昼夜各1組限定の料理店「おかりば」で、女子が喜ぶ猪鍋コースを味わう

2016.03.21 更新

天城湯ヶ島、河津など中伊豆地区の名物料理といえば、日本を代表するジビエ料理「猪鍋(いのししなべ)」。地元の猟師さんが獲った猪肉と、たっぷりの地場野菜などを鍋でじっくり煮込んだ、豪快な猟師料理です。静岡県賀茂郡河津町にある「田舎料理 おかりば」では、猪鍋を中心にした山の幸満載の料理をコースでいただくことができます。

ゆっくりと流れる時間を楽しむ、昼夜各1組・完全予約制の和食処

「河津に女子好みのカワイイ猪鍋を出すお店があるよ!」との噂を聞きつけ、さっそく車に飛び乗り、一路「おかりば」へ。石川さゆりさんの大ヒット曲でもおなじみの天城峠を越え、河津ループ橋をグルグルッと通過。国道414号線沿いの細い道を入り、のどかな山々の風景が広がる道を抜けていきます。
到着するとまず迎えてくれるのが重厚感のある門構えと橋。
こんな山の上に(失礼!)こんなに立派な日本家屋があるなんて驚き!一見、高級料亭のような雰囲気です。ここで本当に“カワイイ猪鍋”が出てくるの!?かなりドキドキしてきました……。
美しく整えられた中庭を抜けると、建物の入り口が見えてきます。玄関には、鎧兜や骨とう品などが展示されていて、ちょっとした歴史博物館のようです。料理を待つあいだ、展示してある骨とう品をじっくり眺めているお客さんも多いのだとか。
「もともとは私の父が日本料理店を営んでいたんですが、一度店を閉めてしまったんです。のちに私が引き継いでこの店を再開させ、昼と夜各1組ずつお受けする完全予約制にしました」と、おかみさん。
旬の食材をふんだんに使った、目にもおいしい料理が口コミで評判を呼び、首都圏を中心に遠方からの常連客が増えていったのだそうです。
高級割烹料理店と見まごうような外観とは反対に、広くてゆったりした座敷には、とってものんびりとした空気が流れています。接客も、かしこまったものではなく、とっても家庭的。
まるで、田舎の親戚の家に遊びに来たような感覚でリラックスできるんですよ。

季節の山の幸を盛り込んだ、おかみさん心づくしの手作り料理

縁側にある囲炉裏や鎧兜を眺めていると、前菜が運ばれてきました。
中央には季節の花(今日はムラサキシキブ)が飾られ、彩りがとても鮮やかです。
「やっぱり、こういう場所(山の上)に来たら、目でも季節を楽しんで欲しいですからね」と、おかみさんは言います。
旅人は、こういうちょっとした心遣いに癒されるんですよね。
▲ワサビの茎の三杯酢(奥)、明日葉と手作りこんにゃくの生ワサビ添え(手前)
▲山モモゼリー(右奥)、季節の野菜の酢の物(右手前)、サトイモと葉トウガラシ味噌(左)
どの料理も素朴でありながら、素材の良さを引き出した調理法で作られています。伊豆といえば、とかく海の幸に目が行きがちですが、山の幸をふんだんに使った里山ならではの料理をいただくと、伊豆の新しい一面を感じることができますよね。

次は「いもまんじゅう」が登場。ジャガイモにサトイモをつなぎとして混ぜ、真ん中に揚げカボチャを入れた団子を揚げ、干しシイタケで取ったダシで作ったあんをかけた……という、手の込んだ一皿です。
ふんわりねっとりとしたイモ団子の食感に、揚げたカボチャの甘みとコクが混ざり合い、とても心地の良い食べ応えです。あまりのおいしさにもう一個食べたくなってしまうけれど、ここはじっと我慢です。
次は「とろろそば」が運ばれてきました。竹筒から流れ出る、たっぷり入ったとろろの何と滑らかなこと……!!
これでやっと猪鍋に突入か?と思いきや、なんと目にも美しい「野菜寿司」が登場。しばし見惚れ、じっと眺めてしまいました……。
▲野菜寿司。奥からサンショウ、赤ダイコンとレンコン、シソの葉。手前はイチヂクの甘酢煮
庭の木から採ったサンショウは辛さと香りが酢飯の甘さを際立たせていて美味。シソの葉、赤ダイコンとレンコンの寿司も、酢飯と相性の良い味付けで、シンプルさの中に何とも言えない滋味深さを感じます。
添えられた冷製の甘酒はヨーグルトのような口当たりで、自然な甘さと爽やかなレモンの風味がピッタリ。中にはミカンが入っていてデザート感覚でいただけます。
一番手前に盛り付けられた「イチジクの甘酢煮」は、常連客に人気のひと品。濃い目のゴマだれのかかった甘酸っぱいイチジクが、口の中で意外なほどのナイス・コンビネーションを繰り広げます。一度食べたらとりこになってしまうほどのおいしさ!
さて、ここまで出てきた料理には、だし以外、動物性の素材がまったく使われていません。それでもほとんどのお客さんの満足度が高いのは、手間暇を惜しまず素材に合わせた調理法で、一品一品ていねいに手作りしているからではないでしょうか。おかみさんの調理技術と抜群のセンスに脱帽です。

しまった!メインの猪鍋が登場する前にすっかり大満足してしまった……。まだまだ、満足するには早いですよっ!

超キュートでヘルシーな猪鍋に、女性客は大満足&大感激?

さて、いよいよメインの猪鍋(写真奥)が登場。写真は2人前の分量ですが、白菜、ニンジン、ダイコン、赤ダイコン、ネギ、ゴボウ、春菊、水菜と、種類豊富な野菜が大きな皿ににテンコ盛り。
女性客でも、このボリュームの野菜をペロッとたいらげてしまうのだそうです。
今日は特別に、おかみさんが鍋に野菜を美しく盛り付けてくれました。
それにしても、生の猪肉って、想像していたよりも鮮やかな色をしているんですね。チョウチョ型に抜いたダイコンがカワイイ!野菜のビビッドな色合いから例えれば「原宿系猪鍋」、といったところでしょうか!? 女子の心をがっちりと掴む、キュートな鍋料理です。

猪鍋はみそ仕立てが一般的ですが、こちらではしょうゆと手作りの橙(だいだい)酢を合わせて作った、オリジナルのスープで煮込みます。肉や野菜から出る旨みと溶け合い、口当たりが良くコクのある味わいです。
イノシシの狩猟期間は毎年11月15日ごろから2月15日ごろまで。それ以外は獲ることができません。「おかりば」では、脂が乗っていて一番おいしい時期の肉を冷凍し、1年中猪鍋が楽しめるようにしています。

昔はイノシシを獲ってから解体するまでの時間が長かったため、どうしても肉に臭みが出てしまいました。現在は、獲ってすぐに血を抜き、肉を解体するので、臭みがなく柔らかい肉を提供することができるのだそうです。
「固い、臭い、美味しくない」という従来の猪肉のイメージを覆すため、猟師さんの協力を得て、おいしい肉を提供できるように工夫しています。
厚みのある猪肉は噛むと肉汁がジュワ~ッと染み出し、口の中が旨みであふれかえります。弾力があるのにとっても柔らかいんですよ。
脂身は「プリプリ」というよりも「ブリンブリン」とした強い食感ですが、脂っぽさはまったくありません。むしろ、脂身も肉のような食べ応え。猪の脂身はコラーゲンなのでしつこさがないのだそうです。
後味がさっぱりとしていて、お腹いっぱい食べたあとも胃もたれしません。

おかりばの猪鍋を食べれば、猪肉へのイメージが変わること請け合い。「猪肉は臭いから……」なんて、もう言わせませんよ!
山のような野菜と猪肉を目にして初めは驚くお客さんも、ほとんどの人がペロリと全部たいらげてしまうのだとか。これも地元で採れた、新鮮でおいしい素材のなせる業。
今回は3,500円(税込)のコースをいただきましたが、5,500円(税込)以上のコースでは「金目鯛の煮付け」や「鹿肉の刺身」「鹿肉のぬた」といった人気の料理が並ぶこともあるそうです。
「2~3月はセリがおいしい時期。鹿肉といっしょに、ぬた(酢味噌和え)にすると絶品なんですよ。旬の味を楽しみに、季節ごとに来てくださる遠方からのお客様が多いんです」
おかみさんの心づくしのもてなしと、気取らない会話もこの店の魅力のひとつ。年々リピーターが増えるという人気の理由がわかりますよね。

ほかのお客さんに気がねせず心からリラックスできる、あったかい空間。旅行好きなあなたの“サード・プレイス”になり得る、稀有な和食店が「おかりば」なのです。
小林ノリコ

小林ノリコ

移動文筆家/伊豆在住フリーランス・ライター。東京・南青山の編集プロダクション勤務を経て2005年からフリーランスとなり、2015年より静岡県熱海市を拠点に執筆活動を開始。「ふらりと出かける、ゆる伊豆」をテーマに、地域の宝を再発見する取材活動と、伊豆地域を拠点に活動するフリーランス・クリエイターのネットワーク作りを行っている。

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