ローカル電車でフルコースを堪能!千葉県いすみ鉄道の「グルメ列車」に乗ってみた

2015.11.25

ローカル列車に揺られながら、車窓からの田園風景にたそがれる。そんな夢に描くようなシーンが、都心からわずか1時間半のところで体験できるんです。それも、伊勢海老のフルコース付きで!大人気のいすみ鉄道の「グルメ列車」に乗ってみました。

ムーミン谷を走る列車

千葉県・房総半島を半分ほど横切るように走る、「いすみ鉄道」。「ムーミン列車」といえば、聞いたことがある方も多いかもしれません。沿線に広がる「何もない」光景が、ムーミン谷の世界観と似ていることから、随所にムーミンのキャラクターの装飾が施された列車が走り、人気を博しています。
▲ムーミンのイラストが描かれた黄色い車両

そんないすみ鉄道で今、大人気なのが「グルメ列車」です。旧型車両「キハ」に乗りながら、なんといすみ市特産の伊勢海老を含む、フルコースが食べられるんだとか。「伊勢海老特急」と呼ばれるもので、「イタリアンコース」と「お刺身列車コース」の2つがあります(要事前予約)。

今回は「イタリアンコース」の伊勢海老特急へ乗車するため、期待と食欲を胸に、起点となる「大多喜」駅に降り立ちました。
早速、受付で名前を申し出ると、今では見ることも珍しくなった切符が渡されました。昔懐かしい硬券切符が、ローカル線の旅気分を否が応でも盛り上げてくれます。
▲グルメ列車予約客には「一日フリー乗車券」も渡されるので、食事後も自由に乗り降りが可能

ホームで待っていると、遠くからゆっくりとオレンジ色の車両が、お目見えしました。噂の旧型車両「キハ52」です。なんと国内でこの「キハ」が定期運航されているのは、ここ、いすみ鉄道だけなんだそうです。
▲国内で一番古い国鉄形ディーゼルカー「キハ52」

普段は1両編成のいすみ鉄道ですが、このグルメ列車が走るときは特別に2両編成に。後ろ車両がグルメ列車になっており、「伊勢海老特急」の看板が掲げられていました。
▲車両の名称も「レストラン・キハ」に

いざ乗車!イタリアンのフルコースを堪能

乗り込むと、内部にはテーブルが設置され、レストラン仕様に様変わりしています。
▲横並びの2名用のボックスシートと8名座れるロングシート
▲キレイにテーブルセッティングがされ、揺れる車内でグラスやコップが動かないようにする仕掛けも

平日にもかかわらず、ボックスシートは満席。こうしてグルメ列車は定刻通りに大多喜駅を出発しました。

「本日はいすみ鉄道グルメ列車にご乗車いただきまして、誠にありがとうございます。本列車は、上総中野折り返し、大原行きでございます。1時間半ほどの時間ではありますが、どうぞごゆっくりと“伊勢海老特急”をお楽しみください」
▲この日は特別にいすみ鉄道のスタッフが乗車し、生アナウンスを披露

車掌の軽快なアナウンスは、まさに車両のなかというのを実感させてくれます。ほどなくして、スパークリングワインが振る舞われました。
なんとこのスパークリングワインをはじめ、赤ワイン、白ワイン、ソフトドリンクはすべてコース代金に含まれているという…。お酒好きにはたまらないサービスです。

それでは、「乾杯!」

「赤ワイン、白ワイン、オレンジジュース、ウーロン茶、ミネラルウォーターは、在庫がある限りお代わり自由ですので、どうぞお気軽にお声がけくださいね」
やさしいウェイトレスさんが、そう言いながら前菜を持ってきてくれました。季節によって異なるのですが、この日は「車エビの白ワイン蒸し」と「サザエのマリネ」、「ポレンタ」。聞き慣れない「ポレンタ」というのは、とうもろこしの粉を練ったイタリアの郷土料理だそう。
▲季節の前菜3品盛合せ

本格的なコース料理のはじまりに、思わず電車内にいることを忘れてしまいそうです。ただ、車窓から覗く光景は、見渡す限りの田園風景が広がっています。
なんて贅沢なんでしょう!そんな気分に浸っているなか、続いてスープが運ばれてきました。
▲「地魚とキノコのスープ ポルチーニ風味」 この日の地魚はクロダイ

お味は、思わず「う~ん、Buono(ボーノ)!」とつぶやいてしまうほど。炙った魚の香ばしさと、キノコの香りが食欲をそそります。そうこうしている内に、列車は折り返し地点の上総中野駅に到着しました。
▲同じくローカル線の「小湊鉄道」へは、ここで乗り換え

停まってみると、走行中の列車は意外と揺れていたんだなということに気が付きます。ここまで次々と提供されてくる料理に、興奮しっぱなしだったようです。

ここで、前寄りの車両で調理をするシェフの仕事ぶりを覗いてみました。動いている車内で、火も電気も使わずに、本格的なフルコースを出すなんて職人技ですよね。
▲茂原駅近くにあるイタリアンレストラン「ペッシェ アズーロ ~青い魚~」のオーナーシェフ池田征弘さんが調理を担当

そんなシェフが準備していたのが、Primo piatto(第一の皿)のパスタでした。
▲大原産アワビとホタテのクリームソース スパゲティ

「これも美味しい!」

舌鼓を打つ、とはまさにこのこと。大原産アワビの磯の香りとチーズ風味のクリームソースが、なんとも絶妙な味わいなんです。美味しい地元の食材が、シェフの腕でさらに美味しく引き立てられています。
▲ワインは料理に合わせて赤も白も堪能できる

そして、料理はあっという間に、Secondo piatto(第二の皿)、いわゆるメインディッシュへ。企画の冠名にもついている「伊勢海老」の登場です。
▲大原産伊勢海老と魚介のブロデット(トマト煮)

付け合わせにはムール貝も。なんとも贅沢な気分に浸れますね。注目のお味は、伊勢海老の磯の香りと濃厚なトマトソースのハーモニーがやみつきになります!このソース、パスタにしても絶対おいしい!とおもわず、パスタを食べた後なのに思ってしまうほどでした。

最後には、デザートとコーヒーもついて…
▲「自家製かぼちゃのプリン ジェラート添え」と「イタリアン深煎りコーヒー」

至福の時間はあっという間に過ぎていきました。
▲食後にはシェフがテーブルごとに挨拶してくれるあたり、高級レストランさながら

極め付けは、お土産まで。中身は受け取ってみてのお楽しみ!
最後まで至れり尽くせりのサービスに、鉄道は公共交通機関であり、サービス業でもあるということを思い知らされました。

グルメ列車は地域のPRにも

「過疎化する地域を走るローカル線は、どこも経営が厳しい。ただ“乗って残そう運動”をしても、必要のないモノは淘汰されるだけ。それならば、人が“乗りたくなる”仕掛けをしようと思いまして」

そう話すのは、いすみ鉄道の鳥塚亮(とりづかあきら)社長です。一般公募で選出された社長で、ムーミン列車を仕掛けたり、自社養成乗務員訓練生を募集したりするなど、次から次へと斬新な企画を打ち出し、いすみ鉄道を存続の危機から守ってきました。
「鉄道の食事といえば、駅弁とペットボトルのドリンクでしょう。もっとちゃんとした食事があっても良いと思いません?私の講演を聞いた『ペッシェ アズーロ ~青い魚~』の池田シェフから一緒にやりたいと声が掛かったことが始まりですが、鉄道をうまく使って、地域が盛り上がっていければいいですよね」

そう鳥塚社長が話すように、現にいすみ鉄道は、地域のPRに一役買っている様子。実際に「お刺身列車コース」で料理を提供している宿は、以前よりも稼働率が上がったそう。2015年11月からは、ムーミン列車を使った「飲茶列車」も始まります。これまた地域の中華料理店が手を挙げたんだとか。

和洋中の美味しい料理が楽しめる、いすみ鉄道の「グルメ列車」。夫婦やカップル、友人と来ている方はもちろん、今回お一人の方も多く見られました。確かにレストランでフルコースを一人で食べるのは少し気が引けるかもしれませんが、電車に揺られながらフルコースを堪能できるこの「グルメ列車」はお一人様にもおすすめです。

土日祝日の予約は、あっという間に埋まってしまいますので、ご興味ある方はお早めにどうぞ!
長谷川浩史・梨紗(株式会社くらしさ)

長谷川浩史・梨紗(株式会社くらしさ)

広告出版社を退職後、世界一周、日本一周を経て「くらしさ」を設立。全国各地のモノ・コト・ヒトを伝え、つないでいく活動に尽力している。全国の仕事人に会いに行ける旅「Life Design Journey」も運営。http://lifedesign-j.com/

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