冷たくても“温麺”。温かな心から生まれた郷土料理「白石温麺」

2015.06.17 更新

宮城県白石市は、伊達政宗の重臣・片倉小十郎景綱(かたくらこじゅうろうかげつな)の城下町。徳川幕府から一国一城令が出された後も、白石城は例外とされ、明治維新まで存続した特別な場所です。その白石には、江戸時代から受け継がれる伝統的な麺料理があります。その名も「白石温麺(しろいしうーめん)」。市内には温麺を手がける製麺所、温麺を味わえる食事処があちらこちらに。今回は、マツダ麺業本舗の直営店「奥州街道 うーめん番所」を訪ねました。

親孝行から生まれた、体にやさしい麺

温麺は、そうめんの一種です。そうめんとの違いは、長さが三寸三分(約9cm)と短く、油を使わずに作られるということ。
この形になった背景は、江戸時代の元禄年間までさかのぼります。
白石の青年、鈴木味右エ門(みえもん)は、胃病を患った父親のため、消化のいい食べ物を探していました。そんなある日、味右エ門は、旅の僧から油を使わない麺があることを聞き、作り方を学びます。材料は、小麦粉と塩、水。この麺を父親に食べさせたところ、食欲が増し、病状も回復していったとか。

この話はたちまち評判になり、温麺は白石城主への献上品にもなったそうです。そして、人を思いやる温かい心からできた麺ということから、「温麺」と名付けられました。ちなみに、なぜ「温麺」を「うーめん」と呼ぶようになったかは定かではありません。

食材を練り込んだ温麺も!多彩なバリエーションに驚き

今回訪ねた「奥州街道 うーめん番所」は、マツダ麺業本舗の麺を本場で味わってほしいとの思いから造られた食事処です。オープンしたのは、白石城が復元された平成7年(1995年)。今や、白石を代表する有名店です。

店内の売店を見てみると、温麺はもちろん、そば、うどんなどの乾麺がずらりと並んでいます。温麺には、モロヘイヤやニンジン、梅じそ、柿の葉など、さまざまな食材を練り込んだ変わり麺も。このバリエーションの豊富さが、うーめん番所の魅力です。
食事処のメニューも、20種類以上と多彩。冷たい麺も温かい麺も種類豊富に揃えています。社長の松田謙一さんは、「お客様の声を取り入れているうちに、新しいメニューがどんどん増えていったんです」と笑います。
どれにしようか迷ったあげく、今回注文したのは「冷し葛粉うーめん」(870円[税込])。葛粉も白石の特産品で、温麺、和紙と並び、「白石三白(しろいしさんぱく)」のひとつに数えられています。
良質の小麦粉と葛粉を贅沢に使った麺は、強いコシがありながら、口当たりはなめらか。ツルッ、モチッとした豊かな食感を楽しめます。タレは、醤油とエゴマの2種類が付いてきます。

献上品に用いられたという少し長めの温麺を使用

うーめん番所で使う麺は、通常の三寸三分ではなく、四寸三分(約12cm)とやや長め。その理由は、江戸時代、献上品として用いられた温麺は三寸三分より長かったという言い伝えからだといいます。普通の麺より長いため、「箸にかかりやすく食べやすい」「食べ応えがある」と好評だそうです。
麺をゆでる時は、湯を沸騰させすぎてもダメとのこと。火加減に気を配りながら、約3分ゆでます。ゆでたての麺を冷水でサッと引き締め、盛り付け。ゆで加減とその後の手早い動きが、おいしい温麺を作る秘訣です。

「温麺の名の由来になった“温かな思いやりの心”を忘れずに、お客様に接しています。この店で食事をして、楽しんで帰っていただけるのが一番の喜びです」と松田さん。
4種類の変わり温麺を選んで食べ放題を楽しめる「うーめんバイキング(※)」(1,400円[税込])も、白石温麺を楽しく食べてもらうことを目的にスタートしたといいます。
※「うーめんバイキング」は3人以上、14時以降受付

商品やメニューの多さも、お客様を思う気持ちから。アットホームな雰囲気と、さまざまな温麺料理でもてなしてくれるこの店は、何度も通いたくなる温かなお店です。
加藤亜佳峰

加藤亜佳峰

編集者・記者。編集プロダクションMOVE所属。仙台を拠点に、企画・編集・取材・執筆を担当。旅行誌を中心に、情報誌やムック、書籍、パンフレットなど幅広いジャンルの印刷・出版物を手がける。

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