個性豊かな13種類の「玉子かけごはん」。防府天満宮の門前町で話題の新名物を食べ歩き!

2016.01.07 更新

趣向を凝らした創作「玉子かけごはん」が、なんと13種類!日本三天神の一つ「防府天満宮」が鎮座する山口県防府市では、「ほうふ玉子かけごはん」なるものが新名物として話題となっています。ご当地食材を生かしたものや、天満宮のイメージにちなんだものまで、多彩な「玉子かけごはん」を食べ歩きしてみました。

多くの日本国民が愛してやまない「玉子かけごはん」。炊きたてごはんに新鮮玉子と聞くだけで、お腹が空いてしまう人も少なくないのでは?

2000年代以降、世の中は“玉子かけごはんブーム”ともいわれるほどの様相が続いており、創作レシピを紹介する著書やウェブサイトも登場。さらに、全国を見渡せば、行列ができるほどの専門店があり、数多の「玉子かけごはん専用醤油」も存在しています。
▲シンプルゆえに、無限のアレンジが可能な「玉子かけごはん」

天神様の門前町で楽しむ「玉子かけごはん」の食べ比べ

山口県中央部の瀬戸内海側に位置する防府市といえば、日本三天神の中でも最も古い創建(904年)とされる「防府天満宮」が有名です。防府の街もこの“天神様"を中心に発展してきました。
▲「防府天満宮」の現社殿は昭和33(1958)年に建造され、国の登録有形文化財になっている

初詣の参拝者数だけでも山口県内最多の約40万人。祭神は言わずと知れた菅原道真であり、“学問の神”にあやかろうと多くの受験生が合格祈願に訪れます。
▲防府天満宮の境内にある「春風楼」からは防府市街が一望できる

「ほうふ玉子かけごはん」が味わえるのは、まさに防府天満宮の門前町一帯。天神様を起点に徒歩10分圏内に点在する13の飲食店(2015年12月現在)で提供されています。

ひと言で「玉子かけごはん」といっても、和風、洋風、中華風、ハワイ風など、それぞれの店で趣向を凝らした異なる13種類の「玉子かけごはん」に出会えます。参道脇の観光案内施設「まちの駅うめてらす」では、マップが載ったパンフレットを配布しているので、まずはここに足を運びましょう。
▲「うめてらす」には近隣の観光情報がたくさん。案内者も常駐

さて、果たしてどんな「玉子かけごはん」に出会えるのか!?今回は13店のなかから、ご当地にちなんでいたり、創作度が高かったりと、気になった5店舗をご紹介します。

「防府天満宮」「梅」「山口」をキーワードに、店の特色を生かした創作玉子かけごはん

パンフレットを手に入れた「うめてらす」内にさっそく一つ目の“玉子かけごはんスポット"が。お洒落なカフェ「Sweet Home(スウィートホーム)」で「梅玉サラダボウル」(税込648円)が味わえます。
▲「うめてらす」内にあるカフェ「Sweet Home」はスイーツも充実

「梅玉サラダボウル」のごはんは山口県の米処・山口市阿東産の米、玉子は防府市「出雲ファーム」産のお米を食べて育った鶏の「米たまご」が使われており、お店の地産地消へのこだわりがうかがえます。
▲彩り鮮やかな「梅玉サラダボウル」。ごはんはお好みで白ごはんか、玄米かを選べる

防府天満宮の節分祭(毎年2月3日)では「牛替神事(うしかえしんじ)」という催しが行われるなど、牛は神獣とされています。この「梅玉サラダボウル」ではサラダと一緒に、その「牛」にちなんだ甘辛い牛肉しぐれと、天神様のシンボルである「梅」にちなんだカリカリ梅がたっぷり。

さらに梅干しなどをブレンドしたお店のオリジナル醤油をかけて、玉子、ごはん、具材をしっかり混ぜて食べるのがオススメです。
▲その名の通りさっぱりとしたサラダ風で、「玉子かけごはんめぐり」をするなら最初の腹ごなしにぴったり

さっぱりした野菜の味わい、濃厚な牛肉、食感が楽しい梅の酸味が混ざり合って、最後の一口まであっという間です。
続いて、「うめてらす」向かいにある「天とて屋かふぇ」の玉子かけごはん「梅ちゃん。」(税込500円)を実食。梅の花をかたどったゆかりごはん(しそのふりかけごはん)の上に玉子がのって、高菜、梅干し、鰹節、わかめ、桜でんぶ、あおさなどがトッピング(一部具材は仕入れ状況によって異なります)されています。
▲「うめてらす」向かいにある「天とて屋かふぇ」
▲見た目もかわいらしい「梅ちゃん。」梅の花の形をしたゆかりごはんがポイント

「ほうふ玉子かけごはん」のパンフレットの表紙を飾るだけあって、見た目はかわいらしくとても華やか。崩してしまうのは何だか勿体ない気分にもなります。

玉子の黄身にだし醤油をかけて、具材の混ぜ加減は好みで調節しながら食べ進めるのがお店のオススメ。具だくさんにもかかわらず、それぞれの旨みが上品な領域で美味しく絡み合います。
▲ごはんとの相性がぴったりな具材ばかり。混ぜ加減はお好みで

なお、雑貨コーナーを併設する同店は、門前町一帯で「ほうふ天神人形」(一体税込800円)などの「ほうふ天満グッズ」を取り扱う唯一のお店。食前、食後には店内も要チェックです。
▲デザインも新たに生まれ変わった「ほうふ天神人形」。かつての「天神人形」は高杉晋作も持っていたとか
パンフレットを見ると、なんと天満宮境内にも玉子かけごはんスポットが!和食店「さかたり」では「合格文たま丼」(税込850円)が味わえます。
▲防府天満宮の本殿と春風楼の間に位置する「さかたり」

昆布が巻かれた絵馬形のごはんを、冷凍玉子の天ぷら、ふぐの天ぷら、まぐろの醤油漬け、瀬戸内海産のちりめんじゃこが囲みます。五角形(絵馬)は「合格」、昆布は「喜ぶ」、ふぐは「福」にかけてのチョイスでもあり、食べるといかにも天神様のご利益が増しそうです!
▲「合格」「福」「喜ぶ」、縁起の良い具材がそろった「合格文たま丼」

玉子は有機卵が使われており、一度冷凍することにより水分が抜けて黄身の旨みが濃縮。さらに天ぷらにすると白身とともに絶妙な半生状態になり、これをごはんに絡めれば立派な「玉子かけごはん」となります。
▲冷凍玉子の天ぷらは、温泉玉子とはまた違った半熟状態。黄身はもっちり、白身はとろとろ

好みの加減で玉子をからめて、門前町にある「桑田醤油」が醸造した玉子かけごはん専用醤油「無添加・玉子の匠」をさらりとかけていただきます。ふぐの天ぷらはサクサクのホクホクで、醤油漬けのまぐろは口直しとして絶妙です。

合格祈願に訪れたなら、ぜひ味わっておきたい一品。御利益アップは間違いなし!?
防府天満宮の石大鳥居の正面にある「天満屋」の2階レストランでは、「梅くらげとあぶり焼きふぐの玉子かけごはん」(税込680円)が味わえます。
▲門前の街並みで特にインパクトのある「天満屋」
▲天神様土産の代表「酒垂(さかたり)岩おこし」をはじめ、山口県名物がずらりと並ぶ
▲香ばしい風味のふぐのあぶり焼きが食欲をそそる「梅くらげとあぶり焼きふぐの玉子かけごはん」

梅くらげは濃い目の味付けなので、あえて醤油をかけないのが、この「玉子かけごはん」の特徴。玉子とともに梅くらげをごはんに混ぜれば、豊かな梅の風味が全体に行き渡ります。香ばしくあぶられたふぐとも相性抜群、お酒にも合いそうな大人風味の「玉子かけごはん」が楽しめます。

あぶり焼き用のふぐは、お土産コーナーで購入できるので、自宅での再現やアレンジにチャレンジしてみるのも面白いかも。
▲下関の水産加工の老舗「日高食品」が製造している「ふくあぶり焼き」(税込540円)
最後に、石大鳥居から西に歩いた路地の先、中華料理店「中華菜館 奥快餐(おこいさん)」へ。玉子かけごはんを扱うお店は、「お昼のみ」「夕方まで」という営業形態が多い中にあって、夜にも味わえる貴重なお店です。
▲本格中華の店として市内外に多くのファンがいる「奥快餐」

ここの玉子かけごはん「豚丼の玉子かけ」(税込650円)は、がっつりスタミナ系。麦味噌で炒めた国産三元豚の真ん中にはどっかり温泉玉子が。黄身を決壊させ、ごはんと混ぜ合わせていくうちに、荒切りの山芋たちの存在に気付きます。
▲このボリュームでさらにうれしいスープ付きな「豚丼の玉子かけ」

山芋はしっかり出汁が吸わせてあり、あっさり風味。ごはん、豚肉、玉子と一緒に頬張れば「シャキッ」とした食感とともに、こってりした味わいの中で絶妙な存在感を主張してきます。
▲荒切りの山芋が味と食感のアクセント

豚肉、玉子、山芋はいかにも精がつきそうな組み合わせ。大願成就を目指すなら、神頼みと一緒にしっかりパワーを蓄えることも必要ですね。

全13店の詳細についてはHPからご確認いただけます。

天神様の町でなぜ「玉子かけごはん」?キーマンは地元の偉人・楫取素彦

幕末には長州藩士として活躍し、明治維新後は旧群馬県令などを務めた楫取素彦(かとりもとひこ)。吉田松陰とは互いを認め合う仲で、その妹・寿(ひさ)を妻に、また寿との死別後はさらに吉田松陰の別の妹・美和子(旧名・文)を妻にします。

2015年、妻・美和子を主人公とするNHK大河ドラマ「花燃ゆ」の放映によって、楫取素彦の存在が改めてクローズアップ。二人が晩年を過ごした防府の地でも、地元の偉人として再度、顕彰へ向けた動きが活発化します。

その際、彼らの防府での生活について書かれた資料を整理する中で、好物が記された「垂涎三尺(すいぜんさんじゃく)」という書物が見つかっています。

果たして「楫取夫妻」「玉子かけごはん」「防府天満宮」三者の結びつきとは?「ほうふ玉子かけごはん」の企画・運営に携わり、広報を担当する「さかたり」店長・梅田時江さんにお話を伺いました。

「楫取夫妻は玉子料理も好んで食べていたようです。彼らをもっと身近に感じてもらいたいという意味を込めて、生活感が最も感じられる『玉子かけごはん』に、新名物としての白羽の矢が立ちました」
▲企画の立ち上げから関わってきた「さかたり」店長の梅田さん

「ほうふ玉子かけごはん」が味わえる13店は、「まちの駅うめてらす」に事務局を置く「うめてらすネットワーク」に所属。同ネットワークは、主に防府天満宮一帯の振興を目的に活動していますが、組織として「食」をテーマとする試みは初めてで、大河ドラマの放映に合わせて2014年9月頃から準備を始めてきたそう。

「せっかく、和、洋、中とジャンルが異なる店があるので、一店一品、個性を生かした創作玉子かけごはんを提供して、参加店全体の集客に結びつけようと考えました」と梅田さん。

楫取夫妻、特に素彦と防府天満宮の関係もまた密接です。明治35(1902)年に催行された創建千年を記念する「菅公御神忌千年大祭」では、楫取素彦は総裁を務めています。また、同年から取り組まれた天神山公園(当時は酒垂山)の整備においても、リーダーとして尽力しました。
▲境内に設置された千年大祭の記念碑

さらに、本殿裏手には、彼が養育主任を任ぜられた貞宮多喜子内親王(明治天皇の第十皇女、3歳で薨去)の遺品を納めた貞宮遙拝所(ようはいしょ)もあります。
▲貞宮遙拝所を見守るように建立された楫取素彦・美和子夫妻の像

「防府天満宮の節目や地域の発展に大きな功績を残していながら、楫取素彦の存在は地元でもほとんど知られていませんでした。楫取夫妻も愛したであろう『玉子かけごはん』を名物として発信することが、さらなる顕彰にもつながると考えました。そして、観光客だけでなく、山口県民や防府市民のみなさんにも愛される名物として、しっかり継続させていくことがさらなる発展に結びつくと思っています」と梅田さんは話します。

「また食べたい」というリピーターも増えていて、成功といえる手応えを掴んでいるという「ほうふ玉子かけごはん」は、参拝ごとのお楽しみとして、13店の中から1~2店を選んで食べ歩くのがオススメです。大食い自慢!という人は、一日で何店回れるか挑戦してみるのも面白いかもしれません。

学業成就の祈願だけでなく、パワースポットとしても知られる「防府天満宮」。参拝して「ほうふ玉子かけごはん」を味わえば、菅原道真に加えて楫取素彦・美和子もきっとあなたを見守ってくれるはずです。
▲市民の憩いの場でもある「防府天満宮」。地元では毎日参拝する人も少なくない
兼行太一朗

兼行太一朗

記者兼営業として、地元山口の地域情報紙に14年間勤務。退職後はNPO法人大路小路ひと・まちづくりネットワークに籍を置き、守護大名大内氏や幕末における歴史資源の取材に携わる。同時にフリーライターとして活動しながら、たまに農業も。自称ネコ写真家。(編集/株式会社くらしさ)

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