南部鉄器の老舗「OIGEN」のファクトリーショップ。カッコいい鉄器の魅力に触れ、工場も見学!

2016.01.27

岩手県奥州市水沢区にある南部鉄器鋳造の老舗「OIGEN(及源鋳造株式会社)」。直売店である「ファクトリーショップ」には、スタイリッシュな鉄器アイテムが並ぶ。今回は、その鉄器たちが生まれる工場を見学させてもらった。

▲仕上がったばかりの鉄瓶

南部鉄器の伝統が息づく水沢

岩手県の南に位置する奥州市水沢区は、盛岡市と並ぶ「南部鉄器」の産地だ。古くから、北上川の川砂や砂鉄、鉄鉱石、燃料に使う木炭など材料に恵まれた土地であったことから、鉄器づくりが盛んに行なわれてきた。

盛岡市の南部鉄器が江戸時代初期の茶釡づくりから発展したのに対し、奥州市の南部鉄器づくりは、平安時代後期に奥州藤原氏が近江国(現在の滋賀)から鋳物職人を招き、中尊寺など寺院の梵鐘製造をさせたのがはじまりと言われている。

北上川東側にある羽田町周辺には、古くから続く沢山の鋳物工場がひしめいている。その工場群の中で、ちょっと異質な存在感を持つギャラリーのような空間を訪ねてみた。南部鉄器づくり160余年の歴史を持つ「OIGEN」の直売店「ファクトリーショップ」だ。

まるでギャラリーのようなショップへ

昭和の佇まいを残した工場と隣あわせのショップは、2015年1月にリニューアルしたばかり。「愉しむをたのしむ」がコンセプトの店内は、ただ買うだけの場でなく、そこにいる時間を楽しめる雰囲気が魅力だ。
▲自然光が差し込む店内

店では隣の工場で製造した鉄器と共に、近隣の鋳造工場で作られた鉄器も販売。そればかりでなく、同社の倉庫に保管されていた昔の鉄製鍋や釡、茶釜など歴史を感じる品々が展示されている。
▲昔の鉄製鍋

ショップスタッフの千葉京子さんは、地元水沢区の出身。幼い頃から鉄器は身近な存在だったが、この店に勤めはじめて一層その魅力を感じるようになったという。
▲にこやかに迎える千葉京子さん

「家でも南部鉄器を使っていますが、『焼き焼きグリル』はサイズも形状もいろいろあって使いやすいですよ。焼き魚もそのままテーブルに出せますし、大きなサイズのものはグラタン皿としても使っています」と千葉さん。
▲脱着式の取っ手が便利な「焼き焼きグリル」はサイズもいろいろ(税別4,500円~)。奥は「どっしり」(税抜5,500円)、手前は「スリム2P」(税抜5,500円)

鉄器アイテムの多さに驚き!

ぐるりと店内を巡ると、不思議な形の調理器具を発見。同社の人気商品「タミさんのパン焼き器」だ。通称「タミパン」と呼ばれるその道具は、ガスコンロを使用して調理する南部鉄製のパン焼き器。どこかノスタルジックな佇まいをみせる道具が生まれた背景には、一つのエピソードがある。
▲「タミパン」こと「タミさんのパン焼き器」

同社社長の及川久仁子さんが、母方の祖母タミさんの家を訪れた際に、倉庫から見つけたのがジュラルミン製のパン焼き器。それは、終戦後にタミさんが子ども達のために手作りのパンを焼いてくれたものだった。
▲祖母のタミさんが使っていたジュラルミン製パン焼き器

その話を知った社長が、当時のパン焼き器を今から16年前に南部鉄器で復刻して販売したのが「タミパン」なのだ。「タミパン」の魅力は、オーブンがなくてもガスコンロで気軽にパンが焼けること。真ん中に穴が開いた形状と鉄ならではの熱伝導によって、じっくりとまんべんなく火が通り、ふっくらおいしいパンが焼き上がるという。
▲熱伝導がよく下火だけで調理できるので、アウトドアにも活躍しそうだ
▲販売以来、同社のヒット商品として人気の「タミパン」シリーズは直径14㎝、16㎝、19㎝など大きさもいろいろ
▲2014年に発売した「タミパンクラシック」(税別8,000円)は、SIセンサー付きのガスコンロにも対応

他にも直売店ならではの品ぞろえも多い。同社イチオシの「上等鍋」はコーティングしていなくても錆びにくく、熱の伝わりが均一で早いという優れものらしい。表面を焼いて酸化被膜を施す鉄瓶づくりで昔から使われてきた「金気止め」を進化させ、鍋づくりに生かした技術を使用している。2000年には特許を取得しているのだとか。
▲「上等鍋」(写真手前は税別15,000円)は、プロの料理人から人気

「OIGEN」の創業は1852(嘉永5)年。ご飯を炊く釡や汁用の鍋、牛馬にエサをあげる際に使う「カイバ桶」の製造からはじまって、時代と共に市場を広げてきたそうだ。昭和30年代には海外輸出もスタートし、今ではアメリカやヨーロッパ各地に展開。特にアメリカではヘルシー志向と共に和食への関心も高まり、その流れを受けてプロの料理人は和包丁や南部鉄器などの調理器具に注目しているのだとか。
▲モダンなデザインの鍋しき・角格子(税別5,000円)
▲鮮やかな色の急須(税別8,000円~)
▲なんと鉄製のボウルまで!(税別2,500円~)

流れ出す鉄に圧倒される工場見学!

「ファクトリーショップ」でカッコいい鉄器に触れたあとは、工場見学へ。案内してくれたのは、広報やブランディング担当の橋本太郎さんだ。工場見学は平日のみだが、1名から対応可能(要予約)。鉄器が生まれる工程を20分から40分程度で見学できる。
▲「つい、私が熱く語ってしまう」と話す橋本さんは南部鉄器に惚れ込んだ一人だ

工場では、鍋、急須、鉄瓶という3つに分かれて製造ラインを組んでいる。中に入ると、ちょうど「湯つぎ」作業に入るところ。「湯つぎ」とは、砂で作った型(生型)に溶かした銑鉄(せんてつ)を流し込む作業だ。安全のため見学者は遠くから眺めるだけだが、それでも迫力たっぷり!
▲1500度に熱された鉄が、急須や鍋などそれぞれの型に注がれていく
▲型に注がれた真っ赤な鉄が固まっていく
▲型から出した鉄器は機械で磨いたあと、手仕上げでさらに磨く。長年の感覚が生きる繊細な仕事だ

工程の機械化によって多くの注文に量産対応する「OIGEN」だが、その一方で、江戸時代から続く伝統的な鉄瓶づくりの技法を継承しようと、若い鉄器職人を育成中だ。見学した際は、ちょうど鉄瓶の鋳型にアラレ文様を押していく作業中だった。
▲鉄瓶の鋳型につける「アラレ押し」。1つの鉄瓶で最低2時間はかかる細かな仕事だ

見学を終えて、再びファクトリーショップへ。何段階も経て鉄器が生まれる現場を見ると、できあがったものへの関心も一層高まる。

「一休みにどうぞ」と差し出されたお茶は、南部鉄瓶で沸かしたお湯で淹れた一杯。「鉄瓶で沸かしたお湯はまろやかになるんですよ」と千葉さん。頂いたひと口は何ともいえない柔らかな味わいだった。
▲ショップでは、鉄瓶で沸かしたお湯で淹れたお茶やコーヒーを試飲させてくれる。斬新なフォルムの鉄瓶(税別56,000円)

最近では若いカップルや外国からのお客様も多いという「OIGEN」。旅の立ち寄り先として、ぜひチェックしてほしい場所だ。
水野ひろ子

水野ひろ子

岩手県在住フリーライター。行政や企業等の編集物制作に関わる傍ら、有志とともに立ち上げた「まちの編集室」で、ミニコミ誌「てくり」やムック誌の発行をしている。(編集/株式会社くらしさ)

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