炎に厄祓いを託した男と男のぶつかり合い!野沢温泉村で300年以上伝わる日本有数の奇祭「道祖神祭り」
長野県の北部に位置し、温泉とスキーの村として発展してきた野沢温泉村は、昔ながらの温泉街の風情と古き良き伝統が今なお色濃く残り、訪れる旅人たちを魅了しています。そんな村の名物のひとつといえば、日本屈指の奇祭「野沢温泉の道祖神祭り」。この祭りにかける村人たちの情熱は相当なもので、毎年、道祖神祭りの開催日である1月15日(旧成人の日)には国内外から多くの観光客が押し寄せます。

そもそも「道祖神」とは、集落の境や村の中心に祀られ、災厄や悪霊の侵入を防いで子どもの成長や子孫繁栄などをもたらす守り神。一般的には石碑や石像の形で知られていますが、野沢温泉村の道祖神は木で作られている珍しいタイプです。
1本の丸太をそのまま御神体にした男女一対の手作りの道祖神は、村の境や辻、店舗や一般住宅の前にも祀られているほか、各家庭などの神棚には小さな道祖神が祀られていて、民間信仰としてこの地に根付いているのがよくわかります。

村民VS厄年男の激しい攻防戦が見もの「野沢温泉道祖神祭り」
村の平安や初子の祝い、良縁祈願や厄祓いなどの性格を持ち、その激しさや壮大さから日本三大火祭りのひとつに数えられています。

というのも、この祭り、高さ10数メートル、広さ8メートルにも及ぶ巨大な社殿を舞台に、火を付けようとする村人と、それを防ごうとする厄年の男衆が激しい攻防戦を繰り広げるのです。
火がついたたいまつや松の枝で互いにバシバシと叩き合う男たちの姿は、本気の喧嘩さながら。飛び交う火の粉のなか、まさに命がけの戦いが目の前で展開されます。

野沢温泉で生まれた男たちの宿命、終われば「一人前の男」

そして、地区を代表する地縁団体の野沢組惣代が祭りの総元締めとなり、経験者から選ばれた山棟梁や社殿棟梁などの役員の指揮のもと「三夜講(さんやこう)」とよばれる厄年の男衆らが祭りを執行します。


「三夜講」とは、42歳に連なる3学年(各学年30名程度)の男衆による組織。基本的に42歳・41歳・40歳で編成されますが、この3学年によるメンバーは翌年になっても入れ替わることなく、43歳・42歳・41歳の組織となって再び祭りに携わります。
ただし、祭りの中心となるのは42歳の本厄の男衆。これを3年間繰り返し、次の「三夜講」へと引き継がれていきます。
この「三夜講」と25歳の厄男は、祭り当日はもちろんのこと、準備のために1週間以上も仕事を休んで作業にかかります。地元を離れている厄男も、よほどの予定がない限り、この祭りの日には村に戻ってこなければいけません。祭りにかける本気度が違います!

4カ月前からはじまる祭りの準備を通して団結力もアップ
温泉街を通り、会場までは3時間あまり。沿道の家からお神酒が献納されると、厄年代表が村に伝わる「道祖神の唄」を大声で披露し、村人や観光客問わず、男衆からお神酒を振る舞われます。これで一気に祭りムードが高まります。

翌日14日の朝から深夜までと祭り当日の15日の午前中にかけては、祭り会場で社殿づくりが行われます。社殿はすべて昔ながらの手作業で、釘や針金を一切使わない方法でつくられます。危険も伴うため、このときばかりは男衆も酒を断ち、完成まで黙々と作業が続けられます。

いざ本番!1時間以上にわたる村人同士の本気の戦い


観光客に気をつけていただきたいのは、あくまでこの攻防戦に参加できるのは村人のみということ。祭りには「社殿の正面からしか攻めない」「腕を下げない」といった独自のルールがあるので、それを知らない観光客の参加は厳禁です。また、祭り会場では日本酒が振る舞われますが、飲み過ぎにも注意!

あくまで戦いは続きます!
そして、22時すぎ。壮絶な攻防戦の末、双方の手締めにより社殿に火が入れられると祭りは最高潮に。大きな炎が上がり、雪に包まれた周囲を明るく照らしながら社殿が燃え盛る姿は圧巻です。その火力は遠く離れていても熱が伝わってくるほど。こうして燃え落ちた社殿は翌朝までくすぶり、この炭で焼いた餅を食べると1年間は風邪を引かないと伝えられています。

ところで、会場にギュウギュウに詰めかける観客を見渡すと、外国人観光客の多さに驚きます。野沢温泉観光協会の事務局長・森博美さんによると、近年なんと観客のおよそ6割は外国人旅行者なのだとか。

日本有数の豪雪地帯でもある野沢温泉村は、良質な雪とダイナミックなコースからなるスキー場があり、これを目当てに国外から訪れるスキーヤーが多数。さらに、現在、外国人経営の宿泊・飲食施設が100以上あるといわれる白馬村からも観光客が押し寄せ、2015年の祭りには白馬村からバス17台分の外国人ツアー客が訪れたそうです。
日本で伝統的な行事に触れたいと考える外国人観光客にとって、「知る人ぞ知る」といった趣もある「日本屈指のファイヤーフェスティバル」はうってつけの祭りといえます。

今年の冬は、温泉やスキーとともに、村人たちの情熱がぶつかり合う奇祭も間近に体感してみませんか。見物しているこちらもアドレナリンが放出されること間違いなしですよ!
野沢温泉道祖神祭り
長野県下高井郡野沢温泉村馬場の原
[開催期間]1月13日~1月15日
0269-85-3155(野沢温泉観光協会)

島田浩美
編集者/ライター/書店員。長野県出身・在住。信州大学卒業後、2年間の海外放浪生活を送り、帰国後、地元出版社の勤務を経て、同僚デザイナーとともに長野市に「旅とアート」がテーマの書店「ch.books(チャンネルブックス)」をオープン。趣味は山登り、特技はマラソン。体力には自信あり。(編集/株式会社くらしさ)
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