白馬八方尾根へ。山のプロフェッショナルと行く

2015.10.09 更新

長野県北安曇郡白馬村は、グリーンシーズンには登山やトレッキング、ウィンターシーズンにはスキーやスノーボードのメッカとして、さまざまなアウトドアアクティビティが楽しめるエリアです。なかでも八方尾根にある「八方池」までのトレッキングコースは、日本百名山の10座以上が見渡せる絶景スポット。そこで今回は山に関するさまざまなスキルを備えた山歩きのプロに「八方池」までのコースを案内してもらいました。

▲晴れた日は白馬三山を水面に映す「八方池」

八方尾根の魅力を存分に味わえる、往復3時間の山歩き

長野県北安曇郡白馬村にある「八方尾根」は、北アルプス北部の後立山連峰の一部です。尾根は唐松岳から白馬村八方地区まで続き、四方八方に見晴らしが良いことから「八方尾根」の名が付きました。ゴンドラと2本のリフトを乗り継ぎ、終点から「八方池」までのトレッキングコースは、周囲の山々を眺めながら歩ける開放感と、山歩き初心者でも挑戦できる手軽さから人気があり、老若男女問わず山歩きを楽しむ人たちでにぎわっています。

今回案内をしてくれたのは、東京都出身の石田弘行さんです。学生時代に登山をしたのが原体験となり、白馬村へ移住。スキー場会社勤務を経てプチホテル「グローブ・イン・スカラ」を開業しました。現在は白馬山案内人組合、北アルプス山岳ガイド協会、北アルプス北部遭難防止対策協会などに所属し、長野県自然保護レンジャー、地元山岳ガイドとして、登山道の整備、山の保全活動、遭難防止などさまざまな活動をしています。
▲案内人の石田弘行さん
石田さんは、約100年もの歴史を持つ山岳ガイドの集団「白馬山案内人組合」のメンバーで、「白馬マイスター」でもある。「白馬マイスター」とは、スキー・登山・民俗・歴史、木彫り、ガーデニングなどさまざまな分野のプロフェッショナルな人たちのこと

「北アルプスをはじめ多くの山岳では、八方池と同じ標高(約2,000m付近)は樹林帯で眺望の得られないことが多いのですが、八方尾根ではコースのほとんどが草地、低木で開放感のある素晴らしい眺望が楽しめますよ!」と石田さん。

ゴンドラとリフトを乗り継ぐ気軽さが魅力

まずは標高770mにある「八方駅」から八方ゴンドラリフト「アダム」に乗って8分で、標高1,400mの「兎平(うさぎだいら)駅」へ。続いて「アルペンクワッドリフト」に乗ると、目の前には気持ちの良い草原が広がります。これからの紅葉の時期は枯草風景のあたたかな色合いです。
▲「アルペンクワッドリフト」からすくすくと伸びた植物と、開放感あふれる八方尾根の風景を眺める
「黒菱平」に到着するころには、麓と比べて空気が冷たくなるのを感じます。ここには長野冬季オリンピックで使われた女子滑降のスタートハウスが今も残されています。
▲女子滑降のスタートハウスの脇には雲海デッキがあり、雨飾山、焼山、火打山、黒姫山などの山々が見渡せる
グラートクワットリフトへと通じる遊歩道には、「鎌池」と呼ばれる小さな池と高層湿原が広がります。ミズゴケの泥炭が堆積した湿原には、モウセンゴケやワタ
スゲ、ミズバショウ、ニッコウキスゲなど雪解けから夏にかけたくさんの植物が生育します。

「グラートクワッドリフト」に乗り、「八方池山荘(第1ケルン)」を降りたら、いよいよトレッキングがスタート。第2ケルンまでの登りは、岩がゴロゴロした尾根コースとつづら折りの木道コースに分かれます。そこから先、八方池へは一本道です。

「山歩きは、慣れないと歩くペースがつかめません。はやる気持ちを抑え気味にゆっくり確実に、息切れしないスピードがその人のペースです。ガイドと歩く時は、私たちの足跡をたどり、小幅で歩くように伝えています。最後まで息切れせずに歩けるペースが理想ですね」(石田さん)

実際にアドバイスを受けながら歩いてみると、石田さんが安全に歩きやすいラインを選びながら進んでいることに気が付きます。グラグラしている岩や、滑りやすいところなどは極力避けて、ケガや転倒をしないよう配慮してくれます。周辺の山々や高山植物の説明もしてくれるので、歩き進むうちに八方尾根や登山の知識に詳しくなれるのも魅力です。
▲八方尾根でポピュラーな高山植物のひとつ「ハクサンシャジン」は、淡い青紫色の鐘形の花が特徴(見頃は7月下旬から8月中旬)

季節、時間、天候によって表情を変える「八方池」

会話を楽しみながら、ゆっくりと歩を進めること約1時間30分。ようやく八方池が近づいてきました。雪解け水や雨水などよって生まれた八方池には、サンショウウオやモリアオガエルが生息。水面には白馬鑓ヶ岳、杓子岳、白馬岳の白馬三山を鏡のように映し出しています。池の周辺には人が集い、休み、おしゃべりしていて、まるで天空の楽園のような不思議な風景です。
▲この日は少し雲が多かったので、水面にはまるで本物の雲があるかのように映し出されていた
「山は一日として同じ状態ではありません。八方池も同様で、季節や天候によって映し出される山の様子や水面の色が変化するので、いつ訪れても新しい魅力や発見に満ちています。私たち山のガイドと歩くと、山や自然の魅力を、より深く知るきっかけになると思います」(石田さん)

これからのシーズンは紅葉を目的に山歩きを楽しむ人が増えます。特に八方池までのルートは、ゴンドラやリフトを使って日帰りで気軽に歩けるため、足元や服装が軽装で来る人もいるようです。

「八方池や他の初心者向けの山であっても、場所と季節に合わせた最低限の装備は必要です。北アルプスの3,000m級の山の稜線では氷が張り雪が舞う季節になってきました。八方池の標高は2,060mですが、これからは一段と気温が低くなります。山では100m標高が上がるごとに0.6度ほど気温が下がります。防寒具や雨具を忘れず、登山靴もしくは底がしっかりしているスニーカーで支度を整えましょう。日没も早まっていますので万が一に備えヘッドランプも用意してほしいですね」(石田さん)

休憩とおしゃべりを挟んだら、下山です。下りは足への負担がかかりやすいので、第2ケルンから下は、整備された木道コースを通ります。体力や足に不安がある人は、登りもこのコースを通ると良いでしょう。
▲木道コースからは五竜岳や鹿島槍ヶ岳が望める
一足早く秋が訪れ、少しずつ暖かな色を織りなす山と、真上に広がる広大ですっきりとした空が満喫できる八方尾根へ、トレッキングに出かけませんか。
くぼたかおり

くぼたかおり

エディター・ライター。長野県長野市の出版社でタウン情報誌、観光ガイドブックの編集者として経験を積み、2009年に独立。現在は長野県内外問わず観光関係の仕事を中心に、郷土、グルメ、暮らし、映画などさまざまなフィールドで活動する。2012年から11の事業者と「権堂パブリックスペースOPEN」という複合施設を作り、元呉服問屋の建物を改修。いかに心地よく共有し合いながら働けるのかを日々模索している。

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