食と英知の結集にあり!(創作カレーは難しい!)」

こん「プル! カリ! モチ! 3つの食感を楽しむべし!」
井上「一般的に創作カレーで成功することは難しいとされています。にもかかわらず、ゼロから作ってここまでの完成度にするのは本当にすごいと感じました。それと、“新たなカレー”を作るだけでなく“新たなカレーの食べ方”を作られた自由な発想も素晴らしいです!」
臨水亭さん、ありがとうございました!

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。

井上こん

井上こん

1986年生まれのフリーライター。「Yahoo!スポーツナビDo」「SPA!」「nomooo」「ウートピ」などのWEBメディアや雑誌「散歩の達人」などで執筆。

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