松尾芭蕉も訪れた東北屈指の景勝地、松島湾をクルージング

2015.06.17

天橋立(京都府)、宮島(広島県)とともに日本三景に数えられる松島は、その見事な湾景で古くから多くの人々を魅了してきました。かの松尾芭蕉も「おくのほそ道」の旅の目的のひとつに松島への訪問を掲げていて、同書の冒頭部分には、「三里に灸するより、松島の月まづ心にかかりて(足のツボの三里に灸を据えるなど旅の準備をするうちに、松島の月が心に浮かんで)」という一文があります。芭蕉が訪れてから300年以上が経ちましたが、穏やかな湾に緑の松が生い茂る島が浮かぶ松島の海は、今も変わらず佳景を造り上げています。そんな風光明媚を、遊覧船に乗って海から堪能しましょう。

定期大型船で松島湾を一周する仁王丸コース

松島湾ではルートや所要時間が異なる遊覧船が多数運航しています。今回その中から選んだのは、松島島巡り観光船の仁王丸コース。湾内を一周する約17kmの海上ルートを約50分かけて運航するコースです。松島レストハウスでチケットを購入して、松島観光桟橋の観光船乗り場1番線に向かいます。

尚、乗船チケットは、松島レストハウスやJR松島海岸駅前の案内所のほか、ぐるたびからのネット予約でも購入できます。
乗り場には観光客がずらり。さすが日本三景です。
定員オーバーにならないか不安を感じてしまいますが、心配ご無用。仁王丸コースは、「仁王丸」と「第三仁王丸」の2種類の船が大型運航しています。定員はそれぞれ、仁王丸が300人、第三仁王丸が400人。
どちらの船も、1階が普通船室、2階がグリーン船室になっており、船内で600円(税込)の追加料金を支払うことでグリーン船室に乗船できます。普通船室からも松島の島々を十分に楽しめますが、より優雅にクルーズを楽しみたい人には、ソファ席やテラス席があるグリーン船室がおすすめ。今回はグリーン船室に乗船しました。
船内2階には売店があり、地ビール700円(税込)や日本酒(地酒)700円(税込)、コーヒー300円(税込)などを販売しています。絶景を肴に地ビールをゴクリ、なんて贅沢もできちゃいます。普通船室利用の場合でも、乗船時に申し出れば売店は利用OKです。

出航を告げる汽笛の音を聞きながら、松島の美景を堪能する船旅へいざ出発です!

それぞれの島にまつわる逸話を知ると、遊覧をもっと楽しめる

八百八島が浮かぶといわれる松島湾ですが、実際の島の数は約260。氷河期以降の地殻変動による地盤沈下と、地球温暖化による海面上昇で徐々に形造られ、約5,000年前には今のような多島海が誕生したと考えられています。
島の形は大小さまざま。それぞれにユニークな名前が付けられていたり、興味深い逸話が伝わっていたりします。船内のアナウンスでは、航路上の主要な島にまつわるエピソードを紹介してくれます。

桟橋を離れてから約3分、進行方向右手側に、2つの島が仲良く並んだ「双子島」が見えてきました。横長の島は「鯨島」、丸い島は「亀島」というそうです。
▲左:亀島 右:鯨島
左手に現れたのは「千貫島(せんがんじま)」。伊達政宗がいたく気に入って、「あの島を世の館に運ぶものあらば銭千貫を与える」といったことからその名がついたという逸話が残っています。
▲千貫島(写真中央)
その後も、島に開いた4つの穴に波が打ち寄せると鐘のような音が響くという「鐘島(かねじま)」や、東日本大震災で一部が崩落したがなおも美しい姿を保つ「小藻根島(こもねじま)」など、バラエティに富んだ島々が行く手に待ち構えています。

クルーズのハイライト・仁王島と対面

潮風を感じられるデッキへ移動してみましょう。2階デッキにはテーブル席が用意されています。
手すりには、羽を休めるウミネコの姿も。愛らしさについつい食べ物をあげたくなってしまいますが、現在ウミネコへのエサやりはNG。フン害による松枯れを防ぐため、繁殖数が減るまでエサやりは休止中だそうです。

ウミネコとともに景色を眺めていると、左手に、まるで人のような形をした奇妙な島が見えてきました。松島湾を代表する島ともいえる「仁王島」です。仁王様に見えることから名付けられたというこの島。自然が造りだしたとは思えない複雑な形は、確かに見るものを圧倒する迫力があります。
仁王島をすぎたら、密集する島の間を縫うように進んで浦戸諸島の周辺へ。浦戸諸島には「桂島」「野々島」などの有人島があります。船の中から学校などが見え、そこに暮らす人々の生活を垣間見ることができます。
ほかにも個性豊かな島々を見送りながら進んでいると、右手側に、松島のシンボル・五大堂や福浦橋が見えてきました。出航時と同じ桟橋に到着し船旅は終点を迎えます。
風や波が造りだした造形美と、緑の松と青い海が織りなす色彩美。松島の島々が見せる景観は、想像以上に美しく、また迫力がありました。
前述のとおり松島への旅を楽しみにしていた松尾芭蕉ですが、実は松島では句を詠んではいません。有名な「松島や ああ松島や 松島や」の句も、芭蕉の作ではないようです。「おくのほそ道」には弟子の曾良の句のみが載り、芭蕉自身は句作をあきらめたと書かれています。あまりの美しさに言葉を失ってしまったのでしょうか。
古くから日本人の美意識を刺激してきた松島。あなたも遊覧船から、その景色を堪能してみてはいかがですか?
後藤悠里奈

後藤悠里奈

編集者・記者。編集プロダクションMOVE所属。仙台を拠点に、企画・編集・取材・執筆を担当。旅行誌を中心に、情報誌やムック、書籍、パンフレットなど幅広いジャンルの印刷・出版物を手がける。

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