名前に“能登”がつく稀少な幻の肉「能登牛」に迫る

2015.11.15

2015年、前代未聞の品薄状態が続いているという「能登牛(のとうし)」。北陸新幹線の開通効果で、金沢駅周辺、石川県内の飲食店からも「能登牛」を求める声が高まっているためです。そんな“幻の肉”に迫るべく、能登の肉料理レストラン「てらおか風舎」富来本店を訪ねました。

石川県以外では食することが難しいことから「幻のブランド牛」と言われている「能登牛」。その理由のひとつが、年間出荷頭数が約700頭という稀少さにあります。松坂牛や近江牛は4,000~5,000頭なのを基準にすると、その稀少さは明らか。5年に一回開催される「全国和牛能力共進会」で平成19年度に「脂肪の質賞」を受賞した良質な肉でありながら出荷頭数が少ないという、正真正銘の“幻の肉”なのです。

能登牛発祥のレストラン「てらおか風舎」

能登では“能登牛”と言えば「てらおか風舎」、というのが言わずと知れた常識。昭和60(1985)年にオープンした「てらおか風舎」富来本店は、能登は志賀町にある海岸、増穂浦(ますほがうら)を望む場所に立つ、大きな洋館のようなレストランです。
▲元牧場だった敷地に建てられた「てらおか風舎」富来本店
▲二階は団体用で、すき焼きやしゃぶしゃぶが食べられる座敷スペースも

「てらおか風舎」には、能登牛のサーロインステーキ、ヒレステーキ、リブロースステーキはもちろんのこと、ステーキ重やハンバーグ、しゃぶしゃぶにすき焼きなど、カップルから家族、団体までが楽しめる多様なメニューが揃っています。
おすすめは、他店ではなかなか食べられない能登牛の生ハムからのスタートです。
▲能登牛生ハム 一皿1,800円(税別)

豪華な前菜気分で「能登牛生ハム」をいただくと、生ハムらしからぬ口溶けの良さに驚きます。こっくりとした良質の脂は、パイナップルやオレンジ等付け合わせの果物の新鮮な甘さとよく絡むクセのなさで、臭みも全くなく、ワインやビールにもよく合う口当たりです。

続いて「てらおか風舎」の定番という人気メニュー「能登牛の匠ステーキ重」をいただきます。
▲能登牛の匠ステーキ重 3,000円(税別) ※ミニサラダ・味噌汁・香の物・コーヒー又は紅茶又はシャーベット付き(土・日・祝日のランチのみ)

「能登牛」一頭分の肩ロースとモモからスジを抜き、匠の技で合わせ作った“赤身”が並んだ、オリジナルの特製能登牛100%のステーキ重。見た目にも赤身のジューシーさが見てとれますが、口に含むとまず良質な脂が体に染み込むよう。

こんなに食べられるかなと思う人でも、口に残らないさらっとした肉の脂と、きめ細かな身の柔らかさに魅了されているうちに、ぺろっとたいらげてしまうことでしょう。

超大判ステーキ!能登牛のリブロースステーキ200g 

さて、お腹に余裕がある人や複数人でシェアできる人には、「能登牛のリブロースステーキ 200g」もぜひ試してもらいたいメニューです。
▲能登牛のリブロースステーキ200g 5,500円(税別)

リブロースとは、牛肉の背中の部分でサーロインより前寄りの最も厚みのあるロース部分。スーパー等でもなかなか売っていないため手に入りにくい部位でもあります。霜降りになりやすく、きめ細かくて柔らかい肉質のリブロース、これはぜひミディアムレアで味わってみてください。噛んだ瞬間から口の中でとろける脂がお肉を包みます。

老舗の肉屋さんが作ったレストラン

ところで、「てらおか風舎」は明治37(1904)年創業の肉屋「寺岡精肉」が母体となっています。レストランのオープン当時は「寺岡の能登牛(のとぎゅう)」と呼ばれていた能登育ちの黒毛和牛を提供していました。

その存在は、都市部の物産展に出品しても誰も知らない状態でしたが、開店当初から寺岡才冶(てらおかさいじ)社長は「能登牛」の普及に努めていました。しかし当時は正式な規定はなく、その後平成7年に石川県と肉用牛関係団体が「能登牛銘柄化推進協議会」を立ち上げ、「能登牛」の規約を作って証明書をつけたものが以後、「能登牛(のとうし)」となったのです。
▲「能登牛」の生みの親、寺岡社長

なお、「能登牛」の規約は1.黒毛和種(血統が明確であるもの)、2.石川県内が最終飼養地であり、かつ県内での飼養期間が最長であること、3.肉質等級はA3以上またはB3以上であることなどを条件としています。
▲能登牛証明書

肉の旨味成分として認知されている「オレイン酸」

ちなみに、「能登牛」の口溶けの秘密はどこにあるのでしょうか?

牛肉のやわらかさや香りは脂肪の中に含まれる「オレイン酸」の含有率で変わり、この値が高いほど、肉の脂の融点が低くなり、舌でとろけるような食感が味わえるとされています。つまりオレイン酸は牛肉のおいしさに大きな影響を与える物質と言えるのです。

「能登牛」の肉質は、きめ細やかで上品な脂が特徴ですが、「オレイン酸」の含有率が高く、脂肪の質に優れているため、和牛のオリンピックとも呼ばれる「第9回全国和牛能力共進会(平成19年開催)」で特別賞の「脂肪の質賞」を受賞しました。
▲霜降りが見事な能登牛のブロック

寺岡社長がこだわり続ける、家でも食べられる能登牛メニューの開発

「『能登牛』は、ヒレ、サーロインだけではなくて、すね肉やバラ肉など、隅々まで美味しいんです」

そう話す寺岡社長は、隅々まできっちり「能登牛」を有効活用するために、10年ほど前にレトルトカレーの開発を始めたといいます。“レストランの味をそのまま食卓で再現できるように”を目標に幾度も試作を重ね、再現するのは無理かと諦めかけた時、遂に「これならレストランの味だ!」という味に成功。

それから能登牛のしぐれ煮、能登牛シチュー、能登牛ハヤシなどの加工品も開発されました。
▲隣接する工場、「寺岡ミートセンター」内での能登牛加工品製造作業
▲加工品の数々。県内のスーパーや道の駅でも多く取り扱われている

「能登牛」発祥の地であり、数あるメニューを取りそろえた「てらおか風舎」で“幻の肉”を堪能してみませんか。ご自宅用やお土産に、能登牛を使った加工品もおすすめですよ!

最後に“幻の肉”に嬉しいニュースです。2014年より県外の和牛肥育業者(群馬県、赤城畜産)が能登町にて能登牛の生産を開始し、2016年春より出荷を開始することが先日発表されました。

澄んだ空気と壮大な自然の中で育った能登牛のとろける旨味の幸福感が、幻から一歩二歩、現実へと近づいた贅沢さを噛み締めながら店を後にしました。
中乃波木

中乃波木

東京に生まれ、幼少期はインドネシア、芦屋と移り住む。13歳の夏に母と二人で能登に移住したことから能登の原風景に魅了される。美大卒業後、広告制作会社amanaに入社。アシスタントを経て独立後2007年に写真集「Noto」を出版(FOIL刊)。2010年より季刊誌「能登」にてフォトエッセイ大波小波を連載中。写真家としての活動を軸にイラストレーター、ライター、ムービーカメラマンとしても活動している。(編集/株式会社くらしさ)

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