「中国料理 龍亭」で仙台冷し中華のルーツに迫る

2015.06.17 更新

冷し中華は、牛たん、ずんだに並ぶ仙台名物です。ではなぜ、冷し中華が仙台名物なのか。そんなギモンを抱く人は多いはず。冷し中華が仙台名物と言われるゆえんは、その歴史をひもといてみるとわかります。仙台冷し中華の隠れたストーリー。知れば知るほど、食べたくなること請け合いです。

戦前に生まれた仙台の冷し中華

仙台駅西口から北へ15分ほど歩くと、「中国料理 龍亭」があります。昭和6年(1931年)創業の龍亭は、仙台を代表する老舗の中華料理店。「涼拌麺(りゃんばんめん)」は、週末になると来店客の8~9割が注文するという看板メニューです。
<外観写真>
仙台で冷し中華が誕生したのは、昭和12年(1937年)といわれています。今のように冷房が完備された時代ではありませんから、アツアツの中華料理は夏になると敬遠されがちでした。そこで、夏に売れるメニューを開発しようと、仙台支那料理同業組合(現・宮城県中華飲食生活衛生同業組合)のメンバーが集まり、検討を始めました。その当時、組合長を務めていたのが、龍亭の創業者・四倉義雄氏。組合の人々は閉店後に龍亭に集まり、知恵を出し合いました。暑い夏でも食べてもらえる中華料理を……。試行錯誤した末に生まれたのが、冷し中華だったのです。

冷し中華は、中華料理にちなんで「涼拌麺」と名付けられました。誕生当時は、冷たい麺の上にゆでたキャベツや塩もみキュウリ、ニンジン、チャーシューなどをのせたものだったそうです。食欲増進のため、タレには酢を加えました。ラーメン1杯10銭の時代に、涼拌麺は25銭。決して庶民的な食べ物ではなかったといえます。

やっとの思いで生まれた冷し中華ですが、戦時下の配給制度などの影響を受け、一時はメニューから姿を消してしまいます。
仙台で冷し中華が復活したのは、昭和20年代後半。戦前の組合は「仙台中華麺業組合」として再結成され、冷し中華のPR活動に取り組みました。龍亭の店内には、その当時の写真が飾られています。「涼拌麺」と書かれたのぼりを掲げた宣伝隊が、街中を練り歩いた時の様子です。その甲斐もあって、冷し中華の認知度はアップしました。昭和30年代に入ると、色とりどりの千切りの具材が盛られ、時代の移り変わりとともに見た目や味を改良。呼び名も「涼拌麺」から「冷し中華」が主流になり、家庭用冷し中華も販売されるようになりました。こうして、冷し中華は夏の定番メニューとして一気に広まっていったのです。
<昭和の写真>

時代に合わせて進化する「涼拌麺」

龍亭では、誕生時から変わらず、「涼拌麺」という名で冷し中華を出しています。この店では、麺と具が別々に盛られているのが特徴です。25年ほど前、ご当地グルメブームの影響などもあり、涼拌麺のオーダーが急増。お客様を待たせないための苦肉の策として、具を別盛りにしたのが始まりだといいます。それが予想外の反響で、今では龍亭のスタイルとして定着しています。
<具の盛り付け写真>
具の皿には、クラゲ、蒸し鶏、ハム、キュウリ、チャーシュー、錦糸玉子がのっています。麺に具をのせて食べるもよし、具と麺を別々に食べるもよし、自由な食べ方で楽しめます。
<四倉さんの写真>
現在、料理長として腕を振るうのは、四代目・四倉暢浩さん。創業者の義雄氏の孫にあたります。約20年前、修業を終えて龍亭に戻ってきた暢浩さんが取り組んだのが、涼拌麺のタレ作り。タレの改良には3年を費やしたといいます。
「タレは、麺と具材をまとめる涼拌麺の要。塩分、酸味、甘味、濃さ、全体のバランスがとれたタレを作りたかったんです。最後までおいしく食べられる味を目指しました」と暢浩さん。
<タレ写真>
タレは、醤油とゴマの2種類から選べます。醤油ダレは柑橘系の果汁やゴマ油、ショウガをブレンド。酸味は控えめ、まろやかな味わいです。一方のゴマダレは、芝麻醤(チーマージャン)でコクと香ばしさを出しています。ラー油を少し加え、しつこくない、キレのある味に仕上げます。季節によって麺を冷やす温度を変えるなど、タレ以外の工夫も随所に。龍亭の看板である涼拌麺を守るため、今も研究を重ねる日々です。

たくさんの人々の思いがつまった仙台の冷し中華は、全国区になり、夏だけでなく一年中食べられるようになりました。龍亭のほかにも、仙台市内のさまざまな中華料理店で味わうことができます。店によって味も盛り付けも異なるので、食べ比べてみるのもおすすめですよ。
<モデル写真>
加藤亜佳峰

加藤亜佳峰

編集者・記者。編集プロダクションMOVE所属。仙台を拠点に、企画・編集・取材・執筆を担当。旅行誌を中心に、情報誌やムック、書籍、パンフレットなど幅広いジャンルの印刷・出版物を手がける。

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