日本酒の老舗蔵元が開発した「糀糖」とは? 新しいけど懐かしい甘みのスイーツと、その誕生秘話に迫る!

2016.01.21 更新

甲斐駒ケ岳の伏流水で300年に渡って日本酒「七賢」を醸し続ける蔵元、「山梨銘醸」。日本酒を造るために必要な糀を長く扱ってきた蔵元が、米糀と米粉の自然食材だけで出来た栄養豊富な甘味料「糀糖(こうじとう)」を開発しました。その「糀糖」を使ったスイーツを味わえる酒蔵の中のカフェを紹介します。

300年の歴史を持つ日本酒の蔵元「山梨銘醸」は、山梨県北杜市白州町の「台ケ原宿」という江戸時代に甲州街道の宿場町として栄えた場所にあります。建物は歴史が深く、明治天皇が山梨を巡幸した際の行在所となった場所でもあります。
中に入ると、昔にタイムスリップしたかのよう。歴史の染みこんだ造り酒屋の佇まいで、運搬に使っていたトロッコレールの跡があったりと、とても趣があります。
▲歴史を感じる建物の中の喫茶スペース。地元の本屋さんがセレクトした地域や食、暮らしに関する本も置かれている

この建物の中に「糀糖」という、ふだん耳慣れない甘味料を使ったスイーツを出す「くらかふぇ」という喫茶スペースがあります。スムージーやホットドリンクを中心に、トースト、アイスクリーム等のメニュー全てに「糀糖」が使われています。

糀から生まれた「糀糖」とは?

「糀糖」の原材料となる糀(こうじ)は、蒸した米、麦、豆などの穀物に糀菌を付着させて繁殖させたものをいいます。日本酒などのお酒はもちろん、味噌、醤油、みりん、酢など醸造調味料には欠かせません。
▲お米に糀菌を繁殖させて作った米糀。日本酒を作るために最も大事な要素となる。ぬるま湯に浸すと、糀は糖化され濃厚な甘さを醸し出す

その米糀と米粉のみを使って「山梨銘醸」が独自で研究・開発して生まれたのが「糀糖」。「糀糖」は今まで世の中になかった、新しい液状の甘味料です。液を舐めてみると、なんだかなつかしさを感じる素朴な甘み。糀がこんなに甘くなるとは驚きです。
▲写真左奥:ピーチコウジー400円(税込)[季節限定]、写真右:糀トースト 500円(税込)。トーストをお猪口に入った「糀糖」(写真左手前)にディップして食べる

山梨県産の桃やブルーベリーなどを使い、「糀糖」で甘みをプラスしたスムージードリンク「コウジー」は、暑い夏にぴったり。冬には「ホットコウジー」もあるので、この時期身体も温まっておすすめです。「糀糖」と水を1:1で混ぜて温めた「ホットコウジー」は、いわゆる甘酒。まろやかで深みのある甘さです。
▲写真左:糀糖ブリュレ 450円(税込)[数量限定]、写真右:柚子ミルクコウジー(HOT)400円(税込)[冬季限定]
▲糀糖アイスクリーム 400円(税込)。「糀糖」が甘味料として使われており、糀の味と甘さがダイレクトに伝わってくる

「糀糖」は、しっかりと甘さがありながらなんとカロリーは砂糖の半分!甘みのほとんどはブドウ糖だそうです。食物繊維、ビタミンなどの栄養素も豊富。糀の飲料として代表的な甘酒は、江戸時代から疲れやバテ防止のために飲まれており、「飲む点滴」とも呼ばれているほど。「糀糖」を使用した全てのメニューに糀の味わいが残っています。

糀や食文化を伝える場所

「くらかふぇ」を代々続く蔵の中に作った理由を、「糀やその歴史、食を考える場というところまで踏み込もうと思った」と、「山梨銘醸」で醸造責任者を務める北原亮庫(りょうご)さんは話します。
▲日本酒「七賢」を醸す北原亮庫さん。兄の対馬(つしま)さんと兄弟で父の代から歴史を受け継ぎ、日本酒や発酵文化を伝えている

「スイーツだけではなく『糀糖』を使ったレシピの提案もしていて、いろいろな料理に使える身近な甘味調味料になるようにと、一般向けにボトル販売もしています。昔は街の中に糀屋があって、糀を買って家で味噌を造るというようなことは当たり前でした。この糀の風味を忘れていたとしても、わたしたち日本人のDNAにはなにかしら糀に対する記憶が刻まれているはずです。糀を取り入れた食の提案をしていくことも大切な役目だと考えています」
▲「糀糖」のことや糀を取り入れた食のすすめを提案する「糀's(こうじいず)」というフリーペーパーも制作
▲「糀糖」550g 880円(税込)

長く続く酒蔵だからこそ

「糀糖」を使ったスイーツが食べられるのは、この「くらかふぇ」だけ。この風情ある酒蔵はそれだけで訪れたくなる場所です。「糀糖」が甘いということだけを伝えるのならどこでもできると思いますが、この“歴史ある蔵の中で食べる”というところに価値があるのではないかと思います。日本酒だけでなく、発酵を通じた食の提案も粛々とする姿勢は一時の流行にのせるのではなく、ゆっくりと熟成されるように人の間に広がっていくのかもしれません。
▲日本の名水百選に選ばれた甲斐駒ケ岳の伏流水を使う酒造り。蔵のいたるところに水が流れる

「これからはただ日本酒を造るだけでなく、その歴史や食文化も自分たちで伝えていくことが大事だと思っています。日々発酵醸造に触れるわたしたちだからこそ、発酵の可能性や日常に取り入れられる丁寧な食文化を発信していくことも大切な役目だと思っています」

300年の歴史ある酒蔵だからこそ、伝えるべきことがまだまだあると北原兄弟が教えてくれました。
▲北原兄弟。弟の北原亮庫さんと兄の北原対馬さん(右)

南アルプスを望む白州の豊かな自然を楽しんだあとに、ちょっと一息つくのにもおススメな「くらかふぇ」。糀の甘みと美味しさをぜひ試してみてください!
土屋誠

土屋誠

山梨の人や暮らしを伝えるフリーマガジン『BEEK』編集長、アートディレクター。山梨を拠点に、編集やデザインで地域やモノゴトを伝える仕事をしています。本屋さんが好きなので、休みができたらもっぱら本屋に出没。2児の父としても奮闘中。(編集/株式会社くらしさ)

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