かき氷ホットスポット静岡/小池隆介のかき氷あっちこっち食べ歩きvol.3

2015.09.14 更新

日本にはかき氷屋さんが密集する地域がいくつかある。 鹿児島・愛知・沖縄などが有名で、他にも京都・愛媛・長崎などではかき氷を提供している店が多く存在する。静岡もその一つで、名産のお茶を使ったかき氷や温暖な気候で育った地物のフルー ツを使ったかき氷など、バラエティーに富んだかき氷を楽しむことができるのだ。


ガソリンスタンドの中の楽園「沖縄cafe果報」

カーナビの示す通りに店舗に向かうと、お店の場所にはガソリンスタンドしかない。一度通り過ぎてから「おや?」と思って引きかえすと、入口にやや控えめに書かれた店名を見つけた。
「沖縄cafe果報(カフー)」はガソリンスタンドの中にある沖縄料理とかき氷のお店だ。
7月になると提供される地元・古人見産のマスクメロンを使ったかき氷は、提供の時期近くなると常連さんから「メロン、まだ?」と催促の電話が多くなる。
「コンデンスミルクと一番あうフルーツってメロンだと思うんですよ」という店主の話を聞きな がらひとさじ口にはこぶと、メロンの香りが口いっぱいに広がり、追いかけるように トロッとしたコンデンスミルクが溶けてゆく。味わううちに店主の言葉に同感し、うんうんと相槌をうつ。完全にピューレにせずに食感を残したというメロンの小さめの果肉が舌の上で潰れる感触が心地よく、その瑞々しさにスプーンが止まらない。(7~8月限定)
▲メロンピューレかき氷800円(税込)
沖縄から定期的に送ってもらうという「具志頭(ぐしちゃん)マンゴー」を使った
かき氷は、マンゴーの味をそのまま味わってほしいと加糖せずに作ったマンゴー丸ごとのシロップ。(7~9月限定)これもコンデンスミルクがよく合う。
▲マンゴーピューレかき氷800円(税込)
沖縄好きで波乗り大好きなご主人が、ここで本格的にかき氷を提供し始めたのは2010年頃。もともと波乗り仲間やご近所さんが集まることが多かったというガソリンスタンドだが、今ではかき氷を提供する期間中、氷目当てのお客さんが次から次へと訪れる。

最初は少なかったメニューも今では定番と期間限定を加えると10種類を超えるほどになったという。静岡名産のいちご「紅ほっぺ」を煮込んだいちごのかき氷も、金時豆を煮込んで作る沖縄の郷土料理「沖縄ぜんざい」もガソリンスタンドのスタッフみんなで力を合わせて研究し、お客さんに喜んでもらおうと提供して来た。
▲沖縄ぜんざい550円(税込)
ガソリンスタンドの裏には、店主らが作った風の抜ける裏庭があり、そこでかき氷を食べる事も出来るという。浜名湖畔にある不思議な沖縄カフェ、気持ちの良い風の吹く日にまたふらりと立ち寄りたい。

エスプレッソに恋したかき氷「カフェトスカ」

浜松駅の近くに[プレミアムかき氷」と銘打ったかき氷があるらしい、と噂に聞いていた。駅前のビルの1階にあるイタリア料理店「カフェトスカ」では、5~6年前にかき氷の機械を入れて本格的にかき氷に取り組み始めたという。
一番人気は旬のイチゴをたっぷり使ったイチゴのかき氷だという。最近では、生いちごを使ったシロップは多く見られるようになったが、食べ比べてみると各店舗の個性がはっきりと表れる。色鮮やかなシロップは、甘ったるくなりすぎないように気を遣い、いちごの果肉を感じられる程度に残し、甘酸っぱい苺本来の美味しさと香りをしっかり残して仕上げている。
イタリア料理店のデザートとして考えられたかき氷は、食事のフィニッシュを飾る役割もある。だからこそ重すぎず、強すぎず、前に出すぎない味。
しかしデザートとしての役割を果たしながら、単体で食べてももちろん大満足だ。
▲プレミアムかき氷 生いちご750円(税込)
店主横山さんオススメの「エスプレッソ」は、ナポリの濃厚なエスプレッソをそのままシロップに仕上げたという自信作。
多くは語らない店主が、静かに運んできた氷をみてびっくりした。氷の上にたっぷりのっているのは、まるでコーヒーのクレマのような泡の固まりなのだ。
エスプレッソシロップをクレマにのせるようにかけてみるが、力強いクレマは簡単には溶けない。ひとさじすくって味わえば、氷とシロップとクレマが一瞬混じってスッと溶けた。口の中にはエスプレッソの香りが、強く余韻として残っている。
「高級なアイスコーヒーのイメージなんです」と、寡黙な店主もエスプレッソに関しては熱がはいる。香り、軽さ、エスプレッソの美味しさが余すところなく盛り込まれたかき氷。
▲プレミアムかき氷 エスプレッソコーヒー750円(税込)
旅先で思いがけずこんなかき氷に出会えると、「あぁ、ここまできて良かった!」と一人悦に入ってしまう。
通年通しての提供なので、浜松旅行の締めくくりに美味しい料理とかき氷というのもなかなか良いじゃないかと思う。

静岡産の抹茶を産地で味わう「おさだ苑本店」(今期提供終了)

静岡ではお茶を使ったかき氷を提供しているお店が多くある。「おさだ苑本店」は、昨年からかき氷を始めたばかりというかき氷の歴史は浅い店舗であるが、珍しい静岡産の抹茶を使ったかき氷があると聞いて、是非行ってみたいと思っていた。
お茶の生産地・遠州森町に店を構える「おさだ苑本店」は昭和23年(1948年)に「おさだ商店」として創業。地元のお茶農家と厚い信頼を築きながら、安心で美味しいお茶をつくることを心がけてきた。以前から提供していた冷たいお茶の菓子に、昨年からかき氷を加えて提供している。
ここで食べてみたかったのが、お茶専門店ならではの「雪ふわ森の抹茶のかき氷」。

静岡のお茶の生産量は日本一と言われているが、抹茶に関してはあまりその評判を聞いた事が無かった。かき氷を食べていると「京都宇治の抹茶」や「西尾の抹茶」とは良く聞くが、「静岡の抹茶を使っています」という話をあまり聞いた事が無い。だからこそ、おさだ苑自慢の森の抹茶「野乃」を使ったかき氷を、以前から食べてみたかったのだ。
▲雪ふわ森の抹茶のかき氷 700円(税込)
運ばれて来たかき氷は、目にも鮮やかな美しい緑。冷たい氷にかけられた抹茶のシロップは本来そこまで香りがしないはずだが、柔らかな抹茶の香りが漂う。聞くと
お抹茶は店内の石臼で挽いた挽きたての抹茶を使用しているとのこと。
よく「地元で出来た米を生産地のお水で炊くのが一番旨い」という話を聞くが、この地で育った茶葉を店内の石臼で挽き、引き立ての抹茶を削りたての氷に合わせているのだから、期待は高まる一方だ。
柔らかな抹茶の甘さがふんわりと広がった。これが静岡の「おさだ苑」が誇る抹茶だ。
▲雪ふわ森の抹茶のかき氷/小豆のせ
やさしい甘みと香り高い抹茶の風味を楽しんだ後は、添えられた甘納豆とミルクをかけて味の変化を楽しむ事が出来る。
小豆ではなく、スッキリとした甘みの楽しめる甘納豆を添えてあるところが心憎い。この組み合わせ、実によく合うのだ。お茶が甘納豆を、甘納豆がお茶と引き立て、あっという間に完食。最後は溶けかかった氷を、お抹茶のように飲み干した。
店主の長田夏海(おさだなつみ)さんはかき氷について「お茶の入り口として楽しんでくれたら嬉しい。これからもお茶の美味しさを伝えていきたい。」と語る。
お茶の専門店が作るかき氷を食べて、日本茶の世界を垣間見てみるのもまた一つの縁。お茶の話を教えてもらい、美味しいお茶を頂き、楽しい訪問となった。

古き良きカキゴオリ…「みどりや」

最後に、どうしても紹介したい店が浜松にはある。この店は自分がかき氷に興味を持つずっと前からあった店で、地元の人に愛され続けている店だ。
夏はいつも大繁盛。昔からこの店のかき氷を食べていた人たちが、子供や孫を連れて行列にならび、夏の思い出を刻んでいく。
浜松の「みどりや」は、静岡の夏の風物詩だ。
「みどりや」は、今年で創業47年になるあづま焼きのお店だ。毎年5月1日から10月10日までの間は、名物のあずま焼きとみたらし団子をお休みしてかき氷だけの販売となる。
この店で提供されるのは、ご主人が手作りしたイチゴやレモンなどの鮮やかなシロップに、フルーツやアイスクリームをのせた昔ながらのかき氷。
無果汁のシロップと缶詰のフルーツ、そのかき氷がお世辞ではなく抜群にうまいのだ。
氷をちょうどいい温度にもどし、かき氷の機械と息を合わすようにして薄くふんわりと削る。単純なようだが、氷の削り方、蜜のかけ方、そこにはご主人にしか出来ないコツが沢山あるのだろう。たくさんのかき氷を食べ歩いてきたが、このかき氷を食べたとき「そうそう!これこれ!!」と心の中で叫んでしまった。
▲フルーツいちごミルクフロート500円(税込)
昭和の時代から変わらず作りつづけてきたかき氷は、昔も今もこの店を愛する人の夏のご馳走だ。
職人気質のご主人は黙々とかき氷を削り、愛嬌の良いお母さんが接客をする。毎年毎年繰り返された日常が、歴史となっていまの「みどりや」となっているのだ。
かき氷を求めて旅すると、たまにこのようなお店に出会う。
かき氷を愛し続けて来た「みどりや」は、日本のかき氷屋の原点のような気がしていつまでも、頑張ってほしいなぁと心から望んでいる。
▲宇治金時フロート 500円(税込)

小池隆介

小池隆介

かき氷のフードイベント『かき氷コレクション』実行委員会代表。かき氷専門ガイド本『かきごおりすと』の編集・発行者。一般社団法人日本かき氷協会代表。日本中のかき氷を食べ歩いて取材し、日本古来の食文化で伝統食でもあるかき氷を広く伝える為に活動。かき氷にとどまらず、氷雪業(氷の卸しや販売、製造)全体にも精通している。

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