山村一帯が梅酒にほろ酔う二日間 徳島県・美郷梅酒まつり
徳島県吉野川市の中心部に、蛍の里として知られる「美郷(みさと)」地区があります。山深く、耳を澄ませば清流のせせらぎが聞こえるこの地区は、梅の生産地としても有名で、2008年には全国で初めて梅酒特区に認定されました。現在5つの梅酒蔵が美郷の梅をつかって、個性豊かな梅酒づくりに取り組んでいます。

美郷の人は梅酒づくりがDNAに組み込まれてるんよ

東野宏一さんは美郷のご出身。2002年までは京都の会社で働いていましたが、定年退職を機に美郷に戻ってこられました。「帰郷したら若い人も減って、村がなんとも寂しい雰囲気でね。どうにかできんかと思っていたときに、美郷が梅酒特区に認定されたんです」と東野さん。
本来、酒類製造免許を取得するには年間6,000リットルの生産が義務付けられていますが、梅酒特区内で生産された梅を原料に使い、同区内で梅酒を製造した場合は基準が年間1,000リットルまで引き下げられ、少量生産の事業者でも酒類製造免許を取得できます。これが「梅酒特区」です。

もともと梅の産地であった美郷では、どの家でも梅酒を漬けており、それが特区認定の後押しとなったそう。帰郷早々、梅酒づくりに乗り出した東野さん。「梅酒の漬け方?それはもう体に染み込んでいます。美郷の人のDNAには梅酒の漬け方が組み込まれているといっても過言ではないですよ」とにっこり。


また、梅酒といえば何年も熟成させたものが多いですが、東野さんが提供するのは「新酒」。6月に仕込んで同年の11月に出荷しはじめ、1年以内にほぼ売り切ってしまうそうです。こぢんまりとした蔵の中には、今夏仕込んだばかりの梅酒瓶がずらり。瓶の底に梅の実が沈んでいるものは昨年仕込んだ梅酒。もう残りわずかです。

「そうそう、女性むけに新作をつくったんよ」。そう言って出してくれたのは、きれいなうぐいす色の箱に入った梅酒。「ホーホケキョ」は、竜狭(りゅうきょう)という小梅を仕込んだアルコール度数が低めの一本。昨年の梅酒まつりで試験販売したところ、用意していた100本があっという間に売り切れてしまったそうです。

黄金色に澄んだ梅酒をまずはストレートで。ふわっと鼻をくすぐる芳醇な梅の香り、フルーティーな甘さとキレのある味わい。飲みやすいので、知らないうちに飲みすぎてしまう、なんとも危険なお酒です(笑)。

たった一つの蔵から始まった梅酒での村おこし。その盛況ぶりが感じられるのが、毎年11月の最終土・日曜に行われている「梅酒まつり」です。5つの梅酒蔵と3軒の農家民宿、温泉1軒をシャトルバスで巡るこのおまつり。各蔵自慢の梅酒が飲み比べできるほか、農家民宿では美郷の特産品を購入したり、秋の味覚が味わえます。
2014年は、人口1,000人の村に対し、およそ3,000人以上の客が訪れたというから驚きです。「今年もたくさん人が来てくれるとええな」と東野さん。美郷の梅酒と美しい景色を求めて、まつり以外の日も、村に人々が訪れるようになってきているといいます。



「梅酒づくりは手段の一つ。目的は美郷全体が元気になること。のんびりなんかしてられんのです」と東野さん。聞けば、明日は徳島市内、明後日は大阪、来週はまた徳島市内と、直販のために全国を飛び回る多忙なスケジュール。「通販も便利やけど、やっぱり直接お客さんと会うのが一番元気をもらえるんです。その場で感想も聞けるので、梅酒づくりの参考にもなるしね」。

夫婦二人三脚の“日本一小さな酒造蔵”が全国に発信する“美郷の梅酒”。ぜひ、梅酒まつりに訪れて、飲み比べてみませんか。
東野リキュール製造所
徳島県吉野川市美郷字川俣5-5
[営業時間]9:00~17:00
[定休日]月曜
0883-43-2216
第9回 美郷 梅酒まつり
徳島県吉野川市美郷地区の12の場所
2017年11月25日(土)・26日(日)10:00~16:00
[参加料]梅酒クーポンチケット5枚つづり 前売り 税込1,000円、当日 税込1,200円(各梅酒蔵、民宿、美郷ほたる館・美郷物産館・美郷の湯にて電話予約受付)
※飲酒のイベントのため、お越しの際は公共交通機関・JR阿波山川駅からの無料シャトルバスをご利用ください(梅酒蔵5軒と農家民宿3軒、温泉1軒の間を無料シャトルバスが運行しています)
0883-43-2888(美郷梅酒まつり実行委員会事務局)

見よ、この梅干しの棚を!さすが梅の里・美郷


梅の実が良いので、余計な風味づけが必要ないんですね。しかし、これだけあるとどれを選んで良いのやら…。と思ったら、ご安心ください。試食できますよ!




美郷物産館 みさと屋
徳島県吉野川市美郷字峠463-3
[営業時間]10:00~17:30
[定休日]年末年始
0883-26-7888
森の中に佇む小さな食堂で贅沢ランチ




縁があって美郷にIターンしたお二人。「最初は美郷の人たちに、自分たちの料理が受け入れられるか不安でした」といいます。それもそのはず、リニューアル前の美郷の湯では、お蕎麦やうどん、定食などがメイン。パスタなどの洋食はあまりなじみのない料理でした。



そのほか、仙台出身の遠藤さん渾身の「タンシチュー」(ランチタイムセット税込1,280円)もとろけるような美味しさでオススメとのこと。これは、また食べに来なくちゃですね。
森の中の小さな食堂 ORGANO
徳島県吉野川市美郷字奥丸75-1 美郷の湯内
[営業時間]11:00~14:00L.O.、17:00~20:00(L.O.19:30)
[定休日]水曜(※繁忙期の場合はこれに限りません)
0883-43-2626
文・写真:伊藤秀美
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
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