金沢市民熱愛グルメ。冬の海の味覚、香箱ガニをまるごと生かした「蟹面」と呼ばれるおでんとは

2015.12.07

日本人にとっては一年中食べたい味のひとつでもある、おでん。ひたひたに染み込んだ出汁の味やネタが地域によって異なり土地柄を感じられるので、旅先でふらりとおでん屋に立ち寄る人も多いのではないでしょうか。「金沢おでん」という言葉も聞かれる昨今の金沢で、冬の人気ダネ「蟹面(かにめん)」が、2015年も解禁になりました。

金沢に数あるおでん屋の最古参、「菊一」で頂く蟹面Night

昭和9(1934)年創業のおでん屋「菊一」の暖簾をくぐると、昭和の夜にタイムスリップ。もくもくとあがる湯気と懐かしい佇まいの店内には、おでんの香りが染み渡っています。
▲20~25種類あるおでんダネは季節によって変わる

湯気のむこうには柔らかい笑顔の三代目女将と娘さん。店内はみんなで会話ができるほどの連帯感に包まれています。
▲おでんを囲むカウンター席とテーブル席がある
▲お客さんと談笑する女将さん

「今日はどうしても蟹面が食べたくてきました」という地元のお客さんと相席になり、早速「蟹面」を注文。話をしながら待っていると、その間にも「蟹面!」と注文するお客さんが続きます。
▲「蟹面はこの風情が一番の味わいですよ」と話す金沢在住の男性客

魅力は辛抱ならない美味しそうな姿と4つのお味

カニの甲羅に、未熟成卵であるオレンジ色の内子(うちこ)とミソ、脚身、外子(そとこ)と呼ばれる茶色の卵の順に、カニ一杯分の身をぎっしり並べ、干瓢(かんぴょう)で結んだものを、さっと出汁で煮て仕上げた「蟹面」。
▲蟹面 地価1,500円(税別)~ ※甲羅酒付き

使われるカニは「香箱ガニ」と呼ばれる北陸地方で獲れる雌のズワイガニで、雄のズワイガニと比べて小ぶりな外見です。
▲「蟹面」は食べるのがもったいないくらい手の込んだ逸品

まずは外子から頬張ると、つぶつぶの卵に染みた出汁の旨みと卵の食感が口の中にはじけます。続いて脚身。カニといえばこの味、さっぱりとした身と角のない出汁のしみじみとした味わいが心まで沁みるようです。
▲外子の粒ひとつひとつに染み込んだ出汁の味と、プチプチした食感がたまりません

そして目にも鮮やかな内子には、カニの風味が一番濃く封じ込められています。それは甘みとコクが凝縮された、例えるなら濃い蟹クリームのよう。蟹ミソを溶かして絡めたり、温かいカニの身を殻からほぐしつつ、しみじみゆっくりと頂きます。
▲鮮やかな色の内子。外子とはひと味違う甘みと、とろりとした食感が味わえる

体も喜ぶ「甲羅酒」と、もうひとつの名物「どて焼き」

「蟹面」の身を食べたあとのお楽しみは、五臓六腑も喜ぶ「甲羅酒」。空になった甲羅に熱々のお酒を注いでくれます。
▲「甲羅酒」を呑んで語れば誰とでも仲良くなってしまいそう

「甲羅酒」でカニの余韻を味わいつつ、合わせて食べたいのはこの地域ならではのおでんダネ、タニシに車麩、昆布巻きといったところでしょうか。
▲タニシ(2本)400円、車麩250円、昆布巻き350円(すべて税別)

「金沢風」と呼ばれる出汁は関西風でも関東風でもない、その間といった味加減。継ぎ足しで作られてゆくその味は、昆布と鰹の出汁と秘伝の技でずっと変わらぬ「菊一」の味です。
▲じっくり煮込まれた牛すじ600円(税別)は見ているだけでよだれが出そう

さらに、名物の「どて焼き」(1本250円・税別)を食すとまた味わい深い金沢の夜を楽しめます。
「菊一」のどて焼きは、豚のハツと肩ロースの2種類の部位を使用。たっぷり盛られた白味噌の甘みと肉の旨みが相性抜群で、言う事なしです。
▲どて焼きは、鉄板の上に盛り上げてある白味噌の山から味噌を溶かしつつ、お湯で煮詰めながら焼いていく

味もさることながら、冬の石川の風情を味わえる「蟹面」。地元の人もこの季節になるとウズウズするという、市民が熱愛する逸品なのです。

雌のカニは保護のため禁漁期間が長く、「蟹面」が食べられるのは11月頭から1月までの短い期間。この間、市内各所で見られる雪吊りの景色と「蟹面」で温まる冬の金沢の情緒を味わえば、あなたも冬を楽しむ上級者になれるかも?
中乃波木

中乃波木

東京に生まれ、幼少期はインドネシア、芦屋と移り住む。13歳の夏に母と二人で能登に移住したことから能登の原風景に魅了される。美大卒業後、広告制作会社amanaに入社。アシスタントを経て独立後2007年に写真集「Noto」を出版(FOIL刊)。2010年より季刊誌「能登」にてフォトエッセイ大波小波を連載中。写真家としての活動を軸にイラストレーター、ライター、ムービーカメラマンとしても活動している。(編集/株式会社くらしさ)

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