旨みたっぷりの出汁と甲州味噌がベストマッチな「ほうとう」を味わう!

2015.12.17 更新

「ほうとう」といえば、言わずと知れた山梨県の代表的郷土料理。小麦粉を練って、太くざっくりと切った麺を野菜と一緒に味噌仕立ての汁で煮込んだ料理です。山梨県では観光客向けのチェーン店から、地元の人が気軽に寄れる小さく家庭的なお店まで様々あります。

地元の人もわざわざ食べにくる「金峰」のほうとう

今回訪れたのはJR甲府駅から車で15分ほどの場所にある、家族で営む手打ちほうとうのお店「金峰(きんぷ)」
▲店名は、山梨県甲府市と長野県南佐久郡川上村の境界にある金峰山に由来しているそう

「金峰」のほうとうは、観光客のみならず、ほうとうを家庭で食べ慣れてきた地元の人にもとても愛されています。旨みが凝縮した出汁と甲州味噌が合わさった汁はさっぱりとしていてとても口当たりがよく、麺との相性が抜群。たしかに家庭では味わったことのない、なんとも上品な味なのです。
▲野菜ほうとう 970円(税込)。野菜たっぷりで栄養価も高く冬場はとても温まる

そして、隠れた人気メニューがほうとうに追加でのせるトッピング。1番の人気は“にんにくのすりおろし”とのこと。他にもチーズ、納豆、バターなど、おおよそ今までほうとうと一緒に食べたことがない食材との組み合わせは試す価値ありです。

また、「金峰」では店主が厳選した和食を引き立てるワインや日本酒など山梨ならではの地酒も楽しめます。馬刺(1,200円・税込)や鳥もつ(550円・税込)などの一品料理も多いので、夜の営業ではお酒を飲んで〆の一杯にほうとうを食すという玄人な食べ方もおすすめです。
▲左から勝沼醸造「アルガーノ ヴェント(風)」、「アルガーノ ファーゴ(火)」各3,600円(税込)※ボトルのみ、武の井醸造「特別純米酒 青煌」1杯 680円(税込)

家庭の数だけほうとうの味もある

ほうとうは、古くから山梨の各家庭の食卓で出されている料理であり、家ごとに味付けも具材もことなる、いわゆる“家庭の味”。しかし県内では、独自の進化をとげたほうとうを提供する店が様々あり、「金峰」もその一つ。

1973年に創業した「金峰」は、現在2代目店主の宮原和彦さんが切り盛りしています。宮原さんは、大学卒業後に割烹料理店などで修業を始め、寿司や活け魚料理などの本格的な和食の技術を学びました。その後、父親が体調を崩したことをきっかけに、28歳の時に山梨に戻って跡を継ぐことになりました。
▲「東京で培ってきた和食の技術で、故郷の人たちに本当に美味しいと思える山梨ならではの料理を提供したい」と語る宮原さん

宮原さんが代を継いでからの「金峰」のほうとうは、基本の食材を吟味するところから始まりました。麺には山梨県北杜市産の無農薬小麦粉を使用。コシと香りがとても良くなったそう。
▲麺は塩を少なく、熟成させず幅広い麺にするところが特徴
▲ほうとうの麺は、毎朝手打ちで仕込んでいる

うどんとの違いは、汁がほどよくからむように幅広く麺を切るところ。麺を下茹ですることなく打ち粉ごと具材と一緒に煮込み、モチモチとした食感に仕上げます。
▲麺は薄く幅広く。汁の中で煮込むと、とろみが付いて独特の風味に

出汁も化学調味料は一切使わず、鰹節、鯖節、椎茸、昆布、煮干しをたっぷり使って1日かけて旨みを抽出します。そこに、米と麦をミックスした山梨ならではの甲州味噌を合わせることで最高のほうとうの汁が出来上がります。
▲出汁の元となる乾物は、甲府市場・場外の乾物問屋「小澤朝雅商店」から、全て国内産のものを仕入れている
▲出汁に合わせる甲州味噌は、甲府市にある「五味醤油」のやまごみそを使用

使う野菜に決まりはないのですが、かぼちゃを入れることが一般的。煮込んだかぼちゃが汁に溶け込んでとろとろになります。「金峰」では「野菜ほうとう」の他にも、きのこほうとう(1,190円・税込)、肉ほうとう(1,190円・税込)、甲州地鶏ほうとう(1,510円・税込)などがあります。

熱々のイメージのほうとうですが、「おざら」という冷やしたほうとう料理もあり、これは温かい汁に付けて食べるつけ麺方式。夏季限定のお店が多い中、「金峰」では通年で食べることができます。
▲手打ちおざら(810円・税込)。ごはんやお刺身の付いた、おざら定食(1,400円・税込)も

郷土で愛されるほうとうの歴史

ほうとうには、戦国時代に武田信玄の陣中食として重宝されたという逸話があります。甲斐国(現在の山梨県)は大部分が山間地のため米があまり育てられませんでした。そのため大豆や小麦、そばなどの粉食を中心とした食文化が発達。手軽に調理ができて、輸送性もあり、野菜もたっぷりとれるため、陣中食にはピッタリ。信玄が自分の刀で食材を切ったことから「宝刀(ほうとう)」と名付けられたという説もあります。
▲奈良時代に中国から伝来した唐菓子「はくたく」が、はくたく→はうたう→ほうとうと音便したとも言われている(ほうとうの由来は諸説ある)

「うまいもんだよ、カボチャのほうとう」という言葉が山梨には伝わっています。物事がうまく運んだときに口にする、山梨ならではの合いの手のようなもの。このようにほうとうは山梨県民の食生活の一部となり、家庭やお店で進化を続け、これからも受け継がれていくことでしょう。
「金峰」は宮原さんご夫婦、お母さんの3人が迎えてくれるとても家庭的なお店。甲府市には温泉や昇仙峡などの景観が美しいところも多く、武田信玄公を御祭神とする武田神社もあります。ほうとうゆかりの地を巡りつつ、気軽にほうとうを食べに寄ってみてはいかがでしょうか。
土屋誠

土屋誠

山梨の人や暮らしを伝えるフリーマガジン『BEEK』編集長、アートディレクター。山梨を拠点に、編集やデザインで地域やモノゴトを伝える仕事をしています。本屋さんが好きなので、休みができたらもっぱら本屋に出没。2児の父としても奮闘中。(編集/株式会社くらしさ)

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