男鹿半島へ、本物の「なまはげ」に会いに行く

2016.02.06

「泣く子はいねがぁ~!悪い子はいねがぁ~!」でおなじみ、秋田県男鹿(おが)半島に伝わる「なまはげ」。なんとも恐ろしげな風貌ではありますが、実は「なまはげ」は神様の使いなんです。大晦日の夜、本物の「なまはげ」を体験してきました。

大晦日の晩、本物の「なまはげ」がやってくる!

「秋田県といえば?」こう聞かれて「なまはげ!」と答える方も多いのではないでしょうか?でもこの「なまはげ」、実は秋田県のなかでも、男鹿半島を中心に伝わっている風習なのです。

男鹿半島の大晦日の晩、各集落に、鬼の面をつけ、ケデなどと呼ばれるワラのミノをまとった「なまはげ」に扮した青年たちがやってきます。今回は特別に、男鹿半島真山地区の「なまはげ」を見せてもらいました。

2015年大晦日、夜8時半。先立(さきだち)という役目を担うお兄さんが「おばんです(こんばんは)。なまはげ、来たすども……(なまはげが来ましたが入っていいですか)」と聞きにきます。

家主は「おめでとうございます。寒いとこ、よく来てけだな(よく来てくれましたね)」と答えながら、お酒をすすめつつ、なまはげのためにお膳を並べます。

「んだす。山がら来るに容易でねがったす(そうです、山から来るのが大変でした)」と先立が応えるそばから、突然、バンバンバンバン!バンバンバンバン!と、居間の襖を激しく叩く音が!

息を飲む間もなく、バッと襖が開き、なまはげが現れます。

「お~~~~」「お~~~~」と低くうなりながら、玄関で7回四股を踏みます。
▲大人でも、十分すぎるほど怖い!

なまはげはどかどかっと、家の中に入ると、バンバンバンバン!バンバンバンバン!と、激しく扉や襖を叩いて音を出しながら、「泣ぐ子いねが!怠け者いねが!言うごど聞がね子どら(子どもたち)いねが!親の面倒見悪りい嫁いねが!」と探し歩き、家じゅうの扉という扉を開けていきます。
▲こうして音を出して邪気を払っているのだとか。ありがたい、でも、怖い~!

家主は落ち着き払って「なまはげさん、まんず座って酒っこ飲んでくだんしぇ(座ってお酒を飲んで下さい)」といいながら、お酒をすすめます。なまはげは5回、四股を踏んでからお膳につきます。

なまはげと家主の問答

ここから、家主がなまはげをお酒やご馳走で歓待しながら、問答が始まります。

家主「山がら来るに容易でねがったすべ。今年も来てけでいがったすなぁ(山から降りて来るのは大変でしたね。今年も来てくれてありがとうございます)」

なまはげ「今年の作はなんとだった?(今年の田んぼの具合はどうだった?)」

家主「うちは人に小作してもらってるすども、おかげさまでたいしたいい作であったす(うちは人に手伝ってもらっているのですが、おかげさまで非常に良い作でした)」

なまはげ「んだが!まだいい作なるように拝んでいぐがらな!(そうか!また豊作になるように、拝んでいくからな!)」

こうしてなまはげは子どもがいい子にしているか、嫁は家をよく守っているか、おじいさんやおばあさんは病気ではないかなど家のなかのことをいろいろと聞きながら、ぐいぐいとお酒を飲みます。
▲なまはげ問答では、子どもも話しかけられるし、泣かずに頑張れるならお酌もやる

最後に、なまはげは「また来年も来るがらな!」といい、お膳から立ち上がって3回四股を踏んで、帰っていきます。
▲ケデと呼ばれるなまはげのミノから落ちたワラは翌朝までそのままにしておきます。体の悪いところに巻きつけると、具合がよくなるなど、ご利益があるといわれているそう

こうして、日本中が紅白歌合戦を見ているであろう大晦日の晩、男鹿市内では200~300匹のなまはげが家と家のあいだを移動しているのです。

本物のなまはげは、想像以上に迫力がありました。子どもの頃だったら、大泣き必至だったでしょう。でも、ちゃんと聞いてみると、なまはげ問答のやりとりのなかには、地域の人たちがお互いを思いやる気持ちがにじみ出ているのです。それはそれは、心温まるものでもありました。なまはげは怖いだけじゃないんですね!

そして、翌朝は元旦。十二代景行天皇時代創建とも伝えられる「なまはげ」ゆかりの神社、真山(しんざん)神社に初詣をしてきました。
▲2016年元旦は雪も少なく、参拝客が大勢来ていました
▲お札所にはなまはげのお面をかぶることができるコーナーも

お札所の脇から、神社境内にある歓喜天堂にもお参り。大晦日、家々を巡り終えたなまはげは、まとっていたケデ(ワラのミノ)を柱に巻きつけるのだそう。
▲歓喜天堂にお参り。手前の柱に巻きつけてあるのが、なまはげが身につけていたケデ

「なまはげ館」で聞く「なまはげ」の由来

真山神社から徒歩3分のところにある「なまはげ館」と「男鹿真山伝承館」にも立ち寄ってみました。
「なまはげ館」は、なまはげをテーマにした男鹿の歴史や風土を紹介している施設。男鹿半島で使用されていた各集落150枚のお面があり、多種多様なお面が揃っています。
▲男鹿半島だけで、100種類以上ものなまはげがいるということ!
▲なまはげ館内ではなまはげのお面を彫る彫り師の石川千秋さんの実演(週3~4回の不定期)を見ることもできますよ
▲なまはげ変身コーナー(無料)もあり、出刃包丁、御幣、石川さんが彫ったお面、ケデ、わらぐつなどを身につけ写真を撮ることも可能

「なまはげ館」でなまはげの由来について、お話を伺いました。

「なまはげの語源は『火斑(ナモミ)を剥ぐ』という言葉が訛ったものといわれています。ナモミとは火にあたっているとできるもので、怠け者の象徴と言われ、それを剥いで、怠け者を戒めるのがなまはげといわれています」

市井の人々の生活を正してくれるからこそ、お酒やご馳走を出してもてなすのだそう。そして、「男鹿の人たちにとっては、なまはげが来てくれることによって、新しい年が豊作になり、無病息災で過ごせるという、ありがたい存在なのです」と語ってくれたその言葉通り、今でも大切にこの文化は守られ続けています。

いつでもなまはげを体験できる「男鹿真山伝承館」

「なまはげ館」と隣接している「男鹿真山伝承館」では、茅葺き屋根の曲家(まがりや)で古い伝統としきたりを厳粛に受け継いでいる地元・真山地区のなまはげを体験できます。(4月~11月は30分毎に、12月~3月は1時間毎に開講)
▲真山神社が運営している「男鹿真山伝承館」
▲親方となまはげの問答で秋田弁のやりとりを堪能しては?

大晦日のなまはげさながらの迫力に、子どもたちの阿鼻叫喚が……。(笑っちゃいけませんね)薄暗い古民家というロケーションも手伝って、かつてろうそくの明かりなどでお面を見ていた時代のリアリティまで感じられるかのようです。
なお、2月には「なまはげ柴灯(せど)まつり」といって、男鹿市北浦の真山神社で行われる神事「柴灯祭」と伝統行事「なまはげ」を組み合わせた観光行事が行われます。男鹿中のなまはげが一同に会する、迫力満点のお祭りです。

豊かな自然となまはげの伝統を守り続けている男鹿半島に、ぜひ足を運んでみては。
伊丹直

伊丹直

編集者、ライター。東京で10年間の出版社勤務ののち、2013年春から秋田へ移住。生活文化ジャンルの雑誌で執筆のほか、地域情報を発信するメディアなどで企画、編集を行う。 (編集/株式会社くらしさ)

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