徳島スリランカカレー/全国カレー巡礼の旅Vol.15

2016.02.12

今や世界中で愛されるカレー。しかし、カレーの世界というのは奥深いもの。この企画では、カレーの第一人者・井上岳久先生と、私、カレー初心者ライター・井上こんの“ダブル井上”で全国の名店カレーを食べ歩き、先生の解説とともに地域性や歴史背景も交えてさまざまなカレーを紹介していきます!

前回は、うどん県・香川から著名人も「日本一うまいカレーうどん」と称する「饂飩家 五右衛門」の名物カレーうどんをご紹介しました。さて、今回はどんなカレーが登場するのでしょうか。

【Contents】

1.実は来てる!?スリランカブームの予兆
2.徳島産食材×多種多様なスパイス
3.「スパイシー=辛い」は間違い?

1.実は来てる!?スリランカブームの予兆

前回に続き、今回も四国からお届けします。やってきたのは阿波の国、徳島。県面積の約8割を自然が占める豊かな地には、西日本第二位の標高を誇る「剣山(つるぎさん)」やアオウミガメの産卵地として知られる「蒲生田岬(かもだみさき)」、江戸時代後期の姿を残す「上勝町(かみかつちょう)の棚田」など名所が満載!
▲県を代表する観光スポット「大鳴門橋(おおなるときょう)」。世界三大潮流に数えられる「鳴門の渦潮」の見頃は、春と秋の大潮の時期

今回ご紹介するのは、日本からおよそ6,700km離れたスリランカ民主社会主義共和国(以下、スリランカ)出身のシェフが手がける一皿。お店は、JR牟岐(むぎ)線の阿波富田駅を北東に2kmほど進んだ沖洲川沿いにあります。
▲鮮やかなスリランカ国旗と黄色い建物が目印

井上「スリランカカレーは東京ではまだ珍しい存在ですが、近年、大阪を中心に専門店が増えつつあります。そのうち東京にもブームが来ると思いますよ」
▲店前に漂うこの香りは……!胃も心も準備OKです

スパイスの香りに誘われてお店に入ると、カレーリーフの木とスリランカの伝統的な音楽が迎えてくれます。ダークトーンの空間を彩るのは、現地から取り寄せたインテリアたち。繊細な刺繍が施されたクッションや象形に抜かれたパーテーションなど、ここが徳島であることを忘れそうになります。
▲異国の雰囲気を漂わせるかわいらしい小物
▲常に笑顔のオーナーシェフ、ダンミカ・カルナラッナさん。徳島弁混じりの流暢な日本語で料理の説明をしてくれました

スリランカの5ツ星ホテルで西洋料理店のシェフとして研鑽を積んだダンミカさん。日本でもシェフとして東京第一ホテル福岡で6年間勤務、1990年にはスリランカ政府から、シェフとして大阪花博に派遣されたのち、2008年に日本人の奥様の実家である徳島で、故郷の町名を冠した「マータラ」をオープンさせました。

「スリランカカレーの基本スタイルは肉や魚、野菜をスパイシーに味付けした2~3種類のカレーをご飯と混ぜて食べるもの。インドカレーとよく間違われるけど、スリランカでは『モルディブフィッシュ』という、鰹のような魚の削り節を使うのがインドカレーとの大きな違いです」とダンミカさん。

2.徳島産食材×多種多様なスパイス

今回紹介するのはスリランカの正統派家庭料理「アぺー・キャーマ」1,500円(税込)。日本語で“私たちの食事”を意味します。
▲これが正真正銘の「スリランカカレー」
▲いただきます

サフランライスを囲むのは、徳島産の肉や野菜を多彩なスパイスで調理したカレー料理の数々です。
▲卵と野菜をふっくら焼き上げた「スリランカオムレツ」(写真中央)
▲ご飯にのるのはナスを酢や粒マスタードなどでさっぱり仕上げた「モージュ」
▲ココナッツを赤唐辛子や黒コショウなどで和えた「サンバル」(写真中央)

これら全10種類のカレー料理をご飯と混ぜながらいただきます。
▲どれから食べようか迷います
▲具材の内容は日替わりで常連客を飽きさせません

一皿に含まれるスパイスはカルダモン、生姜、カレーリーフ、パンダンリーフ、ターメリック、タマリンド、レモングラス、コリアンダー、シナモン……と枚挙に暇がありません。いずれも、ダンミカさんが年に数回スリランカで仕入れるこだわりのもの。

3.「スパイシー=辛い」は間違い?

曰く「日本ではスパイシー=辛いと思われがちですが、本来は、色んな香りや風味が混ざり合った“複数のスパイスを感じる状態”を指します」。

スッと鼻から抜けていく香りや酸味、深いコクなどそれぞれ異なる特徴を持つカレー料理たち。それぞれで食べてもおいしいのはもちろん、次第にスパイスが混ざり合い、複合的な味わいに変化していくのを楽しむのも、スリランカカレーならではの醍醐味です。
井上「スリランカは仏教国なので、ここまで様々な食材をカレーに取り入れるのは食べ物に宗教的な制限がないことが大きいですね。食材とスパイスを巧みに組み合わせることでインドカレーよりバラエティが豊かになったといわれています」

ダンミカさん「豆腐でもニガウリでもカレーになるけん」
▲カレーは1種類ずつ作られるため厨房には十数個の鍋が所狭しと並びます

こん「そういえば、全然油っぼさを感じませんね」

ダンミカさん「油は控えめにするのがスリランカ流。さらに、バターを使うインドカレーに対し、スリランカカレーで使うのはココナッツオイルかサラダオイルです」

井上「胃腸に優しい感じがするね」
▲こちらは、20種類のスパイスを使った料理「ビリヤーニ」1,200円(税込)。フライドオニオンやカシューナッツの食感が楽しい
▲ココナッツの花の蜜を煮込んだソースをヨーグルトにかけた「キリ・パニ」400円(税込)
▲花の優しい香りとヨーグルトの酸味が新感覚。甘い物が苦手な私もこれにはやみつき

それでは、本日のカレー格言へ!
井上「カレーは原点をたどるべし!真のスリランカカレーのシェフは評判通りスゴかった」

こん「徳島で出会う本場のお袋の味」

自然豊かな阿波の国、徳島で味わう本場スリランカのアンマー(母)の味。実力派シェフ渾身の一皿をぜひ現地でご賞味あれ。
▲徳島といえばこれ、阿波踊りポーズ

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。


井上こん

井上こん

1986年生まれのフリーライター。「Yahoo!スポーツナビDo」「SPA!」「nomooo」「ウートピ」などのWEBメディアや雑誌「散歩の達人」などで執筆。

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