日本一丈夫な和紙「石州和紙」の紙すき体験と、千年残せる素敵な和紙プロダクト

2016.01.12

島根県浜田市三隅町。美しい日本海に面したこの町は、約1300年の歴史を持つ「石州(せきしゅう)和紙」の里です。「日本一丈夫な和紙」といわれる「石州和紙」はどのように生み出されるのか、紙すきを実際に体験し、「石州和紙」ならではの素敵なプロダクトも見つけてきました!

地元の石州楮(せきしゅうこうぞ)のみを用いて作られる「石州半紙」(せきしゅうばんし)」は、2009年に手漉き和紙として初めて「ユネスコ無形文化遺産」に登録されました。その後、本美濃紙(岐阜県)、細川紙(埼玉県)とともに再登録されています。

飛鳥時代に柿本人麻呂によってこの地に伝えられたとする「石州和紙」の技は、三隅町を中心に暮らす職人の手によって長い歴史をかけて保持されてきましたが、現在はわずか4軒の工房で、その技を受け継いでいます。
▲三隅町の風景。海の見える紙すきの里は、全国でここだけ
▲「石州半紙」

「千年持つ」といわれるほど強靭な石州和紙

和紙は全国で漉かれていますが、「石州和紙」の一番の特徴は「日本一丈夫な和紙」といわれるほど良質な仕上がりであること。その秘密は材料と製法にあります。和紙の原料である楮を甘皮ごと使用することで紙の繊維が長くなり、破れにくくなるのです。
▲江戸時代の石州和紙。400年以上経っても現存している

甘皮を取り除くと綺麗な白い紙になり高く売れるため、他の地域では甘皮を使用しない製法がほとんどですが、「石州和紙」は甘皮を使うため和紙の色に少し黄味がかかります。でもそのぶん丈夫さでは日本一といえる和紙ができたのです。

丈夫だからこその、意外な使われ方

水にも強い「石州和紙」は、帳簿や障子紙などの日用品のほか、神社仏閣などの文化財修復にも使用されています。例えば京都の二条城二の丸御殿や西本願寺の阿弥陀障壁画など。日本の大切な文化財を見えないところで支えているのです!

更に、島根県石見地方の伝統芸能である「石見神楽」の大蛇やお面にも使用されています。動きの激しい「石見神楽」には、丈夫な「石州和紙」がぴったりだそうです。
▲石州和紙会館には「石州和紙」で作られた大蛇が展示されている

石州和紙会館で憧れの「紙すき」を体験!

熟練の技で黙々と作業をする職人さんってカッコイイですよね!「石州和紙」の技術・技法の継承を目的とする施設「石州和紙会館」では、手すき和紙体験(有料)ができます。
▲石州和紙会館
▲和紙職人の研修も行われている部屋で体験ができる

まずは、「石州和紙」の原料となる、楮、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)を間近で見せてもらい、和紙ができるまでの工程を教わります。
▲左から楮、三椏、雁皮

石州和紙づくりは楮の栽培と刈り取りから始まり、蒸したり皮を剥いだりと10もの工程を経てからやっと漉く段階に辿り着けます。
▲水と楮の繊維が入ったすき舟にトロロアオイの粘液を混ぜて紙すきの準備

そしていよいよ。紙すきといえば、この動き!簀桁(すけた)で紙料を漉く作業です。先生にお手本を見せてもらったら、自分の番です。

まずは2~3回すくって紙の表面となる層を作り、その後に簀桁を前後にゆっくりゆする作業を数回繰り返し、紙の厚みを作っていきます。先生から「初めてにしては上手い!職人になれる」と褒めていただき嬉しかったです。
▲簀桁をゆすって紙料を漉く
▲和紙の原形が完成!

緊張する漉きの作業が終わったら、次はお楽しみ。カラフルな和紙の飾りを使ってデコレーションをします!子供に戻った気分で「どんな柄にしよう?」と楽しみました。
▲デコレーションの材料ももちろん和紙。カラフル!
▲漉いたばかりの和紙の上に、飾りを手で優しく乗せます
▲冬なので、雪の結晶の形だけで揃えてみました

続いて、ハガキも制作させてもらえることに!夢中で漉いていたらいつの間にかギャラリーが集まっていました(笑)
▲お楽しみのデコレーション。次はクリスマスカード風に…

最後に和紙を乾かして完成です。和紙会館では専用の機械を使いましたが、職人さんは天日干しで乾かすのが一般的だそう。
▲自分で漉いたハガキが出来上がりました!感動です

今回はA3サイズの和紙と2枚のハガキを作りました。ハガキはグリーティングカードとして遠方に住む友人に贈り、びっくりさせようと思います!ここでしか体験できない「石州和紙」の紙すき体験!あなたも職人気分でやってみませんか?

石州和紙でできた「紙のくつ」で子供の成長を記念に残す

伝統工芸品である「石州和紙」。昨今の日常生活ではなかなか和紙を使う機会が少ないですが、石州和紙会館には様々な和紙プロダクトが展示・販売されています。

その中で、一際目をひくものがありました。「石州和紙」でできた小さな靴です。両手の平に乗るくらいの赤ちゃんサイズで、なんとも可愛らしい。「これは実際に履くものだろうか?」これを作った職人さんのもとを訪ねることにしました。
「『神の国から』紙のくつ」を制作しているのは、石州和紙工房のひとつ、「かわひら」です。工房は、石州和紙会館からほど近い山のふもとにありました。
▲工房と、職人の川平さん

職人の川平勇雄(いさお)さんにお話しを聞きました。「かわひら」では、勇雄さんとそのご両親の3名で石州和紙と和紙製品の製造を行っています。なお、お父様の正男(まさお)さんは、2015年11月に厚生労働大臣より「現代の名工」に選ばれています。
▲工房のすぐ脇には、石州和紙の原料である楮の木が生えている
▲毎年12月頃に1年分の原料を刈り取る
▲工房内には和紙の紙糸を織って作った商品も展示されている

「『神の国から』紙のくつ」は、「赤ちゃんのファーストシューズを『石州和紙』で作り、その成長を祝いたい」という思いから生まれたそうです。「歩き初め」を、伝統工芸品でお祝いするなんて、とても素敵です!

赤ちゃんが履くものだから、徹底的に自然素材にこだわる

この「紙のくつ」は、石州楮(地元・浜田市三隅町産)100%にこだわり、化学漂白・着色を行わず、化学糊材も使われていません。靴を縫い合わせるのも和紙の糸を使い、すべて紙だけで作られているんです。

これは「赤ちゃんが履くものだから、安心安全な自然素材で作りたい」という川平さんのこだわりと技術の賜物。手間がかかるので、なんと1日に一足作るのが限界なんだそうです。職人さんの愛情が詰まった特別な一足なのです。
▲高級感のある桐箱入り(税込19,440円)。贈り物にぴったり

そして、“千年もつ”といわれる「石州和紙」でできた靴だからこそ、歩き初めのお祝い後も、当時の記念としてずっと保存し、飾って楽しむことができます。自分の子供へ、そして子供から孫へと、ひとつの「紙のくつ」を贈り続けるということもできるかもしれません。

ヨーロッパには、「玄関にベビーシューズを飾ると幸せが訪れる」「赤ちゃんが履きにやってくる(妊娠する)」という言い伝えがあります。赤ちゃんがいない家庭でも、ラッキーアイテムとして飾ってみてはいかがでしょうか。
▲手作りキットのタイプ(税込5,400円)も。作る過程も思い出になる
「石州和紙」を受け継ぐ4軒の工房は、それぞれ得意分野が異なり、個性的なプロダクトを生み出しています。先述の石州和紙会館には、工房ごとに紹介スペースがあるので、それぞれの個性に目を向けて鑑賞するのがおすすめです。日本の伝統、和紙を生活に取り入れてみませんか?
小島有加里

小島有加里

島根県在住のグラフィックデザイナー。島根県の観光情報サイト、フリーペーパーなどでライターも務める。山陰のおいしいもの・楽しいこと・素敵な場所を発掘するのが趣味。(編集/株式会社くらしさ)

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