のんびり高野山!お寺に泊まる?總持院の精進料理と宿坊を満喫

2016.01.05 更新

和歌山県高野町にある日本仏教の聖地、高野山。高野山といえば、やっぱり宿坊、そして精進料理です!今回は、高野山を訪れたら、ぜひとも泊まりたい宿坊、そしてぜひとも味わいたい精進料理をご紹介します。

總持院の庭
宿坊とは、僧侶や参拝客が泊まるために仏教寺院などに併設されている施設のこと。高野山では、山内に点在している117の寺院のうち、52の寺院で一般の参拝者、観光客の宿泊が可能です。「お寺に泊まる」と聞くと、質素なものを想像するかもしれません。しかし近年は、それぞれの宿坊が、お部屋やお料理などに趣向を凝らし、上質な宿を提供しています。お寺という独特の空間で、心を落ち着けて日々の疲れを忘れることができるとあって、観光客の間で人気が高まっています。

今回は、高野山のなかでも、「料理がおいしい」「お庭がとてもきれい」「まるでホテルのように設備が整っている」と話題の「總持院(そうじいん)」を訪れました。

お寺に泊まる?宿坊体験

門前には高野山のシンボル、壇上伽藍(だんじょうがらん)、東隣には、高野山真言宗総本山の金剛峯寺。そんな高野山の中心地に位置する「總持院」は、平安時代、高野山第28世・行恵総持坊(ぎょうえそうじぼう)により開創されました。元々は現在の壇上伽藍の境内にあり、後にここへに移ったという由緒あるお寺です。
風格ある山門(仏教寺院の正門のこと)をくぐると、大きな白藤が迎えてくれます。
總持院の玄関。樹齢千年を超える白藤(写真右)
▲總持院の玄関。樹齢千年を超える白藤(写真右)
「登龍藤(とうりゅうふじ)」とも呼ばれているこの白藤は、なんと樹齢千年を越えるという貴重なもの。初夏には見事な白い花を咲かせるそうで、お寺の人いわく、この藤を目当てに訪れる観光客も少なくないとか。複雑に絡みあってのびる太い幹から、大きな藤棚をつたい、四方八方につるを這わせるその姿は圧巻です。
「ようこそ、いらっしゃいました。どうぞごゆっくりしていってください」
出迎えてくれたのは、住職の奥さま、宮田篤代さん。
靴を脱いで中に入ると…
玄関広間の吹き抜け
▲玄関広間の吹き抜け
玄関広間の吹き抜けには、豪華絢爛な装飾の吊り照明。
金色にキラキラと輝くさまに心奪われます。
談話室
▲談話室
続いて、案内された談話室もこれまた豪華。
「チェックインされたお客さまには、まずこちらでお茶をお出しして、ひと休みしていただいております」
金の襖絵や、とても細かい彫り上げ細工が施された机や長椅子。
美術館の展示品のような調度品の数々に、一瞬、座ってくつろぐのを躊躇してしまいます。
そして、宮田さんの案内のもと、客室へ。宿泊できる客室は、特別室を含め、計14室。大庭園を眺める部屋、坪庭をもつ部屋など、さまざまな景観を楽しめます。
客室は、どのお部屋も一流旅館顔負けの贅沢な造り(写真は特別室「中書院」)
▲客室は、どのお部屋も一流旅館顔負けの贅沢な造り(写真は特別室「中書院」)
全室冷暖房完備。TVなども揃っており、お部屋によってはなんと、床暖房も。お寺とは思えない贅沢な空間です。
特別室「方丈の間」の縁側
▲特別室「方丈の間」の縁側
なかでもおすすめの部屋のひとつが、特別室 「方丈の間」。各界の著名人が宿泊に訪れたり、2015年はなんと、将棋界の最高位を争う竜王戦第三局の対局場として、11月5・6日の2日間、熱い戦いを繰り広げたというお部屋です。

お部屋から直接出られるようになっているお庭がとてもきれいです。
「春は桜に、秋は紅葉。冬の雪景色もきれいで、四季折々に豊かな表情をみせる自慢の庭でございます。高野山は、本当に静かな場所なんです。車の騒音なども一切聞こえない静かな空間の中で、こころを落ち着けるには最高の場所なんですよ」

じっくり次の手を考えて、長考の際は、庭に出てこの素晴らしい景色を見ながら気分転換して…
この最高の環境で、将棋界の頂点を決める勝負に没頭している棋士の姿が目に浮かびます。
足の不自由な方にもくつろいでいただけるように作られている和洋室のお部屋
▲足の不自由な方にもくつろいでいただけるように作られている和洋室のお部屋
なかには、スロープが設けられたバリアフリーのお部屋も。
「伝統として引き継ぐべきものは正しく引き継いでいく。しかし、それだけではなく、柔軟にしっかりと考え、時代にあったより良いものを取り入れることも大事なことです。私どもは、古き良きところはしっかり残しつつも、訪れるみなさまに最高のおもてなしができるよう、設備やサービスの向上に日々努めています」
伝統的なお寺の魅力。一流旅館のようないたれりつくせりの極上空間。
このふたつが絶妙に組みあわされ、他にはない安らぎのひとときを作りだしているのですね。

精進料理は、決められたルールの中での限界に挑戦する食の芸術品

そして宿坊といえば、欠かせないのが精進料理。
精進料理とは、仏教の教えにしたがった食事のこと。 一切肉や魚を使わない野菜を中心とした料理のことです。修行中の僧侶が修行の一環として日常の食としたことから精進料理と呼ばれてきました。

「仏教では、食事におけるすべての行為も修行のひとつと考え、天の恵み、地の恵みに感謝し、お米の一粒も残さずおいしくいただくことが大事であると教えます」
と宮田さん。

こう聞くと、これまた質素倹約なイメージが頭をめぐりますが…
總持院の精進料理
▲總持院の精進料理
いかがでしょう?豪華で優雅。見た目にも華やかなこの料理の数々。

「精進料理は、鎌倉時代あたりから、重要な儀式や法要の際に振る舞う料理として発展してきたそうで、現在のように参拝客が宿坊に泊まるようになると、接待料理として出されるようになったと言われています」

専属の料理人が考案する、月替りのオリジナルメニュー。春夏秋冬それぞれの「旬」が目と舌で楽しめます。

筆者が訪れたのは、まだ秋の食材真っ盛りの時期。
この日のメニューは、こんにゃくや湯葉のおさしみ、冬瓜や小松菜、舞茸の白味噌なべ、さといもの田楽やごまだんごにごま豆腐、炊き込みご飯に松茸の土瓶蒸しなど。秋の味覚がこれでもかと盛り込まれていました。
秋の吹き寄せ(写真手前)とごまだんご(写真後方)
▲秋の吹き寄せ(写真手前)とごまだんご(写真後方)
こちら「秋の吹き寄せ」は、地元和歌山のさつまいもや松の実などを揚げ、おしゃれな竹の器に、上品に盛り合わせた料理。

外はカリッと、中はホクホク。甘みがふわ~っと口いっぱいに広がるさつまいも。柔らかな歯ざわり、独特の香りの松の実。素材自体の本来の美味しさを再認識できる、嗜好の一品です。
特製のごま豆腐
▲特製のごま豆腐
こちらは、總持院特製のごま豆腐。

「高野山の精進料理といえばその名の通り高野豆腐が有名ですが、ごま豆腐も、高野山の精進料理には欠かすことのできない定番メニューなんです。私どもの自家製ごま豆腐は、ごまを一度炒ってから使用しているので、他のごま豆腐よりさらにごまの香りがいいんですよ」
と宮田さん。

普通の豆腐よりも弾力のあるもちもちとした食感。そしてクリーミーな風味と香ばしいごまの香りが口いっぱいに広がります。

他のお料理も、どれもそれぞれ手の込んだつくり。
「肉も魚もないなんて、物足りないのでは?」
そんな筆者の懸念をあざ笑うかのような、大満足の内容でした。

料理長の河上 徹さんにお話を伺いました。
料理長の河上 徹さん
▲料理長の河上 徹さん
「精進料理は自分への挑戦ですね」

もとは京都の料亭で働いていたという河上さん。肉・魚を使わないという精進料理の制約の中で、いかにそれを感じさせない料理を作れるか、日々試行錯誤を繰り返しているといいます。

「当然かつおだしもダメなんです。例えば煮物をつくるにも、本来ならちょっとお肉を入れたいところを厚揚げに変えてみたり… いろんな工夫を積み重ねることで、逆に個性的な料理ができるところが精進料理の魅力ですね」

制約があるからこそ生まれる創意工夫。ときにその食材本来の素朴な味を極限まで活かし、ときにその食材に肉・魚に勝るとも劣らない存在感を与える。そんな食材の魅力を再認識したり、再発見できる料理がここにはありました。

「ルールがあると、燃えるんです。『この食材をこんな調理法で?』と驚いて楽しんでいただけるようなメニューづくりをしていきたいですね」
そう言って、少し照れながら笑みを浮かべる河上さん。その笑顔がとても印象的でした。

宿坊ならではの体験も!

料理長の河上 徹さん
▲總持院、本堂の様子
一般の旅館では、仲居さんがご案内、料理の給仕や、身の回りのお世話などをしてくれますが、宿坊では、お坊さんが仲居さんの代わりにお世話をしてくれます。
普段あまりお坊さんと接することのない筆者にとっては、こういった何気ないひとコマも、新鮮な体験。
そして、宿泊客は毎朝、本堂で行われている朝のお勤めに参加することもできます。
これらも宿坊ならではの魅力です。

日々の生活から離れ、お寺で過ごすひととき。心も体も落ち着けて、ゆっくりとした時間を過ごす。高野山の宿坊でのんびり過ごしてみてはいかがでしょう?
James

James

イギリス人と日本人とのクォーター。大学では工学部、情報システムを専攻したかと思えば、ミュージシャンとしてギタリスト、MC、DJとして活動。TVやラジオなどでも活躍。その後(株)アドビジョンにて、デザインやコピーライティングなどマルチに活躍。バックグラウンドを活かした独自の視点が人気のライター。

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