ぜ~んぶ食べたい!福岡の人々を魅了するブーランジェリー・パンストック

2016.01.05

福岡市東区の街中に、週末の朝には長蛇の列ができる人気のパン屋さんがあります。国産小麦にこだわり、素材もカラダにいいものだけを使用。ハード系から和テイストの創作パンまで、その味で人々を虜にする店を訪ねました。

福岡のパン業界をさらに熱くした「パンストック」登場!

福岡の中心地、天神や博多から少し離れた箱崎にある「パンストック」にやって来ました。時刻は夕方の4時というのに、ひっきりなしに車が出入りして、次々とお客さんがやって来ます。隣の駐車場だけでは足らずに、第2、第3駐車場まで用意されているほどの人気ぶりです。

オープンは2010年。日本人にも毎日パンを食べて欲しいと、“冷凍ストックしても美味しいパン”をコンセプトにつくられた「パンストック」。その直後から「東区に美味しいパン屋さんができた!」というウワサはあっという間に広がり、福岡を代表するパン屋さんとして知られるようになりました。
店内には、小麦の甘い香りが漂っています。フランスのチーズ台をモチーフにしてつくられたという弓なりのカウンターには、夕方でも店の奥から次々と焼き上がったパンが運ばれてきます。
一日に焼くパンは60種類ほど。ハード系のパンを中心に、デニッシュ系や柔らかめの菓子パンなど、種類も味もカタチもバラエティに富んでいます。
試食が充実していて、味を確かめられるのも嬉しいところ。とはいえ、食べたら最後。美味しくて買わずにいられなくなるのは、仕掛けられた罠なのでしょうか…。

店を営むのは、平山哲生さん。大学の法学部で学びながら建築の夜間コースに通い、建築業界をめざしていたという異色の経歴の持ち主です。大学卒業時は、不景気で建築業界の求人がなく、梅ケ枝餅屋さんでのアルバイト経験を活かせたらとパン屋さんで働きはじめたのがこの世界に入ったきっかけだそうです。
▲「パンストック」オーナーの平山哲生さん

どちらかというと器用な性質で、何でもそつなくこなしてきたという平山さんですが、パンづくりの仕事はそう簡単なものではありませんでした。

「窯焼きや仕込みなら運動神経や記憶能力で何とかなりますが、成形には重心の掛け方や微妙なバランスが必要です。立ち方を見ただけで、その人ができるかどうかわかります。頑張れば何とかなるものではなく、それでも上の人たちは凄く綺麗な仕事をしている。それがずっと悔しくて…。すぐにできるようになっていたら、パン職人になっていなかったでしょうね(笑)」。

パンづくりに夢中になった平山さんは、本場の味を知りたいと27歳でフランスへ渡り、パリや南仏の名店で修行しました。1日2,000本を一人で焼き上げるブーランジェリーで働いてみて、日本とフランスの“テロワール”の違いに気づかされたといいます。

“テロワール”とは、土壌や気候。つまり、その土地の風土のことです。フランスのバゲットが美味しいのは、技術だけではなくフランス産の小麦本来の美味しさや人間の力では及ばない自然の環境があるから。バゲットを細く長く焼くのも、フランス産の小麦をいちばん美味しく食べる方法だから――。

それなら、日本には日本のパンづくりがあるはず。既成概念に捉われない自由なパンづくりをしようと考えた平山さんは、帰国後、ユーハイムの志賀勝栄さん(現在は東京・世田谷でシニフィアン・シニフィエを経営)や、東京・吉祥寺にある「ダンディゾン」の浅野正巳さんの元で学び、地元・福岡の「パン・ナガタ」(アクロス店)の店長を経て、35歳で独立しました。
常に美味しいパンづくりを求めて、素材からとことんこだわる平山さん。オープン当時は、一般的な外国産小麦やフランス産の高級小麦を使用していましたが、現在は、100%国産小麦を使用しています。

実は、しばらく国産小麦でパンが美味しく焼けると思えるものに出合えず、フランスで店をするしかないと考えていた頃、風味が衝撃的だったという北海道産「キタノカオリ」と出合うことができたといいます。

さらに、オーガニック系の小麦独特の気になる臭いがなく、旨みがきちんと残る福岡産の全粒粉「ミナミノカオリ」との出合いもあり、“テロワール”を感じられるパンづくりが始まりました。パンによって、その小麦を使い分けたり、ブレンドしたりしているそうです。

こだわりは、小麦だけではありません。看板商品「めんたいフランス」に使うマヨネーズも手づくりしているほど。

「サラダ油もそのまま飲める一番搾りの高品質なものを使用しています。市販のものを使うと胸やけしてしまうんですよ。マーガリンも全く使わないですし、チョコレートも乳化剤が入っていないものを厳選しています」。

カラダに良いものを提案するのは前提条件だと、安全に厳しくこだわるため、年々原価が上がりっぱなしという苦労話もありますが、どこまでもひた向きな姿勢が多くのファンから支持されています。

あれもこれも食べたい!「パンストック」の愛しきパンたち

写真手前は、「めんたいフランス」(330円)。オープンから少し経ち、もっとバゲットを売りたいと考案したこのパンが大ヒット! 1日に何度も焼き上がりの時間が設定されています。

写真奥は、「バゲット・ミナミノカオリ」(1本400円、1/2サイズ200円)。ちょっと大きめに焼き上げたバゲットは、皮がカリッと中はもっちり。福岡の小麦の歴史とともに進化し続けるのが楽しみ(平山さん談)という注目のバゲットです。
写真左は、「メロンパリゴウ」(150円)。時間が経つと皮がしんなり弱くなるメロンパンではなく、いつまでもカリッとしたメロンパンをつくりたいと、名前も“パリ野郎”を意味するちょっぴり強そうなメロンパン。

写真右は、「抹茶のブリオッシュ」(1個120円)。パサつきやすいブリオッシュにカボチャや抹茶の成分を入れることでしっとり感をプラス。フレッシュな抹茶を京都から取り寄せて使用。チョコチップがアクセントになっています。
こちらは、直径40センチ以上はあろうかという大きな丸型のパン。「デザミ」と名付けられたパン(写真はホール、販売は1/8サイズ300円)には、仲間や家族と美味しいパンをシェアして欲しいという願いが込められています。焼き上がりは夕方、まだ中が温かいうちに食べると最高!
店内にはイートインスペースもあります。焼き立てパンをここでゆっくり味わうのも至福の時間です。
私もさっそくお買い物タイム。お気に入りのパンはもちろん、これも美味しそうだし、あれも美味しそう。これはどんな味なのかしら…。そうこうしているうちに、あっという間にトレイがいっぱいになってしまいました。シアワセです~。

※価格はすべて税込です。
隠岐ゆう子

隠岐ゆう子

大学でデザインを学んだ後、大手印刷会社に入社。制作ディレクターとして5年勤めた後、フランス・パリに語学留学へ。現在は、九州・山口を中心に編集・ライターとして活動している。無類の旅好きで、暇とお金さえあればヨーロッパを中心に旅する行動派。旅、温泉、スイーツのキーワードに目がない。

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