秋田の曲げわっぱ作り体験/クリエイター女子が行く!Vol.12

2016.01.31

こんにちは。フリーでイラストレーターをしています五島です。「ものづくりに興味はあるけどどこで体験できるのか分からない、なかなか行動に移せない……」この企画は、そんな悩めるあなたのために、クリエイター女子を代表してわたくしが全国各地で「ものづくり」を体験しまくります。そして、ものづくり体験の思い出を描き下ろしのイラスト付きでお送りします!前回は石川県山中温泉で木の器作りを体験してきました。さてさて今回は……?


冬真っ只中の本日は、秋田県大館市にやってまいりました。

秋田と言えば、美味しいお米に比内地鶏、それに地酒。
食いしん坊にはたまらない場所なんですよね。
食べ過ぎてなまはげに怒られないようにしなくっちゃ……。
悪い子はいねえがあ~!

魔法の箱ってなんだろう

そんな人生初上陸の大館市。
美味しいお米をさらに美味しくする、魔法の箱があるんですって!
一体なんでしょう?
▲ひょっこり

どこだろう、と探す間もなく発見しちゃいました。
“体験を楽しもう!”の看板が目印です。
▲なんのポーズだろう

こちら、「大館曲げわっぱ体験工房」さんです。
はい、名前の通り今日は、曲げわっぱのお弁当箱作りを体験します!
魔法の箱とは、お弁当箱のことでした。
ちなみに先程のちょっとダサめのポーズは、曲げわっぱを表現したつもりです。

大館曲げわっぱ体験工房さんでは、パン皿、7寸盆、丸弁当箱の中から好きな体験キットを選ぶことができます。
さらに工房内では工芸士の方々の作品を見学することも可能だそうです。

あのですね、個人的に曲げわっぱのお弁当箱にすごく興味があって、ずっと欲しかったんですよ!
歴史ある伝統工芸品ですが、曲げわっぱの製品を使っている友人が周りに多く、若い人にもよく知られている印象があります。
でも少しお値段が高いイメージで、なかなか手を出せずにいたんですよね……。

という感じで、興味はあったものの実際に作るなんて思ってもいませんでした。
ようし、今日もはりきって体験させていただきます!
それではレッツらゴー!
▲本日お世話になる佐々木先生です

私が教わる身なのに、一緒にお辞儀をしてくださる優しい先生。

先生「今日は丸弁当箱をおひとつ作っていただきますよ。短い時間ではありますが、よろしくお願いいたします。まず体験の前に、曲げわっぱが出来るまでを簡単に説明しますね」

はい、こちらこそよろしくお願いいたします!

先生「曲げわっぱは杉の木を使います。木を割って、薄く剥いで熱湯につけ、作る製品に合わせた型に巻き付けて乾燥させるんです。ザッと説明しましたが、ここまででもすごく長い時間がかかりますよ」
▲こんなにまあるく曲がるんだ

先生「その後、接ぎ手の部分を接着剤でとめ、閉じ穴を開けたらそこを山桜の木の皮で縫い止めます。この皮をプラスチックだと思われる方がいるのですが、実は細かい部分も木からできているんですよ」
▲つやつやの山桜の木の皮

え、ええ~! 近くで見ても山桜の木の皮だなんて気がつかなかった。

それにしても、完成までの工程が多いことにびっくり。
こうやって丁寧に大事に扱われた杉の木が、綺麗なカーブを描いて様々な製品に姿を変えていくんですね。

先生「今日は底板の接着やヤスリで磨くなどの、仕上げの工程を体験していただきます。木を割ってからの長い工程を考えるとほんの少しの作業のように思えますが、ここで美しさが決まりますよ。がんばりましょうね」

なあるほど!
実際に最初から最後まで体験するとなると、とんでもない時間がかかるわけだ。
こうやって工芸士である先生から直接お話を聞くことができるのも、ものづくり体験の醍醐味ですね。

ものには、たくさんの苦労と愛情が詰まっているんだなあ……。
そんな思いを感じた上で、体験スタートです!

はじめてと、50年

▲食いしんぼう根性を見せられるか!?

まずは、用意されたパーツに専用の接着剤を薄く塗り、底板をはめこみます。
▲ちょんちょんと接着剤をのせて薄くのばす

先生は簡単そうに塗っていくけれど、やってみるとこれが難しい。
手はべたべたになるし、どんどん乾いてきてしまいます。
ああ、じれったいよう!

先生「そりゃあ最初っから上手にやってもらったら、私たちの立場が無いですよ(笑)一応、50年曲げわっぱを作っていますから。はじめてなんですし、ゆっくりでいいんですよ」

わわわ、50年!?私のこれまでの人生を2周しても足りないや……。
先生の一言一言がずっしり心に響きます。焦らずやるぞ~!
▲そーっと、そーっとね

曲げわっぱのお弁当箱におかずやご飯を入れると美味しくなる、って聞いたことがあるけれど、本当なのかな?
早く試したい気持ちでいっぱいです。

先生「みなさん、曲げわっぱの弁当箱を一度使うと驚かれます。余分な水分を吸収してくれたり、木の香りがうつってごはんが美味しくなるんですよね。類似品もたくさん出てきていますが、“曲げわっぱ”と名乗っていいのは秋田の曲げわっぱだけなんですよ」

へえ!思い込みでなく美味しくなる理由がきちんとあるんですね。
こうやって作業しながら先生のお話を聞いていると、ものの見方が少しずつ変わってきます。
▲接着剤を塗った底板を、輪っかになった側面にパコッとのせます
▲木づちで叩いてはめ込むぞ

まさか、お弁当箱作りに木づちが登場するなんて。
最初は怖くて優しく叩いてしまいましたが、しっかりはめ込むには強い力が必要です。
意を決して、思いきりトントン叩いていきます。やー!おらー!!

じっくりじっくり真剣に

お次は、はみ出た接着剤を丁寧に拭き取ります。
▲心配そうに見守ってくれる先生

水をつけて軽くしぼった布で、丁寧にゴシゴシ。
一見地味なこの工程、意外とコツがいるんです。
一人だったらササッと済ませちゃいそうな細かい作業ですが、1mmのこだわりができあがりを左右するのかもしれません。

何度か拭いては先生に見せるを繰り返し、合格をいただいたところで次は蓋の番。
底板と同じように、はめ込んだのちはみ出た接着剤を拭き取ります。

ここまででかなり時間がかかりました。見えない部分も美しく、ですね!
ふう~ゴシゴシしすぎて指がつりそうになっちゃったよ……。

先生「とっても綺麗に拭けていますよ。こういった細かい作業は女性のほうが上手ですねえ。実際に体験されるお客様のほとんどが女性ですが、みなさん丁寧に一生懸命やられていかれます」

やったー!この道50年の先生に褒められるほど嬉しいことはありません。
▲つぎはヤスリで角をとります

ヤスリがけも、簡単なように見えて実はけっこう力がいるんです。
3分がんばったら少し休むようにして、疲れないように自分で調節!

先生「杉の木は硬い部分と柔らかい部分の差が大きくて、削りやすさが全然違います。硬いところは少し強めにヤスリを当てましょう」

ほんとだあ!木クズの出方が全くちがう。
なんだか、少し木のことが分かってきたみたいで嬉しいな。へへへ。
▲だんだんスベスベになってきた!

ずっと触れたい肌ざわり

工房に響く、シャーっシャーっと職人さんが木を削る音。
ここからはひたすらヤスリがけの作業です。

ほとんど完成に見えても、最後の最後まで気を配ること。
ただ買うだけでは分からなかった、工芸士さんたちの心遣いを体感できる、貴重な時間だなあ。

先生「私がこうして講師をすると、お客様は最後に“ありがとうございました“とお礼を言って帰られます。不思議ですよね、本来はこちらがお礼を言う側なのに。曲げわっぱの作り方や歴史をお話して喜んでもらえるのは、私も何より嬉しいです」

不器用でも自信がなくても、ものづくりは楽しいんだってこと、たくさんの人に伝わるといいなあ。

さあさ!ラストの仕上げやったるぞおー!
▲最後はクッション性のある、大きなヤスリを使うのだ

あとすこし、あとすこし。
どんなおかずを詰めようか考えながら、ルンルン磨いていきます。
新米と、煮物と、卵焼きもいいなあ……。
▲タオルで隅から隅まで拭きあげて……

ついに、完成ーーー!!
できたよ、お弁当箱ー!!
▲でで~ん

もうね、びっくりするくらい手触りがいいの。
ふわふわっていうか、ツルツルっていうか、すごく滑らかなんです。
蓋を開けると木の香りが広がって、これだけで食欲湧いちゃいそう。

作りもしっかりしていて、きちんと手入れをすれば何十年でも使えます。
ああ、早く帰ってごはんを詰めたい!

佐々木先生、最後まで分かりやすく、急かすことなく教えてくださって、どうもありがとうございました。

先生「綺麗にできましたねえ。大事に使ってあげてください。これからも曲げわっぱの魅力が伝わるように、たくさんの人が体験に来て下さると嬉しいです。こちらこそありがとうございました」
▲大満足の仕上がりです

美味しいはしあわせ

もちろん、帰ってお弁当を作りましたよ。
曲げわっぱのお弁当箱に入れると美味しそうに見えるなあ!
▲ふっふっふ

我慢できないから食べちゃおう。
▲じゃじゃ~~~~ん!!

……皆様、言いたいことは痛いほど分かります。
卵焼きだのなんだのはなんだったのか、と。はい分かりますよ。

でも日の丸弁当が一番美味しいんですから!
基本ですよ、お弁当の。決して時間が無かったわけじゃありませんからね。

気を取り直して、いただきまーす。
▲ぱくっ
▲くううう

あああ~おいしいっ。
ふわっと杉の香りが鼻を通って良い香り。
いつもよりたくさん食べちゃいそう。
これは魔法の箱だよ、間違いない。幸せだあ~!

……誰かのために、きちんとしたお弁当を作りたいな。

きょうのいちまい



五島夕夏

五島夕夏

桑沢デザイン研究所卒業。学生時代ロシアの絵本に大きく影響を受け、絵本画家を志す。現在はサロンのレセプションをしながら、イラストレーターとして活動中。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

こちらもおすすめ

もっと見る
PAGE TOP