大正ロマンを感じる「銀山温泉」郷愁の旅

2016.02.17

山形県の北東部に位置する尾花沢市。街の中心部から西へ15kmほど車を走らせた山間に「銀山(ぎんざん)温泉」があります。大正末期から昭和初期にかけて建てられた洋風木造多層建築の旅館が銀山川の両岸に沿って軒を並べる、小さな湯の町を訪れました。

▲川をはさんで趣のある旅館が建ち並ぶ温泉街

銀山温泉まではJR大石田駅からボンネットバスで向かいます。
レトロなボディとレッドカーペットが敷かれた車内。トコトコ揺られながら銀山温泉に着くまでに、気分はすでに大正ロマン。予約不要の定期路線バスです。
▲運賃は片道710円(税込)
▲レトロモダンなフォルムが素敵!

その名の通り、銀山温泉は江戸時代初期に大銀山として栄えた「延沢銀山(のべさわぎんざん)」の名前に由来しています。鉱山が繁栄していたこの地には全国から様々な職種の人たちが集まり、町を形成していました。

温泉が発見されたのは1600年頃。やがて銀山は衰退していきますが、一部の鉱夫たちが土地に残り、湯治宿の経営を始めました。
▲雪の似合う温泉街

建物だけでなく、通りのガス灯や石畳等、温泉街全体が大正ロマンあふれる景観。
しんしんと降り続く雪が、ノスタルジックな空気感に溶け合います。

温泉街の入口にある貸衣装&カフェ「あいらすげ~な」では、銀山温泉の雰囲気にぴったりな大正時代の衣装が借りられます。冬期間は休業ですが、今回特別にお借りすることに。
レトロでかわいい着物にテンションも上がります。
▲大正オトメに変身~!

着物と袴に身を包み、昔ながらの街並みを散策すれば、旅の楽しさが倍増!
女友達と一緒に、カップルで、気分は大正時代へタイムスリップです。

悠久を紡ぐ宿を訪ねて

今回は、目を引く洋風木造多層建築の旅館群の中で、ひときわ存在感を放つ「能登屋旅館」にお邪魔することに。
▲4層木造構造の「能登屋旅館」
▲入口の漆喰の細工も素晴らしい

能登屋創始者の祖先である木戸佐左エ門は石川県から銀を掘りに来た鉱夫でした。閉山後もそのまま残り、その後、代替わりした明治25(1892)年に「能登屋旅館」として宿の営業を始めたのです。

しかし、大正2(1913)年、銀山川の大洪水で、温泉街のほとんどの宿が流されてしまい、一時、銀山温泉全体の温泉湧出量も減少してしまいます。

大正10(1921)年に銀山川の水を利用した発電所が作られたことで、その後徐々に復興していった湯治場。「能登屋旅館」の母屋も同時期に建て直されました。

大正から昭和初期の面影を残す館内。温泉街を見下ろせるように各階の窓側には椅子などが置かれ、くつろげるスペースが作られています。各階毎に違う窓の格子のデザインやシェード等、大正時代~昭和初期の意匠がとても興味深く、アンティーク好きにはたまりません。
▲時の流れがゆるく感じられる
▲各階毎に磨りガラスの模様が違います
▲撮影ポイントがたくさん!どの場所も絵になります
▲4層構造の塔屋の部分が、お客様同士の談話室として利用されています

今日の部屋は「春雨」の間。畳敷きの広いスペースにはこたつが。
落ち着いた空間の中であたたかな時が流れます。
▲昔懐かしい佇まい

旅の楽しみはその土地の美味しいものを食べること。夕食は地元尾花沢牛と季節の山菜やキノコ、川魚を使った、ここでしか味わえない料理の数々。

「能登屋旅館」で味わう尾花沢牛は“雪降り和牛”と呼ばれる最高級のもの。未経産の雌牛のみを使用し、脂はしつこくなく、さらっとした口どけと旨みが特徴です。
▲旬を活かした自慢の料理(一例)
▲地元尾花沢牛は陶板焼きで(一例)

「高齢のお客様はご自分が生まれ育った時代を思い出し、懐かしさを求めていらっしゃるし、若い方は新鮮な思いで帰られるようです。“本当の日本を見てみたい”と海外からのお客様も増えましたね。」と、話してくれたのは木戸裕(きどゆたか)専務。
▲18代目となる木戸専務

旅館の醍醐味である大浴場ですが、ここ能登屋旅館の源泉の温度は63度、泉質は含食塩硫化水素泉(ナトリウム―塩化物・硫酸塩温泉)です。神経痛、創傷、皮膚病、婦人科疾患、痔症、リウマチに効能があるとされています。大浴場(男性・女性別)の他、露天風呂、展望露天風呂(冬期は休み)、元湯洞窟風呂があり、宿泊客に人気です。
▲照明の明るさまで計算された大浴場
▲露天風呂からは「白銀の滝」を臨むことができます
▲温泉街から徒歩約20分「白銀の滝」は人気の散策コース

面白いのが、貸切で利用できる地下の「洞窟風呂」。創業当時から元湯として使用されているそうです。「このあたりの旅館の浴場は、銀山川と同じ高さに作ったので地下にあるのが普通でした。」と木戸専務。

洞窟…その響きに誘われるように入ってみると…。
▲洞窟風呂探検に出発!
▲壁面は丸みを帯びた塗り壁。細い階段を下りていくと…
▲幻想的な洞窟風呂にドキドキ!

その名の通り、洞窟の中にある石風呂は、ゆうに4~5人が入れる広さ。暗闇の中に淡い光がぼんやりと浮かびます。1組だけが入浴できるプライベートスペースで、宿泊者であれば利用できます。ここに入らずには帰れない!(笑)

歩く人を主役にしたコンパクトな温泉地

「館内で過ごすだけでなく、温泉街の街並みも楽しんでほしいですね。昼と夜とでは、景観が違いますから。」という木戸専務の言葉を受けて散策へ。
▲しんしんと降る雪も景観とマッチしています

散策していて気付くのがベンチの多さ。それは、「歩く人を主役にした温泉地」というコンセプトから。そのために、原則として温泉街に車は入って来れません。安心して散策できるためか、多少の不便さもなぜか心地良いのです。
▲観光客は老若男女さまざま
▲ガス灯と石畳を整備し、大正ロマンを演出

温泉街を流れる銀山川のほとりにある巨大な足湯「和楽足湯(わらしゆ)」。
天気の良い時には大勢の人たちが、のんびりと楽しむ様子が見られます。疲れも癒されますね。
▲旅館と同じ源泉を利用した足湯は無料で使える
▲ファミリーで楽しめる広さ

尾花沢市では、昭和61(1986)年に「銀山温泉家並保存条例」を制定し、風情ある旅館を保存し観光復興に生かす取り組みを行っています。旅館だけでなく、工夫された看板のデザインや街並みなど、伝統を生かした温泉街にしていこうという街の人たちの熱意が随所に感じられます。
▲懐かしい赤い丸ポストは今も現役

銀山温泉を訪れたらぜひ食べてみたいのが「はいからさんのカリーパン」。温泉街の奥、「はいからさん通り」にあるカフェで購入できます。山形県産の小麦「ねばりごし」を使い、もっちりとした生地にたっぷり入ったカレーが人気です。ルーはちょっと辛め。どこか懐かしいカレーパンは「銀山温泉に行ったらカリーパン!」と言われるほど大人気。売り切れ次第、販売終了です。
▲ピンクの建物が目印
▲店内で食べてもテイクアウトでもOK。1個216円(税込)
▲脂っこさも気にならない
散策から旅館に戻る頃にはすっかり日も落ちて、温泉街は夜の表情に。
ガス灯の灯りが柔らかく雪景色を照らしています。
▲雪が舞う、夜の温泉街も情緒たっぷり

大正ロマンあふれる建物、郷愁を誘う空気感…と、銀山温泉は時間の経過を忘れてしまうほどの心地良さを感じさせてくれます。

コンパクトなエリアの中に魅力がぎゅっと詰まっている銀山温泉。昼夜の景色を楽しんでほしいので、訪れる際は宿泊がおススメです。

休憩スポットで食べたい、新名物の“揚げパン”

次の日、銀山温泉に別れを告げて尾花沢市街地のほうに向かい、2分ほど車を走らせたところにある銀山温泉観光センター「大正ろまん館」に立ち寄ってみました。

ここは、2015年10月にオープンしたばかりの観光を目的にした複合施設。広い駐車場があって休憩スポットとしてもオススメ。
▲レストランでの食事やお土産の買い物も楽しめる複合施設
揚げたての「揚げパン」がおいしそう。揚げパンの中には、地元の秘伝豆を使った「ずんだ」、「あんこホイップ」「黒蜜きなこホイップ」等、トッピングもいろいろ。多い日は一日に200個売れるとか。外側サクサク、中はモチッ。ボリューム満点のおやつです。
▲一個一個丁寧にトッピング!
▲人気の「ずんだホイップ(左)」、「黒蜜きなこホイップ(奥)」、定番の「あんこホイップ(右)」とも1個200円(税込)
▲別腹、別腹。ホイップクリームがたっぷり!
銀山温泉は冬だけでなく、新緑の季節、夏は避暑地として、秋は紅葉狩りにと四季折々で楽しむことができます。都会の喧騒から逃れてノスタルジックな世界へ出かけてみませんか?
佐藤昌子

佐藤昌子

エディター&ライター。山形県知事認可法人アトリエ・ミューズ企業組合専務理事。山形県内を中心にタウン誌、フリーペーパーや企業広報誌等ジャンル問わず、印刷物の企画、取材・編集の仕事を手掛ける傍ら、モデルハウスのディスプレイやリメイク等『気持ちの良い暮らし方』も提案している。

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