福を呼び込む縁起物。「ぎゃらりーゆしびん」の十匹十色な漆喰シーサー

2015.12.03

沖縄では魔除けや守り神、福を呼び込む縁起物として、屋根の上や門にシーサーを据え付ける。素材には石や土などがある中で、プリミティブな「漆喰シーサー」を作る「ぎゃらりーゆしびん」の諸見里剛(もろみざとつよし)さんを訪ねた。

中国から伝わったシーサー

その昔、古代オリエント(ペルシャ)で、最も強いと崇拝されていたライオン。やがて姿・形・思想がシルクロードを渡り、中国で「獅子」と呼ばれていたのが、そのまま沖縄に伝わり、「シーサー」「シーシ」などと呼ばれるようになったという。

屋根獅子(シーサー)のはじまりは、瓦職人から施主へのお礼

沖縄本島のメインロード・国道58号線沿いの商業開発で、恩納村のあたりは近年すっかり観光地化した感がある。だがそんな空気に染まることなく、「ぎゃらりーゆしびん」は独自の色を放っている。

小さなお店であるにもかかわらず、車の速度で通り過ぎる時にも目にひっかかるのは、店頭に鎮座している大きな「漆喰シーサー」の存在があるからだろう。
陶製のシーサーが雄雌一対なのに対して、「漆喰シーサー」はほとんどが単体で、雄のみの場合が多い。

もともと沖縄の屋根獅子(シーサー)は、瓦職人が瓦を葺き終えた後、施主に仕事をくれたお礼として、残った瓦と漆喰で作ったのが始まり。
「本来はシーサー職人が作っていたわけではないので、その表情はユーモラスで個性がありました」と諸見里さんは言う。

「スマートじゃなくても独特」と思っていた父の仕事

諸見里さんは陶芸家の父のもとで育った。子どもの頃、父親の仕事を「服もどろどろになってイヤだなー」と感じていたという。「ないものに走って」旅行会社に就職。スーツを着て、添乗員として3年ほど働いた時、個性を出せていない自分に気付いた。「スマートじゃなくても独特だな」と思っていた父親の仕事がそれまでと違って見えた。

会社を辞め、土でシーサーを作っていた父の手伝いをすることに。その約2年後、2009年7月に「ぎゃらりーゆしびん」をオープンして、父親のシーサーを販売する一方で、自分に合いそうな漆喰でシーサーを作り始めたという。
▲諸見里さんは、漆喰シーサーを作るのに古い赤瓦を用いる。赤瓦家が解体されると聞けば、現場へ足を運ぶ

自らを「飽きっぽい」と言う諸見里さんだが、シーサーを作りはじめてから18年になる。

「飽きっぽい」ゆえ、同じようなものを作るのは「イヤだな」と感じるというが、例えば、顔としっぽを付ける位置をちょっと変えるだけでも、全く違うシーサーになるから「一つひとつ作るたびに、新しいものができて新鮮です」と話す。
▲シーサーカードスタンド 500円(税込)
▲ペアで1,500円(税込)
▲ペアで2,500円(税込)

魔除けとして存在してきたシーサー。威嚇する“恐い顔”をつくろうとしているのですか?とたずねてみたら、
「それはないですね。楽しいなーと思いながら、作っています。最後にどんな表情になるのか、自分が見たくて」と答えた。
ギャラリー名の「ゆしびん(嘉瓶)」とは、昔、沖縄のお祝い事や結婚式など、おめでたい席で用いられていた酒器の名前だ。

「縁起の良い『ゆしびん』にあやかって、たくさんの人たちに幸せを届けられるお店になってくれれば…」と諸見里さん。

ギャラリーでシーサーたちに囲まれているうちに、優しい気持ちになっていることに気付いた。少なくとも、今の社会を覆っている合理主義からは生まれないであろう表情。いきいきと生きるシーサーたちがそこにいる。

「漆喰シーサー」の色付け体験も

「ぎゃらりーゆしびん」では、諸見里さんが成形した「漆喰シーサー」に色を付ける体験(1体1,500円、ペア3,000円・ともに税込/所要約40分)ができる。

Webで「シーサー」「色付け体験」といったキーワードで検索して出てくる画像を見てもわかるように、同じ「色付け体験」でも、色を塗るシーサーの形状はさまざまだ。
写真を見てぴんときた方に「ゆしびん」の「漆喰シーサー」とのコラボレーションをおすすめしたい。
アイデアにんべん

アイデアにんべん

沖縄・読谷村を拠点に、パンフレットやリーフレット、パッケージなどの企画制作を承る事務所。ものごとの本質をよく見て、何を「伝える」のか、どうすれば「伝わる」のかを、人との関係性の中でともに考えていきます。(編集/株式会社くらしさ)

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