海から昇る朝日を見に東の果てへ。銚子電鉄に乗って犬吠埼へゆくノスタルジック旅

2015.12.31

関東の最東端にある犬吠埼。ゆるやかなアーチを描く水平線からこの時季日本で一番早く昇る朝日を見ようと、元旦は大勢の人が訪れる初日の出スポットです。今回は、賑わう年末年始をあえてはずした、冬のノスタルジック旅。銚子駅からローカル列車・銚子電鉄に乗って、ガタゴトのんびり犬吠埼へ。途中下車も楽しみつつ、ドラマチックに昇る朝日を見に行ってきます!

切符と電車

房総特急しおさいなら、都心から約2時間。醤油の町、漁業の町、銚子へ

大漁旗
▲JR銚子駅では大漁旗がお出迎え。JRのホームの一角に銚子電鉄の乗り場も
離島や富士山をのぞくと、初日の出を一番早く拝めるのは関東の東の突端、銚子市・犬吠埼。東京都心から訪れる際は、東京駅からJR房総特急列車しおさいに乗れば約2時間で銚子に到着します。銚子といえば、水揚高日本トップクラスの漁港、醤油、そしてぬれ煎餅で有名な銚子電鉄ということで、さっそく乗ってみます!

生まれは大正時代。約6.4km、10駅の区間を片道約20分で走る銚子電鉄

車内、車掌
▲車掌さんが車内で切符を販売してくれるのも、なんだか懐かしい風景です
千葉の東端を走る銚子鉄道(正式には銚子電気鉄道)は、大正時代に開業した後、何度も廃線の危機を乗り越え、現在も運行を続けるローカル列車。地元で愛され、重ねてきた100年近い歴史のぬくもりが、一歩車内へ踏み込んだだけで漂ってくるようです。
銚子駅からの切符は、車内販売で購入。帽子や制服、肩掛けバッグも懐かしい姿の車掌さんが、一枚一枚切符を販売してくれます。

乗り降り自在な1日乗車券「弧廻手形」で途中下車

駅名路線図
▲駅は全部で10カ所。いくつ途中下車できるかな?
切符
▲1日乗車券「弧廻(こまわり)手形」(大人700円、小児350円、共に税込)。これで乗り降りし放題。近隣観光施設の割引券とぬれ煎餅引換券付き
のんびりガタゴト旅だから、今日は1日乗車券「弧廻手形」を入手してみました。ゆったり気分で何往復もできるし、途中下車も自在。「銚子駅」をスタートした電車は、「いぬぼう」ならぬ猫の「にゃーぼう」がいるという「仲ノ町駅」へ停車。実は、ここは「ヤマサ醤油」の敷地の一角。事前に醤油工場に申し込めば見学もできるそうです(平日のみ)。銚子電鉄のほかの車両もここに集結しています。

「観音駅」で途中下車。名物のたい焼、いただきます~

観音駅、駅舎
▲ヨーロッパ調のかわいい外観が目をひく「観音駅」
たいやき
▲小腹がすいていたらお好み焼き味の「きんめ焼き」!キャベツが入っていておいしい(1個180円・税込)※つぶ餡、クリームは1個各130円・税込
淡いブルーの駅舎がかわいい印象の「観音駅」は、ちょっとした地元のグルメスポットでもあります。改札横で販売しているたい焼が、ふわふわの食感で評判。この日売っていたのは、つぶ餡とクリーム、そしてお好み焼き味のきんめ焼き。各駅で事前に注文しておけば、途中下車しなくてもホームまで持ってきてくれるというのもうれしいですね(※繁忙期など状況によって対応できない場合もありますので事前に問い合わせを)。周辺には観音さまがいる古いお寺もあるので、たい焼をほおばりながら周辺を散策してもいいですね。

緑のトンネルを抜けると、素朴な無人駅「本銚子駅」へ

本銚子駅駅舎と車両
▲風情あるたたずまいが絵になる駅舎
次の「本銚子(もとちょうし)駅」までの道のりは森の中。緑の中を電鉄は進みます。
森に抱かれた「本銚子駅」は、ひっそりしたたたずまいの無人駅。「ほんちょうし(本調子)」とも読めることから、縁起がいい名前の駅として注目を集めています。銚子電鉄では、この駅名にあやかる合格祈願切符も販売中。
銚子発本銚子行き切符(本調子)、本銚子発銚子行き切符(のぼり調子)、銚子~本銚子往復切符(調子が悪くても本調子に)の3枚がセット(税込840円)になっています。

キャベツ畑の中をガタゴト走るのも、ローカル電鉄ならではの魅力

走る電車
▲昔の銚子鉄道そのままに、赤×ベージュのツートンカラーに塗り替えた車両が畑の中をすすみます
ここからは、一挙に終着駅の「外川(とかわ)駅」をめざすことに。途中電車は住宅街を走ったり、キャベツ畑の中を通ったり。のんびりした時間を満喫できるのもローカル線ならではの楽しみです。線路脇の畑のキャベツは、銚子特産の「灯台キャベツ」。冬暖かい気候を活かし、全国一の生産量を誇る春キャベツとしても有名なのだそう。冬が温暖なこの土地ならではの風景です。

大正12(1923)年の開業当時のままの駅舎が、ノスタルジックな終着駅「外川駅」

外川駅駅舎
▲今も昔も変わらないたたずまいで迎えてくれる終着駅「外川駅」駅舎
終着駅の外川駅に到着すると、雨風にも長年たえてきたような駅舎が迎えてくれました。中に入ると、昔ながらの運賃表や出札口があり、まるで時がとまったよう。銚子電鉄が創業された大正12年に建てられたということなので、なんと90年以上もの間、乗客を温かく迎え、見送ってきたのですね。
赤い車輛
駅舎の脇には、昭和25(1950)年生まれの赤い車輛と赤いポストが仲良く並んでいました。今は引退した赤い車輛は、愛媛県松山市の伊予鉄道から銚子へやってきたのだとか。車両の中をのぞくと、懐かしいちゃぶだいや黒電話などが置かれていて、ちょっとした昭和の博物館になっているようでした。
車内

南欧風のホームも開放的な「犬吠駅」でぬれ煎餅をゲット

犬吠駅に電車が到着
▲南ヨーロッパ調のかわいいホームに到着
おせんべい
▲目の前で焼きあがるできたてのぬれ煎餅は香ばしくてとくに美味(税別1枚80円)
終着駅から一つ戻って「犬吠駅」へ。併設された犬吠駅売店は、ちょうど団体客で大賑わいでした。お土産を買うみなさんのお目当ては、廃線の危機を救うために鉄道員が考案したという、名物のぬれ煎餅。濃い口、うす口、甘口などからお好みで選べる、醤油の町・銚子ならではのしっとりとしたお煎餅です。目の前でおかあさんたちが、秘伝のしょうゆだれをつけて焼いてくれる焼きたて煎餅もまた美味。「弧廻手形」についていた引換券で一枚もらって食べながら、てくてく犬吠埼へ向かいます。

関東・銚子半島最東端の岬にそびえる白亜の「犬吠埼灯台」

灯台
▲三方を海に囲まれた岬に白くそびえる灯台。傍らには白いポストが
銚子電鉄に別れを告げて、大海原と大空が待つ犬吠埼灯台をめざします。犬吠埼は、三方を海に囲まれた海食台地。その突端にそびえる灯台は、眼下に広がる水平線を壮大なスケールでのぞめる絶景ビュースポットです。
灯台の99段のらせん階段をのぼって、さらにはしごをのぼると、展望デッキが。断崖絶壁の下に横たわる無数の岩礁に荒波が砕けるさまは、冬の海だからこそ、いっそう迫力があります。水平線も地球が丸いことがわかるように、ゆるやかなカーブを描いています。
▲郷愁を誘う霧笛の音も、灯台の隣の霧笛舎で聴くことができます

犬吠埼ホテルにチェックイン。さっそく夕焼けの露天風呂へ

今宵の宿は灯台からも近い「絶景の宿 犬吠埼ホテル」。犬吠埼の高台に建つこのホテルは、全室がオーシャンビュー。部屋から日の出の太平洋も望めます。ここ犬吠埼は、11月から2月の時期は海に沈む夕陽と、海から昇る朝日、両方が見えるベストシーズンなのだとか。月がきれいなお月見の時期は、海の上に幻想的な月の光の階段が現れることもあるとのこと。
お風呂
▲夕陽を見つめながら展望露天風呂に入るのも、東の果てまで来たごほうび(写真は男湯)
そろそろ太陽が傾いてきたので、チェックインもそこそこに旅の疲れを癒しに、お肌にも優しい源泉があふれる天然温泉へ。
潮風をほほに感じつつ湯船につかりながら、大空がオレンジ色から深いブルーへ変化するさまを、時を忘れて堪能できました。

夕食では銚子漁港直送の魚介や郷土料理をゆっくり味わって

夕食
▲先付の3品は銚子の郷土料理。ミネラルたっぷり海の幸です
銚子は何といっても、日本有数の水揚げ高を誇る漁港。このホテル自慢の夕食膳にも、港直送の新鮮な魚介類が種類も多彩に続々出てきます。銚子の海女さんが採ったという特産品「のげ海苔」、昔ながらの発酵調味料「ひしお」(見た目は味噌ですが、味は醤油)が添えられた豆腐、そしてコトジツノマタという海草を煮溶かし固めた郷土料理「海草こんにゃく」など、銚子の味わい深い郷土料理も先付で登場。
このあと目鯛、カジキ、まぐろなど、ぷりぷりとイキのいい旬のお刺身をはじめ、鍋、焼き魚、つみれ汁……。地元ならではのお料理の数々に思わず顔がほころぶ夕食膳でした。

水平線から荘厳に昇ってくる太陽。本州で一番早い日の出の光景に感動

朝日
▲ホテルから見えるご来光もまた贅沢。ここまで来たからこその絶景
翌朝はもちろん早起き。部屋でそのまま見てもよかったのですが、360度視界が広がるホテルの屋上へ。日の出時刻前からまだ暗い中で待っていると、次第にあたりがほの明るく白みはじめます。海と空の境界を示す水平線から太陽の光が次第にあふれ、刻一刻と大空が染まりゆく色と光のシンフォニーは圧巻のひとこと。やがてゆっくりと昇ってくる太陽は、神々しいまでに強く赤い色を放ち、思わず手を合わせたくなるほど。いにしえの人達は、きっとこの朝日に神を見たに違いないと納得するほど、ドラマチックな自然の絶景でした。

ここ犬吠埼は、(離島や山をのぞいて)日本で最も早い時刻に日の出を拝むことができる場所。元旦の日の出はさぞかし素晴らしいだろうなと思いつつも、今日という日のこの朝日を、誰よりも早く見ることが叶った清々しさは最高の気分です。
東の果てへの旅。この爽快さを求めて、きっとまた訪れたいと心に誓ったこの朝。日の出の太陽の色と光をまぶたに焼き付けて、ふたたび銚子電鉄にゴトゴト乗って日常へ帰ります。

今回の旅のおみやげ

おみやげ
サバカレー缶(税込216円/しだやウォッセ店)、手焼きぬれ煎餅(5枚入り・税込370円)、犬吠埼ホテルの温泉入浴剤(税別1個150円)、きんめキーホルダー(税別600円/ウォッセ21)ほか
ゴトウヤスコ

ゴトウヤスコ

ホテル、レストラン、神社、婚礼、旅、食、暦&歳時記、ものづくりなどの広告コピー、雑誌記事、インタビュー記事などを多数執筆し、言葉で人と人をつなぎ、心に響くものごとを伝える。旅は、基本一人旅好き。温泉、パワースポット、絶景、おいしいものがあるところなら、好奇心がおもむくままどこへでも。得意技は、手土産&グルメハンティング。最近は伝統.芸能、日本刀、蓄音機など和文化への興味を深堀中。読書会なども開催。(制作会社CLINK:クリンク)

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