鹿児島甘酒カレー/全国カレー巡礼の旅Vol.13

2016.01.15

今や世界中で愛されるカレー。しかし、カレーの世界というのは奥深いもの。この企画では、カレーの第一人者・井上岳久先生と、私、カレー初心者ライター・井上こんの“ダブル井上”で全国の名店カレーを食べ歩き、先生の解説とともに地域性や歴史背景も交えてさまざまなカレーを紹介していきます!

前回は、熊本県にある「肥後のたこ坊」の看板料理、お好み焼きとカレーが融合した「ライス焼」をご紹介しました。今回はどんなカレーが登場するのでしょうか?

【Contents】

1.近代焼酎の父・河内源一郎氏の功績
2.自慢の麹をカレーで味わう
▲鹿児島へ到着した私たちがまず向かったのは……
▲空港前の西郷公園。日本最大の偉人像、10m超の西郷隆盛像が名物です

焼酎の本場、鹿児島県。その中央部に位置する霧島市の静かな町に種麹(たねこうじ)屋「河内源一郎商店」はあります。
種麹屋とは、焼酎の麹の元となる種麹を焼酎メーカーに卸す専門業者のこと。ここ河内源一郎商店は大手5社のひとつとして、昭和6(1931)年の創業以来、日本の焼酎界をけん引してきました。九州の焼酎メーカー8割のシェアを占め、“3M”として近年人気の高い「森伊蔵」「魔王」「村尾」や「百年の孤独」といったプレミア焼酎を支えるのも同社の種麹。
▲「韓国焼酎のマッコリもうちの麹から生まれたものです」と取締役の竹ノ内啓輔(けいすけ)さん

1.近代焼酎の父・河内源一郎氏の功績

▲試飲コーナーにて。先生はこちらのお酒を普段から取り寄せるほどファンなのだとか
▲地元産の米と麹から作られる同社の甘酒は、まろやかさが特長。実はこれが今回のカギとなります

“近代焼酎の父”として名高い創業者、河内源一郎氏。税務監査局の職員として訪れた鹿児島の地で焼酎に出会って以来、生涯をかけその質の向上に尽力しました。当時、日本酒と同じ黄麹を使用していた焼酎は腐りやすく、出来にばらつきがあったとか。そこで、温暖な地域の麹こそ焼酎造りのカギと沖縄の泡盛に着目した河内氏。

研究を重ね、明治43(1910)年、泡盛の麹菌から胞子を取り出し焼酎に適した「泡盛黒麹菌」の培養に成功すると、さらに大正13(1924)年には新種「河内菌白麹」を発見します。これにより焼酎は腐りにくく、かつ以前とは比べ物にならないほどの旨みを得て、今日まで進化を続けながらファンを増やしてきました。
▲種麹1袋から約800本の焼酎ができる

2.自慢の麹をカレーで味わう

こん「お酒好きの私としては麹のことが詳しく知れて貴重な体験でした。……でも先生、この連載はカレー巡礼のはずです!一体カレーとどんな関係があるのですか?」

井上「もちろんカレーが登場しますよ。ここでしか食べられない名物があるんです!」

敷地内にある系列レストラン「霧島こうじ蔵GEN」。こちらで供される料理は、黒麹入りの餌で飼育した自社のブランド豚“黒麹豚”を使った「カツ重」(1,080円)や、同じく黒麹で育った鶏とその卵(麹卵)を使った「親子丼」(980円)など、同社の顔である黒麹をふんだんに使ったものばかり。
さらに、人気メニューのひとつ「甘酒カレー」(1,080円)は、甘酒をルーに加えた独創的な一品。同社自慢の甘酒や黒麹豚を実際に食してもらいたい、とメニューに仲間入りして以来、好評を博しているとか。
▲季節の野菜が彩りを添える

こん「なんと甘酒カレーとは!」

井上「甘酒を隠し味に使うのは全国的に見ても非常に珍しいです。超レアですね」
▲では、いただきます
具材となる黒麹豚は、甘酒にひと晩じっくり漬け込むことで驚くほどに柔らかくなるのだとか。その食感は、やや固めとされるスネ肉を使っているとは信じられないほど。さらに、3日間丁寧に煮込むことでルーに奥ゆきが加わり、一口ごとに優しい旨みが波のように押し寄せます。
井上「甘酒によってカレー全体に独特の甘さとコクが出るね。まろやかな中にあるほのかな辛さもまたいい。老若男女に愛される味です」
▲ルーの中に白く見えるのが麹
▲カツカレー(1,400円)に使うのも黒麹豚
サクサクの衣に歯を立てると同時に肉汁があふれ、旨みの余韻を残しつつ肉繊維がスッと切れるのを感じます。

こん「柔らかいけれど、豚らしい弾力やジューシーさもあって……麹の力、おそるべし!」
井上「近年、大人向けの甘口カレーが人気の傾向にありますが、麹本来の甘さが感じられるこの甘酒カレーは、まさに時代の流れに沿っているといえますね。鹿児島の中央から離れた場所にありながら時代の先端を行くとは、お見事!酒にこだわりを持つカレーツウの間でしか知られていない掘り出し物なので、私も本当は教えたくないくらいです(笑)」

それでは、本日のカレー格言をば。
井上「ここでしか食べられない隠れたカレーを見つけよ」

こん「飲むだけじゃない!甘酒パワーでお腹喜び!」

80余年の歴史を持つ種麹の老舗、河内源一郎商店。敷地内にはレストランだけでなく、日本中の焼酎メーカーが信頼を寄せる種麹が日々製造される部屋や検査室、試飲コーナーも有し、さながら麹のミュージアム。近代焼酎の歴史を変えた麹について学び、食し、そして今宵の焼酎がいつもよりちょっぴりおいしく感じる場所です。お酒好きな方もそうでない方も、麹の力を実感できる「甘酒カレー」を是非ご賞味あれ!
▲「あの味を家でも食べたい!」という声から生まれたレトルト版「甘酒カレー」(650円)
霧島こうじ蔵GENさん、ありがとうございました!

※価格はすべて税込です。

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。


井上こん

井上こん

1986年生まれのフリーライター。「Yahoo!スポーツナビDo」「SPA!」「nomooo」「ウートピ」などのWEBメディアや雑誌「散歩の達人」などで執筆。

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