瀬戸内海に浮かぶ「豊島」で、海苔を「生」のまま使ったパスタに感動!

2016.01.16 更新

「生海苔」が美味しい!と噂は耳にするけれど、出会う海苔は乾燥させたものばかり。そんな中、瀬戸内海の東部、香川県の豊島(てしま)にある「海のレストラン」では、生海苔を使ったパスタが食べられると聞いて訪ねてきました。

「生海苔」を使ったパスタとご対面

「海のレストラン」は、昨今アートの島として国内外の人々が訪れる豊島に、2013年にオープンしたレストラン。海苔の漁場がある海を望む立地で、四季折々の地元食材を使った創作料理を出しています。

この日は、小豆島の土庄(とのしょう)港からキラキラと輝く瀬戸内海をのんびり眺めながら船で渡り、最寄りの家浦港で下船。港で自転車を借りて、のどかな道のりを進むこと約5分。まるで一つのアート作品のような真っ白い建物が目に留まります。ここが目的地「海のレストラン」。
▲「海のレストラン」。そばの敷地ではハーブや野菜、果樹も育てている

テーブルからは穏やかな海を一望できます。ここまで間近な場所から海景色を楽しめるお店は珍しいのではないでしょうか。
▲窓一面に広がるオーシャンビューの店内で食事を楽しめる

この景色だけでも「海のレストラン」に来る価値があるなぁ~と思っていると、本日楽しみにしていた「生海苔のパスタ」が柔らかな香りに包まれながら出てきました。
▲「生海苔のパスタ」(サラダ・スープ付き) 1,200円(税別) ※期間限定・1月のみ提供(生海苔の仕入れ状況によって出せない日もあるかもしれません)

生海苔が絡んだパスタに、無農薬栽培のレモンが添えられているシンプルな一品。「まずはこのまま食べて、風味を変えたくなったらレモンを絞ってください」というアドバイス通り、まずはそのままいただきます。
▲生海苔の繊細な風味を活かすため、味付けは淡口醤油とオリーブオイルだけ。火を入れるのも一瞬だそう

なんて優しい味わいでしょう。まるで瀬戸内海を表しているかのよう。柔らかい生海苔がパスタにからみ、舌触りはとろっと滑らか。口に運ぶほどに繊細な風味がふわっふわっと広がっていき、心が満たされていきます。
▲続いて、豊島で育った無農薬レモンをかけて爽やかさを楽しむ

「この繊細な風味と、滑らかな舌触りは『生』の海苔ならでは。乾燥すると味も香りも強くなるし、食べているとパスタと海苔が分かれていきます。その点、生海苔は、柔らかい糸状になっているので、パスタによく絡むんです」と調理担当の中野志保子さん。
▲これが「生海苔」。長くて柔らかいので、パスタによく絡み、とろりとした食感を楽しめる

さらに、このメニューを開発した髙倉知英(ともひで)シェフは「実はペペロンチーノをイメージしてアンチョビを入れたり、讃岐うどんをイメージしてレモン風味のオリーブオイルをかけたりしたことがありました」と開発当時を振り返ります。

いろいろ試した中で、一番美味しいバランスだったのが、シンプルに「淡口醤油+オリーブオイル」だったそう。
▲「生海苔パスタ」のレシピを作った髙倉知英シェフ

「そもそも海苔は主に『海苔佃煮』や、醤油を塗った『味付け海苔』になるので、醤油は絶対に合うと思いました。また、若い人が喜んでいる姿を想像した時、『うどん』でも『そうめん』でもなく『パスタ』だなって思いました。パスタといえばオリーブオイルですし、豊島や隣の島の小豆島は国内産オリーブオイルの代表産地。醤油も小豆島が一大産地。添えているレモンも豊島を代表する産品です。美味しさを求めていろいろ試した結果、地場のものだけになったのもおもしろいですね」と話します。

そして調理もシンプル。フライパンに海苔を入れ、オリーブオイルを回しかけてさっと加熱し、醤油とパスタの茹で汁、茹でたパスタを加えてさっと混ぜて完成。
▲火を通すと、紅色だった生海苔が緑色に変わる
▲茹でたてのパスタを加える

こんなにシンプルなら家でも作れそう!と思ったものの、そもそもこんな鮮度の高い生海苔を手に入れるのが難しい。海苔漁師との距離が近いからこそできる一品です。

「海のレストラン」で使う生海苔は、「美味しさ優先」で養殖した海苔

そういえば、「海苔」は昔から気軽に食べてきた食材だけど、どうやってできているのだろう?美味しさの秘密は?と思い、「海のレストラン」の店長、門脇湖(かどわきひろし)さんに漁場に連れて行ってもらいました。
▲「海のレストラン」店長の門脇湖さん。地元の生産者と交流を重ね、食材を活かしている

海苔養殖30年の伊加浩(いがひろし)さんの漁船に乗り、キラキラときらめく海をうっとりと眺めていると、漁場を示すカラフルなブイが見えてきました。
▲遠くに見えるブイと網がある場所が海苔の養殖現場

ブイの内側には網が敷かれ、海苔がみっしりと茂っています。
▲海苔の養殖現場。穏やかな瀬戸内海は海苔の養殖に向くという

その図は「漁」というより「栽培」!実際に海苔漁師が行う作業は「栽培」そのもの。9月頃に網に種を付けると、毎朝網を海面から上げて海水を吹きかけて海苔を洗い、1~2cmまで育つと一旦冷凍庫で保管します。水温が18度まで下がると再び海に出し、海苔を成長させ、20~25cmまで成長したら刈り取ります。
▲伊加さんが網を持ち上げると、成長している海苔がびっしり
▲網から伸びているのが「海苔」。これを刈り取ったままのものが「生海苔」

生のまま1週間も置いておくと風味は落ちてしまうため、刈り取ったら洗って、刻んで、漉いて、乾すという次の仕事が待っているので、伊加さんすらも口にすることは滅多にないと言います。

「門脇君が欲しい言うから、特別に『生』のままわけてあげとんや。こんなことをやってあげてんのは『海のレストラン』だけやで」と伊加さん。

美味しい海苔に育てるコツを尋ねると、「そんな偉そうなこと言いたくないわぁ」と遠慮しつつ、「美味しくなる『種』を選んどる。収量はぐんと減るけどな」とポツリ。聞けば、最近はコンビニのおにぎりに使われることが多いため、海苔を巻く機械に向く、「破れにくく」「安定配給」しやすい海苔になる種が主流だとか。

「俺が美味しい海苔を食べたいからなぁ」と伊加さんはくったくのない笑顔で話します。

なお、海苔は「海の大豆」と呼ばれ、大豆に匹敵するほどタンパク質を含み、さらに「海の緑黄色野菜」という名もあるほどミネラルやビタミン、食物繊維が豊富です。美味しい海苔はまさに滋味に富んだ逸品なのです。

目の前には心が安らぐ瀬戸内海の景色。心も体も癒す、最高のレストランで、この時期にしか味わえない地元の旬の味を堪能しませんか?
黒島慶子

黒島慶子

醤油とオリーブオイルのソムリエ&Webとグラフィックのデザイナー。小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20歳のときに体温が伝わる醤油を造る職人に惚れ込み、小豆島を拠点に全国の蔵人を訪ね続けては、さまざまな人やコトを結びつけ続けている。 (編集/株式会社くらしさ)

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