体の芯まで温まる!秋田名物「きりたんぽ鍋」を食べに行く

2015.12.16 更新

秋田県の名物として名高い「きりたんぽ鍋」。あの白いちくわのようなものの呼称は「たんぽ」。「たんぽ」を手でちぎって(切って)鍋に入れるから、「きりたんぽ鍋」なんです!秋田県北部の家庭料理である「きりたんぽ鍋」を、アクセスのよい秋田市内で、なおかつ本格的な味わいでいただけるお店に行ってきました。

秋田名物として全国に知られている「きりたんぽ鍋」は、炊きたてのご飯をつぶして秋田杉の串に練りつけて焼いた「たんぽ」と、比内地鶏や野菜、きのこ等を入れた鍋料理のこと。

「きりたんぽ鍋」の本場は、もともと比内地鶏の産地でもある大館市を中心とした秋田県北部ですが、今では新米の時期あたりから、秋田県内の多くのスーパーに「新米」というシールが貼られた「たんぽ」が並ぶほど、秋田県民の家庭料理として親しまれるようになりました。

新米の頃が「きりたんぽ鍋」の旬!

秋田市内の官公庁街「山王」の一角にある、秋田郷土料理の店「芝良久(しばらく)」。落ち着いた雰囲気に加え、きりっとした佇まいのお店です。
▲おいしいものへの期待高まる潔い外観

「うちは『きりたんぽ鍋の店』と謳ったことはないのですが、新米の時期、9月末~10月いっぱいは年末のように忙しいですね」そう語るのは、「芝良久」の高橋深雪さん。
「芝良久」の「きりたんぽ鍋」(1人前/税別2,000円)は、コトコト1~2日かけて煮込んだ比内地鶏のガラスープをベースに、比内地鶏と野菜、そして手作りの「たんぽ」が入っています。
▲鍋の具材。左上から時計回りに長ネギ、ごぼう、セリ、しらたき、舞茸、比内地鶏。そして手前に堂々のたんぽ

目の前でさっそく鍋に仕立ててもらいます。比内地鶏のガラスープをしょうゆ、みりん、酒で調味した汁に、ごぼう、比内地鶏を入れ、煮立ったらしらたき、舞茸を入れます。そこに深雪さんが「さあ、“たんぽ”が“きりたんぽ”になりますよ~」と言いながら、丹念に焼いたたんぽを豪快に手でちぎって鍋に投入!

こうして手でちぎることで、断面から比内地鶏や他の具材から出たおいしい出汁が染み込みやすくなります。つまり、「手でちぎる(=切る)」ことこそが「たんぽ」を真においしく食べるための先人の知恵なのですね。

きりたんぽに味がしみてきたあたりが食べごろ。最後に長ネギとセリを加えて、「きりたんぽ鍋」の完成です!
▲深雪さんが器によそってくれる

まずは鶏肉からいただきます。比内地鶏は最高級といわれる肉質で、噛めば噛むほど味の出る何とも言えない味わい。そして脂の甘みが格別です。

しゃきしゃきの歯ごたえと土の香りが野性味溢れるごぼう。臭みを消しながら食欲をそそる香りの長ねぎ。比内地鶏の出汁を吸って独特の食感を演出するしらたき。サクサクとした歯切れで味が良く、香り高い舞茸。うっすらと比内地鶏の脂をまとった、さわやかな香りのセリ。どれ一つとして欠けてはならない「きりたんぽ鍋」の具材です。

そして主役のきりたんぽは、内側の穴の部分が出汁を吸い、外側の焼いた部分がしっかりとした歯ごたえと米の香りを残しています。

ハフハフと食べ進めるにつれて、体はぽかぽか。そこに冷たい日本酒をきゅっと含めば、あら不思議、ボリューム満点のきりたんぽ鍋がみるみるお腹に収まっていくのでした。

丹精込めたたんぽ作りを見せてもらう

この日は特別に、「たんぽ」作りを見せていただけることに。

「うちはきりたんぽ鍋は注文を受けてから作ります。たんぽは作り置きするとどうしても味が落ちるので。だからどうしても時間はかかってしまうんですが、皆さんにおいしいきりたんぽ鍋を食べていただきたくて」と深雪さんはいいながら、すりばちに炊きたてのご飯を入れて……
▲炊きたてのご飯をすりばちに入れて搗(つ)く、深雪さん
▲ご飯が半分ぐらいつぶれるまで搗いていく。これを秋田では「半殺しにする」という
▲「半殺し」になったところ
▲団子状に丸めて
▲直径2センチ弱、長さ50センチほどの秋田杉の棒を芯に団子を伸ばして
▲コロコロと棒状にのしていく
▲こんがり焼いたら「たんぽ」の完成。この日は特別に店内の一畳(約180cm×約90cm)ほどもある大きな囲炉裏に炭をおこして焼いてもらった

さて、焼きあがったたんぽ、これが大きい!普通のたんぽの1.5倍はあろうかという太さと長さです。
店主の高橋均さんによると「うちのたんぽの串は、木材の町である秋田県能代市の材木屋に昔から作ってもらっています。秋田杉は香りもいいし、木が適度に水分を吸うから、たんぽがおいしくなります」とのこと。

これらの作業一つ一つを、注文を受けてからすべて手作業で行うのと、外側をこんがりと焼くのにも時間がかかるため、「きりたんぽ鍋」を食べたい場合は、事前に予約していくのがおすすめ。

飲んべえならば、旬のおすすめの一品料理をつまみつつ、ゆるゆると待つのもいいものです。
▲おすすめのメニューは四季折々に変わる。「だだみ」とは、たらの白子のこと。刺身のほか、てんぷらでも食べられる

四季折々、秋田のおいしいものを食べるならここ

創業は昭和45(1970)年という「芝良久」は秋田の郷土料理の店として県内外の多くのお客さんを迎えてきました。均さんはお母様からこの店を継いで、今年で23年目。

「きりたんぽ鍋に入る食材はすべて新米の季節においしくなるものばかり。秋田は四季折々に、山菜、きのこ、近海の魚などいろいろなおいしいものが出て、それをおいしく食べる郷土料理があります。春夏秋冬、そのときどきのおいしいものをぜひ味わってほしいですね」と均さん。
▲秋田の郷土料理のことを聞けばいろいろと教えてくれる、高橋さん夫妻の温かい人柄もほっとさせてくれる

秋田まで足を伸ばしたら、土地の家庭の味をぜひ味わってみては。


写真=高橋希
伊丹直

伊丹直

編集者、ライター。東京で10年間の出版社勤務ののち、2013年春から秋田へ移住。生活文化ジャンルの雑誌で執筆のほか、地域情報を発信するメディアなどで企画、編集を行う。 (編集/株式会社くらしさ)

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